ワールドトリガーRTA 近界侵略√   作:wgjpt

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サブミッション:02

『ミッション:悟りを開け』

 

ボーダーは本部を設立してから日々変わっていった。人も増えればトリガーも増える。または中の自販機が増えて、ベンチの数も多くなった。それは良いことなのだが、貴方には一つだけ困ったことがある。

それはランク戦の対戦項目が増えたことだ。

今までボーダーは個人で点数を稼ぎランクを上げていくのが主流だった。だが上層部の意向により新たにチーム戦が加わった。そのことにより貴方は日々、暗雲を顔の横に携えていた。

 

「よっ。日陰女。まだチームは組めてないのか?」

 

これは太刀川。突然横から入ってきて肩を組みやがって非常に馴れ馴れしいが、その肩にはエンブレムがある。それは隊を作り、ある程度の実力が認められたものにしか認められない換装体だった。

 

「…違います。」

「あ?」

「違います!」

「おぉ、聞こえた。毎回思うんだけど、なんでお前って最初の声が小さいわけ?それにさぁ、そうは言ってもお前服着てないじゃん。」

「人が裸であるみたいに言わないでくださいっ!」

 

貴方は肩にかけられている太刀川の腕を外そうと躍起になるが、太刀川は動かない。それどころか、更にきつく貴方の肩を組んで、まるでチョークスリーパーがかけられる一歩手前ぐらいまではいっている。

 

「じゃあ目星はついてんのか?」

 

太刀川は貴方の顔をにやにやとわざとらしく覗き込んで言った。

 

「…いや、ついてますけど。」

「言ってみろよ。」

「……敵の頭を一回で撃ち抜いてくれる狙撃手。」

「ッハー!!!!おいおい、そいつは当真か?とっくに真木理佐に取られてんぞ。」

 

貴方は唸った。実際に図星だったからだ。

 

「しょうがねぇな、俺がお前のために一肌脱いでやるよ。」

「えっ、いらないんですけど。」

 

貴方が拒否したにも関わらず太刀川は貴方を無理矢理引きずってく。そうしてついたのは狙撃場。

 

「お、あいつとかいいんじゃねぇか?」

 

太刀川が指を刺したのは一人の隊員。

 

「ダメ。射線が隠せてない。」

「射線ぐらいこれからどうにでもなる。大事なのは目的が動くなか、瞬時に的に合わせられる瞬発力だ。」

「射線が隠す才能がないと、目的にそもそも狙ってるって気付かれますよ。」

 

貴方と太刀川は睨み合う。

 

「じゃああいつはどうだ。当真に似てる感覚派スナイパー。」

「あっおれッすか!?」

 

たまたまそこにいた訓練生が声を上げる。

 

「ダメ。その子はもう予約されてます。」

「予約って何!?!?」

「おー、お前よかったな。むさ苦しい野郎どもがお前を揉んでくれるってよ。」

「だから何!?不穏なこと言い残して帰ろうとしないでください!!おれは女の子たちにモテたいんです!!」

「まぁまぁ、お前の未来は安泰だな。」

「だから何なんだよぉ!!!」

 

太刀川と貴方はその場を去る。残ったのは異様な反応をしている訓練生だけだった。

 

 

『ミッション:ダイヤの功罪』

 

貴方は過去、シューターであった。

なぜなら当時はトリガーの種類が少なかったからだ。今ではガンナーだが、中遠距離を担当できるのがこのポジションしかなかった。だから貴方は腕を磨いた。そうして見事、貴方はボーダー発足当時、シューターにおけるランキングでトップに君臨していた。

 

その当時の話をしよう。

 

 

貴方は廊下を歩いていると、東隊員に出会った。東はボーダー内で一番最初に遠距離の要である、スナイパーというポジションを確立させた男だ。だから貴方は東隊員に一目置いていた。

そして、東側も貴方に対してボーダー中枢補佐にしてシューター1位という噂を聞いていた。その引き合わせは、もしかして運命だったのかもしれない。

 

東さんは何やら忍田さんに捕まっているようだった。貴方は面倒ごとの予感がして、すぐさま廊下を引き返そうとした。だがそれをボーダーの虎は許さない。

 

「君!ちょうどいいところに!!」

「…司令官補佐?」

 

貴方を見て即座に声を上げた忍田さんと、ゆっくりとこちらを振り向く東さん。貴方は首根っこを掴まれた猫のように、観念して忍田さんのお縄についた。その様子は奇しくも太刀川に似ていた。

 

「今ちょうど二人でとある隊員について議論していたんだ。」

「とある隊員?」

 

あなたは疑問符を語尾につける。その様子を見て貴方が事態を把握していないことに気づいた東さんが解説を入れてくれた。

 

「そう、最近ランク戦を荒らしまわっている子がいてね。」

「その隊員はトリオン量があるためか、戦闘にかなり力押しの部分がある。だからこのまま彼がB級に昇格した際、一波乱起きると思ってな。」

「一波乱ってそんな大袈裟じゃあないですか?」

 

貴方は首を傾げた。

 

「それがそうでもないさ。彼のトリオン量は何てったって今話題のシューター1位と同等だからね。」

 

東さんが微笑む。それに貴方は、自分が評価されているということに気付いて少し頬を赤くした。そこに咳払いをした忍田さんが割って入る。

 

「だから今のうちに悪癖を矯正させるべき、ということだ。」

「……それって私、関係あります?」

 

すると二人は顔を見合わせ不気味なほど綺麗な笑みを浮かべた。

 

 

ベイルアウトの音声が鳴り響く。そこでは先程話題に出されたC級隊員と、貴方が十本先取でランク外対戦をしていたところだった。

 

貴方は思う。この人は自身の豊富なトリオン量にコントロールされていると。戦っていると弾道操作は上手いが攻撃の単調さが目立つ。打ったところでアステロイドは着弾するまでに若干の時間がある。その際に相手に動かれれば弾は当たらない。貴方はそうして九本もの試合を全て、弾を回避して相手をベイルアウトさせていた。

 

そうして十本目を貴方が取ろうとしたところで、不意に相手の動きが変わった。

相手が貴方の動きに合わせて照準を置いてきたのである。この急激な変化には貴方も流石に驚いた。

 

「今まで隠していたんですか?」

 

貴方は自身の展開したシールドを見る。そこにはしっかりとした傷があった。が、相手は苦虫を噛み潰したような表情で答えない。それどころか、さらに弾を打ち込んできた。

アステロイドやバイパー、メテオラが飛び交う。相手の弾はやけに馬鹿正直な弾道のものかと思えば、こちらを正確に射抜いてくる弾もある。貴方が弾を避けるために飛んだ瞬間、狙って頭上を撃ち抜いてくるのもあった。貴方はシールドで全て正確に弾いていたが、内心で下に見ていた相手の評価を修正し直す。

 

そしてこれはなにかあるな、と悟った貴方は撃ち合いながら相手の足元にメテオラを転がした。すると相手は爆風を受け、かろうじて致命傷は避けたもののベイルアウトをする。そうして訓練室から出た貴方を待ち受けてたのは、少し困った顔の東さんだった。

 

後に貴方は、あの隊員が東隊に入ったと知る。まぁそれを知ったところで、微塵も興味が湧かなかったが。

 

 

『ミッション:インポッシブル』

 

緑川はここ最近、悩んでいた。それは尊敬する先輩のことでもあった。

 

「最近、迅さんが構ってくれない。」

「まぁまぁ緑川。迅さんだって暗躍で忙しいんだよ。」

「暗躍で忙しいって何!?」

 

正論である。がしかしここは出水。年長者の余裕で耐える。耐えた。多分。

 

「だいたいなんで迅さんと勝負しちゃダメなの!?」

「迅さんはS級だからなぁ。」

「S級だから何!?」

「黒トリガーを持っているからかなぁ。」

 

もはや適当。しかしそこに出水の救世主が現れた。

 

「お前ら何してんの?」

 

それは米屋である。

 

「緑川が迅さんと勝負したいんだって。」

「いやー、無理っしょ。だって迅さん忙しいんでしょ?」

「それな。」

「だから諦めろっていうわけ!?」

 

緑川が再び騒ぐ。そもそも緑川がボーダーに入隊したきっかけは、迅が自身の命を助けてくれたことである。迅のかっこよさに憧れて、迅のようになりたいと思い入隊した。そのため憧れの迅がいなければ、緑川のモチベは低下の一方だ。

 

「う〜む、そろそろ緑川の迅さん欠乏症が激しくなってきたな。」

「そうだな、弾バカ。お前の伝手で誰かに呼んでもらうことはできないのか?」

「待って!今、迅さんでわらしべ長者しようとしてる!?」

「あー、まぁ太刀川さんとかならいけるか?誰かしらに当たれば迅さんもそのうち出てくるだろ。」

「それな。」

「俺の話も聞いてよ!!」

 

そうして3バカトリオは長い旅に出た。

 

まず当たったのは太刀川である。

 

「おー、迅?さっきラウンジで見たかもなぁ。」

 

そうして次に当たったのは太刀川の幼馴染、月見だ。

 

「迅さん?さっき忍田さんのところに行くって言っていたわよ。」

 

その次に捕まえたのは二宮。

 

「…迅ならさっきすれ違った。」

 

最後に忍田本部長。

 

「迅か?今頃玉狛に帰ってるんじゃないか。」

 

結局3バカは迅を見つけられず、気づけば日は傾いて、本部の窓からは茜色の光が照らしていた。

 

「俺たち一体何してたんだろうな。」

「待って、まだ俺の迅さんレーダーには反応がある。」

「いや、そのレーダー何?そんなのあるなら早く使っとけよ。」

 

適当にわちゃわちゃしつつ、歩く。本部の廊下は長く、ところどころある窓からは西陽が指していて、三人の影を長く伸ばした。

そして突き当たりで廊下を曲がる。すると、どうやらその先に小さな女の子がいるのが見えた。窓辺で、夕陽でも眺めているのか、ぼーっとしている彼女。その制服は本部のものであり、片手にバインダーを持っていて、束の間の休憩をしているのが伺える。

 

なんだ、本部の人か、と思い緑川達が軽く会釈して通り過ぎようとした。

 

その時、女の子が動く。それは口だけで、体は全く微動だにしていなかったが、緑川にはやけにスローモーションに見えた。何故ならその女の子の顔が夕陽に照らされて綺麗な人形のように見えたからである。

 

「迅はここにはいないよ。だって私がいるから。」

 

どういう意味?

そう緑川がその女の子に尋ねようとしたところで、不意に携帯の着信音が鳴る。その相手は迅。緑川は急いで携帯を手に取った。

 

 

「あー、うん。女の子?そう、おれの知り合い。うん。え?どんな関係だって?さぁ、」

 

迅の携帯についている、カピバラのマスコットが揺れる。

 

「本人に聞いてみればいいんじゃない?」

 

女の子は、その場にいなかった。

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