ワールドトリガーRTA 近界侵略√   作:wgjpt

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06,07ぐらいの頃の話です


メインインタールード

貴方が部屋を片付けていると古びたカピバラのマスコットが出てきた。そして迅と知り合ったばかりの頃を不意に思い出す。あれは──

 

 

『レコード:01』

 

「そこ、危ないよ。」

「ほんとだぁ、ねぇなんでわかったの?」

 

側溝の溝に躓き転ぶ子供の未来を、事前に感知し助ける。すると、貴方はその子供にそう聞かれた。それに曖昧な笑みを返して貴方はその場を去る。

ここは東三門。次にネイバーに襲撃され、焦土とかす土地だ。貴方はその場所を、念入りに探索していた。住民が逃げれそうなルート、トリオン兵達を追い詰めるルートというようマッピングするように。それは一人でも多くの人を救うためのことだった。そうやって思い詰めていると、前から歩いてきた人に声をかけられた。迅だ。

 

「ねぇ、下向きすぎじゃない?もしかして、ネズミでも探してる?」

「迅こそ、上向きすぎじゃない?鳥でもいた?」

 

貴方達は軽口を飛ばしてお互い同じ歩調で歩き出す。

迅と出会うのは貴方に取って予定通りであった。それは迅にとっても。互いに言葉を交わさずともSEを介して今日、お互いがお互い会うことを了承していた。

 

「今日はどうするの?」

「んー、暗躍かなぁ。」

「わかった。」

 

そう言うと、貴方はSEで東三門の様々な場所を見る。時にはビルの屋上、時にはショッピングモール、時には──

 

「待って!迅。なんかいる!!」

 

貴方は急に声を上げた。それはゴキブリを室内で見つけたのと同じぐらいの声のトーンだった。そんな貴方の様子に迅はギョッとし、SEを起動したが、迅が見たのは道路脇の花壇に顔を突っ込んでいる貴方だった。

 

「なんかって何!?」

「え、やばい!やばい!!気持ち悪い!!」

「気持ち悪い!?何見てんの、それ!?」

 

迅は叫ぶが貴方は顔を青ざめさせて震えるばかりだ。

 

「少なくとも今は、君のSEにしかそれは引っかかってない!」

「なんで!?」

「起きてるのは未来じゃない!今!」

 

そう迅が言うと、貴方は走り出した。迅はそれに追従する形でついていく。そうやって道路を走っていると、遠くから歩いてくる髪の長い美女がいた。

 

その時に、見えた未来──

 

「「なんか、殺人事件起こってる!!??」」

 

それはレンゲを手にした男性が、チャーハンの前で息絶えていた。

 

二人して声を上げるとその声に驚いたのか、街路樹からスズメが飛び出してくる。しかし貴方と迅にそんなことを気にしている余裕はない。迅は道路をするように美女が持っているスーパーの袋に向かってスライディングした。そして貴方はすれ違いざまに美女に肩パンをしていく。

 

美女は持っていた袋を落とす。そこには干しアジとチョコレート。

 

迅は体制を立て直し、貴方に向かって力強く頷く。貴方もそれに頷き返し再び走り出す。今ので干しアジのパックが破れ、魚はダメになった。後の男性を待ち受けているのはただのチョコレートチャーハンだ。

 

強く、生きろよ──

 

そう思い、貴方達は去っていく。

そうして30メートルぐらい走ると、今度は遠くから長髪と顎髭が特徴の、いかにも乗り物酔いと女子高生に弱そうな男性がやってきた。

 

その瞬間に、見えた未来──

 

「「こっちも死んでる!!??」」

 

その人は雀卓の前で息絶えていた。詳しく見たところ、どうやら六巡目で中切りしたが、他の三人が大三元、四暗刻、国士無双だったようだ。

 

「どうしよう、これ…警察…。」

 

貴方は真っ青になるが、迅は首を振る。

 

「この場合はダメだ。下手すると…。」

 

すると貴方の脳内にまた新しく映像が浮かぶ。どうやら貴方が警察を呼んでしまった未来だ。警察が雀荘に踏み込み、男性らが「刑法第186条第2項により逮捕する!」と宣言されている。

迅が汗を垂らしながらごくり、と唾を飲み込んだ。

 

「…ここは大人しく、全裸で帰ってもらおう。」

 

そうして三門市に産まれたての男が一人、爆誕した。

 

貴方達はとりあえず、今見た未来を無視して走り出す。今度は流石に死人が出ていないといいが。というか何だ?何故何もない日常なのに、こんなにも死人が出ている?

すると今度は一人、少年が歩いてきた。その子は伏目がちで、片目を黒髪で隠している。背中にはランドセルを背負い、肩には水筒をかけている。将来、スーツを着て刀でも持ってそうな少年だ。

 

今度こそ、平穏な未来を──

 

貴方達は願った。

少年は死んだ。

どうやらここら辺のマンションから、洗濯物が落ちてきたようだった。それも女性物の下着。少年はそれがふぁさっと頭に被さり、何やら変な痙攣をして泡を吹いて死んだ。

 

「…強く生きろよ、少年。」

 

迅が妙に力強く呟く。

貴方は半目になった。

 

そうして行く先々で困難はあったが辿り着いた先。とある道路の花壇の下。そこにそれらはいた。

 

「迅!先行って!!」

「待って、無理、無理!」

 

迅と貴方が二人で争い合う。それもそのはず、そこには尾が無数に絡まり、団子状態になってその節足動物めいた細い足をうじゃうじゃと動かすラッドの塊があった。その様子はさながら蛇団子。とっても気持ちが悪かった。

 

「いやきもっ!これ、おれに切れっていうの!?おれ弧月だけど!?」

「いける!!迅ならいける!!私のSEがそう言ってるもん!!」

 

ラッドが大声で騒ぐ貴方達に痺れを切らしたのか、こちらに向かって飛んで来ようとする。貴方はその塊にもう我慢できず、ラッドに向かって一直線のアステロイドを放った。メテオラではなかったのが頭の中で唯一冷静になれていた部分だった。

 

ラッドは爆散した。

そのぼとぼとと落ちていく足と、胴体に、迅は死んだ目になりながら言う。

 

「……これさ、二人でやる必要あった?」

 

貴方は黙って目を逸らした。

 

 

『レコード:02』

 

「最近、寝てる?」

「いや。」

 

貴方と迅は玉狛の屋上で囁き合う。それは川のせせらぎすらも潜むかのような、酷く静かな夜だった。今日貴方は母親に泊まりにいく、と行って玉狛に来ていたが、案の定寝れずにこうして屋上でぼーっとしていた。すると迅が偶然出てきて、その手には毛布を持っていたものだから、貴方はそれを奪って包まろうとする。

が、取り返されたので、妥協案として今二人で毛布に包まろうとしたところだ。

 

「寝なきゃダメじゃない?」

 

毛布の裾を広げて、迅が貴方をその空いた空間に招き入れながら言う。

 

「それそっちが言う言葉?」

 

貴方はそこに喜んで飛び込んで、ぬくぬくとした毛布に包まった。

 

星が綺麗な夜だった。大小と光る粒が、まるでお菓子の上の、小さなアラザンに見えるぐらい。そして人が死ぬ前とは、思えないぐらい。

 

貴方は真横で、同じく上を向いていた迅に寄りかかった。迅はびくともせずに貴方を受け止めた。そして貴方はそれに気分を良くして、頭を迅の肩にもたれつつ言った。

 

「今だけは、未来、予知しなくてもいい?」

「いいよ。」

 

間髪入れずに迅は答えた。その言葉に安心して貴方は目を閉じる。しかし未来は予知しなくとも、貴方のSEは常にどこか遠くの景色を映し出している。トリガー起動の音、殺戮の音、悲鳴の音。

そうして貴方はしばらく微睡んだ後、交代のつもりで迅に言った。

 

「今だけは、未来、視なくてもいいよ。」

 

それに迅は何故か、驚いて貴方を見た。その大きく見開かれた目には、屋上を照らす星が何個か映り込んでいたぐらい。

貴方は逆にそんな迅に驚いて、笑ってしまう。

 

「もしかして、私だけ楽しようとしてるって思った?私たち、一緒の能力持っているんだから、一緒に分け合おうよ。」

 

重荷も、辛さも、半分こ。

貴方はまるで幼い子供に言い聞かせるようにひっそりと囁いた。それに迅は自嘲気味に笑って、言葉を返す。

 

「おれが、その言葉を信用できなくても?」

 

貴方は笑い飛ばした。

 

「じゃあ、迅はずっと未来を見てて。私が未来につながる今を動かすから。そうすれば、未来は無事で平穏でしょ?」

 

貴方の目には幾重にも重なった惑星の軌道が見えた。ちょうど地球ととある惑星が繋がる日。そしてまた別の惑星と繋がる日。そしてまた──

数えようとすればキリがない。しかし貴方には終わりが見えていた。それは途方もない選択の上でようやく辿り着けるエンディング。未来への最短距離。

 

「私がいれば、迅は必要ない。」

 

貴方は真冬の空の澄んだ空気の下で、それを言った。その選んだ言葉は刺々しかったが、声は誰よりも優しかった。きっと貴方に対する迅の声よりも。

 

「…おれがいない間、みんなを見ててくれる?」

「もちろん。」

 

迅の問いかけは平坦で、けれどそれが何故か貴方は泣きそうな声のようだと思った。

 

「…苦しくはない?」

「迅よりは。」

 

迅は貴方のその言葉を聞いて、ようやく目を閉じて貴方に寄りかかった。

貴方はその重さにびっくりして少しよろけたが、隣から笑い声が聞こえたので、すかさず肘打ちしようとした。

 

その腕を軽々と避けながら迅は言う。

 

「…おれ、今が一番嬉しいかもしれない。」

 

その顔は満面の笑みではなかったけれど、貴方が出会った中で1番、迅らしかった。

 

そうして月が傾いていく。二人の体温で温まった毛布と、微笑みを乗せて。

 

 

そして未来が流れていく。

 

 

ある日の夕飯、貴方はハンバーグを食べた。

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