[鳩原がトリガーを盗み出してから1日が経った。貴方はこの壁に囲まれて、マジックミラーから常に誰かが自分を監視している気配を感じながら、ゆっくりと伸びをする。
どうやら貴方のSEでは無事に鳩原は無事にボーダーから脱出できたようだった。隠密に優れた風間隊のみが追っていたこともあるだろう。風間隊少数では雨取麟児とその協力者達を追いかけるのは無理だ。
貴方は衣服を整えて、その時が来るのを待った。]
…
うん、ちょっと待ってね。なんで?
いや、だってやばい量のトリガー盗んだよ?なんで風間隊だけ?ちょっと待って、何が起こってる?
[やがて貴方は外界から声をかけられる。
「いやぁ、お疲れ様。今回のは見応えがあったよ。」
「そうでしょう?」
迅だ。どうやら迅が貴方の尋問を受け持つらしい。
「じゃあ最初に聞くけど鳩原未来のこと、唆した?」
「全部無駄な質問だね。」
貴方はSEで迅の横に上層部がいるのも見た。鬼怒田は拳を震えながら握っていて、城戸司令は微動だにせずにこちらの様子を見ている。そしてついでに風間隊の人間が1人、心拍数に異常なし、と報告をしていた。大義なことだ。]
[「おれはもうちょっと君が粘ると思ってたよ。」
「粘れたよ。でも粘らなかった。」
貴方はつまらなくなって、部屋の天井を見上げる。この部屋は貴方のSEにはあまりにも無意味すぎる。
「それはまた、随分素直で。」
「未来、逃げたでしょ。」
迅は答えない。
「ずっと見てたから、わかる。」
沈黙。
「なんであの人を使った?」
「使ってない。…選ばせただけ。未来は元々近界に行きたかった。私はその未来をちょっと押した。」
「トリガー盗ませて?」
「ボーダーってさぁ、平和すぎるの。」
「それ、悪いこと?」
「悪いよ。」
貴方が髪をかきあげた。
「近界民は容赦なく人を攫う、街を壊す、人を殺す。なのにボーダーは防衛しかしない。甘いよね。」
「それが組織だからね。」
「だから混乱させた。」
貴方と迅の会話は淀みない。まるで鏡越しの自分と対話しているかのように。
「鳩原未来によって?」
「うん。」
「内部が揺れれば戦争が早く起きるから。」
「戦争がしたいんだ。」
「違う。終わらせたい。」
沈黙。
迅が少しだけ目を伏せた。
「…やっぱり止めるべきだったかな。」
「でも止めなかった。」
迅は続きを答えない。]
コタエロヨォオオオオ!!!!
待て、何故こんなに内部が揺れてないか。それは迅の未来視があるからじゃん!!!!やっぱりこっちのこと読まれてた!?どこで読まれる要素があった!?
[「ねぇ、なんか仕組んだでしょ。」
貴方は手元で垂れている髪を遊びながらSEを使う。ボーダー内では普段通りの日常が流れていた。
「トリガーが大量に盗まれたのにあまりにもボーダーが平然としてる。それこそ動いてるのはそこのSE持ちの部隊ぐらい。」
「あぁ、それなら簡単。トリガーの中にダミーを作らせて、混ぜたんだよ。」
貴方の手が止まる。
ボーダーのエンジニア室にはかなり入り浸っていた。そしてそれとなく本部のチーフエンジニアの様子も伺っていた。ダミーを作れた隙は無いはずだ。貴方は思考を巡らせる。
「玉狛のエンジニアだよ。それも君が大っ嫌いな近界民のね。」
「…!?ミカエル・クローニン、!?近界民だったの!?」
心拍数上昇、と菊地原の声が告げた。
「そう、君は大っ嫌いな近界民に一泡吹かせられたってわけ。いやぁ盗む時、しっかりと様子を見られなくて良かったよ。」
「そのための犬飼か……!!!」
貴方の頭に小賢しい隊員が思い浮かんだ。貴方は思考を巡らせる。なぜ自分はSEを使って、もっと入念に見ていなかったのか。]
いやこれはノーカンだろ!!!!!ノーカン!!!!誰がゲーム外でそんなことしてるなんて思うかよ!!!クソゲーじゃねぇか!!!!!ミカエル・クローニンって誰だよ!!!!知るか!!!!!
(水を飲む)
うん。迅の嫌なところはプレイアブルはデータに蓄積された情報に直接働きかけるしかないのに、こいつはデータから幾らでも人を引っ張ってきて働きかけられる。もう嫌になってきたわ。一回女子のリコーダー盗んできていい?
[迅が冷徹な声を上げる。
「あの人、死ぬかもね。戦地のど真ん中で、使えもしれないトリガーを握って。」
貴方はそれに対して返答する。
「私の計画、ここまで邪魔するんだ。ダミートリガーまで混ぜて。」
「今ならトリガー識別情報、渡せるけどいる?」
「もう無理だよ。鳩原と私は繋がっていない。近界に渡ったあの子と連絡はできない。」
「へぇ、そこは本当なんだ。首謀者との繋がりはなし、と。」
誰かの溜息が聞こえた。それは安堵か、はたまた徒労に終わったことに対する苛立ちか。
尋問室の空気が、少しだけ緩む。
だが、目の前の迅悠一だけはまだ動かない。
「…なるほどね。」
「連絡手段なし。単独犯。鳩原とはもう関係がない。随分綺麗な筋書きだ。」
「事実だよ。」
「そう?」
迅は尋問室の部屋のロックを解除した。小さな電子音が響いて、貴方の目の前にその人は立つ。
「じゃあさ、なんで君はそこまで落ち着いている?」
貴方は沈黙を選んだ。
「普通さ、仲間が戦地のど真ん中に丸腰で放り出されるとしたら、もうちょっと焦るでしょ。」
貴方の密かな苛立ちを感じたのだろうか。
「……ほらね。」
貴方はゆっくりと顔を迅の方向に向けた。
「何が言いたいの。」
「簡単。鳩原未来は今、計画の途中だ。だから君は焦らない。」
部屋の隅で誰かが息を呑む。迅は淡々と告げる。
「つまりまだ終わっていない。」
トリガーの識別データ、それが入った端末を手にして。
「君が本当に鳩原未来と切れているなら、この情報、君に必要ないよね。でももし、…ほんの少しでも君が関わっているなら。」
「鳩原未来の命は、今おれが握ってる。」
部屋の空気が凍った。
「だからさ次の一手、よく考えて。お互い見えすぎちゃうんだから。」
沈黙。
「…迅ってさ、ほんと怖いよね。」
「よく言われる。」
迅は軽く肩をすくめた。そして静かに付け足す。
「でもさ」
迅の声が少し低くなった。
「君ほどじゃないよ。鳩原を戦場に送り込んだ張本人さん。」]
(スマブラでいう)GAME SET
もうどうでもいいや〜。(ペロペロ)
[尋問室の空気はまだ張り詰めたままだった。両者の間にはトリガー識別データの入った端末。それを軽く指で叩きながら、迅は貴方を見ている。
「…迅。」
やがて、貴方は口を開いた。
「取引をしよう。」
「取引?」
「そう、鳩原未来の命と、私の計画。」
貴方は端末を顎で示す。
「それを渡して。そうしたら私は喋る。」
迅の眉が僅かに動く。
「計画、全部。近界民撲滅、戦争、ボーダー内部の崩壊。全部。」
迅はしばらく動かなかった。額に指を添えて、考え込んで黙る。そして少女の顔を見ている。やがて、小さな息を吐いた。
「鳩原未来の命と引き換えに、平和か。」
「悪い取引?」
「いや、…悪くない。でもさ」
迅が肩をすくめる。
「それって君がわざと見せる
貴方は首を振る。
「疑いすぎ。」
「未来視同士の取引なんて、疑ってなんぼでしょ。」
迅は端末を静かに持って貴方に歩み寄る。
「…でも一つだけ確かなことがある。君は、鳩原未来を死なせたくない。
君が鳩原未来を利用しているのは見えていた。だけど君もおれも鳩原未来が死ぬ結末は、見ていない。」
迅が笑った。
「いいよ、取引成立ってことにしよう。」
端末が貴方に投げ渡される。そしてそれを受け取った瞬間、尋問室の空気は僅かに揺れた。貴方は迷わず画面を操作する。指先はこの前来ていたメールを思い出して、アドレスを打ち込む。
──雨取麟児
送信先を確認して、トリガー識別情報を添付する。送信。小さな電子音。それだけで何人かが息を呑んだ。迅が見ている。
「…へぇ。そっちに送ったんだ。」
「そう。」
「おれが知らない人間だ。」
「こっちにも色々あるってこと。」
「妬けるねぇ。」
迅は送信先を見てから、貴方の空いているほうの手をとった。手と手が絡み合って引っ付く。貴方はされるがままにした。迅が興味深そうに貴方の指筋をなぞり、骨の形を確かめる。
「けどいつか、迅は私の計画に感謝することになるよ。」
急な言葉で、迅に握られていた貴方の手がギュッと上から締め付けられた。
「なにが?面白いから言ってみていいよ。」
「半年後、玉狛に面白い人間が加入する。今回の密航の件がきっかけでね。」
貴方は雨取を通して知り合った、幼い少年をまだ覚えている。
迅の手が数秒間だけ止まった。尋問室の中の誰も、その続きの名前を知らない。だから迅は探りを入れる。
「へぇ、よりによって玉狛に?」
「そう。」
迅は貴方の指の関節をなぞる。仕草だけで見るとまるで恋人かのようだった。
「新人?」
「うん。」
「強いの?」
貴方は少し考える素振りを見せた後、すぐに答える。
「弱い。」
「……弱い?」
「それもびっくりするぐらい。」
迅の眉がほんの少し上がった。
「それ面白い?」
貴方は小さく笑う。
「うん。」
「なんで?」
「その子ね、戦えないし、トリオンの量も多くない。さらに弱い。…それでも。」
「人を助けたいから、自分がそうすべきだと思ったから、入るんだって。」
沈黙。
「自分が一番弱いのに、自分より強い人間ばかりの場所に、それでも入る。しかも未来なんて一個も見えないのに。」
迅の目が細まる。
「…なるほど?」
迅は貴方の手を離さずに、ぽつりと言う。
「それ、確かに面白いね。」
「でしょ?」
「それで?その子の名前は?」
「覚えてない。」
嘘だ。それは迅もわかっていた。だが何も言わない。
「迅はその子から目が離せなくなるよ。なんてったってボーダーの未来をまた違った方向に変えてくれるから。」
「…おれが?」
「うん。その時になればわかる。悔しかったら自分で探してみなよ。」
貴方は笑った。迅にされるがままだった手に、少し力を込めて。ぎゅっと絡まった指が2人の体格差を鮮明にする。
「それが今回の私ができる、最後の仕返しってことかな。」
貴方は目を閉じた。]
さてもうRTA的に言えば全てがパァですが、どうするか。ここからリカバリーができるか否か。リセをするか否か。どうしましょうかねぇ〜。