だからウマ娘はエロ禁止だっつってんだろ!!   作:散髪どっこいしょ野郎

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本音を言うと十話でキリよく終わらせたかったですが執筆欲を抑えられなかったので書きました














初めての尊死

「トレーナーくん、今日飲み行かない?」

 

「……先輩ー……」

 

「ははっ、ごめんごめん。それで、どうする?」

 

「……家内を待たせているので、遠慮させていただきます」

 

「スティルインラブちゃんか。いやーホントにラブラブなんだね」

 

「……せーんーぱーいー……」

 

 

 事の始まりはついこの前。

 

 とあるテレビ番組の『あの人は今』というコーナーにて、スティルが取り沙汰されたのだ。

 

 トリプルティアラウマ娘ということで多くのファンを獲得していたスティル。それ故に集客力も高く、視聴率はかなり伸びただとか。

 

 で、放映前、実際に取材が来たのだが……。

 

 スティルが思った以上に俺を好いてくれていた。いやもちろんいいことなんだが、それにしたってあんなにも愛を語られるとは思わなかった。

 

 取材後、放送されたテレビを見ながらスティルは照れくさそうに頬を紅潮させ、対する俺は真っ赤になって画面を直視することすらできなかった。

 

 そんなこんなで俺たちは一躍時の人に。ウマ娘とトレーナー間に於ける屈指のおしどり夫婦として結構長い間生暖かい視線を投げかけられるようになったのだった*1

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「ただいまー」

 

「お帰りなさいませ、トレーナーさん」

 

 

 今日は仕事が早く終わったので、日が沈む前に帰れた。即ち、スティルとの時間を増やせる。

 

 律儀に出迎えてくれた彼女はちょうど夕飯を作ってたのか割烹着を着ていた。ヤバい超似合ってるめちゃ萌えるんですけど。

 

 

「もうすぐで御夕飯ができます。先にシャワーをどうぞ」

 

「ん、ありがとな」

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「「いただきます」」

 

 

 ……平和だ。食器の触れあう音と、咀嚼音。絵に描いたような平穏がそこにあった。

 

 

「あれ?このコロッケ……あそこの商店街のやつだよな」

 

「肉屋に立ち寄った際、例のテレビ番組を見たとのことで、トレーナーさんとご一緒にどうぞとサービスしていただき……」

 

「……あー」

 

 

 例の番組は一応録画してあるとはいえ、視聴することはあまり無い。見返しできるほど俺の肝は据わってないのだ。

 

 

「もぐもぐ……そういえばだけどさ、『あの件』はどうするんだ?」

 

「考えてはいますが……私の影の薄さでは営業に支障をきたすかと……」

 

「あー……」

 

 

 『あの件』とは、今俺たちが住んでいる家を改造してスイーツショップを開くという案だ。スティルが作る甘味はその道でも通用するだろうと、親バカならぬ夫バカな部分が顔を出した故に、提案した。スティルも満更でもないような様子だったし、ここは冒険してみても……と考えていたが課題が存在した。

 

 

「うーん……人生長いんだし俺が定年を迎えた後にオープンするか?あーでもそれまで健康でいられる確証もないしな……」

 

「……」

 

 

 中々に悩ましいが金はある。スティルがGⅠで勝ちまくった分と、俺がトレーナーでいた分の報酬を合わせれば新事業にも手を出せる。

 

 

「あ、それなら誰か雇うか?流石に一人で切り盛りするのは大変だろうし」

 

「伝手はありますか?一口に雇うと言ってもリスクが介在しますが」

 

「うーん、キミと俺の知り合いに暇そうな人いたっけかなぁ……」

 

「……私の眷属の方を頼ってみましょうか?」

 

「……よし!決めたからにゃ行動だ!」

 

 

 というわけであれよあれよという間に自宅を改築。そこまで派手さはなく小さな店舗であるが、彼女の店が出来上がっていった。

 

 

▫▫▫▫▫(数年後)

 

 

「お二人ともありがとうございました!お土産までくださって……!」

 

「貴方はいつも真面目に働いてくださってますから。正当な報酬です」

 

「部外者の俺から見てもちゃんと仕事してくれてるしな。こちらこそありがとう」

 

 

 起業から数年経ち、事業は波に乗っていた。小規模でありながらもスティルの菓子に魅せられる人々は増していき、今や大人気店となっていた。彼女の眷属もサボらず働いてくれているし、目前の問題は一切無かった。

 

 仕事の都合上眷属さんは閉店一時間前に引き上げてしまうため、そこからはスティルが一人で営業する。ちなみに俺は今日たまたま休みだったのでちょっとした手伝いをしていた。

 

 そんな中、学生時代から交流が増えたウマ娘が顔を出してきた。

 

 

「……まだ、空いてる?」

 

「あっ、アルヴさん。大丈夫ですよ。いらっしゃいませ」

 

「おーアルヴー!いらっしゃい!」

 

 

 アドマイヤグルーヴ。スティルのライバルとして張り合ってきた子だ。数年前から何かとつけてスティルの前に顔を出す。友人ができてくれるのは俺としても嬉しかった。

 

 

「オススメはあるかしら」

 

「今日はクランベリーのタルトが上手に焼けました。よろしければ」

 

「じゃあ、それで」

 

 

 この店はカフェではないためコーヒーと共にほっと一息とはできないが、元々寡黙なタイプのアルヴとは相性が良かった。

 

 

「スティルさん。貴方、明日休みよね」

 

「?はい。そうですが……」

 

「……その、一緒に出かけない?貴方の話も聞きたいし」

 

「トレーナーさん、よろしいですか?」

 

「キミがしたいようにしてくれ。俺はそれが一番だ」

 

 

 氷は既に溶けている。不格好でも培った親愛が、スティルとアルヴの間に存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

 

「ここなら話ができそうね」

 

 

 私とアルヴさんは古びたカフェに足を運んでいた。コーヒーを注文したや否や彼女は意を決したように口を開いた。

 

 

「その……最近彼とはどうなの」

 

「彼……?」

 

「貴方のトレーナーさんと、よ」

 

 

 少しばかり困惑の色が残る。アルヴさんは何故いつも私とトレーナーさんの話を聞きたがるのでしょう。

 

 

「デジタルさんに教わって分かったの。私にとって、貴方たちは″推し″なんだって。……だから、もっと貴方たちのことを知りたい。嫌なら応えなくてもいいから」

 

「……ふふ。そうですね、最近の彼は──」

 

 

 愛を語れる。それが、こんなにも嬉しいことだなんて知らなかった。

 

 それからもアルヴさんと度々交流を重ねるようになった。時には二人でジョギングしたり、彼について語り合ったりするように。

 

 ……トレーナーさんの傍以外では幸せを感じられない、筈だった。けれど、朋輩との関わりが私に熱を残すことになるなんて、考えもしなかった。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 その日はお店もトレーナーさんのお仕事も休みだった。彼との時間が増えるのは素直に嬉しく思う。

 

 

「ふぁあ……あ゛ーヤバい。最近残業続きだったから眠気が……」

 

「でしたら、こうしましょうか」

 

「んー……?──お、おお」

 

 

 彼を寝室にお連れし、同時にベッドへ横たわる。添い寝、のつもりだった。

 

 

「……あー、すっげえドキドキする……ってわーっ!?」

 

「ふふ、本当ですね」

 

 

 彼の胸に耳を当てる。お言葉通り、彼の心臓は忙しなく生の証を発していた。

 

 

「ぐ、ご、ががが……!」

 

「?」

 

 

 硬直させてしまった、と罪の意識が過るも止められない。もっと、もっと貴方を感じたい。

 

 

「今日はこのまま、貴方を感じさせてください」

 

「……ふーー……。覚悟しとけよ」

 

 

 それからは夕食時まで添い寝をしていた。……けれど、私もトレーナーさんも緊張で眠れなかった。彼を欲する『恋』も、愛おしく思う『愛』も、際限なく育っていく。

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナーさん……好き……大好き……」

 

「……」

 

 

 ……俺が何したってんだ。

 

 ブレーキが完全にぶっ壊れたのか、ハグの頻度は毎日三回──出勤前に一回、帰宅時に一回、眠る一時間前に一回──と、今までと比べてめちゃくちゃに増えていた。

 

 嬉しいよ。そりゃ嬉しいよ。こんな美少女に想ってもらえて、抱擁まで交わせるのだから。

 

 でもヤバい。何がヤバいって、俺の『そういう衝動』が爆発しかけるということだ。

 

 彼女は恐らく拒まない。これは確信に近い。だけどあの罪悪感に駆られるぐらいなら我慢した方が何倍もいい。

 

 しかし行き場を無くした欲望はどうしたって発散できず、自分の獣を押し殺す日々が続いていた──のだが、最近ようやく消化の仕方が分かってきた。

 

 

「愛してます……トレーナーさん……」

 

「……」

 

 

 消化の方法。それは、

 

 

「……キミ、やっぱり可愛いな」

 

「~~~……ッ!?」

 

「あ゛ー、マジ可愛いぃ……ヒュッ」

 

「と、トレーナーさん?」

 

 

 アグネスデジタルのように尊死するという手段だった。こうでもしないと俺は自分を律せられない。逆を言えばこうすれば抑えられる。

 

 

「もぅマヂ無理ス〒″ィ儿尊す(‡″……」

 

「……ッ……」

 

 

 あー可愛いほんっと可愛いマジで可愛いなんなんだこの生命体は。今回ばかりはあの邪神に感謝せねば。

 

 あー、生きてて良かったぁ……。

 

 

▫▫▫▫▫(時はかなり遡り、結婚式当日。)

 

 

「あばばばば……」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 

 今日は非常にめでたい日。俺とスティルの結婚式だ。

 

 トゥインクル・シリーズの取材陣には普通に応対できたのに、結婚式ともなると緊張が段違いだった。

 

 で、何よりも、ウェディングドレス姿のスティルが良すぎてマジ死にそう。好きの気持ちが溢れすぎて脳が捻れそうだ。

 

 俺もタキシードに着替えたが彼女の放つ輝きの前ではありんこ一匹程度のものだった。

 

 

「じゃじゃじゃ、じゃあまた後で、スティル」

 

「──はい」

 

 

 こうして俺たちは一旦別れ、俺は一足先に会場でスティルを待つことになった。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

(……アルヴ大丈夫か……?)

 

 

 思わず口走りかけた程にアルヴの様子が変……いや変っていうか……

 

 

「……おめでとう、二人とも……本当に……」

 

 

 めっちゃ泣いてる。いつもの無表情なのに涙だけがありえないレベルで流れてる。あ、周囲に気づかれた。

 

 ……っと、俺が見るべきは一人だけだ。一生涯かけて幸せにしたい、大切な存在。

 

 

「……スティル……」

 

 

 バージンロードを父親と歩いている。そして、俺の隣に辿り着いた。

 

 

「……綺麗だ」

 

「……ありがとう、ございます」

 

 

 俺もスティルも感涙に咽んでいた。きっと今の俺たちは、世界で一番幸せな存在だ。

 

 

「もう離しません。ずっと、ずうっと、一緒ですよ。トレーナーさん」

 

「ああ。──愛してる」

 

 

 祝福が俺たちを包み込む。俺は永遠を掴んだ。そしてもう二度と、離さない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある休日。俺はウォークマンに入れた曲を聴いていた。

 

 何を流しているのか。それはスティルが現役時代に歌ってきた数々の楽曲。『うまぴょい伝説』や『めにしゅき♡ラッシュっしゅ!』等々、可愛らしい歌々で最高の睡眠をキメようとしていたのだ。

 

 うーん……眠気が程よく襲ってくる。ああ……これなら良い眠りにつけそうだ……。

 

 

I could not look back,

you'd gone away from me

I felt my heart ache

I was afraid of

following you

 

When I had looked at

the shadows on the wall

I started running

into the night

to find the truth in me

 

 

 ……いやまてよ……そういえばおまけの一曲があったような……この英語パート……確か……

 

 

紅だああああああ!!!(シャンシャンシャンシャンドコドコドコドコ)

 

 

「ぎゃああああああっ!?」

 

 

 俺はベッドから転げ落ちた。

*1
ちなみにリアルのオシドリはサクッと夫婦関係が切れる

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