十代好きの私が天上院明日香に転生したのはいいけど、この世界のカードパワーが明らかにインフレしている!   作:スパークリング

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初期万丈目のヘルデッキでどうやって十代に立ち向かえばいいんだ……!?

いいや! 限界だ! わしは現代パワーに逃げるね!


Turn-8 「AtoZ」

「おっ? オレが先攻だぜ! オレのターン、ドロー!」

 

 入学試験デュエルでの大どんでん返しを披露した上に、女王である天上院明日香に告白を受けた男である遊城十代。

 中等部では男子ナンバーワンの成績を誇るエリートであり、一年生最強の男と評されるオベリスク・ブルーの鬼才、万丈目準。

 

 色々な意味で注目が集まるこのふたりのマッチアップ。先手を取ったのは十代の方であった。

 

(これはラッキーだ。やつのデッキが真価を発揮するのは後攻。先攻でできることなんてたかが知れている)

 

 先手を取ってドローした十代を見て万丈目は笑みを深める。この日のために、十代が操る『E・HERO』についてしっかり勉強しておいたのだ。制圧系モンスターが少なく先攻展開がそこまで強くない代わりに、攻撃性能に特化している後攻での捲り性能がピカイチのデッキ、と万丈目は分析している。だから、十代が先攻になったことでほんの少しであるが自分に分があると考えたのだ。

 

(そんな極端なデッキを自信満々に使う辺り、多少の成長はしていてもやはり所詮はオシリス・レッドのドロップアウトか)

 

 自分のデッキは先攻でも後攻でも難なくこなせる。そういう風に工夫しているし、そう動けるテーマを厳選してデッキを構築しているのだ。今回のデッキだって、愛しの明日香を落とすために必死こいてパックを買いあさり、ようやく満足できる形に仕上げた自信作。そして今日この日発売されたパックからも粒揃いなカードたちを調達でき、綺麗に纏め上げることが出来た。

 負けるわけがない、絶対に勝つ。そう、万丈目はさらに自分に言い聞かせ、奮い立てる。

 

(……お。このカードは)

 

 一方、先攻を取った十代はドローしたカード――『クリボーを呼ぶ笛』のカードを見て温かい気持ちになっていた。

 

 ひょんな出来事があって偶然入手した『ハネクリボー』のカード。そのカードには精霊が宿っており、十代にはその声が、そしてその姿が見えていた。だから気に入って、相棒と呼んでデッキに入れていたのは良いものの、あまり自分のデッキとのシナジーは乏しく持て余し気味だった。

 しかし今日発売されたデュエルモンスターズの新弾にて相性のいいカードを何枚か入手し、デッキに組み込んだ。そして早速引いたのだ。

 

(……へへっ、そうか。そうだよな、おまえだって活躍したいよな! いいぜ、相棒! 一緒に戦おうぜ!)

『クリッ!』

 

 十代には聞こえた。ハネクリボーの精霊の気合を入れた返事を。

 そして久々の先攻だ。十代もまた気合を入れて展開する。次のターンが来るように、念入りに妨害工作を施す。

 

「まずはこのカードだ! 魔法カード『E-エマージェンシーコール』を発動! デッキから『E・HERO』モンスターを手札に加える! オレは『E・HERO』カードとして扱う『ハネクリボーLV6』を手札に加えるぜ!」

 

「なに、『ハネクリボー』だと?」

 

「そして『融合』発動! 『HERO』モンスターである『ハネクリボーLV6』と水属性モンスターである『E・HEROリキッドマン』を融合!

 

 ――現れろ!

 

 『E・HEROアブソルートZero』! 

 

 守備表示だ!」

 

(ハネクリボーとかいうよくわからんやつはともかく、アブソルートZeroは少し面倒だな。アレはフィールドから離れるとオレのモンスターをすべて破壊する厄介な効果を持っている)

 

 十代のデッキの数少ない妨害モンスターである白きHEROに万丈目は少し顔をしかめる。

 

「『HERO』融合モンスターの素材となったリキッドマンの効果! 2枚ドローしてその後に手札を1枚捨てる!

 

 そして今手札から捨てた『E・HEROシャドー・ミスト』の効果発動! デッキからシャドー・ミスト以外の『HERO』モンスターを手札に加える! プリズマーを手札に加え、そのまま通常召喚して効果発動! サンダー・ジャイアントを見せてその融合素材モンスターであるスパークマンを墓地に送り、プリズマーはエンドフェイズまでスパークマンとして扱う!

 

 仕上げだぜ!

 

 速攻魔法『クリボーを呼ぶ笛』を発動!

 

 デッキから『クリボー』か『ハネクリボー』を手札に加えるか特殊召喚できる! 『ハネクリボー』を守備表示で特殊召喚だ!」

 

 ――なんだあのモンスターは?

 

 仕上げと言うからにはどんなモンスターが出てくるのかと思いきや、攻撃力300の、しかも破壊されたターン中の戦闘ダメージを0にするだけの……悪く言ってしまえば雑魚モンスターに万丈目は拍子抜けする。……が。

 

(いや待て! 確かやつの墓地には――)

 

「そしてこの『ハネクリボー』をゲームから除外して、墓地のこのモンスターを特殊召喚!

 

 ――出番だぜ相棒!

 

 『ハネクリボーLV6』!! 」

 

 気付いた時には、弱小モンスターだった『ハネクリボー』が進化していた。十代のフェイバリットモンスターのフレイム・ウィングマンの右腕と翼を身に纏う、愛らしいながらも頼もしい姿となって。

 

「『ハネクリボーLV6』は手札・フィールド・墓地の『ハネクリボー』か『E・HERO』融合モンスター1体を除外して手札か墓地から特殊召喚できる!

 

 そして、相手がモンスターで攻撃した場合かフィールドでモンスター効果を使った場合、こいつを生贄にすればそのモンスターを破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを与えるぜ!」

 

「妨害モンスターか……!」

 

 厄介な! 万丈目は毒づいた。

 効果は無効にされないものの、破壊と攻撃力分のダメージを与える能力は流石に強い。しかもターンを返せばチェーンブロックを組まずに復活してくるのだ。面倒くさいことこの上ない。4000のライフポイントが最悪この『ハネクリボーLV6』だけで根こそぎ持っていかれる可能性すらある。

 

「カードを2枚セット! これでオレのターンは終わりだぜ!」

 

 バカかオレはと、万丈目は自分で自分を殴りたくなるような気持ちになった。

 なにが『E・HERO』は先攻を苦手としているだバカ者が。アブソルートZeroに加えて『ハネクリボーLV6』というモンスターに対して滅法厳しい妨害に、2枚の正体不明のリバースカードのおまけつきだ。普通に全然強いではないか。

 

(遊城十代、オレはまだ貴様を舐めていた……。だがもう目が覚めたぞ……!)

 

 思えばやつは、女王の天上院明日香が惚れるほどの腕を持つデュエリストなのだぞ。そんなやつに舐めた態度でかかって勝てるわけがないだろうが。

 なおさら後攻でよかったと万丈目は思い直す。さっきまでの態度で先攻展開していたのなら、きっと自分はどこかで甘い選択をしていただろう。そしてそれが原因で敗北していたに違いない。

 クロノスとやつのデュエルを思い返してみろ。たった一回判断ミスをしただけで勝敗が決するギリギリのあのデュエルを。十代の腕は本物なのだ。でなければ、後攻を譲られたとはいえ格上のクロノスに勝てるわけがない。

 

 ならば今、自分が相手をしているのは実技担当最高責任者であるクロノスと同レベルのバケモノだ。そして……かつて手も足も出ずに敗北したアカデミアの女王(天上院明日香)を相手していると考えた方がいい。

 

「オレのターン、ドローだ!」

 

 戒めた万丈目は気合を入れてカードを引き、手札を確認して思案する。

 万丈目にとって一番の問題は『ハネクリボーLV6』。あれをどうにかしないといけない。だがこの手札なら――

 

「オレはフィールド魔法『ユニオン格納庫』を発動! そして発動時の処理時、デッキから機械族・光属性のユニオンモンスター1体を手札に加えられる!」

 

「! ユニオンデッキか! 珍しいカードを使うんだなオマエ!」

 

「珍しいだけじゃないぞ、強いんだ! 通るのならばデッキから『Y-ドラゴン・ヘッド』を手札に加え、そのまま通常召喚! そしてこの瞬間『ユニオン格納庫』の効果発動!

 

 1ターンに1度、機械族・光属性のユニオンモンスターが場に出たとき、そのモンスターに装備可能で名前の異なる機械族・光属性のユニオンモンスター1体を、このターン特殊召喚できない縛りを付けた状態でデッキから装備する! 『Y-ドラゴン・ヘッド』に『Y-ドラゴン・イアヘッド』を装備!

 

 ここまでで何かあるか十代!」

 

「いいやないぜ、続けな!」

 

「ならば永続魔法『X・Y・Zコンバイン』を発動! 『ユニオン格納庫』が通ったんだ、これも通るだろう!」

 

「通るぜ!」

 

「だったらオレのフィールドの『Y-ドラゴン・ヘッド』とそれに装備している『Y-ドラゴン・イアヘッド』をゲームから除外し、『ユニオン・コントローラー』をEXデッキから特殊召喚!

 

 そして特殊召喚した『ユニオン・コントローラー』の効果発動! 効果テキストに『ユニオンモンスター』が記載されている魔法・罠カード1枚をデッキから手札に加える!

 

 さらにその効果にチェーンして『X・Y・Zコンバイン』の効果を発動! オレの機械族・光属性のユニオンモンスターが除外されたことによって、デッキから『X-ヘッド・キャノン』『Y-ドラゴン・ヘッド』『Z-メタル・キャタピラー』のどれかを特殊召喚できる!」

 

「! チェーンで『ユニオン・コントローラー』を『ハネクリボーLV6』から守ったか!」

 

「そうだ! チェーンするカードがないようなら逆順処理だ!

 オレはデッキから『Z-メタル・キャタピラー』を攻撃表示で特殊召喚し、『ユニオン・アクティベーション』を手札に加える!

 

 そして今手札に加えた魔法カード『ユニオン・アクティベーション』を発動! オレのデッキから機械族・光属性の通常モンスターの『X-ヘッド・キャノン』を墓地に送り、『X-ヘッド・キャノン』と同じ攻撃力を持つ他の名前の機械族・光属性モンスター1体を手札に加える! 攻撃力1800の『X-クロス・キャノン』を手札に!」

 

 着実に必要なカードを揃えていくと同時に十代のリバースカードについて万丈目は考察する。

 

 さっきから手札に加えたり墓地に送ったりする動作を全てスルーしているということは、それらを抑制する永続カードじゃない。魔法カードを無効にするカウンター罠でもなさそうだ。『サイクロン』のような魔法・罠カードを破壊するカードは論外。

 

 ――だとしたらブラフか、攻撃反応系の罠か、かなりピンポイントな妨害か、それとも……なにかを待っているのか……。なんにしてもわかりやすい妨害でないのは確かでかなり不気味だが、それでも前に進むのみ!

 

「オレのフィールドに機械族・光属性のユニオンモンスターである『Z-メタル・キャタピラー』が存在することにより、手札の『X-クロス・キャノン』の効果を発動して特殊召喚する!

 

 そして『X-クロス・キャノン』の起動効果を発動! このカードに装備可能な機械族・光属性のユニオンモンスター1体をその効果による装備魔法扱いでデッキからこのカードに装備する!」

 

「! さすがにこのタイミングだよな!

 

 オレは『ハネクリボーLV6』を生贄に捧げて効果発動! 効果を発動した万丈目の『X-クロス・キャノン』を破壊してその攻撃力分のダメージを与える!」

 

 ――ここだ!

 

「この瞬間を待っていた! オレは速攻魔法発動!

 

 無許可の再奇動(メイルファクターズ・コマンド)』! 」

 

「!? なんだ、そのカードは!」

 

「知らないのならその目見開き胸に刻め!

 

 『無許可の再奇動(メイルファクターズ・コマンド)』はオレのフィールドの機械族モンスター1体を対象に、そのモンスターに装備可能な機械族のユニオンモンスター1体を、このターン特殊召喚できない縛りを付けて手札かデッキからそのモンスターに装備する!

 

 逆順処理だ!

 

 オレはデッキから『B-バスター・ドレイク』を『X-クロス・キャノン』に装備する!」

 

「それならオレの『ハネクリボーLV6』の効果で『X-クロス・キャノン』を破壊し、元々の攻撃力の1800ポイントのダメージを与えるぜ!」

 

「無駄だ十代! 『B-バスター・ドレイク』には一部のユニオンモンスター特有の、装備先のモンスターが破壊される場合に代わりに破壊される強制能力を持つ! よって『X-クロス・キャノン』は『ハネクリボーLV6』の破壊効果を免れる!」

 

「! そうか、そんな躱し方があったのか!」

 

「『X-クロス・キャノン』本体の破壊に失敗しているからダメージも飛んでくることはない! これで貫通したぞ! 『X-クロス・キャノン』の効果により、デッキから『A-アサルト・コア』を『X-クロス・キャノン』に装備する!」

 

 一番厄介に感じていた妨害を万丈目は速攻魔法とユニオンモンスターの特性を活かして躱しつつ展開を伸ばした。残る十代の見えている妨害はアブソルートZeroのみ。効果は確かに強力だが意図して触らなければ害はない。沈黙を貫いている2枚のリバースカードは不気味ではあるが、ここまで動いて使ってこないのならもう考えるだけ無駄だ。

 

 ――行けるところまで行く。なにもなければ負けてしまうぞドロップアウト!

 

「そしてこの効果処理後、さっき身代わりになって破壊された『B-バスター・ドレイク』の効果発動! フィールドから墓地に送られた場合、デッキからユニオンモンスター1体を手札に加える! 『C-クラッシュ・ワイバーン』を手札に!

 

 さらに『ユニオン・コントローラー』のもうひとつの効果を発動! 1ターンに1度、手札から機械族・光属性の通常モンスターかユニオンモンスター1体を特殊召喚できる! 先程手札に加えた『C-クラッシュ・ワイバーン』を攻撃表示で特殊召喚!

 

 これでABCの3体のモンスターが揃った!

 

 フィールド・墓地のABCモンスター3種をゲームから除外することによって、このモンスターをEXデッキから特殊召喚することができる!

 

 ABC、3体合体!

 

 合体召喚!

 

 『ABC-ドラゴン・バスター』!! 」

 

ABC-ドラゴン・バスター

攻撃力:3000

 

「おおっ! かっけーなぁ!」

 

「そうだろう! だがカッコいいだけじゃないぞ十代!」

 

「じゃあ他になにがあるんだ万丈目!」

 

「万丈目“さん”だ! それを今から見せてやる!

 

 『ABC-ドラゴン・バスター』には自分・相手ターンに一度、フリーチェーンで発動できる効果がある! 手札を1枚捨て、フィールドのカード1枚を対象に取って除外する!」

 

「なに!?」

 

「うっとおしいリバースカードの片割れを今この場で剥がす! 行け、ドラゴン・バスター! オレから見て右側の十代のリバースカードを消し飛ばせ! バスター・デストラクション!」

 

 『ABC-ドラゴン・バスター』の両肩のレーザーカノンから発射された青白い破壊光線が一直線に十代のリバースカードを消しにかかる、が。十代はにやりと笑った。

 

「残念! そっちはハズレだぜ万丈目!

 

 トラップ発動! 『魂の結束-ソウル・ユニオン』!!」

 

「なにっ!?」

 

「オレのフィールドのプリズマーと墓地の『E・HERO』モンスターであるスパークマンを対象に発動し、プリズマーの攻撃力をスパークマンの攻撃力分アップする! これ以上チェーンがなければ逆順処理だぜ!」

 

E・HEROプリズマー

攻撃力:1700 → 3300

 

「3300の攻撃力は見事だがそれだけか! このオレ万丈目準は、そんなデカいだけの案山子(かかし)に怯むような男ではないぞ!」

 

「もちろんそれだけじゃないぜ!

 

 ソウル・ユニオンには墓地かフィールドに通常モンスターの『E・HERO』が存在する時限定で発動する追加効果がある! オレの墓地のモンスターを融合素材にして『E・HERO』の融合モンスター1体の融合召喚を行うぜ!」

 

「!? 相手ターンに墓地融合……!」

 

「オレの墓地のリキッドマンとシャドー・ミスト! 水と闇、属性の異なる2体の『HERO』を融合!

 

 ――現れろ!

 

 『E・HEROサンライザー』!

 

 守備表示だ!」

 

「くっ! その後ドラゴン・バスターの効果により、ソウル・ユニオンをゲームから除外する!」

 

 ――二択を外してしまったか! 運の悪い!

 

 万丈目はドラゴン・バスターの効果で派手に除外されていった十代のトラップに舌打ちをする。

 『魂の結束-ソウル・ユニオン』なんていう専用構築でしか採用されることのないカードを予測なんてできるはずもないが、それでも手札1枚と1ターンに一度の能力を失った結果がこれでは悔しくもなる。

 

「チェーン終了だな! それなら処理後に融合素材となって除外されたリキッドマンの効果発動! さらにチェーンして特殊召喚したサンライザーの効果を発動! デッキから『ミラクル・フュージョン』を手札に加えて、カードを2枚ドローして1枚を捨てるぜ!」

 

 しかし、一方で十代も十代で苦境に立たされていた。

 コンバットトリックであった『魂の結束-ソウル・ユニオン』をこんなところで使わされたのだ。ダメージステップに使えていれば1:1交換も狙えるだけのポテンシャルがあったというのに、こうなってしまっては万丈目の言う通り、プリズマーをただ攻撃力が高いだけの案山子にしたようなもの。

 

 ――かといってサンライザーを攻撃表示で出したところで……万丈目は止まらないよな!

 

 だが十代はある意味万丈目を信頼していた。まだ万丈目は動いてくると。だから今はひたすら耐える時だと。

 案の定、万丈目準という男は自分の攻めが躱された上に十代のフィールドが補強された程度で攻め手を緩めるような男ではない。仕方ないと割り切って自分に出来ることを遂行する。

 

「だがまだまだ行くぞ! オレの墓地の『機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト』の効果を、手札を1枚捨ててこのカード自身を除外することによって発動! デッキから機械族・地属性モンスター1体を手札に加える!」

 

「! さっきのドラゴン・バスターの手札コストで送っていたのか!」

 

「その通り! デッキから『セリオンズ“キング”レギュラス』を手札に加える!

 そして今手札に加えた『セリオンズ“キング”レギュラス』の効果をオレの墓地の機械族モンスターである『X-ヘッド・キャノン』を対象に発動! このカードを特殊召喚し、対象のモンスターを装備魔法カード扱いでこのモンスターに装備する!

 

 そして『X・Y・Zコンバイン』のさらなる効果を発動! オレのフィールドの融合モンスターをEXデッキに戻し、除外されている『X-ヘッド・キャノン』『Y-ドラゴン・ヘッド』『Z-メタル・キャタピラー』のうち2体まで選んで特殊召喚できる! 『ユニオン・コントローラー』をEXデッキに戻し、『Y-ドラゴン・ヘッド』を特殊召喚!」

 

「! 今度はXYZが揃ったか!」

 

「オレのフィールドの『X-ヘッド・キャノン』『Y-ドラゴン・ヘッド』『Z-メタル・キャタピラー』の3種のモンスターを除外!

 

 XYZ、3体合体!

 

 合体召喚!

 

 『XYZ-ドラゴン・キャノン』!! 」

 

XYZ-ドラゴン・キャノン

攻撃力:2800

 

(『XYZ-ドラゴン・キャノン』の効果を使えば十代の最後のリバースカードを対処することができるが、オレの残りの手札は1枚のみ。使えば後がないが、安全に行くならば使うべきだろう。ここまでオレに好き放題させてなお発動しないということはブラフか、良くて攻撃反応系のトラップと見てほぼ間違いない。フリーチェーンで何か発動して来ようがオレのフィールドには『セリオンズ“キング”レギュラス』がいるから怖くない。あのリバースカードを退かして前方確認するべき……なのだが)

 

 十代のフィールドにずっと守備表示で佇んでいるモンスター……『E・HEROアブソルートZero』をちらりと見た万丈目の眉がピクリと忌々し気に上がる。

 

(レギュラスはカード効果を無効にする効果があるが、発動を無効にするわけじゃないからダメージステップには効果が使えない……。アブソルートZeroを戦闘破壊してしまうとこちらのモンスターが全滅してしまう。手札が1枚足りない。……ならば!)

 

 ――XYZの効果は使わずこれで蓋をする!

 

「仕上げだ十代! オレのフィールドの『ABC-ドラゴン・バスター』と『XYZ-ドラゴン・キャノン』をゲームから除外することで、EXデッキからこのモンスターを特殊召喚する!」

 

「なに!? まだ合体するのか!」

 

「見せてやる! これがオレの切り札だ!

 

 ABC並びにXYZ究極合体!

 

 六つに別れしユニオンズ! 今その力を結集させこの場を制圧せよ!

 

 合体召喚!

 

 『AtoZ-ドラゴン・バスターキャノン』!! 」

 

AtoZ-ドラゴン・バスターキャノン

攻撃力:4000

 

「すげぇ! でけぇ! かっこいいなぁ! そいつがオマエの切り札か万丈目! 絶対強いだろそいつ!」

 

「万丈目“さん”だ! だがしかし、貴様は見る目がある!」

 

 次々と変形と合体を繰り返しては強力なモンスターに姿を変えていく万丈目のモンスターに男の子の血が騒ぐ十代が興奮し、憎き相手とはいえ自分の切り札を素直に褒められてまんざらでもない万丈目。

 

 そして……

 

(わぁ! わぁ! AtoZだ! 初めて見た! かっこいい!)

 

 前世現在ともに初めて召喚されるところを目撃し、しかもソリッドヴィジョンで拝めて明日香がテンションを上げていた。図らずも万丈目は明日香の好感度を一気に上げることに成功しているが悲しいかな、今の万丈目に明日香の様子を確認する余裕はないし、明日香の心が変わることもない。

 

「『AtoZ-ドラゴン・バスターキャノン』には手札を1枚捨てることで、相手が発動したカード効果を一度だけ無効にする効果がある! しかもフリーチェーンでこのカードを除外することで、除外状態の『ABC-ドラゴン・バスター』と『XYZ-ドラゴン・キャノン』に分解することもできるぞ!」

 

「バトルフェイズに使えば追撃もできるのか!」

 

「そうだ! 加えて『セリオンズ“キング”レギュラス』はオレの手札かフィールドの『セリオンズ』モンスターカードを墓地に送って、相手が発動した効果をなんでも無効にできる! 当然自身を墓地に送って発動できる!」

 

「万能無効妨害が二回も……!」

 

「これでアブソルートZeroもそのリバースカードも気にする必要はなくなった!

 

 メインフェイズを終了し、バトルだ!

 

 攻撃力2800の『セリオンズ“キング”レギュラス』でアブソルートZeroに攻撃だ! セリオンズ・ナックル!」

 

 レギュラスの鉄拳が火を噴き、アブソルートZero目掛けてミサイルのように一直線に飛んでいく。

 この攻撃が通るのならばアブソルートZeroが破壊されて効果が発動されるもAtoZの効果で無効にされ、『X-クロス・キャノン』で守備表示のサンライザーを戦闘破壊。AtoZで攻撃力3300のプリズマーを戦闘破壊して700ダメージ、その後AtoZをABCとXYZに分解し、分解した2体によるダイレクトアタックが通って万丈目の勝利が確定する。

 

「この瞬間トラップ発動!」

 

「どんなトラップが来ても無駄だ! このターンに仕留めきれないのは惜しいが、レギュラスの効果でその効果を無効にする!」

 

「……残念だったな万丈目! ちょっと速さが足りてないぜ!

 

 カウンター罠『攻撃の無力化』!! 」

 

「な……なにィッ!?」

 

 レギュラスの鉄拳が十代の場に現れた時空の渦にからめとられ、持ち主であるレギュラスの元に戻って沈黙する。

 

 ――『攻撃の無力化』は話が違いすぎる!

 

 十代のリバースカードが攻撃反応系のトラップだったのは予想通りだったが、まさかまさかのカウンター罠『攻撃の無力化』。

 カウンター罠はスペルスピード3の分類に位置し、チェーンできるのは同じカウンター罠のみという最も速く滅多なことでは発動を無効にされることがない罠カード。

 中でも『攻撃の無力化』はかなり特殊なカードであり、なにもアドバンテージを齎さない代わりに攻撃反応系のトラップでありながらスペルスピード3に君臨する唯一のカードなのだ。

 

「これでオマエの攻撃は無効になり、バトルフェイズを強制終了した! メインフェイズ2だぜ万丈目!」

 

「“さん”だ!」

 

 ――仕方がない! どうにか凌いで、次のターンに望みを賭けろ!

 

「いいだろう! オレのターンはこれで終了だ! かかってこい!」

 

「おう! オレのターンだ、ドロー!」

 

 ターンは移り、十代のターン。

 

 十代の手札は今の通常ドローで4枚。フィールドのモンスターはアブソルートZeroとプリズマー、サンライザーの3体。

 

 一方万丈目の手札は1枚、フィールドにはAtoZとレギュラスの万能無効妨害が2種に、攻撃力1800で次のターンも効果が発動可能状態にある『X-クロス・キャノン』、フィールド魔法の『ユニオン格納庫』と永続魔法の『X・Y・Zコンバイン 』。AtoZは分解効果があるから対象を取る除去は無意味。しかも分解先のABCもさらに分解する効果がある。

 

 ――意外と壁モンスターが多いな!

 

 攻めも守りもそつなくこなせる布陣だが、唯一の付け入る隙がある。

 それは万丈目の手札が1枚しかないというところだ。AtoZの無効妨害を使わせれば分解先のABCのフリーチェーン除去効果が使われることはない。それなら実質2妨害。この手札ならば真っ直ぐに行けば超えることができる。

 

 

 ――だけど、きっと万丈目なら……。

 

 

 そう十代が気を引き締め直したとき、

 

『クリクリ~』

 

 己の相棒の声が聞こえて、思わず表情が緩む。

 

(そうだな! なんにせよ、まずはオマエを出してからだよな相棒!)

 

「メインフェイズ! オレのアブソルートZeroをゲームから除外して、墓地から『ハネクリボーLV6』を特殊召喚! そしてコストで除外されたアブソルートZeroの効果発動! フィールドから離れたとき、相手フィールドのモンスターをすべて破壊する!」

 

「やはりそうくるか……! だがまだAtoZの効果は使ってやらん! この瞬間レギュラスの効果を自身を墓地に送ることで発動! アブソルートZeroの効果を無効にする!」

 

 アブソルートZeroの放つ猛吹雪をレギュラスの閃光が打ち消し、万丈目のモンスターを守った。

 

「EXデッキの『E・HEROワイルドジャギーマン』を見せてデッキから『E・HEROエッジマン』を墓地に送り、プリズマーの効果を発動! プリズマーはこのターン、エッジマンとして扱う!

 

 続いて手札から魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動!

 

 どうだ万丈目!」

 

「それは通すわけにはいかん!

 

 AtoZの効果! 手札を1枚捨てて『ミラクル・フュージョン』の効果を無効にする!」

 

「そうくるよなぁ! ならここで『ハネクリボーLV6』を生贄に効果発動! 効果を発動したAtoZを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!」

 

「このタイミングでAtoZのさらなる効果発動! 自身を除外することで除外状態の『ABC-ドラゴン・バスター』と『XYZ-ドラゴン・キャノン』に分離する!

 

 ……さらに!」

 

「!」

 

「そちらにチェーンがないのならば、オレは墓地の罠カード『スクランブル・ユニオン』の効果を発動!

 

 墓地に送られたターン以外で墓地から発動でき、墓地のこのカードを除外することで、除外されている機械族・光属性の通常モンスターかユニオンモンスターを手札に戻す!」

 

「!? なにっ! いつの間に……。……!

 

 そうか! 前のターンのクロック・ワーク・ナイトの手札コストか!」

 

「気が付いたか! だが、もう遅い!

 

 逆順処理だ!

 

 『スクランブル・ユニオン』の効果で『Y-ドラゴン・イアヘッド』を手札に! そしてAtoZを分解!

 

 ――来い!

 

 『ABC-ドラゴン・バスター』!

 『XYZ-ドラゴン・キャノン』!

 

 守備表示!」

 

「『ハネクリボーLV6』の効果は不発! 『ミラクル・フュージョン』もAtoZの効果により無効になる、か……!」

 

「どうだ十代! オレの手札は1枚とはいえ復活した! これでABCの効果を使えるようになったぞ!」

 

 万能無効妨害を使わせきったところでのフリーチェーン除去妨害の追加は流石の十代も想定外だったろうと、万丈目は口角を吊り上げる。

 

 『ミラクル・フュージョン』は使わせた。『ハネクリボーLV6』も使わせアブソルートZeroもいない。残るモンスターはサンライザーとエッジマンになっているプリズマーだけだがサンライザーはABCで除去できるから現状は怖くない。となると十代が頼れるのは手札にあるカードのみ。

 3枚も手札があればどうにかできそうなものだが、ABCの分解効果で出てくる壁モンスターに加え、万丈目には最後のとっておき(・・・・・・・・)も控えている。

 

 ――少なくともこのターンで負けることはない。

 

 そう考えた万丈目……だが。

 

 一方の十代もまた、万丈目が気付かないくらいに小さく笑っていた。

 

 ――オレは信じていたぜ万丈目! オマエならABCの効果を発動するための手札コストを作ってくるってな!

 

 万丈目が使えるリソースを無駄にするようなことをしてくるはずがない。何らかの手段で手札を増やしてくると、十代は最初から信じていた。万丈目が強いデュエリストだと認識したからこそ信じることができた。だから敢えて、万丈目に見えているカードだけを使って反応を伺ったのだ。手札を増やすとするなら、この一連の処理の中で補充した方が最もいいタイミングだったからだ。

 

「手札から魔法カード『三戦の号』を発動!

 

 このカードは相手がモンスター効果を発動しているターンに発動でき、さらに相手のフィールドにモンスターが存在する時、デッキから通常魔法か通常罠カード1枚を手札に加えられる!

 

 どうだ、万丈目!」

 

「なにもせん! 続けろ十代!」

 

「ならオレはデッキから『増援』を加え、そのまま発動! デッキからレベル4以下の戦士族モンスター『E・HEROブレイズマン』を手札に加える!」

 

「!……いや、まだいい! 続けろ!」

 

「ブレイズマンを通常召喚! そして効果発動! デッキから『融合』を手札に加える! 魔法カード『融合』発動! さぁどうだ万丈目!」

 

「続けろ!」

 

「それなら手札のフェザーマンとエッジマン扱いのプリズマーを融合! 風と光、属性の異なる2体の『E・HERO』で融合召喚!

 

 ――現れろ!

 

 『E・HEROサンダー・ジャイアント-ボルティック・サンダー』!! 」

 

 バチバチと、全身に雷を纏いし巨人が十代のフィールドに君臨した。

 

「! そのモンスターは……!」

 

「ボルティック・サンダーは特殊召喚成功時、オレのフィールドのカードの枚数が相手フィールドのカード枚数よりも少ない場合、このカード以外の全てのカードを破壊する!

 

 オレのフィールドにはカードが3枚、万丈目のフィールドのカードは5枚! 条件は満たしているぜ! 行け、ボルティック・サンダー!」

 

「くそっ!」

 

 ――手札に『融合』にアクセスするカードがあったのか……!

 

 見えてないカードだったばかりに仕方ないと思いつつもそれでも毒づいてしまう万丈目。しかしもう、こうなってしまっては使えるカードを使っていくしかない。

 

「ABCの効果を、手札を1枚捨てて発動! ボルティック・サンダーを対象に取り、ゲームから除外する! さらにもうひとつの効果を使い、ABCを3体のユニオンモンスターに分解する!」

 

「チェーンはないぜ万丈目!」

 

「ならば解決だ!

 

 来い! 『A-アサルト・コア』! 『B-バスター・ドレイク』! 『C-クラッシュ・ワイバーン』!

 

 そして消えるがいい、ボルティック・サンダー!」

 

「その後にすべてのフィールドのカードを破壊する!」

 

 バラバラに分解しつつもボルティック・サンダーを時空の彼方に追放したABCだったが、ボルティック・サンダーが放った雷は止まらない。敵味方関係なしにすべてのカードが破壊しつくされ、ふたりのフィールドのカードがすべて消えた。

 

「処理後にフィールドから墓地に送られた『A-アサルト・コア』と『B-バスター・ドレイク』の効果を順にチェーンを組み、さらにオレの墓地の魔法カード『ユニオン・アクティベーション』を除外して発動!」

 

「!? まだ能力を隠し持っていたのか!」

 

「とっておきだったのだがな……致し方なしだ!

 

 墓地に存在する状態でオレが機械族・光属性モンスターを3体同時に特殊召喚した場合、このカードをゲームから除外してデッキから攻撃力3000以上のモンスター1体を手札に加えて、その後にその手札に加えたモンスターを召喚する!

 

 ボルティック・サンダーで破壊されてフィールドに残らなかったとしても3体同時に特殊召喚した事実は変わらない! よって、この能力を使うことはできる!」

 

「だけど万丈目! そんなデカいモンスターを召喚するには生贄が必要なはずだ! でもオマエのフィールドには、というか手札にもカードがないぜ! さっきの説明を聞いた限りじゃあ、手札に加える効果と召喚する効果はワンセットだろ? だからその効果は使えないんじゃないかぁ!?」

 

「そこに気づくのは流石だと言いたいが……

 

 甘いぞ十代!

 

 それから“さん”だ!

 

 オレが今から手札に加えて召喚するモンスターは生贄なしでも召喚できるモンスターだ!」

 

「なんだってぇっ!?」

 

「尤も、生贄なしで召喚された場合攻撃力は1900になってしまうが、互いに消耗しきったこの状況ではそれでも充分だ!

 

 更地のフィールドを駆け抜けろ!

 

 ――『神獣王バルバロス』!! 」

 

 なにもなかったフィールドに巨大な槍を持つ神獣が、万丈目を守るように出現する。

 

 このモンスターは奇しくも今日の新弾を開封して偶然手に入れ、ピンポイントながらも活躍させることができるモンスターだったために仕込んでおいた万丈目のとっておきだった。本来ならば3体のモンスターを生贄に捧げて召喚したかったのだが、そんな贅沢は言っていられない。そんな緊急時でも活躍してくれるところもまた、万丈目にとって心強かった。

 

「そしてその後のチェーン解決! デッキからユニオンモンスター『Z-ジリオン・キャタピラー』を手札に加え、墓地から『Y-ドラゴン・イアヘッド』を手札に戻す!

 

 どうだ十代! これで次のターンの手数を確保した!

 

 そのたった1枚の貴様の手札でどこまで抗える!?」

 

 万丈目のフィールドには攻撃力1900のバルバロス、そして手札には2枚のユニオンモンスター、さらに墓地にはABCの3種のモンスターが存在する。万丈目のターンが回ってくれば袋叩きにできる布陣だ。

 

 一方の十代は手札が僅か1枚のみでフィールドには何もない。十代にとってのラストターンであるのにこのリソース差はまさに絶望的。勝機は断たれた……かのように見えたが。

 

「……へへっ。面白れぇなぁ……」

 

 まだ十代は笑っていた。

 

「なにを笑っている!」

 

「いや、マジで強いぜオマエ!

 

 こうなったら……とことん勝負だ!

 

 オレの手札がこのカード1枚のみの場合、手札からこのカードを特殊召喚できる!

 

 ――来い!

 

 『E・HEROバブルマン』!!

 

 攻撃表示だ!」

 

 泡と共に青いヒーローが出現した。

 

「バブルマンがフィールドに出たとき、オレの手札とフィールドに他のカードがなければカードを2枚ドローできる!」

 

「ぐっ、ぐぬぅっ!? 貴様、どこまでしぶといのだ!」

 

「最高の褒め言葉だぜ! さぁ……2枚ドローだ!」

 

 ――来てくれ! ドローだ!

 ――やめろ! 引くな!

 

 心の中の、ふたりの必死の真逆の叫び。

 これでお互いのフィールドにモンスターが1体、手札が2枚ずつの全く同じ状況になった。果たして、十代がドローしたカードの中には……

 

「――引いたぜ万丈目!

 

 魔法カード発動!

 

 ――『死者蘇生』!! 」

 

「ぐっ!」

 

「お互いの墓地からモンスター1体を特殊召喚する!

 

 ――来い!

 

 『E・HEROエッジマン』!! 」

 

 十代のメインデッキ最強の攻撃力を誇る黄金のヒーローが、舞い降りた。

 

 効果はこの場では意味をなさないが、2600の攻撃力が何より重要なのである。今この状況下でのその攻撃力がなんとも十代にとって心強い。プリズマーで墓地に送っておいたのが幸いした。

 

「さぁ、バトルだ! エッジマンでバルバロスに攻撃! パワー・エッジ・アタック!」

「ぐあぁっ!」

 

万丈目

LP:4000 → 3300

 

「続いてバブルマンでダイレクトアタックだ! バブル・ショット!」

「ぐうぅっ!」

 

万丈目

LP:3300 → 2500

 

 ――だがこれでやつの攻撃は凌いだ! 次のオレのターンで……。

 

「そしてオレの墓地の罠カード、

 

 ――『ヒーローズルール1ファイブ・フリーダムス』の効果発動! 」

 

「!?」

 

「墓地に送られたターン以外で発動でき、オレの除外状態の『E・HERO』1体を、召喚条件を無視して特殊召喚できる!」

 

「なっ……

 

 なぁにぃィッ!?

 

 い、いつの間にそんなカードを……

 

 いつだ……いつそんな……

 

 ……!

 

 そうか!

 

 オレのターンで発動したリキッドマンの効果か!? 」

 

「その通りだぜ! 墓地からトラップは、オマエだけの専売特許じゃないのさ!

 

 ――再びフィールドに舞い降りろ!

 

 『E・HEROアブソルートZero』!! 」

 

 このターンの始めに消えたはずの、純白の、最強のヒーローが十代のフィールドに雪の結晶と共に参上した。しかも水属性のバブルマンがいるばっかりに攻撃力が3000になっている。

 

 ――ここまでして……なぜオレが負けるのだ。

 

 打つ手なしになった万丈目は漠然とそんな疑問を抱く。

 

 万丈目には力はあった。

 その力を存分に発揮することのできる磨き上げられた腕も持っていた。

 デッキの仕上がりも今の万丈目からすればほぼ百点の出来だった。

 

 だがしかし……。

 

 

 

(ああ、そうか……オレには運がなかったのか……)

 

 

 

 先攻を取って万全に構えられていれば、

 

 ドローソースを引けていて手札が足りていれば、

 

 ABCの二択で『攻撃の無力化』を除去できていれば、

 

 どれかひとつを満たしていただけで、勝利の天秤は万丈目に傾いていた。

 

 一方の十代は度重なるドローで逆転のカードを引き続けた。万丈目が用意した数々の妨害を掻い潜り、守りの布陣を崩せるほどに。

 

 万丈目と十代、このふたりの勝負を決定づけた要因はこの世の理不尽だった。

 

(天上院くん……)

 

 敗北する寸前、意中の彼女をちらりと見た万丈目はストンと胸に落ちる感覚を覚えた。

 

 天上院明日香は確かに自分たちのデュエルをずっと見ていてくれたのだろう。だが彼女が真に見ていたものは……。

 

(遊城十代……やつだけだった、か)

 

 万丈目準を全く見ていなかったわけではない。しかし、明日香が見ていたのは万丈目準のデュエル(・・・・)であって、男としての万丈目準の姿には振り向いてすらいなかったのだ。

 

 しかし遊城十代に対しては違う。

 

 なにせあんなに輝いた表情をする明日香の表情を、万丈目は自分の力で引き出させたことはない。遊城十代が引き出させているんだ、明日香のあのキラキラした表情を……。

 

「アブソルートZeroでダイレクトアタックだ!

 

 瞬 間 氷 結(Freezing at moment) ! ! 」

 

万丈目準

LP:2500 → 0

 

「オレの、負けか」

 

 万丈目準は小さく笑った。

 

 悔しいが、ここまで見事に耐えられて、返されてしまって、しかも意中の彼女をあんな顔にさせるような男だ。

 

 ――いいだろう。だが、次に戦うときは負けん。今度は運もまた味方につけてやる。

 

「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ、万丈目!!」

 

 

 

 

 

 ……ただ、それはそれとして。

 

 

 

 

 

「万丈目“さん”だ! 何度言えばわかるのだ、遊城十代!!」

 

 

 

 訂正しても訂正しても悪びれもなく笑って自分を呼び捨てにする十代に、これくらいの罵声を浴びせても文句は言われないだろう。

 

 

 

 

 

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