十代好きの私が天上院明日香に転生したのはいいけど、この世界のカードパワーが明らかにインフレしている! 作:スパークリング
皆さま本当にありがとうございます。
公開処刑同然だったはずの最後の実技試験はまさかまさかの大激戦だった。
いや、勝つとは思っていたけど、ここまで激しい攻防が繰り広げられるなんて私も驚きよ。いや、本当。
クロノス先生がはちゃめちゃに強すぎて度肝を抜かれたわ。
ドミナストラップを2枚も手札に抱えた上で、十代の嫌がるところに的確にちょっかいをかけて苦しめていたんだから実技担当最高責任者の肩書きは全然伊達じゃなかった。
ネタキャラかと思いきや生徒想いの格好いい先生だってことは、アニメだと序盤から中盤にかけて少しずつクローズアップされて明かされていったけど、このデュエルのガチっぷりと散り様からしてすでにもういい先生感を隠しきれていない。
あれ? これアニメ序盤はクロノス先生が暗躍して色々やっていた気がするけど、今後の展開どうなっちゃうのかしら? なんかクロノス先生熱くなっていたし、原作よりも十代に対する扱いも良い気がするけど……。
まぁ、なにも無いなら無いでいいか。
そこら辺の話って、十代とその他メインキャラクター達との邂逅を描くためにアニメ制作陣が用意した前座みたいな感じだし、ここまで派手な立ち振る舞いをしたんだ。
隣に座っている
まぁ、そんなこれからのことはさておき。
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!!」
生ガッチャキタコレで思わずキャラ崩壊しそうなレベルでテンションがおかしくなりそうなところをなんとか理性で押し殺して表情に出さない努力をしている私を是非とも褒めてほしいと思う。
もうなんて言うか……もうね。めちゃくちゃ格好よかった!
なにあのイケメン、本当に私と同い年なのと思えるくらいに格好いいデュエルをしてくれるじゃない。あんなデュエルができるの、少なくとも私の周囲にはそうそういないわ。
やや強引に妨害を貫通するところとか、マスターデュエルやこの世界で実装されている似たようなソシャゲだったらハイハイ運だけ運だけで台パンしつつカーッ、ペッ!してパリンパリンしているような展開だけど、この世界だと惚れた弱みにプラスして流石主人公だっていう大立ち回りのせいで、すべてが格好いいに変換されてしまう。
そしてなによあの『レッド・リブート』!
マスターデュエルだと特殊エフェクトのせいで使われると不快度指数マッハだったのに実際に使っているところを見るとこんな演出するの!?ってレベルで格好いい演出だったわ!
使いたい……けど持っていないのよね。汎用カードを掻き集めるのが難しい世界なのが悔やまれる。多分手に入ることは……ないのでしょうね。そこだけが残念。
しかもなによりもテンションが上がったのは、フィニッシャーがフレイム・ウィングマンだったこと!
相手は『
それから見た感じだけど、十代のデッキは『E・HERO』デッキでほぼ確定。それ以外の『HERO』は入ってないと見て間違いはなさそう。あるなら『ヒーローアライブ』のリクルート先をエアーマンにして、そこから『M・HEROファーネス』に繋げた方が展開も伸びるもの。
つまり『マスク・チェンジ』から
ああ、やっぱりこの場所に来てよかったわ。
原作GXにおける十代の記念すべきファーストデュエルを拝める以上、行かないという選択肢はなかったけど思った以上のものを見ることができて私の中の鬼柳京介もサテライトを制覇した時と同じくらいの満面の笑顔を浮かべているに違いない。
「さて、オレはもう行く」
「あら、もう行っちゃうの?」
十代とクロノス先生が終わるなりすぐに荷物を纏めて立ち上がった亮に、舞い上がっていた私は思考を切り替えて彼を呼び止める。せっかく久しぶりに会えたんだし、色々と話を聞きたいからご飯にでも誘おうと思っていたのだ。
「悪いがこのあと少し予定がな」
「そう、残念ね」
「いや、そうでもないさ。見たいものを見れた。それに……それ以上に面白いものも見れたしな」
「ふふ、言った通りでしょう」
このデュエルバカのなんちゃってクールガイにとって、このデュエルはかなりの刺激になったはず。多分、予定だなんだって誤魔化して言っているけど、デッキをいじりたいとかそんな感じなのでしょう。
「ああ、全くもっておまえの言う通りだったよ。……色々な意味でな」
「?」
「グッドラック、明日香」
なんか含みのあるセリフと表情を残して、グッとサムズアップした亮は去っていった。……ちょっと、待ちなさい。
さっきの亮のあの表情。ちょっとだけなにかを我慢するような顔には見覚えがある。
兄さんと一緒に私をからかっているときの……意地悪なことをしている時のガキの顔だった! と、ということは……。
亮が言っていた面白いものってもしかして……!
「明・日・香・さぁ〜ん?」
「このあと予定はありますかぁ? ないですわよねぇ~?」
隣りを見れば、面白いオモチャを見つけてニマニマした様子の
「あぁ、男なんか興味ないって感じだった
「ちょっと待ちなさい。なんか今、変な言葉に私の名前がルビとして振られていなかったかしら?」
「まぁまぁまぁまぁ、そんなことお気になさらず! こんなところで油を売っている場合じゃありませんわ! お茶をしに参りましょう、明日香さま! 楽しいお話、いっぱい、いぃーっぱい、聞かせていただきますわぁ!」
「な、なに? なんで……」
「誤魔化そうってったってそうはいかないですよ~。だって、あんな熱い視線を彼に向けてたじゃないですかぁ~?」
「明日香さまのタイプって、あんな感じの殿方でしたのねぇ~?」
「いやぁ、ももえ。あんなキラッキラな明日香さんは初めて見たわねぇ」
「本当ですわぁジュンコさん。明日香さまって
「亮さんに靡かないから違うのかなぁって思ってたけど、ベクトルの違いだったみたいねぇ」
「ですわですわぁ! クール系じゃなくて、パッション系の殿方がお好みだったとは読めなかったですわぁ!」
ば、バレてる……! 必死に取り繕っていたはずなのに、バレてる!
どうやら私の頑張りは全くの無意味だったらしい。亮にもバレていたっていうことは……というか、キラッキラとか言ってたし、もうモロに顔に出まくっていたとみて間違いない!
というかバレるのは別にどうでもいいのよ、どうせ遅かれ早かれバレることになるだろうから! ただこんな感じで……ただただ面倒くさいだけの展開が目に見える状況にはなって欲しくなかったわ! だってこれじゃあ私だけ攻められる一方じゃないの! 不公平だわ!
というか亮はアレか! 自分がいたらこのふたりが暴れにくいことを配慮して……というか空気を読んで適当な理由を付けて戦線離脱したのか! つまり私を売ったってことか! なにがグッドラックよ、なんて男!
隣に座るジュンコに肩をがっちりつかまれて逃亡もできないしこれは……!
「さぁさぁ、とにかく明日香さん。これからアタシたちと楽しい楽しいティータイムにしましょっか♪」
「確かこの辺に良いお店がありましてよ。そこでゆっくりお茶でも飲みながら、いろいろと作戦を立てましょう♪」
――詰んだ。
先攻とったメタビに『フォッシルダイナ・パキケファロ』を出されてドロソ使われて5枚ガン伏せエンドされたときと同じくらい詰んだ。
きっと今の私は、口から流血しつつも悟りを開いたかのような穏やかな表情をしていることでしょう。つまり心の中でパリンパリン言いつつ諦めの境地に至っている。
このあと問答無用で雰囲気の良い喫茶店に連行された私は、根掘り葉掘り質問攻めにされたのだった。
さすがに前世のことについては話さなかったけど、それでもまぁ、あれやこれや聞かれてはキャーキャー言われた。そして信じられないくらいイジられた。とはいえ面白半分親切半分だったから怒るに怒れないしで、気が付いたら帰宅していてお風呂に入っていた。
とりあえず今度、亮には何かを奢らせる。
そう、私は誓った。