十代好きの私が天上院明日香に転生したのはいいけど、この世界のカードパワーが明らかにインフレしている!   作:スパークリング

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第1期 セブンスターズ編
Turn-4 「入学」


 あの衝撃の実技試験からしばらく経っていよいよ本編開始の時――新入生歓迎会の日がやってきた。

 

 太平洋のとある孤島全体に設けられた、デュエルモンスターズを専門の教育機関であるデュエルアカデミア。私たちが通うのはその本校である。他にも五つの姉妹校があるんだけど、まぁそれは置いておいていいでしょう。

 

 全寮制のこの学校は長期休暇や特別な理由がない限り島から出ることは許されず、また外部からの影響も受けない絶海の孤島。私たちはここでみっちり三年間、デュエルモンスターズ関連の様々なことを学習し、その道のプロを目指すことになる。

 

 プロと言っても一概にプロデュエリストを指すわけじゃなくて、例えばデュエルの実況であったりとか、企業お抱えのパフォーマーやインフルエンサーであったりとか、はたまたデュエルモンスターズのカードデザイナーだとか、職種は多岐にわたる。つまりただの遊びじゃなく、真面目にお金のやり取りが発生するし、世間に与える影響もそれなりに大きいということね。

 

 デュエルモンスターズは言ってしまえば、スポーツ競技の一種みたいなもの。前世だとあくまでも趣味の延長線上に過ぎないものだったけど、この世界では一般化された種目であり、巨大なエンターテインメント産業にまで発展している。

 

 デュエルアカデミアは専門学校……というよりも大学のようなもので、ただ遊び惚けるのではなく、割と本気で自分たちの将来に向けて切磋琢磨しないといけなきゃだし、事前に配られた教材やシラバスもバカにならないほど大真面目な内容に仕上がっている。

 授業も必修科目と選択科目に分かれていて、自分の将来を考えて受講する必要があるし、充分な単位を稼げなかったら留年……下手したら退学もあり得るほど、内情は過酷な環境だったりする。

 

 閑話休題。

 

 さて、そんなデュエルアカデミアで三年間お世話になるオベリスク・ブルー女子寮で、荷物の整理と着替えをすませた私は、ジュンコとももえ(いつものふたり)と合流して、カフェテリアでシラバスを眺めていた。

 

「アタシたちはキッズスクールの講師になるからこれは必須科目よね」

「ええ、そうですわぁ。ジュンコさんとはほとんど一緒の授業を受けることになりそうですわね」

 

 入学したばかりだというのにすでに将来の職業にアタリを付けて時間割を決めているこの子たちは立派だ。というか、小学生高学年の頃からずっと言い続けていたことだからブレがない。

 

「明日香さんはどうするんでしたっけ? たしかデュエルカレッジに進むとか?」

「そうねぇ……どうしましょうかね」

「いやいや、ご自身のことですからご自身で決めていただかないと……」

 

 御尤も。といっても……割と本当に迷っている。

 興味があるなーって思っていることはいっぱいあるのよ? でもねぇ……うーん。

 

「まさか明日香さん」

「彼のことがご自身の進路に影響されているとか?」

「うっ……」

 

 相変わらず察しの良いふたりはさっきまでの困り顔はどこへやら。今度は微笑ましいものを見るような生暖かい視線を私に向ける。

 

「すっかり恋する乙女ですねぇ、明日香さん♪」

「あの殿方の進路に合わせようとお考えになられているなんて、全く一途なことですわぁ♪」

「ええそうよ、悪かったわね!」

 

 私の将来の夢はずばり、最推し(十代)お嫁さん(最推し)である。これは譲れない。そこに至れるようにこの世界で生を受けた私は今まで頑張ってきたのよ。それはもう色々と。

 

 まぁ、だからこそ将来どうしようか迷っているのよね。十代って卒業したら宇宙警備員に就職という名の放浪の旅に出ちゃうし……そうなったら私はどうすればいいのかなって。

 

 一緒について行くのか、就職して帰りを待つようになるのか。あるいはそもそも十代が旅に出ないのか、よくわからない。

 二十代に成長したとしても、ある意味自由奔放な性格はそのままだろうし……。いや、もしかしたら案外私に合わせてくれるのかも? 二十代になった時の十代って人間やめているだろうし、私が死ぬときまでは一緒にいてくれたりして? うーん、全然読めないわ。あるいは、私も人間をやめるしかないのかしら? やめ方がわからないわねぇ。

 

「明日香さん、明日香さん。真面目な話、さっさと告白しちゃった方がいいんじゃないんですか?」

「え?」

 

 唐突なジュンコの言葉に目が点になった。

 

「ジュンコさんの言う通りですわぁ。将来に直結することですもの。できる限り早くお付き合いなさってあの殿方をメロメロにして首輪をつけてしまえば全部解決ですわぁ!」

「ももえ、過激すぎるわよ……。それに……ちょっと強引すぎるんじゃないかしら? だってあの子、見るからにデュエル大好き少年じゃない? あんまり重い女と思われたくないわよ」

「でもそれで明日香さんの大切な三年間を棒に振るっちゃ元も子もないじゃないですか!

 

 というか実際かなり重いですし! 」

 

「 うぐっ!?

 

 いやそれは言いすぎじゃ…… 」

 

「お付き合いもしていないのに、ご自身の将来に彼を早々に組み込んでいる時点でとっくに重量オーバーですわぁ!」

 

「ぐはぁっ!?」 

 

 なんて威力のコンボ攻撃を仕掛けてくるのかしらこの子たちは!

 

 例えるなら『マジック・テンペスター』の効果を使って魔力カウンターが乗った後の『アーカナイト・マジシャン』に場を荒らされた挙句に殴られたあと、テンペスターのバーンダメージが飛んできたときと同じくらいの凄まじい威力!

 

 常々思っていたことなんだけど、この子たちって原作でもこんな感じだったかしら? 私のことを大切に思ってくれているし敬ってくれているのも充分伝わっているんだけど、まるでオモチャみたいに扱ってくるときも多々ある。しかも絶対意図して! 今のやりとりだってそう! 私のことを心配しつつも、遠慮なく事実を突きつけたあとの私のリアクションを見て面白がっているし、そのことを隠そうともしない!

 それだけ距離を近くしてくれているのは素直に嬉しいのだけど、こんなコンボ攻撃をいきなり仕掛けてこられたらいつだって満タンな私のライフも余裕で消し飛んじゃって困っちゃうわよ!

 というか今はそんな親友二人からの雑な扱い以上に向き合わないといけない問題がある!

 

 そうか……そうか、私は重い女だったのか……。

 

 でも、確かに……うん、そうね。

 画面越しとはいえ前世から大好きで、この世界をアニメGXの世界だとわかった時から想いを抱えているし……なんなら、人間をやめるとか正気じゃないことを真剣に考えていたんだからそりゃ重いわよね……。

 考えてみれば、前世から好意を寄せている点だけならあのヤンデレ(ユベル)とほとんど同じ境遇じゃないの。客観的に見れば見るほど……自分がとんでもない激重女だということを自覚してしまう。正直ショックだ。自分の気持ちがピュアなものだとほんの少しでも思っていただけに。

 

「思い立ったが吉日! 明日香さん、さっさと彼にアピールしに行きましょう!」

「えぇっ!?」

「えぇっ!?じゃありませんわぁ、明日香さま! ご自身の進路に関わることですのよ!?」

 

 そうかな……そうかも。

 

 確かにこのふたりの意見はストレートが過ぎるとはいえ的を射ている。

 十代の進路を考えて自分の進路を決めかねているなら、早々に接触して十代に私を意識させるというのは私にとって得でしかない。どうせ遅かれ早かれ告白するんだし。

 

「……そうね、私が優柔不断だったわ。ありがとうね、ふたりとも」

「チョロい」

「チョロかわいいですわぁ♪」

 

 なんかふたりが喋った気がしたけど、そんなことより行動よね行動!

 

 さてどうやって十代に接触しましょうか。

 GXはリマスター含めて何回か見てはいるけど、おおよその流れこそ覚えていても細かいところまではさすがに覚えていない。というかこの序盤の序盤の話なんて本当に覚えてないわ。クロノス先生に嵌められて翔くんが女子寮にナイスボートしちゃったことくらいしか記憶にない。

 

 入学した際に渡された、この学校の生徒全員分の電話番号が登録されているスマートフォンのようなもので呼び出す? いや、さすがに見ず知らずの女にいきなり呼び出されたら気持ち悪いわよね? 私だって何回かそういう経験……いわゆるラブレターの洗礼というものを過去に散々受けているからわかるもの。

 

 うーん……それなら、地道に探すしかないか。

 クロノス先生に入学試験で勝ったとはいえ110番じゃあ筆記試験がふるわずに原作通りオシリス・レッド行きでしょうから、オシリス・レッド寮に行けばいる可能性は高いし、いなかったら校舎内の人気のある場所を巡っていたら見つかるでしょう。

 

 オシリス・レッドはこのデュエルアカデミアでは悪い意味で数が少ない生徒。進級すれば高確率でラー・イエローに昇格するし、そうじゃなかったら落ちこぼれの烙印を押されて途中で退学してしまうことが多い。だからオシリス・レッド寮だけあんなボロアパートみたいなこじんまりとした寮なのよね。自然と人がいなくなっちゃうから部屋数を確保する必要がないんだもの。

 クロノス先生がオシリス・レッドの生徒を毛嫌いしているのも、単なる落ちこぼれだからというよりも、歴代のオシリス・レッド生が授業をマトモに聞かず、向上心もない子たちが多かったからでしょうね。

 

「よし、じゃあ早速探しに行ってくるわ」

「おっと、アタシたちもお供しますよ明日香さん。歓迎会まで時間はまだありますし」

「それにこの広いアカデミアで迷子にならないための下見もしておきたいのですわ。是非ともご一緒させてくださいな」

「あなたたちねぇ……」

 

 それっぽい理由を並べておいて、単純に興味があるだけでしょうに。

 とはいえ断る理由もないし好きにさせておきましょうか。

 

 私たちはカフェテリアを出た。

 

 

 

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