十代好きの私が天上院明日香に転生したのはいいけど、この世界のカードパワーが明らかにインフレしている! 作:スパークリング
「「
勢い任せの告白を終えて、十代に私のことを知ってもらうべく仕掛けた野良デュエル。十代にとっても私にとっても、このアカデミアに来てから初のデュエルだ。張り切っていかないとね。
じっくり楽しみたいところだけど、寮の歓迎会までの時間も迫ってきているし、テキパキと熟していきましょう。
「私が先攻。ドロー」
さて初期手札6枚の内容は……相変わらずこの世界は理不尽で、そしてご都合主義ね。
デッキのほとんどのカードがピン積みのハイランダー構築のはずなのに、こうも綺麗に回る手札を配られちゃったら、前世で培ってきたデッキ構築の腕が泣いちゃうわよもう。
さて初動……の前にこのカードを使わないとね。
「メインフェイズ1開始時、手札の『強欲で金満な壺』を発動するわ」
「へぇ……珍しいカードを使うじゃんか。大丈夫か、そんなリスキーなカードを使っちまって。大事なカードがなくなっちまうかもしれないぜ?」
あらま、どうやら十代はこのカードをご存じのようで。
まぁでもこういうドローソースはどんなデュエリストも通る道だし、知っていてもおかしくないかしらね。あとこのカード、発動条件や制約が厳しいせいでこの世界では安いコモンカードだし。
「お生憎様、私はEXデッキのカードを使うことはほとんどないのよ。だからなんにも気にしないでいいわけ。ランダムに6枚のカードをEXデッキから裏側で除外して、2枚ドロー。そしてターン終了時まで、私はカード効果でドローすることができなくなるわ」
で、肝心の初動なんだけど……私を売った亮に献上させたこのカードでいいかしらね。
「魔法カード『エマージェンシー・サイバー』を発動。デッキから通常召喚できない、光属性の機械族モンスター1体を手札に加える。『
守備力:0
「儀式デッキか! あんまり見たことないぜ!」
「そう? それならこれを機に沢山味わってちょうだいな。生贄に捧げられた弁天の効果を発動。デッキから光属性の天使族モンスターを1体手札に加えるわ」
本当ならここで『
尤も、この世界ではかなり強いルートなんだけどね。前世と比較するのは良くないから、これきりにしましょう。
「『チョウジュ・ゴッド』を手札に加えて、バン
ふぅ、ようやく折り返しね。
あ、ちなみに弁天は気合で3枚かき集めたわ。本当に……本当に苦労したわよ。このデッキ弁天が3枚ないと息継ぎが厳しくてね、参っちゃったわ。
「なぁなぁ明日香」
「うん? なにかしら?」
「おまえ、今手札何枚だ?」
「え?」
ひいふうみい……。
「8枚あるわねえ」
「なんかめちゃくちゃ増えてねえか!? 儀式デッキってそんなに手札が増えるのかよ!?」
「いやドローソース使っている上に2枚初動だし、誘発受けも良くないから多少はね?」
「多少ですんでるのかぁ!?」
「いやいや、良いことばかりじゃないわよ」
だって。
「『ドライトロン』の共通効果で、このターン通常召喚ができないモンスター以外の特殊召喚ができなくなるっていう、とても重い制約を背負うことになるんだもの。だから多少はね?」
「……それデメリットになってるのか?」
「なってるわよ?」
この制約がなかったらもっと酷いことになっているもの。
弁天で『大天使クリスティア』を引っ張ってきて最後にクリスティア自身の効果でポン置きできるようなものなら、刑法199条に抵触するようなことをしでかす輩が出かねないわ。だからかなり理性がある儀式テーマよね『ドライトロン』。
「続けるわね? 手札のルインを生贄にして手札の『
守備力:0
攻撃力:2000
「続けて永続魔法カード『機械仕掛けの夜-クロック・ワーク・ナイト-』を発動!」
明るかったデュエル場が夜の工場へと変わった。三日月に照らされた無数の巨大な歯車たちが一斉に起動し、稼働音を鳴らす。
「この永続魔法カードがある限り、お互いのフィールドの表側表示モンスターは機械族になる。そしてこの工場は私の機械族モンスターのステータスを500ポイント上昇させ、あなたの機械族モンスターのステータスを500ポイント下降させる」
「なんだって!?」
「続けて儀式魔法『
この儀式魔法は少し特殊でね、参照するのはレベルではなくて攻撃力!
儀式召喚するモンスターの攻撃力以上になるように私の手札かフィールドの機械族モンスターを生贄に捧げ、手札・墓地から儀式モンスター1体の儀式召喚を行うわ!」
「攻撃力を参照する儀式魔法だって!? しかも墓地からも出せるのか!」
「百点満点のリアクションをありがとうね。
手札の『
現れなさい! ステータス2900!
儀式召喚!
『破滅の美神ルイン』!! 」
破滅の美神ルイン
攻撃力:2900 → 3400
「いきなり攻撃力3400のモンスターか!」
「これで終わったと思わないことね!
さらに墓地の『
1ターンに一度、私の『ドライトロン』モンスターの攻撃力を相手ターン終了時まで1000ポイントダウンさせて、手札に戻すことができる!
エル
「! またあの儀式魔法が飛んでくるのか!」
「ご明察! 儀式魔法『
クロック・ワーク・ナイトで攻撃力が2500になっているバン
現れなさい! ステータス5000!
儀式召喚!
『
攻撃力:5000 → 5500
「そんな……いきなり攻撃力3400と5500のモンスターだなんて……!」
「あれが明日香さんのエースモンスターたちよ」
「まずはあのモンスターたちを突破しないとお話になりませんわぁ」
「ええっ!? あの2体とも切り札じゃなくてエースモンスター!? しかも突破することが前提なの!?」
「むしろ先攻最終盤面があれならまだ優しい方じゃない?」
「今回の明日香さまの手札は『ドライトロン』に寄っていたせいで、あんまり天使族モンスターを引けていなかったらしいですわね。彼も運がよろしいですこと」
「アレがアニキにとって運が良い盤面なの!?」
外野が騒がしいけどまぁおおむねその通り。
このルインとDADを突破してからが本番だもの。突破してそのまま私を倒すか、逆に制圧盤面を作らないと意味がない。十代ができるとするなら前者だけど……どうかしらね?
ももえの言う通り『ドライトロン』に寄っちゃっている手札だけど、それでも手札が強いことには変わりないわよ? 十代のターンをしのぎ切れば、返しのターンで勝てるくらいにはね。
「私はこれでターン終了。さて、どんなことになっているか説明するわね十代。
まず儀式召喚した『破滅の美神ルイン』がいる限り、私の儀式モンスターは効果で破壊されなくなる。
そしてDADは1ターンに二回まで、相手が発動した効果モンスターの効果を、そのモンスターの元々の攻撃力以上の合計の攻撃力になるように私の墓地の『ドライトロン』モンスターを任意の数だけ除外して、その効果を無効にして破壊できる。
さらに儀式召喚したDADが相手によって破壊されると、手札かデッキから攻撃力4000の儀式モンスター1体を儀式召喚扱いで特殊召喚できるわ」
他にもいろいろあるけど、今は見えている妨害と後続に繋がるところの説明だけでいいでしょう。
先攻1ターン目でここまで展開できたなら御の字。DADの妨害はそこまで強いものじゃないけど、下級モンスターの効果をあれこれして頑張るデッキには脅威であることに変わりない。十代の『E・HERO』には結構効くでしょうね。
見た目2妨害に加えて耐性付き3000オーバーモンスター2体に後続に繋げる手段もある。手札も3枚残しているし……うん、なかなか上出来じゃない?
「……げぇ……」
「うん?」
「すげぇな、明日香おまえ!」
凄いキラキラした瞳を向けてくれる十代。めちゃめちゃかわいい。
「思った以上だぜ……! すげえ盤面だ!
どいつもこいつも強い! しかもかっこいい!
でもだからこそ……
越え甲斐があるよなぁ! 」
……おっと? 雰囲気変わったわね?
さっきまでのかわいい興奮したような笑顔はどこへやら、挑戦者のようにちょっと鋭い目つきになったわ。……イイじゃない。
「ええ、そうよ……
越えてみなさい十代! 全力で抗ってあげるわ! 」
「おう!
オレのターン、ドローだ!
まずは……これだ!
『E・HEROプリズマー』を召喚! そして効果!
エクストラデッキの『E・HEROサンダー・ジャイアント』を見せて、デッキから『E・HEROクレイマン』を墓地に送って発動!
この効果が通ればプリズマーはこのターンの間、クレイマンとして扱える!
さぁ、どうする明日香!」
……名前をクレイマンに変えられて困ることがあるのかどうか問題か。
「いいでしょう、通し」
「それなら、プリズマーはクレイマン扱いになる!
続いて手札から魔法カード『HERO’Sボンド』を発動!
このカードはフィールドに『HERO』が存在している時、手札から『E・HERO』を2体特殊召喚する!
現れろ! 『E・HEROエアーマン』! 『E・HEROブレイズマン』! 攻撃表示!」
「!」
『HERO’Sボンド』は想定外だったわね……!
DADの効果をプリズマーに対して使っていれば、とりあえずは『HERO’Sボンド』を使われずに済んだのか。
でも『HERO’Sボンド』が本命だとするなら、それを使う前にプリズマーの効果をわざわざ使うのは悪手。ということは……本命は別にあるということ。ということは使わなかったのは正解だった? まだわからないわね……。
というか『HERO’Sボンド』から飛び出してきた2体の『E・HERO』がどっちも結構ヤバい!
「特殊召喚成功時、チェーン1でブレイズマン! チェーン2でエアーマンのデッキから『HERO』を手札に加える効果を発動する! さぁ、どうだ明日香!」
「ぐっ……」
その順番でチェーンを組まれたら『融合』が手札に加わるのは確定! サンライザーまで見るなら『ミラクル・フュージョン』も確定じゃないの!
私の盤面からしてクロノス先生の時のように、フレイム・ウィングマンの2回攻撃によるワンターンキルをされることは……いや、ちょっと待ちなさい!
クレイマンが墓地にいるということは『ミラクル・フュージョン』経由で『E・HEROガイア』が出てくるじゃないの! というかエアーマンもいるから『E・HERO Great TORNADO』まで候補に挙がってくる! そんなやつらが出てきたら攻撃力5500なんて意味をなさない!
やっぱりプリズマーに対してDADの効果を使うべきだったの!? でも『HERO’Sボンド』もエアーマンもブレイズマンも手札にあるなんて知らないし、間違いなく別の本命カードがある! ケアしきれないわよもう!
……こうなっちゃったらしょうがないわね。
「通し! 好きになさい!」
とりあえずここはひたすら我慢! この時点でもうどうしようもないのなら、一度十代を自由にさせて、死にそうなところで妨害を吐く! 死ななさそうなら後続に繋げる! それで行きましょう!
「だったらエアーマンで『E・HEROリキッドマン』を、ブレイズマンで『融合』を手札に加える! そしてそのまま『融合』を発動!
『HERO』のリキッドマンと風属性のエアーマンで融合!
――現れろ!
『E・HERO Great TORNADO』! 」
暴風を纏った『HERO』が十代の場に現れる!
サンライザーを経由せずに直接出してきたわね!
「融合召喚したGreat TORNADOの効果をチェーン1、融合素材になったリキッドマンの効果をチェーン2で発動! さぁ、どうだ明日香!」
しかも本命の効果をチェーンで覆い隠してとことんこっちのDADのケアをしてくれるじゃないの……! ここまでケアされ続けるのもこの世界じゃ初めてよ! サンライザー経由じゃケアするのが難しいと判断してこの早いタイミングで出してきたのね!
「やるじゃないの……! いいわ、通し!」
「それなら2枚ドローして1枚捨てる! そしてGreat TORNADOの効果で、明日香のフィールドのモンスターの攻撃力と守備力をこのターンの終わりまで半分にする! タウン・バースト!」
破滅の美神ルイン
攻撃力:3400 → 1700
攻撃力:5500 → 2750
「こっちのモンスターの攻撃力を一気に下げるなんて見事ね! だけど忘れてないかしら? クロック・ワーク・ナイトの効果であなたのモンスターは機械化され、ステータスがダウンしている! ルインはともかくDADは倒せないわ!」
「そうだな! でも問題ないぜ!
魔法カード『ミラクル・フュージョン』を発動! 」
「なぁっ!?」
『ミラクル・フュージョン』を素引き!? しかもアレ、十代の手札を目で追っていたけどリキッドマンでドローしたカードじゃなかったわ!
なるほど、プリズマーにDADの妨害を当てられて破壊されたら『ミラクル・フュージョン』で新しい『HERO』を立てて貫通するつもりだったのね!
「墓地のバブルマンとエアーマン! 水と風、属性の異なる2体の『HERO』を融合!
――現れろ!
『E・HEROサンライザー』! 」
ここでサンライザー! 攻撃力を底上げしに来たわね!
というかバブルマンですって!? いつの間に墓地に……ってそうか、リキッドマンの2枚ドロー1枚捨ての時に墓地に送っていたのね。
「特殊召喚したサンライザーの効果は使わないぜ」
「あら、いいのかしら?」
「オレのデッキには『ミラクル・フュージョン』は1枚しか入っていないからな! そんなに軽々しく奇跡なんて起こせないものだぜ!」
あら、良いセリフ。
「それに本命はこっちだしな!
サンライザーの永続効果でオレのフィールドのモンスターの攻撃力は、オレのモンスターの属性の種類×200ポイントアップする!
オレの場には光・風・炎属性の3種類の『HERO』たちがいる! よって全体、攻撃力が600ポイントアップ!」
E・HEROプリズマー
攻撃力:1700 → 1200 → 1800
E・HEROブレイズマン
攻撃力:1200 → 700 → 1300
E・HERO Great TORNADO
攻撃力:2800 → 2300 → 2900
E・HEROサンライザー
攻撃力:2500 → 2000 → 2600
「クロック・ワーク・ナイトの効果を上回った……!」
「これでバトルだ! まずはクレイマン扱いのプリズマーで『破滅の美神ルイン』に攻撃!」
「くっ……!」
明日香
LP:4000 → 3900
「続けてGreat TORNADOでメテオニス=DADに攻撃! スーパーセル!」
明日香
LP:3900 → 3750
「DADを倒すなんてお見事! でもDADは相手によって破壊された場合、デッキから攻撃力4000の儀式モンスターが儀式召喚扱いで特殊召喚されることを忘れてないわよね?」
「ああ、勿論。だけど、オレの場にはまだ攻撃宣言していないブレイズマンとサンライザーがいる! どんなモンスターでも、ブレイズマンが攻撃宣言すればサンライザーで突破できるぜ!」
「それがそうもいかないのよねぇ」
「え?」
まぁ十代は知らなかったみたいだししょうがないわよね。
「私の自己紹介代わりに受け取っておきなさい!
現れなさい! ステータス4000!
儀式召喚!
『
攻撃力:4000 → 4500
「残念、相手はDRAをモンスター効果の対象にできないのよ」
「うげっ!?」
「またひとつ、私のことを知ってもらえて嬉しいわぁ十代。さぁ、どう? 突破できるかしら?」
「……いや、さすがに無理だ! カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
「それならこのエンドフェイズ! DRAの効果を発動!」
「なに、このタイミングでか!?」
「この効果は相手ターン中であればいつでも使えるのよ! 攻撃力の合計が2000か4000になるように私の墓地からモンスターを除外して、その合計2000ポイントにつき1枚、相手の表側表示のカードを対象として、墓地に送ることができる! 攻撃力2000のバン
クリスタルの流星群が十代のフィールドの一角に降り注いで、プリズマーとブレイズマンがいた場所を綺麗にした。
「なんで攻撃力の低い方を……。オレはこれでターンエンドだ」
「私のターン、ドロー」
さて……今になって引いたかこのカードを。まぁいいわ。
リバースカードを2枚伏せたから十代の手札は0。知っていても対処できなかったか、もしくはほかのルートを辿ったか、どちらかは今じゃわからないけど……それでもターンが返ってきた。
それなら……勝たせてもらうわよ、十代!
「手札から魔法カード『儀式の準備』を発動! デッキから☆7以下の儀式モンスター1枚を手札に加え、その後に墓地から儀式魔法カード1枚を手札に加えることができる! 2枚目の『サイバー・エンジェル-弁天-』と墓地の『
「またその2枚か!」
「私のデュエルスタイルを覚えてもらえてなによりだわ。手札の弁天を生贄にして手札の『
「そのあとにあんまり意味がなさそうな制約が付くのはわかっているぜ!」
「わかっているじゃない! さらに弁天の効果で、デッキから『サイバー・エンジェル-美朱濡-』を手札に! 墓地に戻したバン
さて、これで儀式の準備は整ったわ。
「儀式魔法、『
クロック・ワーク・ナイトの効果で攻撃力が2500になっているバン
再び現れなさい! ステータス5000!
儀式召喚!
『
攻撃力:5000 → 5500
「またそいつか……! 何回も出てくるな!」
「しつこくて悪いわね! さらに墓地の『
攻撃力3500の『
見せてあげるわ、十代! これが私の切り札!
無窮なる力を秘めし光の天使よ!
今遍く世界にその姿現し、万物を照らせ!
降臨せよ! ステータス3000!
儀式召喚!
『サイバー・エンジェル-美朱濡-』!! 」
サイバー・エンジェル-美朱濡-
攻撃力:3000 → 3500
「そいつがおまえの切り札か!」
「ええ、そうよ。そしてこのままだとあなたは負ける!
『サイバー・エンジェル-美朱濡-』の効果!
儀式召喚に成功したとき、相手のエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターをすべて破壊し、その数×1000ポイントのダメージを与える!」
「なに!? そうか! だから前のターンで、ブレイズマンたちを狙ったのか!」
「これであなたのフィールドはがら空きになる! さらに美朱濡はこのターン限定で2回攻撃が可能! おまけに、1ターンに1度、墓地の儀式モンスター1体をデッキに戻して、フィールドのカードを破壊する効果を無効にできる!」
「なんだと!?」
「降臨した以上は生半可な妨害じゃあ止められないわ! その2枚のリバースカードでどこまで抗えるかしらね! アセンションバースト!」
フィンガースナップを鳴らした瞬間、美朱濡の光輪が輝き、十代のモンスターたちに破壊の衝撃波を放つ。
これが通れば、十代のモンスターは全滅し、2000ポイントのダメージが入る。ただでさえオーバーキル気味だったのに、フィールドをがら空きにされて攻撃力3500の2回攻撃モンスターの美朱濡と攻撃力5500のDADの攻撃を受け止めるのは流石に無理があるでしょう!
「トラップ発動! 『マジスタリー・アルケミスト』! オレの墓地とフィールドから『HERO』を4体ゲームから除外して、オレの墓地の『HERO』モンスター1体を、召喚条件を無視して特殊召喚できる!」
「そんなトラップがなんだっていうのかしら!? 仮にあなたのフィールドのモンスターを使って美朱濡の効果を躱したとしても、たったひとりの『HERO』に全てを託すにしてはあまりにも重すぎるのでなくて!?」
「『HERO』はひとりで戦うものじゃない! みんなで力を合わせて戦うもんさ!
『マジスタリー・アルケミスト』の効果で地・水・炎・風の『HERO』を全て除外したとき、蘇生したモンスターの元々の攻撃力は倍になり、現時点で相手フィールドに存在する表側表示のカードの効果を永続で無効にする!」
「なんですって!?」
し、知らない! 知らなすぎる! そんなカードがあったの!?
「オレは墓地のクレイマン、リキッドマン、ブレイズマン、フィールドのGreat TORNADOの4体のモンスターを除外して、墓地からプリズマーを守備表示で特殊召喚! 除外した『HERO』たちの属性がそれぞれ地・水・炎・風属性のモンスターのため、明日香! おまえのフィールドの今あるカード効果は永続で無効になる!」
美朱濡の破壊の光が消え失せ、機械化していた体も元の天使の肉体に戻る。そうか、クロック・ワーク・ナイトまで無効にされるのね。
「……このターンの決着はお預けのようね。それならバトル!
DADでサンライザーを、美朱濡でプリズマーに攻撃!」
「ぐあぁっ!」
十代
LP:4000 → 1700
「カードを1枚伏せて、私はこれでターン終了。さぁ、あなたのターンよ十代」
永続で効果無効のせいで、美朱濡の破壊無効妨害もDADのモンスター効果無効妨害も機能していないけど、攻撃力3000と5000の圧は残っているし、DADの後続に繋がる効果は生きている。私の手札にはサウラヴィスがあるし、このターンにドローした
一方の十代は手札なしのリバースカードが1枚のみ。
どう見ても私の優勢なのだけど……相手はあの十代。なにをしでかしてくるかわからないのが恐ろしいわ。
「オレのターンだ! ドロー!」
ほら、まだ諦めてないもの。しかも……ドローしたカードを見て笑っているし! さぁ、なにを引いたの? そのリバースカードはなに?
「リバースカードオープン! 『異次元からの帰還』! ライフを半分支払って、除外されているオレのモンスターを可能な限り特殊召喚する!」
「……は、ハァッ!?」
ちょっ!? ジャッジ! ジャッジーッ! あのひとヤバいです、禁止カード使っています! え? デュエルディスクが正常に機能しているから問題ないですって……? F○○K!!
そういえばそうだったわこの世界、禁止カードの概念がそもそも存在しないんだった! なんかの記念品だとかそういう特別なカード以外は全部使うことができる魔境だったわ忘れてた! なんなら『強欲な壺』とか『天使の施し』とかも使えるのよね、古いカード過ぎて入手困難なだけで! 当然私は持ってないわ!
突然のガチカードかつ前世の禁止カードを使われたからってうろたえている場合じゃないわ! ヤバいヤバいヤバい! あのカードはヤバい! でも対処手段がない!
「通るみたいだなぁ! じゃあ戻ってこい! ブレイズマン、エアーマン、リキッドマン、クレイマン、バブルマン! 全員守備表示だ!」
おいおいおいおいおいちょいちょいちょいちょいちょいあばばばばばばばばばば!?!?!?!?!?
1枚がぁっ、5枚にいぃィッ!?
爆アドどころじゃないわよ!? 『真炎の爆発』も爆死しちゃうレベルで凄まじいことをしていらっしゃるんですケドォ!?
「ちょっ!? それはちょっと強すぎるんじゃない!?」
「おっ、ようやくまともに驚いてくれたな明日香! 今までのどこか余裕がある表情とは全然違って、結構かわいいところもあるじゃねえか!」
「かわっ!?」
そして突然の不意打ちに一気に顔が熱くなる! な、なんて精神攻撃を仕掛けてくるのかしら十代は! 嬉しすぎて冷静な判断ができなくなっちゃうじゃないの!
「さぁ、解決だ! ブレイズマンをチェーン1、エアーマンの他の『HERO』の数だけ魔法・罠を対象を取らずに破壊する効果をチェーン2で発動するぜ!」
「! チェーン3で私も――」
ビイィィーッ!!!
「ふぇっ!?」
「えっ!? な、なんで……!?」
チェーン合戦の応酬をしていると、突然耳を劈くような音がデュエル場に響き渡って、私も十代もデュエルから意識が離れる。
そして音がした方を見ると、そこには携帯片手ににこにこ笑う
「白熱しているとこ悪いですけど、時間切れでーす!」
「もう寮に戻らないと流石にマズいですわぁ~!」
……ああ、もうそんな時間。
まぁ4ターンもデュエルしていたら時間もそれなりにかかっちゃうわよね。
「勝負はお預けのようね十代。残念だけど」
「……ああ、そうだな。仕方がねーか」
ソリッドヴィジョンが消えてデュエルが終わる。いいところだったんだけどねぇ……。
まぁ、ある程度私のことを十代に知ってもらえたし、良いかしらね。
「それじゃあね、十代。明日授業で会いましょう。あんまり問題になるようなことはしないで頂戴ね? その、問題起こして退学なんて……そんなの悲しいから。あと返事、いつでも待っているわぁ」
「お、おう!」
人差し指を唇にあてながらウィンクしてあげると、顔を真っ赤にして目を反らしながらも返事をしてくれる。ああ、かわいい。
あ、ちなみに、廃寮に行くおまえが言うことじゃないだろ、とか思ったそこのアナタ! 私が行くわけないでしょうが、行ったって吹雪兄さんに会えないのがわかってるんだし。
「あ、ちょっと待ってくれ明日香!」
「?」
「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」
「!! ふふっ」
消化不良だっただろうに、なんともいい笑顔をくれるじゃない。しかも願ってもない、十代本人からの生ガッチャはその、なんとも、クルものがある。
私も彼に倣って……でもちょっと意地悪してあげて、唇を経由してからそのまま彼と同じガッチャのポーズを返してあげた。十代がどんな表情をしたのかは、すぐに背を向けたからわからないけど……楽しみは取っておくものでしょう?
それにガッチャの語源は『I got you』……『してやったり』、そして『アナタを捕まえた』なんだから。
「いやぁ、強かったですねぇ、明日香さん」
「入学試験のときのデュエルも痺れるものがありましたが、今回もなかなかなものでしたわぁ」
「ええ本当に……」
デュエル場を後にして女子寮に向かう途中、さっきのデュエルについて二人と話す。
本当に、本当に末恐ろしい腕だったわ。
すぐに相手の妨害に適応してくるその対応力、そして貫通力はクロノス先生とのデュエルでずば抜けていることは知っていたつもりだったけど、実際に対峙すると厄介なことこの上なかった。
今回はわからん殺しをしたから何とか耐え抜けたけど、次はこうも行かない。十代に後攻を取られるのは危険ね。どれだけ強い盤面を作っても強引に突破してそのまま勝ち抜く勢いがある。
「明日香さん、あの最後のリバースカードは何だったんですか? 発動しようとしていましたけど」
「ああ、これよこれ。2ターン目にドローしたんだけど……多分、ちょっと遅かったわよね」
「え、遅かった? いえ間に合っていますわよ? むしろこれを使えば詰ませることもできたのでは?」
「それならいいんだけどね」
なんとなくだけど……そのカードを発動しても、ダメだったんじゃないのかしらと思ってしまう自分がいる。
あの罠カード……『マジスタリー・アルケミスト』を発動された瞬間、なんとなく天秤が十代の方に傾いたような感覚があったもの。デュエルの結果はお預けになっちゃったから、確かめる術がないのがもどかしいわ。
「まぁ、良いわよ。目的は達成できたんだし。デュエルもできた。なかなか上出来でしょう?」
「ええ、ええ、明日香さま本当に大胆でしたわぁ!」
「まさかあんなに恋愛強強女子だったなんて、詳しく聞かせてもらいますからね明日香さん」
「ふふっ、いいわよ」
今日の私は気分が良いもの。たっぷり聞かせてあげましょう。
なぜか、このあとの歓迎会で、ふたりは好き好んで食べている甘いものを徹底的に避けて、どちらかというと薄味のものばかり食べていた。
なんでももう色々な意味でお腹いっぱいだけど、お腹が減っているから負荷がかからないものを食べたいとかよくわからないことを言っていたけど……さっきまであんなに元気だったのに、どうしちゃったのかしらね?