晴天の中、パライストラ修練場にて2人の聖闘士候補生が戦っていた。
片や言わずと知れたリタ、片やモブリオというモヒカン頭が特徴の男子学生だ。同じ宿星の持ち主で
「ヒャッハー! 今日こそその気取った顔をぶちのめしてやるぜ!!」
「仮面つけてるから顔なんて分かる訳ないでしょうに」
無数の音速拳がリタの顔スレスレを掠める。ただ闇雲に放つのではない。速度を調節して一発一発を躱しにくいよう配置されていた。
(下品な口調に似合わず意外と考えていますわね)
「リタちゃん、頑張れー!!」
「会長! 今こそあなたの真の力をお見せください!!」
防戦一方の自分に対して友人とシンパの声援が投げかけられる。
正直言うとリタは
聖戦とは神々との戦い。四肢欠損なんて優しいもので、精神崩壊して廃人化するものだっている。先の戦いでは12人の黄金聖闘士が全滅するほど凄惨なものだ。この体の持ち主が鬱となり精神的に不安定だったのも頷ける。
(だとしても!!)
少なくとも自分より弱い者に
「属性がないと不便だなぁ! 同情するぜ! でもな、半端な力で挑んだテメェが悪い! クラッシャーウェーブ!!」
モブリオの
瓦礫の濁流がリタを飲み込もうとした瞬間、彼女も
「流星脚!!」
ただ
「ば、バカな!?」
蹴りによって生み出された真空の衝撃波が空気の断層を作り上げ、クラッシャーウェーブの威力を完全に塞き止めていた。それどころではない。削り取られていく。身に着けた技が、属性攻撃が、時代遅れの技に破られようとしているのだ。その光景はモブリオにとって悪夢だった。
「何を驚いていますの。属性なんてなくても先輩達は氷やら炎やらを出していた事は授業で学んだでしょう?
次の瞬間、リタは一足飛びでモブリオの懐に飛び込む。自慢の技を破られ呆然自失の彼に攻撃を防ぐ時間も気力もなかった。
「ライジングスパイク!!」
強靭な脚力から生じた蹴りがモブリオの顎を天高くカチ上げる。そのまま頭から落ちて失神したのを立会人が確認して勝ち名乗りを上げる。
「勝者、リタ!!」
◇
(さて、いよいよですわね)
取り敢えずライバル達を蹴散らしたが、ここからが本番だ。いくら
まぁアテナの信仰心も薄く、戦う事にも臆病な者など向こうから願い下げだろうが。
リタの師曰く、聖闘士には3つの才能が必要とされる。
一つ目は肉体。
二つ目は
三つ目は精神。いかに上二つの才能に恵まれていても、心優しい性格の者に
この3つを兼ね備えなくては入口にすら立てない。
例外もいるが、大成できる確率は宝くじを当てるより低い。
果たして、
これで
「さぁリタ。
イオニア学園長の言われるがままに壁一面に嵌め込まれた無数の宝石――
リタは無駄に高めない。
自分の今の心情を込めて静かに燃焼させる。別に狙いがあってやっている訳ではない。ただお願いを聞いて貰うという身なのに、がなり立てるような真似はしたくなかっただけだ。
‶この世界に祝福あれ″
すると祈りが通じたのか、一つの
光が
「おめでとう。これでキミも正式に
「はっ! アテナの為、地上の平和の為に、この力を尽くす事を誓います」
イオニアの前に跪きリタが宣誓する。
賭けには勝った。しかし、これが後々吉と出るか、凶と出るか今のリタには分からなかった。