聖闘士星矢OMG   作:マルク

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昨日の今日なのにサクサク書けた事に驚いています。


聖闘士の資格

 

 

晴天の中、パライストラ修練場にて2人の聖闘士候補生が戦っていた。

 

片や言わずと知れたリタ、片やモブリオというモヒカン頭が特徴の男子学生だ。同じ宿星の持ち主で聖衣(クロス)争奪戦のライバル。今はその継承戦の真っただ中である。

 

「ヒャッハー! 今日こそその気取った顔をぶちのめしてやるぜ!!」

 

「仮面つけてるから顔なんて分かる訳ないでしょうに」

 

無数の音速拳がリタの顔スレスレを掠める。ただ闇雲に放つのではない。速度を調節して一発一発を躱しにくいよう配置されていた。

 

(下品な口調に似合わず意外と考えていますわね)

 

「リタちゃん、頑張れー!!」

 

「会長! 今こそあなたの真の力をお見せください!!」

 

防戦一方の自分に対して友人とシンパの声援が投げかけられる。

 

正直言うとリタは聖闘士(セイント)になる事に懐疑的だ。どんな美辞麗句を並べようと聖闘士(セイント)は体が資本。活動できる期間もせいぜい30~40代が限界だ。人の一生を100年と考えれば、残りの70年は聖闘士(セイント)以外の道を歩まねばならない。ならばいっそのこと勉学に専念して文官として聖域(サンクチュアリ)に貢献した方が利口ではないだろうかと考えている。

聖戦とは神々との戦い。四肢欠損なんて優しいもので、精神崩壊して廃人化するものだっている。先の戦いでは12人の黄金聖闘士が全滅するほど凄惨なものだ。この体の持ち主が鬱となり精神的に不安定だったのも頷ける。

 

(だとしても!!)

 

今の(・・)リタの信条は困難があればぶち抜くというもの。

少なくとも自分より弱い者に聖衣(クロス)を譲ってしまえば、それは彼を生贄に我が身を守った事になる。そのような醜い生き方をする気は――ない。

 

「属性がないと不便だなぁ! 同情するぜ! でもな、半端な力で挑んだテメェが悪い! クラッシャーウェーブ!!」

 

モブリオの小宇宙(コスモ)が高まり、聖闘士(セイント)の新たな力である属性技が発動する。大地が隆起して破砕し、小規模な土石流が発生した。

 

瓦礫の濁流がリタを飲み込もうとした瞬間、彼女も小宇宙(コスモ)を燃焼させる。そしてすぐさま右足一本に集中させて技を解き放つ。

 

「流星脚!!」

 

ただ小宇宙(コスモ)を込めただけの音速蹴りの弾幕。聖闘士(セイント)からすれば呆れるほど簡素な技だ。未だにそんな技を使ってるのなんて聖域(サンクチュアリ)にいる老人(ロートル)ぐらいだろう。しかし、それがモブリオを驚愕させた。

 

「ば、バカな!?」

 

蹴りによって生み出された真空の衝撃波が空気の断層を作り上げ、クラッシャーウェーブの威力を完全に塞き止めていた。それどころではない。削り取られていく。身に着けた技が、属性攻撃が、時代遅れの技に破られようとしているのだ。その光景はモブリオにとって悪夢だった。

 

「何を驚いていますの。属性なんてなくても先輩達は氷やら炎やらを出していた事は授業で学んだでしょう? 聖闘士(セイント)の戦いはいつも――小宇宙(コスモ)によって決まるのです!」

 

次の瞬間、リタは一足飛びでモブリオの懐に飛び込む。自慢の技を破られ呆然自失の彼に攻撃を防ぐ時間も気力もなかった。

 

「ライジングスパイク!!」

 

強靭な脚力から生じた蹴りがモブリオの顎を天高くカチ上げる。そのまま頭から落ちて失神したのを立会人が確認して勝ち名乗りを上げる。

 

「勝者、リタ!!」

 

 

 

(さて、いよいよですわね)

 

取り敢えずライバル達を蹴散らしたが、ここからが本番だ。いくら小宇宙(コスモ)を高めても、武勇を見せても、最後に相棒に相応しいかを決めるのは聖衣(クロス)だ。聖衣(クロス)はただの防具ではない。彼らにはまぎれもなく意思がある。彼らに認められて初めて聖闘士(セイント)となれるのだ。

 

以前の(・・・)リタはここで躓いた。

 

まぁアテナの信仰心も薄く、戦う事にも臆病な者など向こうから願い下げだろうが。

リタの師曰く、聖闘士には3つの才能が必要とされる。

 

一つ目は肉体。感覚(センス)もそうだが、壊れにくい頑丈な肉体がなくては過酷な修行には耐えられない。

 

二つ目は小宇宙(コスモ)。技を発動させるガソリンのようなものだ。他にも身体強化や治癒力向上などの利点がある。修行によってある程度増量させられるとはいえ、生まれつき怪物級の者がいるのがこの世界の理不尽なところだ。

 

三つ目は精神。いかに上二つの才能に恵まれていても、心優しい性格の者に聖闘士(セイント)は向いていない。所詮は戦士だ。他人を傷つける事に躊躇っていては格好の的になる。

 

この3つを兼ね備えなくては入口にすら立てない。

例外もいるが、大成できる確率は宝くじを当てるより低い。

 

果たして、今の(・・)自分はどうだろう。

これで聖衣(クロス)から拒絶されようものなら潔く諦めよう。本格的に文官を目指すつもりだ。両親は失望するだろうが仕方ない。いい加減、彼らには現実を受け止めてもらおう。努力や執念だけでは成せぬ事もあるのだと。人はそれを運命という。

 

「さぁリタ。聖衣石(クロストーン)の前に立ちなさい」

 

イオニア学園長の言われるがままに壁一面に嵌め込まれた無数の宝石――聖衣石(クロストーン)の前に立つ。そして小宇宙(コスモ)を高めていく。この呼びかけに応えた石こそがリタの聖衣(クロス)で彼女の宿星だ。

 

リタは無駄に高めない。

自分の今の心情を込めて静かに燃焼させる。別に狙いがあってやっている訳ではない。ただお願いを聞いて貰うという身なのに、がなり立てるような真似はしたくなかっただけだ。

 

‶この世界に祝福あれ″

 

すると祈りが通じたのか、一つの聖衣石(クロストーン)が淡い光を発する。

光が聖衣石(クロストーン)とリタを繋ぎ包み込む。眩い閃光が室内を照らし、光が静まると彼女の体には青紫色の鎧とも衣服ともいえる不思議な防具が装着されていた。螺旋状の一本角が特徴のヘッドギア。その聖衣(クロス)の名は――

 

「おめでとう。これでキミも正式に聖闘士(セイント)だ。これからは一角獣座(ユニコーン)のリタと名乗ると言い」

 

「はっ! アテナの為、地上の平和の為に、この力を尽くす事を誓います」

 

イオニアの前に跪きリタが宣誓する。

賭けには勝った。しかし、これが後々吉と出るか、凶と出るか今のリタには分からなかった。

 

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