少女は記憶を胸に   作:クロケル

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契約

対策委員会のみんなとヒフミで銀行強盗をし、ブラックマーケットから出る。

銀行強盗によって得たお金はホシノの説得により、置いておくこととなった。

そのまま、追いかけてくるだろうマーケットガード達の手によって回収されるだろう。

そんなこんなで急いでアビドスへ向かい集金記録を確認する。

 

集金記録を見てみたところ、返済していた借金は案の定、闇銀行に流れていて

さらに闇銀行から、ヘルメット団へ流れていたことが分かった。

つまり自分たちを襲う金を自分たちで出していたということだ。

 

困惑に包まれる対策委員会とヒフミだったが、すくなくとも

借金返済をする先であったカイザーローンは黒であり、どういうわけか、

負債者をわざわざ襲いにきている。どういうわけなのだろうか?

 

考え込んでいると、夕日に照らされて我に返る。

そういえば対策委員会ではないヒフミはそろそろ帰らなければ、帰りつかないかもしれない。

 

"…そろそろ、お開きにしようか"

私の声で考え込んでいたみんなの意識を引き戻す。

 

「そうですね~そろそろお開きにしましょうか~」

私の声に賛同するように、ノノミは扉を開けて、通るようにジェスチャーをする。

 

そんなこんなで、アビドスの校門の近くでヒフミが帰るのを見送る。

「うへ〜おじさん疲れたよ〜もうこんなことはこりごりだね〜」

「そういえばグリムさんはどうしたんでしょうか……?」

 

アヤネの話を聞いて、半ば忘れかけていたグリムのことを思い出す。

彼女のおかげで追手はほとんど来なかったのだろうが、お礼を言えていない。

次に会ったときでもお礼を言おうか。

 

「助けてもらったけど…結局、何が目的なのかしら」

「厄災を防ぐ、と言ってましたけど本当にそれなんでしょうか〜?」

……確かに彼女は、会ったときに厄災を防ぐためと言っていた。

 

その結果がヘルメット団の襲撃なのはよく分からない。

今回の銀行強盗も直接ではないものの手伝ってくれた。

厄災を防ぐ、というのとあまり結びついていない気がするが……

本当に何をしようとしていたのだろうか。

 

「えっと…今日は楽しかった…というと何か変ですが楽しかったです!ありがとうございました!」

「うへ~ありがとうね~ヒフミちゃん。また会おうね~」

 

帰っていくヒフミを見送り、住居代わりにしている教室へ戻る。

銀行強盗、というハチャメチャな手段をとったが結果としては対策委員会とヒフミも打ち解けてくれた。

最後の見送りの様子を見ると仲良くなるはずだ。

 

グリムも……

この場にいたのなら打ち解けてくれたのだろうか。

銀行強盗の前に休憩したときの様子は普通の少女のようで……

 

彼女はどういう立場なのだろうか?

停学しているのか、退学しているのか?そもそもどういう立場なのか?

そもそもどうして厄災のことを知っているのか?

 

そんなことを考えながら早急に処理をしなければならない書類を進める。

『先生!その書類が終わったらさすがに寝てください!』

"アロナ…今日提出の書類はあと3枚ほどあるんだ……"

 

『そうですけど!一度休んでください!さすがに死んでしまっては元も子もありません!』

確かにその通りだが…書類が終わらなかったことで困る人がいるのは事実だ。

こちらの不手際であまり迷惑をかけたくない。そんなことを考えながら手を動かす。

 

『仕方ないですね…今日の分が終わったらすぐ寝てくださいね!』

"あはは…さすがにそうするつもりだよ……"

書類の話にすっかり気を取られてしまった私は、

グリムのことを一度おいておいて、目の前の書類に向き合う。

 

"ふぅ…頑張るか"

 

翌朝、結局期限ギリギリのタイミングで提出を完了し、

そのまま新しい書類に手を付けようとした私はアロナによって説得され、眠り。

目が覚めたので、生徒会室へ向かう。

 

扉を開けるとホシノが寝転がっている。

起こして何か話でもしようかと考えているとノノミが入ってくる。

私が扉を開けた時の音ですでに目が覚めていたのか、すでに起きようとしていたのだろうか。

 

「お、ノノミちゃん~それに先生も~いや~二人が来てくれてよかったよ~おじさん少し出かけてくるね~」

目が覚めて、用事を思い出したのか急いで部屋を出ていく。

 

去り行くホシノにわずかな違和感を感じた私は急いで話を聞こうとするが…

バタンと扉を閉める音によって拒絶をされたように感じた。

 

「先生どうかしたんですか~?」

私がホシノに何かを話そうとしている様子を見ていたノノミが私に声をかけてくる。

 

"…気のせいかもしれないけど、何か違和感があって……"

「大丈夫ですよ~多分ホシノ先輩はお昼寝しにいっただけですよ~」

 

…私よりも仲がよいであろうノノミがそういうのならきっと大丈夫なのだろう。

「そうだ~!先生!膝枕させてくれませんか~?」

考えている私を慰めようとしてくれているのか、ノノミが提案をしてくれる

"…それならよろしくお願いしようかな"

 

 

 

 

 

キヴォトスのとある場所

そこのオフィスではひとりの少女と大人が向かいあう。

「ようこそおこしくださいました。小鳥遊ホシノさん」

 

前進真っ黒で、とてもじゃないが人とは思えない見た目をした大人が話始める。

「…黒服。今度は何の用?」

警戒心をあらわにしているホシノを前にして、黒服は話を続ける。

 

「再度提案をさせていこうと思いまして…」

「提案?ふざけないで!それはもう……!」

黒服の言葉に激しい怒りを向けるホシノに対して落ち着いて黒服は話を進める。

 

「まあまあ落ち着いてください」

「……!?」

黒服になだめられた様子のホシノは非常に驚いた様子で席に座る。

 

「あなたにとって興味深く、断れないような提案でしょう」

困惑したままのホシノを前に、黒服は笑う。

 

「実は同様の提案を、別の方にもさせていただいたのですが……」

表情は一切わからないが、どこか残念そうな声色に変わる。

 

「残念ながら、断られてしまいましてね。」

「彼女って誰?」

当然ともいえる疑問を持つホシノを前に黒服は一言。

 

「ふむ…アイスブレイクの話題程度に話しておきましょう。ワイルドハントの亡霊、グリムさんのことですよ」

困惑は解消されず、むしろ深まったホシノを前に黒服は提案の内容の話をし始めた。

 

ーーーその内容はホシノを動揺させ、悩ませるのには十分な内容だった。

 

 

 

 

 

時は遡り、アビドスの廃墟群の一つにて

「やっぱりないかぁ」

私、ヘリアは探索をしていた。

 

先生が解決できることを祈るつもりではあるが、やはり阻止できるなら阻止したい。

しばらく探索を繰り返しているが成果という成果を得られていない。

先生の援護をするのに専念するべきだろうか…?

 

いや、オーパーツを集めておいてアレを突破できるのならば私がやっておいた方がいい。

先生にはみんなとの縁を結んでもらって何かがあった時に私は助けられるようにしておく。

すくなくとも今はアビドス高校に住んでいるのだから護衛がいない状態で外に出たりしないだろう。

 

大丈夫、先生なら上手くやれる。

そんなことを考えながら廃墟を移動しようとしていると、前方に人影が見える。

全身が真っ黒で、顔にひび割れがある特徴的な姿は……

 

「初めましてグリムさん、私は黒服と言います」

厄災によって滅んだらしいゲマトリアの一人。

そして、ホシノに取引を仕掛けたりする悪辣な大人。

 

どうしてそんなヤツが私の目の前にいるのだろうか。

そもそもゲマトリアがどういう組織なのか教えてもらえなかったため、

私が知っているのは迷惑な奴らということだけだ。

 

アビドスでは黒服のように迷惑な契約か何かで振り回され、

エデン条約のときには黒服以外のゲマトリア、特にベアトリーチェとかいうロクでもないヤツに振り回された。

 

…少し考えが過激になっていたようだが、ひとまず気持ちを落ち着ける。

こいつらが何をしでかすかわからないが少なくとも対話の余地はあるようだ。

 

それにヘイローを破壊する爆弾、という物騒極まりないものもあるのだから、

黒服が持っているかもしれないことを考えると銃を向けずに話を聞いてみるのが得策だろう。

 

考えを整理して黒服に向き合う。

「なんの用?」

 

落ち着いて対話をしてくれることが嬉しかったのかはたまた意外だったのか分からないが、

クククッと変な笑いを浮かべたかと思えばそのまま話を戻す。

 

「いえ、提案をしようかと思いまして」

取引の提案を黒服はしようとしている。

…こいつらの提案に乗ってろくなことにはならないことは十分に理解している。

 

ここは提案の内容だけ聞いて拒否するのが一番の得策か?

厄災についての情報ならともかくこいつらは襲撃されて壊滅されるらしいのだから、何も知らないのだろう。

 

「いえ、キヴォトスでも類をみないほどの神秘を持つあなたに実験に協力してほしいのですよ」

これはおそらくホシノがされそうになっていた実験のことだろうか?

未来の私にこんな話をしていなかったはずなのだから、今の私は何かが違うのだろうか?

 

「見返りとしては…そうですね、要相談ということで」

私の要求する内容が分かりかねているのか、

それともわかっていてこんな態度なのかはわからないが、どこまで要求できるのかもわからないうえ

ホシノがアビドスのことも先生のことも強く信頼するために必要な契約が行われないと困る。

 

「ずいぶんとふざけた内容だな」

私の発言を聞いて、どうやら無理そうだと悟ったのか、笑いながら黒服は話始める。

 

「クックック、これは手厳しい。それならば今回はここを去りましょう」

すこしは粘着してくると思っていたが、案外そうでもなく、

どのような手段を使ったのかわからないが、黒服の姿はすでに消えていた。

 

厄介なものに目を付けられてしまったのかもしれない。

そんなことを考えながら帰路につく。

 

帰ったらひとまず今後の予定を確認しておかなければ。

「はぁ……」

思わずため息が出てしまった。

一息ついて気持ちを落ち着ける。

 

先ほどまで黒服が経っていた砂の上を歩いてみれば、

まるで先ほど誰かがいたのがウソのように、砂の感触が伝わってきただけだった。

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