先生の動向を観察していたが、そろそろだろうか?
便利屋と和解し、風紀委員と接触して縁を結んだ。
アコの発言に違和感を持ったことにより、アビドスの土地をカイザーに売っていることに気が付くのは。
そんなことを考えながらアビドスの様子を見ていると、
どうやらカイザーの基地の方向から出てくる。
ホシノが少し考え込みながら移動しているように見える。
おそらく未来のまま、彼女は黒服に連れられて
実験をされそうになったところで騙されたことに気がつくだろう。
先生が黒服に覚悟を示すかどうかの確認をして、カイザーへの襲撃を開始する予定だ。
先生なら示してくれるはずだから問題はないが……
みんながアビドス高校に帰ったのを確認して立ち去る。
先生のアビドスでの予定は詳しく把握できていなかったがさすがにそろそろわかる。
ホシノが黒服の契約に乗り、
対策委員会のみんなでカイザーPMCに殴り込みに行きホシノを救出する。
…もっとも私が把握できているのはホシノ救出までのタイムラインだけだ、
未来の私はホシノ救出のためにシャーレから来たらしいのでそこからは不意の遭遇はないはずだ。
ひとまずカイザーの基地へと行き、戻ってきたことを考えると未来の記憶だよりで計画を立てるのは問題ない。
気持ちを落ち着けて、今日向かう予定だったポイントへ向かうことにした。
カイザーの基地から帰ってくる。
あの場はカイザー理事が大事にしなかったおかげで助かったが、
どういうことなのかわからずに困っている対策委員会のみんなと一緒にアビドスに戻ってきた。
対策委員会の全員が部屋に入るなりセリカが口を開く。
「いったい何なのよ!あいつら!」
セリカのしゃべり方からもわかるが、激しい怒りと、困惑が伝わる。
「カイザーコーポレーションは何を企んで…?」
「宝物を探しているらしいですが~」
シロコもノノミもなのを考えている中、椅子に座り口を開く。
「しかし砂漠にはなにもないことが調査で分かっています……」
「そう考えると、デタラメなのかもしれないけどね~おじさんには難しいや~」
アヤネもホシノも、口を開き始めたが結局カイザーが何をしようとしているかはわからない。
再び沈黙が訪れてしまう対策委員会
"もしかしてなんだけど…"
私が話始めたこともあり、視線が集まる。
"厄災とお宝が関係あるのかな?"
グリムの言っていた厄災、わざわざアビドスまで来ていることを考えると、
何かしらのつながりがあるのだろう。むしろ関連性がない可能性が低い。
…もっとも、双方がウソをついている可能性もあるが。
「可能性は…考えられますね……」
「けど本当にそんなものがあるのでしょうか?」
しかしグリムの言う厄災が本当に存在するのなら、なにかあると考えるのが自然だろう。
ただアビドスの地下には何もないことが調査で分かっているらしい。
すべてを掘り返したわけではないのだから、彼女の言う厄災が調査に引っかからなかったのだろうか?
「分からないけどひとまずは借金のことよ!」
「確かに目の前の問題を対処しないとね~」
厄災のことはひとまず置いておくしかない、ウソの可能性があることを考えると
ひとまずは目の前の借金を対処するのが先決だろう。
グリムの言っていた厄災がいつ来るかもわからないのだ、
そもそも対処すらできない可能性もある。
30倍になった利息に、一週間で3億円を保証金として支払わなければ破綻。
つまりアビドス高校は存続不可能となり、カイザーの手に渡ってしまう。
「まっとうな方法じゃ間に合わない……行ってくる」
シロコが席を立って、扉からでようとする。
「まってください!」
立ち上がったアヤネによってシロコの動きが止まる。
「せっかくホシノ先輩に止められたのに結局犯罪をするんですか!?」
「けど……」
喧嘩へとなってしまったシロコとアヤネ、見つめあっている二人。
「まぁまぁ落ち着いて~」
双方に手を向けながら、ホシノが仲裁に入った。
「焦ってもいいことはないよ~一旦落ち着こうね~」
仲裁に入ったホシノのおかげか、ヒートアップしていた二人も落ち着きを取り戻したのか、
先ほどの焦った様子からいつもの様子に戻っている。
「今日は解散ね~落ち着いてまた明日話そうか~」
"…そうだね、いったん休んで考えようか、また明日ね"
私とホシノの意見に納得してくれたのかノノミとアヤネ、セリカは家に帰り、私とシロコにホシノだけが残った。
「うへ~二人ともどうしたの~」
私ともシロコとも目を合わせようとしないホシノは、平静を装っている様子でこちらに話をしている。
「ホシノ先輩、話がある」
"私も"
シロコも話がある、私と同じだ。
ホシノに話をしようとしているようだ。
「さすがにおじさんも疲れちゃったから休みたいなぁ~明日でいい~?」
そういわれてしまうと私も弱い、確かに今日あった出来事は私たちを疲れさせたのだ。
「先生……」
シロコがこちらを見ている。
確かに休んだ方がいいのは事実なのだが……。
悩んだが、同意するようにうなずく、大丈夫なはずだ。
「じゃあ、また明日」
そんなことを言ってシロコは部屋から退出する。
「それじゃ先生もまた明日ね~おじさんも早く寝たいから」
"ホシノ"
名前を呼ぶ、取り返しがつかないようなことをしそうになっている気がする。
二人しかいない部屋、月光が差し込んできて私たちを照らす。
外の風の音も、部屋に置いてある時計の音も、やけに大きく聞こえる。
"この退部・退会届は何?"
みつかると思っていなかったのか動揺している様子のホシノ
まるで親に秘密がばれてしまった子供のようにビックリしているホシノの説明を聞く。
「うへ~見つかっちゃったか~シロコちゃんがとったのかな~?」
「シロコちゃんに叱っといてよ~ろくな大人にならなくなっちゃう」
それでもなお、話をそらそうとするホシノ
"でも今はこの紙の説明をしてほしいな"
私の追求に観念したのか、ため息をつくホシノ
「…仕方ない説明しよっか、歩きながらでいいよね?」
"…いいよ、少し歩こうか"
真っ暗な校舎、歩く足音がやけに大きく聞こえながら、ホシノについていく。
「いや~砂が多いねぇ~」
「少しは砂嵐が減ってくれたらいいんだけどね~」
そう語るホシノの様子は嬉しそうで。
"ホシノは…"
私の言葉に何が続くのだろうと思っているのかホシノが私を見つめる。
"この学校が好きなんだね"
私の言葉が意外だったのか驚いているようだ。
「うへ~そう思っちゃう?」
結局話を聞けていない。私の手元にある紙の説明を。
「…仕方ないかぁ、実はね私は提案を受けてるんだ、それも二年前から」
二年前、まだ彼女が一年生のとき。
その時から一体どんな提案を受けているのだろうか。
「カイザーコーポーレーション…私たちの借金相手、そこにいるヤツから提案を受けてるの」
そう語るホシノはどこかあきらめているようで
「まあでも大した話じゃないよ〜」
"どんなヤツなの?"
ホシノに提案をしてきた存在。
カイザー側にいるのにそんな提案をする奇妙な存在を知っておかなければ。
「分かんない、私は黒服って呼んでるけど……」
黒服、覚えておこう敵になるかもしれない存在。
「キヴォトスのどこを見ても、似たような奴はいなさそうなくらい変なヤツなんだよね~」
"ホシノから見て、黒服はどんなやつなの?"
そう聞くとホシノは考えがあまりまとまらないのかたどたどしく話始める。
「黒服ってさ〜変なヤツなんだよね〜おじさんだけじゃなくてさ〜」
「グリムちゃんにも同じような話をしたみたいなんだよね〜」
彼女も?どうして黒服はホシノとグリムに目を付けたのだろうか。
話終えたホシノは私が手に持ったままにしていた紙を手に取り破り捨てる。
「ふぅ、スッキリした~気の迷いだからさ、気にしないでよ~」
ホシノの違和感は消えていない。それどころか強くなったように思う。
「ま、先生今日は休みなよ~おじさんも疲れちゃったから寝たいな~」
違和感のあう様子のままホシノは校門のほうへ向かう。
「さよなら、先生」
これ以上話してもはぐらかされてしまいそうだったがこれだけは伝えておかなければ。
"ホシノ…何をしようとしてるかはわからないけど……"
"私は諦めないよ"
これが私のエゴなのはわかっている。それでも。
"私が大人として、何とかして見せるから……"
先ほどの寂しそうな様子から、
どうしてそんなことをといったばかりに目を見開いているホシノ
"…だから!また明日話し合おうね!"
私の言葉をゆっくりと飲み込んだ様子のホシノは私を見つめる。
「うへ~そんなおじさん元気がなさそうだったかな~?」
「うん、でも……ありがとう、先生」
走り去って行ってしまったホシノを前に取り残された私も、借りている教室へともどったのだった。
翌朝、走る音で目が覚める。
目が覚めて人を迎える準備をしていると、勢いよく扉が開かれる。
「先生!大変なんです!ホシノ先輩が……」
明らかに平常ではないアヤネを落ち着ける。
"落ち着いて、一旦深呼吸してみて"
私の言葉で落ち着つかなければと思ったのか、アヤネは深呼吸をし始める。
走ってきたからか、絶え絶えだった息も深呼吸によって落ち着いていく。
息を整えおわったアヤネに聞く。
"ホシノに何かあったの?"
先程まで深呼吸をしていた口は、次第に状況を語り始める。
「実は……ホシノ先輩が、退学届をおいてどこかに消えてしまっていて……!」
話を聞くとどうやらホシノは何の相談もせず退学届を提出したらしい。
「それで今は対策委員会のみんなを急いで呼んでいます……」
"分かった、ひとまずみんなに話を聞いておこう"
はい、と頷いているアヤネに連れられ対策委員会の使用している教室に入る。
私達が教室の扉を開けると、すでにホシノ以外のメンバーは集まっていた。
すでにモモトークで事情は共有しているようで、話し合いをしているようだ。
"おはよう、ホシノについて何か知ってることはある?"
私の質問にそれぞれが手紙に視線を向ける。
彼女たちの座っているテーブルの上の封筒から出したのであろう手紙を手に取る。
対策委員会のみんなへと書かれた手紙もホシノが書いたようだ、中に何か書かれているかもしれない。
急いで手に取り手紙を読む。
みんなへ
こうやって手紙で別れを伝えちゃってごめんね。
おじさんにはこんなやり方が性にあってるからこうさせてもらうね。
実は私、昔からカイザーにスカウト受けてたんだ。
おじさんの力を買ってくれてたみたい。多分、借金のことはなんとかなると思う。
少なくとも、大半は無くしてくれるみたい。
全部は解決できないけど、なんとかなるはず。
直接は力になれないけど……頑張ってね。
先生へ
大人のことは嫌いだったんだ。最初シロコちゃんに連れられてきたときに信用できないと思ってた。
最後に先生にあえてよかったよ。シロコちゃんのこと、ちゃんと見張ってあげてほしい。
私はもうできないから。それからグリムちゃんに次会ったら、私の代わりに謝っておいてあげて。
彼女はどういうわけかはわからないけれど、シャーレに人を集めたがっているみたいだから、
私が力にならなくなってごめんって。
シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん
私たちの学校を守って。みんなにとっても私にとっても大事な母校だから。
もし私と敵対することがあれば、その時は私のヘイローを壊して。
ホシノの手紙を読み終える。震えてしまう手を必死に抑える。
私の力が足りなかったから、ホシノにしたくもない選択をさせた。
すでに読んでひとしきり激情を吐き出した対策委員会のみんなの沈黙が痛い。
私が先生としてやることは、すでに決まっている。
"直接文句を言いに行こう"
私は多分、ほとんどわかっていない。
しかしホシノが、一方的に逃げることは、アビドスの借金によって、したくもないだろう選択をすることは。
私は許容できない。すくなくとも話し合いをするべきだ。
「でも、ホシノ先輩の場所が分からないと……」
話し合いをしていると、爆発音が聞こえる。
「カイザーPMCがこちらに進軍してきています!」
扉を勢い良く開けたカイザーPMCの兵士を急いで鎮圧し、校内の制圧を優先する。
ここまで来られたことを考えると早く鎮圧して、理由を知らなければ。
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