お手数ですが回答いただけると幸いです。
アビドス高校に戻って、対策委員会に事情を説明する。
一刻でも早く、ホシノを助けたい気持ちは同じだ。
しかしそのためにも、私は冷静で無ければならない。
すでにある程度の準備を整えており、いつでも出発できそうだ。
しかし相手は仮にも企業だ、それも民間軍事会社。
半端な戦力、とまでは言わないが、対策委員会だけで乗り切るのは困難だろう。
手を貸してくれるところすべてに助力を願ったほうがいいだろう。
可能性がありそうなものはどれだろうか。
相手は企業だ、直接の助力は敵対とも取られかねない上、
間接的に関与したとしてもあまりよい態度は取られないだろう。
そう考えると学園から援助をもらうのは厳しいだろう。
できたとしても偶然で誤魔化せる範囲だ。
便利屋68、ゲヘナの風紀委員会は交渉次第で
直接は難しいかもしれないが間接的には助けてくれるかもしれない。
ヒフミとの縁から、トリニティそのものから援助を受けられれば
運がいいのだが……可能性は高くないだろう。
ミレニアムも同様だユウカに頼んでみるがこちらも望みは薄いだろう。
少しでも助けてくれるといいが……
それからグリム……はどうなのだろうか。
これまで話をしてきた限り協力はそれなりに
好意的に受け入れてくれるだろうか。
少なくともこちらに悪印象は持っていないと思う。
思うが、どこにいるのだろうか。そもそも居場所がわからない限り協力要請は無理だ。
もし会えたら聞いてみることにしよう。会えるだろうか……?
ひとまず明日、ゲヘナの風紀委員会とミレニアムの方に会いに行き、
その間にヒフミと便利屋68に連絡をして聞いてもらって貰う。
実際に襲撃をするのはその後だ。
急がないといけないがそれによって失敗してしまっては本末転倒だ。
失敗してしまっては、ホシノを取り返すことはできなくなってしまう。
できるだけ慎重に、それでいて迅速に手筈を整えなければ。
交渉を終えた帰り道、列車に乗りながら考える。
一緒に行っていた対策委員会のみんなを先に帰ってもらって
シャーレに寄っていたから、今は一人で電車に揺られている。
すっかり忘れていたが、そういえばアロナに頼んで
グリムの現在位置を調べてもらう……べきではないか。
おそらく他の誰かに見つかってしまうことはないだろうが、
積極的に調べてしまうのはよくない。
信頼関係をキチンと構築した後や緊急時に調べるのならともかく、
極めて個人的なお願いのためにプライベートを暴くのは
私の望むところではない。
…決戦は明日だ。
できるだけ早めてもらったが今日中に襲撃するのはどうしても無理だったので、明日になった。
確実に大丈夫とはいえないかもしれないが、
それでも充分な戦力と人員があるといえるだろう。
気持ちを落ち着ける。
月明かりの入る車内に、ガタンゴトンと揺れる列車の音が響く。
そんな車内のどこからか、足音が聞こえてくる。
挨拶をしようと顔を上げると、見覚えのある服装に仮面が見える。
「こんばんは、先生」
"…どうしてここに?"
なぜかグリムがいて、それもこちらに声をかけてきていた。
「少し用事があった」
"そっか"
気まずい沈黙がお互いに訪れる。
そろそろアビドスへ着くとのアナウンスが響く。
"お願いがあるんだ"
せっかく会えたのだから、ここで聞いておくべきだろう。
"これからカイザーPMCからホシノを取り戻そうとしてるんだ"
"手伝ってくれないかな?"
グリムは一言も話さずに私を見つめている。列車が停まる。アナウンスで降りるように促される。
何も言わずにお互いに扉から降りる。
列車の戻ってゆく音が小さくなっていく。
「…これから、私がすることを言ってなかった」
"グリムは何するの?"
駅にたった一つだけあるベンチに腰掛けたグリムを見つめる。
「カイザーPMC基地の襲撃に行ってくる」
"手伝ってくれるってこと…なのかな?"
「違う」
"どういうこと?"
少なくともやることは同じはずだ。
それなら手伝ってくれると考えてもいい気がするのだが。
「あなたを手伝うつもりはない。私は私の目的のために襲撃をする」
"それが厄災を防ぐために必要なの?"
厄災、彼女が防ぐために調査をしているらしいもの。
どうしてそのことを知っているのか、どのようなものなのか
私はわからない。黒服の言っていた死者でもあるというのが関係してるのだろうか?
「多分、そう」
多分、ということはもしかして厄災のことを詳しく知らないのだろうか。
それとも防ぐ方法がわからない?すくなくとも確実に防ぐ方法が分かってないから
調査をしているのだろう。
"グリム、聞いてもいい?"
名前を呼ぶ。仮面越しに、視線が合った気がした。
彼女が知りたいと考えている厄災が本当あるならば防いだ方がいいもので、
きっとほかの生徒のみんなも被害にあってしまう。
それなら私も一緒に防ぐように手伝ったほうがいいだろう。
と思っただけなのだが、どうにも様子がおかしいように思える。
「駄目」
声が震えていて、様子がおかしいように見える。
"まだ何も言ってないんだけど……"
「どうせ手伝おうかって提案でしょ。無理」
"そうなんだけど…どうしてダメなのかな?"
彼女の助けにもなりたいのもあるし、厄災を防ぎたいのもある。
少なくともどういった理由でダメなのかを知っておきたい。
「言えない。これ以上、話すこともない」
そういって駅の構内から出て行こうとする。
かなりの速足で、逃げたがっているように見える。
"もしも、助けが必要なら教えてね"
"頼りないかもしれないけど、私も力になりたいから"
走り去っていこうとしているグリムに呼びかける。
彼女が言えない、というなら踏み込んでもどうしようもない。
それでも、私が何か助けられるなら助けになりたい。
「…頑張ってね、先生」
私に激励の言葉をかけて、グリムは去っていった。
手伝ってくれないらしいけれど、私たちの助けになることは事実だ。
彼女が走った道筋だけが、砂の上に残っていた。
昨日グリムと会ってから少し
今、私と対策委員会はカイザーPMCの基地の本部に直接襲撃をするために移動している。
ヒナ達風紀委員会のみんなと便利屋のみんなには別の基地の襲撃に向かってもらった。
そんなこんなでカイザーPMCの基地へと来たのだが、どうも様子がおかしい。
入り口に配備されていたのであろう警備兵は倒れ、
ドローンは破壊され、通りたい放題となってしまっている。
臨時で何体かドローンがとんできたようだが撃ち落としてもらう。
「どうしたんでしょうか〜」
「警備員の一人も派遣できてない」
ノノミも、シロコも、同様らしい。
襲撃に来ている私たちから見ても明らかに異常だ。
"……気をつけて進もうか何かあるかもしれない"
「そうね」
セリカ達に警戒を呼びかけて進もうとする。
『先生、ヒナさんから連絡です!』
『襲撃に向かったが基地はもぬけの殻になっていたそうです!』
『そちらに向かっているかもしれないので注意してください!』
どうやらヒナ達に向かってもらったカイザーPMCの基地には
すでに戦力がのこっておらずもぬけの殻になっていたようだ。
本部の基地と思われるこの基地がボロボロなのだ。
周辺の基地から戦力を向かわせたのだろう。
"分かった、ありがとう"
こちらの声を聞いていたシロコたちも頷く。
どうやら増援がこちらに向かっている
最中の可能性が高いとのことだ。
……まさか、グリムの影響なのだろうか。
カイザーPMCの基地を襲撃すると言っていたのはつい昨日の話だ。
しかし、襲撃をするにしてもわざわざ一人でするのだろうか。
自分の目的のためにと言っていたがそこまで
危険をおかして一人でやる必要があるのだろうか。
厄災を防ぐために?
もしそうならば、一度しっかりと話をしてみなければ。
できるだけ向こうから話してきてほしいが、
それで手遅れになってしまってはならない。
"急いで行こう!"
「分かってるけど、急にどうしたの?」
シロコの疑問はごもっともなのだが早く向かわなければ。
"ホシノも早く助けて、グリムも助けなきゃ!"
「グリムが来てるの?」
……そういえばグリムの事を話し忘れてしまっていた。
マーケットガードの陽動をしていたことから考えると、
おそらくグリムは強いのだろうが、限界というのがあるはずだ。
"走りながら説明する!"
「そうですね、ひとまず急ぎましょう!」
ホシノの救出のほうが最優先なのは事実だが、
その後にグリムの援護をしに行くことを伝え、地図を探す。
ボロボロになった建物群のどこからか見つけた
地図を手に取り、研究施設があるらしい建物へと向かう。
「戦闘の跡が大きくなってるわね」
「ん、それに比較的新しい」
研究施設の近くへと近づくにつれて
どんどん破壊された跡が大きくなっていっている。
研究施設のある建物はもう目前だ。
ひとまずホシノの救出をしなければならない。
『そろそろホシノ先輩のいる場所です!』
警戒しながら歩いていると、建物の影から人が見える。
「先生」
"グリム!大丈夫だった?"
やはり、グリムも襲撃にきていたようだ。
もっとも、様子を見る限りはあまりダメージを負っていないようだが。
「大丈夫、ホシノは救出できた?」
"そろそろ見つかるはずなんだけど…手伝ってくれない?"
グリムはふぅ、と一息ため息をつくと、私たちの様子をみる。
「いいよ」
"よろしくね"
グリムも含めて一緒に基地の中を歩き回る。
ホシノがとらわれていると思われる建物の前にアイツが立っていた。
「ふん、やはり来たか対策委員会」
カイザー理事が私たちを睨みつけながら話を続ける。
「我々の基地をめっちゃくちゃに襲撃したのも一緒とはな」
「やはり、お前たちのせいだったか」
「うるさい!もとはといえばあんたたちがホシノ先輩を連れて行ったからじゃない!」
「正当な契約の結果だ」
セリカが怒りの声を上げる。
「もともとあなた達が不当な契約をしたからです!」
「やはりお前たちは目障りだ」
上から大きなロボットが降ってきて、砂埃が舞う。
咄嗟に目を閉じると体が押される。
体制を少しだけ崩してしまったが、
目を開けると先ほどまで立っていた場所の後ろのコンクリートに傷がついている。
「早くホシノを助けて、先生」
「グリムはどうするの?」
シロコの言う通り、グリムはどうするつもりなのだろう。
あのロボットは破壊が大変で、以前はなんとかなったがグリム一人でなんとかなるのだろうか。
「一人で十分、だから早く助けておいでよ」
"…すぐに助けに来るからね!"
なんとかなるのなら、任せよう。
早くホシノを助けてグリムの援護にいけば間に合うはずだ。
速足で、地下室への道を進む。
「早く助けに行かなきゃね!」
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