ホシノを助けて、急いで戻る。
階段を急いで登っていると、上から大きな爆発音が響く。
「えっと…助けてもらったばっかりのおじさんが聞くのもあれなのかもしれないけど…」
「何が起きてるの…?」
特に説明もせずに急いで登っているのだから、ホシノの言うことはごもっともだ。
「簡単に言うとグリムがPMC理事を足止めしてくれてるから速く助けに行こうとしてるわ」
"ごめんだけど、手伝ってくれない?"
セリカの説明に、補足して説明する。
助けられたばかりのホシノはそっか〜と言いながらも考えているようだ。
駆け上がっていた階段から光が差し込んでくると、グリムが立っているのが見える。
"大丈夫!?"
大きな爆発音があったから何事かと思っていたが、あまり怪我は無さそうだ。
「大丈夫、ホシノは……」
私の後ろにいるホシノを見て、助けられたことを理解したようだ。
「目的は果たした、さよなら」
去っていこうとするグリムの前から、アヤネの姿が現れる。
「えっと……ど、どういう状況ですかね……?」
状況の観察をしていたアヤネは既に前線に来て、こちらとグリムを交互に見つめる。
"ホシノを助けた後にグリムを助けに行くつもりだったんだけど…"
「すでに戦闘が終わってたみたいですね~」
ノノミの言う通り急いで駆け上がってきていたもののすでにグリムは倒し終えていて、なぜか入口で待っていた。
「戦闘が終わったらカイザー理事のロボットが自爆をしまして…」
「それでここで退避してた」
アヤネの説明に割り込むように、グリムが話す。
そういうことならすでに安全確保はできたのだろう。
これ以上引き留めてしまったら迷惑になってしまうかもしれない。
"助けてくれてありがとう、グリム"
"また会おうね!"
今度会えるように祈りながら別れの挨拶をして走り去っていくグリムを見ながら、地上に上がる。
基地はきれいに破壊されており、地平線まできれいに見れるような景色になっていた。
さてと、と言わんばかりに、シロコ達の視線がホシノ一人に向けられる。
「お、おかえり!ホシノ先輩!」
「言うのが後になってしまいました~おかえりなさい、ホシノ先輩」
「ん、後になっちゃったおかえり、ホシノ先輩」
「遅れましたが、お帰りなさい!ホシノ先輩」
期待するような視線を向けられたホシノは恥ずかしそうに答えた。
「ただいま!みんな!」
ホシノを助けてから数日、先生としてアビドスへ向かう。
対策委員会をアビドスの公的な生徒会として認められるように手を回したのだ。
いくつか書類を書いたが…承認されているかの確認も兼ねている。
ここしばらく泊まり込みで歩いていた校舎を眺める。
どこからか広がったアビドスの依頼を解決したことが広まっているようで、依頼が増えた。
嬉しい悲鳴というやつなのだろうか。
それとも、調べたら出てくる背びれも尾ひれもついている情報がかなり広まっているのもあるのだろうか。
ゆっくりと歩きアビドス廃校対策委員会とプレートが置かれた教室に手をかける。
「いろいろ報告と確認があるので少しだけ早く来てもらいました」
"うん、ぜひとも教えてほしいな"
教室の扉を開けると一人だけ待っていたアヤネから話を聞く。
借金の話。紫関ラーメンの話。それから、黒服の話。などなどだ。
残念ながら黒服に関する情報は何一つ残っていなかったようだ。
あいつが何をするつもりなのかはわからないが、警戒しておくべき相手だろう。
しばらく話を聞いていると、扉が開き、シロコにノノミ、セリカにホシノが入ってくる。
「すでに来てたのね!」
「うへ~勤勉だねぇ~おじさん感心だよ~」
「さて、定例になりましたので第…何回だったか忘れましたがとにかく会議を始めます」
なんてことない日常。対策委員会がいつものように笑いながら会議ができている。
それだけで、力になれたかわからないが私が助けになった意味があったように感じられてうれしい。
笑いあいながら会議をしているとホシノが私に近づいてくる。
「先生、後で時間ある~?おじさんから伝えたいことがあるんだ~」
問いかけに頷くとよかった~と言ってホシノはもう一度席に戻る。
途中、アヤネが沸騰しそうだったのを必死になだめながらも何事もなく終わった会議の後に屋上へ向かう。
"どうしたの?ホシノ"
バタンと閉じた後ろの扉のほうへ体を向ける。
「先生に伝えたいことがあってね~」
深呼吸をして、こちらの瞳をしっかりとホシノは見つめる。
「グリムちゃんについてなんだ~」
「どういうわけかわからないけど、シャーレを信用してくれる人を増やしたがっているみたい」
「あとは、先生を守って厄災を防ごうとしてるみたい…?」
!?なぜグリムはわざわざそんなことをするのだろう。
彼女にとって私は外からきた、ただの大人のはずだ。
彼女は私のことを詳しく知らないはずだのだ。それにシャーレのことも。
どうして私のことをそこまで信用しているのだろうか。
シッテムの箱を取りに行くときもなぜか援護をしてくれていたようだし、
今回のアビドスでも結果として助けてくれた。
本当にどうしてなのだろうか。
そして、私のことを守ることで厄災を防げる、というのはどういうことなのだろうか。
シッテムの箱と、大人のカード。私が持っている特異なものは2つだけだ。
厄災がどんなものなのかよくわからない以上、推測することしかできない。
ひとまず今度会った際に詳しく話を聞くことにしてホシノの声に集中する。
「ほかに先生に伝えておくべきこと…」
思い出そうと考えているホシノの様子を見る。
少しの間待っているとあっ!と声を上げてまた話始める。
「あとグリムは厄災を防ぐ方法も含めて詳しくしらないみたい」
「それから、厄災ではキヴォトスのみんなが死んじゃうみたい」
…やっぱりそうだったのか。
しかし、ホシノが知っていることを考えるとわざわざ隠すようなことでもない?
それとも、私に直接伝えられないような理由がある…?
詳しくはわからない、これ以上新しいグリムや厄災に関する情報は得られないだろう。
"教えてくれてありがとう"
"帰りにどこか食べに行く?私がおごってあげるよ!"
これ以上、ホシノが話したい事はなさそうだ。
「うへ~ありがたくいただこうかな~」
"ここらへんのことも詳しく教えてほしいな"
そういうとホシノは笑顔で私に振り向く。
「ありがとうね、先生」
"どういたしまして…?"
ホシノを助けるときに私一人ではきっとできなかったと思う。
"ちゃんとシロコ達とも話し合った?"
屋上の扉を開け、階段を一緒に降りる。
「おじさんには難しいな~」
「…けど、頑張ってみるよ」
階段の途中でホシノが立ち止まる。それに合わせて、私も立ち止まる。
「だから、先生のことを頼ってもいいよね…?」
"もちろん!いつでも歓迎だよ!"
笑顔のまま、ホシノと階段を下りる。
さまざまな問題が残ったままのアビドス高校だが、
少なくともこの一瞬だけでも楽しい時間を過ごせることを嬉しく感じながら、
近くのお店を案内してもらったのだった。
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