少女は記憶を胸に   作:クロケル

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アリス

目の前にいる少女は、記憶喪失…でいいのだろうか。

何を言うのだろうと純粋な瞳でこちらを見ている少女にいろいろ聞いてみるが、

新しく情報を得ることはできず、何か知っているわけではないと判断した。

 

そんなこんなで少女を連れてミレニアムへと戻ってきて、

ユウカへ報告に行っている間にゲーム開発部へと見守りを頼んでおく。

 

"ユウカ?いる?"

映像撮影用のドローンの返却をするためにセミナーの部室へと来たのだが返事がない。

どうしたものかと扉の前で考えていると足音が近づいてくる。

 

「えーっと、あなたが先生ですかね?」

声をかけてきてくれた白髪の少女はこちらを見つめてくる。

 

"そうだね…申し訳ないけど名前を教えてくれない?"

「そうでしたね、私は生塩ノアです、ノアとお呼びください」

なるほど……ノアが来た理由はなんとなく予想がつくが聞いておこう。

 

"ユウカに借りていた機器の返却に来たんだけど……"

「はい、聞き及んでいます。廃墟の調査を手伝ってくださりありがとうございます」

 

そんな事を言いながらセミナーの部室の鍵を空けてもらい、中に入る。

「さて、改めまして廃墟の探索に行っていただきありがとうございました」

 

椅子に座るように促しながらノアも着席する。

「撮影用の機材の返却に来てくださったようなので、報告を聞こうかと」

私が持っていたドローンを慣れた手つきで操作し、映像データを回収している。

 

"一番最初に言うべきなのはアリスについてかな"

「申し訳ありません、どなたでしょうか?」

心当たりがない、と言った様子の返答から考えると、

やはりミレニアムとアリスは関係がないのだろう。

 

"廃墟で眠っていたから保護したんだけど……大丈夫だよね……?"

「は、はいもちろん問題はありません」

アリスに関する一連の出来事を報告すると混乱していたようだが、なんとか飲み込んでくれたようだ。

 

「なるほど……事情は分かりました」

「しかし、アリスちゃんをどう扱うのかについては一度セミナーの議題に挙げさせてください」

"もちろん"

 

このままミレニアム預かりになるのなら、その生徒会である

セミナーにも知られずに、というのは駄目だろう。

 

「他に報告はありますか?」

“特にないかな”

なるほど、と言いながらいつの間に取り出したのかわからないパソコンに向かっている。

 

「報告ありがとうございました、映像はセミナーが責任を持って管理しますのでご安心ください」

報告を終えてゲーム開発部へと戻る。

 

慎重にドアを開けながらゲーム開発部の中を見ると、アリスがコントローラーを握らされて、RPGらしきものをやっている。

「おかえり、先生」

"ただいま、セミナーに返してきたよ"

私の姿を見るなり、ミドリがすぐに声をかけてくる。

 

アリスに関する処遇を話そうとアリスを見ると

モモイに掴みかかっているようだ。

 

「理解不能、何故NPCに話しかけただけで死ぬのですか」

どうやらアリスはゲーム開発部で作ったらしい

テイルズ・サガ・クロニクルをプレイしているらしい。

 

「実はそのNPCは凄腕の暗殺者だったんだよ!」

「これまでの得た情報の中に、そんなものはありませんでした」

「そ、それは……その……」

 

クソゲーランキングで1位を取ったゲームと聞いていたが、まさかそれほどとは……

ともかく、モモイとミドリにアリスがセミナーで一度議題に挙げてみるという話を伝える。

 

"……そういえば、ユズはどこにいるの?"

一次的になるかもしれないとはいえ、部長らしいユズに預かっていると

報告をしておいた方がよい気がするのだが……

 

そう聞くと部屋の中にあるロッカーがガタガタと揺れる。

まさか、と思いながら扉に手をかけると勢いよく中から開いて、赤い髪の少女が飛び出してくる。

 

「こ、こんにちは……先生……」

"こんにちは、君がユズかな?"

「ひゃい、そうです」

 

取って食われるんじゃないかと言わんばかりに怯えている

様子を見るとこちらが申しわけなくなる。

 

"えっと……"

「は、話は聞いてました!えっと、その……」

"分かった、ごめんね無理に出てきてもらって"

 

本人の聞いているところで探す、と言っていれば、出てこいと言っているようなものだろう。

事情が事情だから伝えないわけには行かないが、せめて手紙などのメッセージにするべきだったかもしれない。

 

"ごめんね、そろそろ帰らないと"

「今日はありがとうございました、明日も来てくださると嬉しいです」

ミドリの返事を聞いて、部室を出る。

 

ミレニアムから帰る電車は、やけに静かに感じた。

 

 

 

何事もなく、翌日になりゲーム開発部へと向かう。

近くまで行くと、大きな声でモモイと誰かが口論しているようだ。

急いで部室の扉を開ける。

"大丈夫?"

 

声をかけると扉が開いたことに気づいていなかった二人がこちらを見つめてくる。

「先生でしたか、おはようございます」

「おはよう先生!この冷酷な算術使いが酷いんだよ!」

 

元気そうな様子のモモイと冷静なユウカが出迎えてくれる。

「誰が冷酷な算術使いよ!」

部屋の中で睨み合いをしている二人の様子を見てみる。

 

"何の話をしてたの?"

「そうね……先生に報告しておかないとね……」

モモイに怒っていたユウカはふぅと一息つくと、こちらを向く。

 

「まず、アリスちゃんをミレニアムで引き取ることになりました」

「現状身寄りのない状態の彼女を放置しておくわけには行かないので」

ひとまず、アリスの安全は確保できたようだ。それはよかった。

しかしそれだけならばモモイはユウカに文句を言わないだろう。

 

「で、ミレニアム生と認めるところまではいいわ、けどゲーム開発部の存続はまだ認められないのよ」

「そうなんだよ先生!この算術妖怪は認めてくれないんだ!」

頬をつねられているモモイを少し見たあと、またユウカをみる。

 

「最初にも言ったけれど、ゲーム開発部には実績がないのよ」

「ク、クソゲーランキ……」

「それは駄目だって言ったわよ」

 

ユウカに問い詰められてぐぅの音も出なくなっているモモイを横目に、ユウカは続ける。

「まあミレニアムプライスまで時間はあるんだから、頑張って作ってみなさい」

そういうとユウカはゲーム開発部の部室から出ていく。

 

「ど、どうしよう……」

困り果てているモモイとミドリを見ながらどうしたものかと考えていると、

また部室の扉が開く。

 

「パンパカパーン!アリスは先生と出会いました!」

「アリス~!」

部室へと戻ってきたアリスへすがるようにモモイが手を握る。

 

「モモイが手を握ってきました!これは、親愛度上昇イベントですね!」

…そういえばどうして廃墟に行ったんだっけ?

 

"G.Bibleは…?"

「それだ!」

 

 

 

 

エンジニア部に行き、アリスの武器をもらってくると、再び廃墟へと向かう。

ゲートを管理している子に、忘れ物の回収に来たと嘘をついて入る。

…あとでゲートを管理していた子とセミナーには謝っておこう。

 

アリスの眠っていた廃墟の探索を一切していなかったことを思い出し、ひとまず向かう。

何故か下に置いてある扉を通り、アリスが眠っていた場所へと辿り着く。

 

「ここがアリスの目覚めた場所…?」

「アリスはここで見つけたんだよ!」

ユズの疑問にモモイが答える。どうしてアリスがここにいたのかはいまだわかっていないが。

 

「アリスこっちに何かがあった気がします!」

そういうとアリスの眠っていた場所から枝分かれしていた廊下に走っていく。

 

「急にどうしたんだろう……」

「お姉ちゃん!早く追いかけるよ!」

急いでアリスを追いかける、移動しているアリスには、何の迷いもなく道を選択しているように見える。

 

どのくらいかかったのかは計測していなかったが、遂に一つの部屋にアリスはたどり着いた。

「ここに何かがある気がします!」

あまり重さを感じない扉らしきものを開けると、中にコンピュータらしきものが見える。

……最も、稼働していないようだが。

 

「あれ……?アリスはここに何かがある気配を感じたのですが」

“見てみる限りは何もなさそうだね“

稼働していないコンピュータらしきものに触れてみる。

 

『データはありません』

『最終稼働日は、昨日です』

それだけ表示されるとプツンと消える。

 

「ど、どういうこと?」

何か別のことでも表示されないか、と思い何度か触ってみるが、返答は変わらなかった。

 

「もしかして昨日、アリスを起こした後にすぐに戻ったけど、他に誰か居たのかな?」

そうかもしれないし、このコンピュータはアリスが目覚めたのと関係があるのかもしれない。

 

はたまた施設に入る時の許可を出した音声の可能性もあるにはあるが、だとしたら今日稼働していない理由がわからない。

 

「そういえば昨日出た煙、今日は出なかったね!」

モモイの言う通りだ、何故か昨日出ていた煙は今日出ていない。

久しぶりに稼働したから起きた可能性もあるが……

 

そういえば昨日、落ちた時に駆け寄ってくる音が聞こえてきたのを思い出す。

“もしかしたら、誰かが本当に来たのかも”

“一応、周りも確認しておこう”

 

アリスが眠っていた廃墟をみんなで確認してみたが、

特に新しい発見はなく、入り口へと戻る。

 

周りにあるたくさんの廃墟は、壁に穴が空いていて、すでに有用なものはなさそうだ。

ゲートの管理をしていた子は、既に交代の時間だったのかいなくなっている。

 

こっそり通り抜けて、ミレニアムへ戻る。

「やっぱり、誰かがいたって考えられると思う」

ミドリがふと、つぶやく。

 

「宝物はすでに取られてしまっていたようです……」

「どうしたらもらえるかなぁ」

アリスに続き、モモイも落胆している。

 

“……もしかしたら”

ふと思いつく、昨日は確か……

 

“ドローンの映像を見れば、誰が来たかわかるかもしれない”

私の聞いた足音が空耳じゃなければ、すぐ近くにいたはずだ。

それならば、ドローンの撮影をしていた映像に昨日いた誰か、は映っているかもしれない。

 

「それだぁ!」

勢いよく同意してくれたモモイに一瞬ビックリしてしまう。

 

さっそくモモトークでユウカに聞いてみたのだが、返ってきたのは駄目との反応だった。

どういうわけか聞くとセミナーの会長───リオと言うらしい───がどういう訳か倉庫に保管して

持ち出し禁止にしたらしい。

 

力になれなくて申し訳ないわといっているユウカに感謝のメッセージを送信する。

"見せてもらえないみたい"

「そんなぁ、なんとかならないの?先生!」

 

"一応、保管庫にあるとは言っていたけど……"

「それなら簡単だね!無理やりとってこよう!」

今すぐにでも出発しそうなモモイをミドリが止める。

 

「もしC&Cがいたらどうするの?さすがに私達だけじゃ勝てないよ?」

「そ、それならヴェリタスとエンジニア部に協力してもらおう!」

"それならまた明日だね"

 

そろそろ月が出てきそうなことを考えると今日はここまでだろう。

モモイ達に別れを告げて、シャーレへと戻るのだった。

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