「廃墟に先生一人で行けば会えるんじゃない?」
とミドリが言っていたが、本当に来てくれるとは。
グリムからもらったUSBメモリもポケットに入れて、ゲーム開発部の部室に戻る。
しかし、グリムに会ったことがないかという質問に歯切れの悪い回答だったのが気になる。
本当に一度も会ったことがなければ、即答できるような内容であるはずだ。
それなのに少し考えた様子の後、あの回答だ。
もしかしたら彼女には思い当たる何かがあるのかもしれない。
「おかえり先生!」
「先生が帰還しました!クエストは達成できましたか?」
"ただいま、モモイ、アリス"
ポケットからUSBメモリを取り出して、パソコンに接続してみる。
「つ、ついにG.Bibleが手に入った!」
「早く見てみよう」
ワクワクが抑えられない様子のゲーム開発部。
……しかし、G.Bibleを見てアリス以外のみんなはしょんぼりとしてしまっていた。
それも当然とも言える。何故なら書いてあった情報とは……
「ゲームを愛しなさい…だけだったね……」
哲学的な内容だ。そして、モモイたちが求めていたであろう絶対的な答えではなかった。
アリスが慰めようと、意気消沈しているモモイやミドリ、ユズに声をかけている。
私も何か言おうと、口を開きかけたところで、ドアがノックされる。
「先生!ここに居ますよね?話があります」
ユウカがどうやら私を訪れてきたらしい。
"ごめんね、ちょっと席を外すよ"
「わかりました!」
アリスに見送られて、部室から出る。
「ここで話すのも何ですのでついてきてください、先生」
ユウカについて行き、近くの会議室に入る。
「セミナーの保管庫から持ってきた物の返却と、廃墟へのセミナーの許可を得ずに二回も侵入したことについての説明を」
"分かった"
ユウカに一通り説明して、説教を受けたあとに、ゲーム開発部の様子を見にいく。
どうやら元気を取り戻した様子で、ゲーム開発を頑張っているようだ。
この様子なら数日に一回様子を見にくるくらいでいいだろう。
帰ろうと廊下を歩いていると、前方で制服を着たピンク髪の子が、メイド服……でいいのだろうか
メイド服を着ているオレンジに近いピンク色の髪の生徒に連行されている。
"こんにちは"
挨拶をするとこちらに気がついたのか、目線をこちらに向ける。
「おう、こんにちは」
「こんにちは〜助けてくれませんか〜!」
"どういう理由で捕まってるの?"
「じ、実は………」
「こいつは反省部屋からの脱走中だ、近くにいたからあたしが捕まえて連行してんだ」
なるほど……反省部屋というのはおそらく名前の通り反省を促すための部屋なのだろう。
"ちなみに何で捕まったの?"
「そ、そこまで酷いことはしてないです!ちょっとセミナーのお金を借りただけなんですよ〜」
「充分悪いだろ」
なるほど……セミナーのお金を横領したのか……
それなのに反省部屋で済んでいるというのは軽く感じるが……
考え始めてしまった私のことをみて勘違いしたのか、メイド服の子が話始めた。
「あ〜っと自己紹介をしてなかったな、あたしは美甘ネルだ。こいつは黒崎コユキ、これでもセミナー所属だ」
「コユキです!ユウカ先輩がよく話してた先生ですね!」
ネルに続いて、コユキも自己紹介してくれる。
"よろしくね"
「よろしくな」「よろしくお願いします!」
二人と握手をして、シャーレに戻ろうとするとネルが声をかけてくる。
「そうだ先生、聞きてぇことがあるから後で時間貰ってもいいか?」
いったいなんだろうかメイド服を着ているということは
C&Cなのだろうが、昨日の奪取作戦の時は彼女に会わなかったはずだ。
"どこで待っていればいい?"
「あぁっと……そうだなタワー前の広場の木のベンチのとこで待っといてくれ」
"わかった"
「今すぐじゃダメなんですか?」
「お前がいるからな、ほら早く行くぞあんま待たせるわけにはいかねぇしな」
「そんなぁ〜」
引きずられるように連れられて行くコユキとネルを見送り、木の下で待つ。
三十分もたたずにミレニアムタワーから出てきたネルに手を振るとこちらに気が付き走ってくる。
「あぁ……すまねぇな先生」
"そんなに待ってないから大丈夫だよ"
少し息を整えているネルを待つ。
五秒程度で息を整え終えると、私が座っていたベンチの横に腰掛ける。
「今朝廃墟に行ったんだろ?そこで誰かに会わなかったか?」
"行ったけど……どうしてそんな事を?"
確かに私はグリムに会うために廃墟に行ったが……
もしかしてグリムが目的なのだろうか?
「いや、昨晩に任務から帰って来たんだけどよ指名手配してる奴と戦闘になったんだ」
指名手配の理由は分からないが、なっている子が昨日ミレニアムへ来ていたらしい。
「そいつが廃墟に逃げ込んだからな、何か情報を持ってないもんかと思ったんだが……」
"どんな見た目だったの?"
「確か変な仮面をつけてたっけか」
…やっぱりグリムを探しているのだろう。仮面をつけている子がそう多くいるとは思えない。
"……ごめんね、知らないかな"
「まぁそうだよなぁ、クソ逃げ切られちまった」
落ち込んでいる様子のネルを見ると申し訳ない気持ちになるが
彼女が厄災というものに抗いたいと考えているなら、それの邪魔となるようなことはしたくない。
指名手配をされてしまっているということは、邪魔になってしまうだろう。
申し訳ない気持ちでいっぱいだが、決めたことだ。
"そんなに強かったの?"
「……まぁ強かったな、あいつはほとんどあたしに攻撃を加えようとしてなかった」
思い出すようにネルは続ける。
「スモークグレネードとか、フラッシュバンでこっちの視界を遮って、
逃げようとしてたとこを何とか追いかけたんだが……」
「いつやられたのか分かんねぇが自動巡回用のドローンをハッキングしてこっちを攻撃させてきやがった」
「しかもリオに聞いてもハッキング元が分かんねぇと来た」
ため息をつき、どこか忌々しげな雰囲気にネルがなる。
「乗っ取られたドローンと戦闘してたら逃げ切られちまったんだ」
"なるほど……"
グリムにハッキング能力があった、というよりは何かしらの方法で外部からやったのだろうが……
「ま、そんなもんだ」
"教えてくれてありがとうね"
「そうだ、せっかくだし先生の話を聞かせてくれよ」
その後しばらくネルと話をして、シャーレに戻った。
そういえば……
"ねぇアロナ、痕跡を残さずにハッキングとかできる?"
『ど、どうしたんですか先生』
驚いた様子のアロナに事情を伝える。
『な、なるほどグリムさんがそんなことを……』
アロナはすこし考えると、こちらに告げる。
『できますよ!ただ、するつもりはありません。どうしてもやってほしいなら別ですが……』
"そうなんだ"
アロナならできるらしいが、アロナ曰く、シッテムの箱はかなり高スペックらしい。
そう考えるとアロナのできる、と言う発言でグリムのハッキングの元はわからないかもしれない。
聞く相手を変えるべきかもな…と考えているとアロナの声に引っ張られる。
『失礼なことを考えてませんか?でもグリムさんが持っているのはそれなりにすごいものだと思います!』
"き、気のせいだよアロナ……"
そして時間は経ち、ついにミレニアムプライスの発表当日。
出品後にネットに公開してみると思っていたよりも好意的な反応をもらえたり。
ミレニアムプライスに出品した後にC&Cの襲撃を受けて、ネルとアリスが一騎打ちをしたり。
他にもいろいろあったようだが、今日、すべてが決まる。
「ど、どうなるかな」
「落ち着いてお姉ちゃん、きっと大丈夫なハズ」
動揺している様子が隠せていないモモイ達を見ながら、発表を聞く。
私も触ってみたが、どこか懐かしいRPGをプレイできてノスタルジックな気分になれた。
……その後1をプレイしてみて10分もせずに辞めたのはここだけの秘密だ。
「だ、大丈夫かなあ……」
「きっと大丈夫なはずです!」
7位、6位、5位……順番に呼ばれていくが、ゲーム開発部の名前はない。
ついに残ったのは1位だけとなってしまった。
『1位はなんと、新素材……』
ゲーム開発部の名前が呼ばれなかったことを理解するやいなや、
モモイがディスプレイに発砲する。
「ちょっ、お姉ちゃん落ち着いて……」
「うわぁん!もうおしまいなんだぁ!」
「そ、そんな……」
「アリスたちのレベル不足だったのでしょうか……」
絶望している様子のモモイ達、ただ……
「おめでとう!よくやったじゃない!」
ユウカが勢いよく扉を開けて部室に入ってくる。
ユウカを睨みつけるように見ているモモイ達をみてようやくユウカも気が付いたようだ。
「え?あなた達見てないの?」
「7位以内じゃなかったんだ!おしまいだよぉ!」
"まだ、発表は続いてるよ"
「え!?」
驚いたミドリは勢いよくモモイが発砲によって倒したテレビをつけて立て直す。
『特別賞として、ゲーム開発部のテイルズ・サガ・クロニクル2を……』
「や、やったぁ!」
「こ、これで部活は存続できる…!」
受賞の理由を解説しているのをよそに、抱きしめて喜びあっているモモイ達を見る。
「見てなかったのね…ちょっと申し訳ないことをしちゃったかしらネタバレなんて」
"あはは、まああんなに喜んでいるからいんじゃないかな"
それから、ユウカに諸々の注意を受けてゲーム開発部の廃部は保留ということになった。
あくまでも受けたのは特別賞だが、受賞したものと同じように、
実績として認めてくれるらしい。
ユウカが部室から出ていくとモモイ達とクラッカーを鳴らす。
「やったね!今日はパーティだ!」
「ヴェリタスとエンジニア部のみんなも呼ぶ?」
「そうしましょう!アリスに部屋の掃除は任せてください!」
「わ、私はお菓子を自販機で買ってくるね……」
なんとかゲーム開発部の廃部を免れるという依頼は達成できた。
ミレニアムのみんなと仲良くなれたし、これからやるパーティを私も楽しませてもらおう。
"私にできることはあるかな?"
ここまで読んでくださりありがとうございます。
私情で申し訳ありませんが、しばらく忙しくなるため投稿がストップします。
時間がとれるようになり次第投稿を再開する予定です。
二回目になってしまいますが、
掲示板形式の小話の投稿についてのアンケートですが、
投稿されるとしても後になってしまいます、申し訳ありません。
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