少女は記憶を胸に   作:クロケル

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エデン条約
エデン条約


エデン条約、先生に同行した依頼の中でも強く印象に残っている依頼だ。

トリニティとアリウスの確執、それを取り除こうとしたミカ、利用されるサオリ達……

 

思い返しても気分が悪くなる。

しかしこちらが介入できるようなことはほとんどない。

 

ヒフミ達が頑張り、自力で補習をクリアしてもらうのは前提で、そこに私は介入することはできない。

温泉開発部のみんなへ手紙を書きながらそんな事を考える。

 

『しかし……貴方は何がしたいのですか?』

手紙をある程度書き終えて、話しかけてきたケイの方を見る。

 

『確か……厄災を防ぐか突破するのが目的なんでしたっけ?なぜそんな事を?』

「うーん……先生の依頼のためかな」

 

私の回答を聞いたケイはあきれたように聞き返してくる。

『あの箱の持ち主が貴方のいう厄災を防ぐのにどう役にたつのでしょうか?』

「それは……」

 

ケイの言う通り、先生の信頼を集めることで厄災を防げる保証はない。

だけど何の情報も得られてない以上、先生の手助けをしてくれている生徒を一人でも増やして

先生の負担を減らしておけば、先生が倒れるのを防げるかもしれない。

 

「言えない……かな。意味はあるんだよ」

『言うつもりはありませんか……』

 

あきれた声のままのケイの反応に申し訳ないと思いながら書き終えた手紙を発送する準備をし始める。

温泉開発部へと情報を送り、第二次試験の日にゲヘナにいない状況を作り上げることにしたい。

そうすれば試験の妨害ができないはずだ。

 

「話は変わるんだけど……」

手紙をあとで出すためにタンスに入れて立ち上がる。

 

「巡行ミサイル、或いはそれに類するものの設計図持ってたりしない?」

ケイは王女と一緒に保管されていたのだから、名もなき神々の技術について知っているかもしれない。

質問をすると、フリーズしたかのようにケイの返答は返ってこない。

 

「ケイ?」

知らないなら知らないと回答できるはずだ。つまり……

 

「知ってるね?」

『……どこで』

問い詰めようとすると、ケイがポツリとつぶやく。

 

『どこでそれを知った?』

脅すような口調に変わったケイのことを考えると、知っていてそれを話したくないということだろう。

 

「王女と君が負ける理由を私は知ってる……」

少し間をおいて、聞くように続ける。

「それだけで説明は十分じゃない?」

 

『……なるほど、未来視、それに類するものを持っているのでしょうか』

「まあそんなところだよ」

実際、未来の記憶を持っている、というのは未来視のようなものといえるだろう。

 

『質問に対する回答を教えてあげましょう』

設計図に関する質問の答えをケイが言おうとするのに耳を傾ける。

 

『知ってはいますが、回答するつもりはありません』

「……言いたくないことだったかな」

ケイが言いたくない、というのならば仕方がない。

 

これ以上問い詰めたとしてもあまり意味がないだろう。

「設計図を教えてくれなくてもいい、巡行ミサイルを破壊したいだけだから」

『ふむ……まあ、いいでしょう』

 

少し考えた後に結論をだしたらしいケイによると、協力してくれるらしい。

『しかし、聞かせてください。なぜ破壊したいのですか?』

「先生と、トリニティのみんなを守るためかな」

 

なるほど……とつぶやいているケイの次の言葉を待つ。

『この程度の威力で、この角度から攻撃すれば空中解体ができるでしょう』

そういってケイが要求されている火力のデータと推奨されている向きのデータを渡してくれる。

 

やけに素直に渡してくれたなと思いながらも、

渡してくれているデータそのものは確かに巡行ミサイルに効果的なダメージが与えられそうだ。

 

「ありがとう、ケイ」

『……えぇ、ありがたく思ってください』

感謝を告げると、少し間をおいてケイが感謝を受け取る。

 

さて、今はちょうど補習授業部の説明を受けているころだろう。

先生の動向はすべて把握しているはずだ。不意の遭遇もないはず。

 

早めに準備をしておこうと、ロケットランチャーの購入へ向かおうとする。

『待ってください。そろそろ睡眠をとらなければ……』

「大丈夫だよ、ケイ。大丈夫」

 

みんな頑張ってるんだ。私も頑張らなければ。

すこしくらい無理をするくらいしても大丈夫だ。

厄災がくるまでの時間に余裕があるわけでもない。時間を無駄にするわけには絶対行かない。

 

『しかし……』

ケイの警告を聞かずに、ソファの上に置いておいた銃を手に取ろうと歩き始める。

 

少し視界が歪む。まっすぐに進めていない気がする。

まだ大丈夫。睡眠は後でとれば……

 

何もないはずの場所でよろけてしまっているが、大丈夫なはずだ。

『ああ、もう。上手く歩けていないじゃないですか!』

 

ケイの声が聞こえてくるが、何を言っているかがわからない。

ようやくソファに着き、銃を手に取ると、玄関へと向かう。

 

視界が突然下がり、床に倒れる。

……あれ?そんなに疲れてたっけ。

 

『最後に寝たのは一か月も前でしたっけ?いくら神秘の影響で体が強くても限界はありますよ……』

瞼も、体も、やけに重たい。立ち上がることもできず、眠ってしまう。

もう少し、行動しておいた後に眠りたかったな……

 

 

 

目を開けると、霧の中で目が覚める。

ここは……夢の中だろうか?

 

周りを見渡すと霧ばかりだが、かすかに見える周りの様子を見るとどこかの庭園のようだ。

誘導されるように道なりに進むと、霧が少なく開けた広場に出る。

 

広場の中央には、テーブルと椅子が3つ置かれ、お茶会ができそうなセットが置かれている。

そして何より目を引くのは……

「……はじめまして、で合っているだろうか?生憎夢と現実の区別が曖昧でね」

 

百合園セイア、ティーパーティーの一人。

そういえば先生が夢の中でセイアにあったことがあるという話をしていたのを思い出す。

どういう訳か私もその夢に招かれたのだろう。

 

「ひとまず座ってくれ、腰を据えて話し合うことができるのは私達人間の優れている点の一つだからね」

そう言って、置いてあった椅子の一つを指し、座るように促される。

 

特に何かを言うわけでもなく椅子に座ると、セイアの話は再開される。

「私は百合園セイア。トリニティ総合学園、サンクトゥス派の代表をさせてもらっている」

「グリム。よろしく」

 

淡白にそう返事をすると、予想より短かったのか、少し面食らっているようにも見えてる。

「さて、お互いの名前を知り合えたところで早速本題に入ろう。」

いいか?と確認をするような視線を向けてきたため頷く。

 

「そこまで緊張しなくてもいい。聞くのはそこまで複雑ではない、一見簡単な問題だ」

セイアは美しい所作で私に紅茶の入ったティーカップを渡してくれたかと思うと、ゆっくりと語り始める。

 

「例えば、二枚のカードがあったとして、片方は表、もう片方は裏だとする」

深い霧の中、どこからか来た冷たい風が、私の肌を撫でる。

 

「両方を表に向けるためにはどうすれば良いと思う?」

「裏のカードをひっくり返す。ではないのか」

セイアは落ち着いて紅茶を飲む。

 

多分、この話はミカとナギサの話だ。

表はナギサで、裏がミカ。そして見ているのはセイア。

 

「そう簡単には行かないんだ。裏のカードは自分で表にすることはできないものとしてくれ」

「他の条件は?」

「追加で周りにバレてはいけないものとしてくれ。協力をしてもらうことはできない、といえことだ」

 

「他にカードを持っていないのか?」

「……いや、持ってはいるが置いてもどうにもならないよ」

持っているカード。つまりミネの確認。

未来通りセイアの看護をしているのだろう。

 

「確認したい。カードの重さは通常のものか?」

「ふむ……そう考えても構わないが、何か変わるかい?」

それなら私の答えは問題ないだろう。

 

「一応持っているカードを表にしておく」

「ふむ、続けてくれ」

 

「そして空から勢いよくカードが降ってくるのを待つ」

「何とも運頼みな方法だな」

「だけど力強く叩きたければひっくり返る」

 

私の言葉をセイアは考えていたかと思うと、何か結論づけたのか、こちらに話しかけてくる。

「……確かに実現可能ではある。ただおそらく実現はできないだろう。」

 

だが、とセイアは続ける。

「そんな幸運が訪れるとは限らないのだから」

「訪れる」

 

確信を持った私の声を聞いて少し驚いているように見える。

「なるほど、聞かせてもらおうかその訪れる理由を」

「カードは見えてるから」

 

「……?」

「見ていればいい。セイアは見れるよね?」

先生という強力なカードは、きっとミカを更生させてくれるはずだ。

 

「そうだが……何故それを知っているんだ?君と会ったのは何度目なんだ?」

まずい。会話に集中してしまっていて、口を滑らせてしまった。

こういう迂闊なことを言わないために話すことをなるべく削っていたのに。

 

「あの時の貴方は予言のことを話してくれたよ」

「まさか…?忘れた……?いや、そんなことがありうるのか……?」

セイアの様子を見る限りは成功したようだ。

 

未来の記憶の中のセイアから聞いたのだから、完全に嘘ではない。

本当でもない気はするが。

 

未来でもセイアが厄災と接触してしまって瀕死になっていたのがなんとか復帰できたのだ。

その後私が失敗して死んでしまったが。

 

本当につくづく自分が恨めしい。

もっと先生を見ていれば、気をつけておけば、或いは私がもっと強ければ。

あんなことにはならなかったのに。

 

セイアが厄災を知ってしまうことで、発生が早まってしまうかもしれない。

そうなってしまっては非常に困る。

 

もしも未来の記憶のようにこの記憶が誰かに渡り、いつか厄災を防げるのならともかく。

そうなる保証などない。

 

色々考えたが、つまりセイアには厄災について教えられないのだ。

「……嘘は、ついていないように見える。」

紅茶を飲みながら真剣に考えた様子を見せたかと思うと、ティーカップを置き、こちらに向き直る。

 

「君の言う勢いの強いカード、それにやって何が起こるのか楽しみにしているよ」

 

セイアの声を最後に、夢から覚める。

そういえば睡眠不足が祟って倒れるように眠っていたのだった。

 

『おや、起きましたか。もう少し眠っておいた方が良い気もしますが……』

「おはようケイ。今から出発しようか」

ケイからもらったデータで必要とされていた威力を満たせる

ロケットランチャーを買いに行く準備をしていたところだ。

 

『倒れられたら困るのですが……仕方ありませんね』

「もう大丈夫だよ。これからは気を付けるよ」

時計を見ると、昼頃に出ようとしていたはずが、すでに夜になっている。

 

あの事件までしばらく余裕があるとはいえ早めに準備をするに越したことはない。

整えておいた荷物を手に取り、店に買いに行くことにした。




投稿を停止してしまっていて申し訳ありません。
掲示板形式のものについてですが、難航しているため
しばらく後になってしまいます。
期待してくださっていた方には重ねて申し訳ありません。
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