少女は記憶を胸に   作:クロケル

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補習授業部

巡航ミサイル破壊用のロケットランチャーは用意できた。

今はちょうど合宿をしている頃だろうか。

 

温泉開発部に少しすればレッドウィンターの僻地の温泉源の情報が流れるようにしてある。

別の機会に先生は彼女達とは出会うことができるだろう。

 

……万が一の時のために後で偽造した依頼をだす準備をしておこう。

先生達は何をしているのか確認しに行こうと

合宿施設として使っている別館へ向かうことにした。

 

 

 

合宿施設はトリニティから少し離れたある森の一角にある。

しばらく歩いていると小道に出る。

周りを見渡すと、どうやら合宿施設と公道を繋いでいる道のようだ。

 

別館の方向へ向かおうとしたのだがどちらの方向だったかをすっかり忘れてしまった。

「ケイ、地図とかない?」

『ここら辺の地図ですか……ありませんね』

 

まあそうか。トリニティはお嬢様高校として有名だ。

地図を公開していると犯罪に利用されてしまう可能性が高い。

もしかしたら……と思ったのだがないのなら仕方がない。

 

こっちだったかな……

ひとまず進んでみることにして歩き始める。

 

しばらく歩くと見えてきたのは公道だった。

……どうやら逆だったようだ。

体を翻して別館の方へと向かおうとしていると後ろから声をかけられる。

 

「すみません、あなたも別館に用事があるんですか?」

マリーがこちらに声をかけてきた。とある生徒からのお礼を代わりに伝えに来ていたのはこの日だったかと思い出す。

 

一応カラコンを入れて髪色も別の色にしているが見破られたりしないだろうか。

……いや、ここで迂闊なことを言って正義実現委員会に捕まってしまうと面倒だ。

それなら一緒についていくべきだろう。

 

「はい、先生に伝えなければならないことがあって……」

「先生……あぁなるほど!補習授業部の顧問をされている方ですか」

納得した。という様子のマリーを見ると変装はバレていないようだ。

 

「改めまして私は伊落マリーです。名前をお聞きしても?」

「ええっと……」

名前を聞かれることを想定していなかったから少し言葉に詰まってしまう。

 

「グリムです。……すみません名字は忘れてしまって」

迂闊なことを言ってしまうくらいなら少し大胆に嘘をついたほうがマシだ。

少なくともマリーはこれで詮索してこないはず。

 

お互いの間に気まずい沈黙が訪れる。

沈黙が続いてしまうとこちらも申し訳なくなる。

「すみません。気を使わせてしまって……」

「い、いえ申し訳ありませんこちらこそ不躾なことを……」

 

マリーに気を使わせてしまっていることを申し訳なく思う。

ごめんねと心のなかで謝りながら話を続ける。

 

「もし良かったら別館へ一緒に向かいませんか?」

「はい、よろしくお願いしますねグリムさん」

こちらへ握手を求めてきたマリーの手と握手をする。

 

「こちらこそよろしくお願いします。マリーさん」

お互いに笑顔を向け、手を離す。

「グリムさんは……その、間違えていたら申し訳ありませんが、

トリニティの方じゃありませんよね?」

 

「そうですね」

「それなら私が案内しますね!」

そういって自信満々に歩き始めたマリーについていく。

 

 

 

道中マリーと話しながらゆっくりと歩く。

しばらく歩くとようやく合宿施設が見えてきた。

 

ようやく別館の入口付近へと着いたが、

どうあがいても回避ができなさそうなトラップがある。

「すみません。マリーさん少し離れてくれますか?」

「はい?わかりましたが……」

 

マリーが離れたのを確認するとうっすらと見えるワイヤーを撃ち作動させる。

周囲に仕掛けてあった爆弾で連鎖爆発が起こる。

 

「だ、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですマリーさん。ありがとうございました」

大きな爆発音が聞こえてきたせいか、中からドタバタと音が聞こえてくる。

 

「な、なにがあったんですか?」

煙が晴れるのを待っていると扉が開き真っ先に出てきたのはヒフミだった。

 

「こんにちはヒフミさん。アズサさんがこちらにいると聞いたのですが……」

「こんにちはマリーさん!えっと…隣の方は……」

そういって私のほうを見ると驚いたのか固まってしまう。

 

「彼女はグリムさんです。どうやら先生に用事があるみたいで」

「そ、そうですか……」

後で説明してくださいね!と瞳で語り掛けてくるヒフミに頷きながら

合宿施設へ入ろうとすると中から他の補習授業部のメンバーと先生がこちらへ出てくる。

 

"大丈夫?"

「無警戒で出てしまうのは危ないぞヒフミ」

早足で出てきた先生とアズサに続くようにコハルとハナコも出てくる。

 

「立派な物をお持ちですね♡」

「な、何言ってるのよ!」

「あら?私は彼女の持っている銃のことを言ったのですが?」

二人でやいのやいの言い始めているのを横目に

アズサが私に破壊されたトラップの確認をし始めた。

 

「まさか見破られてしまうとは……くっ連鎖的に作動するものを多くしすぎたな」

「トラップ仕掛けるのをやめてって言いましたよねアズサちゃん?」

使えそうな物の回収をしているアズサにヒフミが注意をする。

 

どうするんだろうと先生を見ると苦笑いを浮かべながら

"ひとまず中で話そうか"

と言って中に招き入れてくれた。

 

 

 

建物の中に入ると広めのリビングに通される。

"それでマリーとグリムはどうしてここに来たのかな?"

「私はアズサさんに言伝を預かっているのでそれをお伝えしに」

 

アズサが何かしただろうかと思っていそうな表情になる。

「グリムさんは先生に用事があるそうです」 

先生とヒフミに目配せをすると察してくれたのか、マリーの話に戻してくれる。

 

"グリムの話は後で聞くからマリーの話を聞かせてほしいな"

「よろしいのですか?」

私が頷くのをマリーが確認するとコホンと咳払いをすると話し始める。

 

「アズサさんに感謝を伝えたいそうで」

「誰からだ?」

心当たりがないであろうアズサは誰からの感謝かを聞く。

 

「先日アズサさんが助けてくださった生徒の方から、

感謝をお伝えしたいとのことでして」

少し思い出すような仕草をすると思い出したようであのことか、とアズサが呟く。

 

「虐めていた方が、正義実現委員会に連絡を取られて戦闘になったそうで……」

「あの時は弾薬が足りなかったが次こそは……」

 

もう一度戦闘になってしまう時のことを考えている

アズサの横でヒフミが焦っているのを眺める。

「助けてくださった方が感謝と報告のために探したのですが

学園にはおらず……といった感じです」

「そうか。別に感謝されるようなことじゃない。私も捕まったしな」

 

それに、とアズサは続ける。

「例え虚しくても抵抗しなければずっとそのままだ」

「……そう、かもしれませんね。はい、そのようにお伝えしておきます」

 

話終えた様子のマリーはこちらを気遣ってくれているようであわあわしている。

"えっと……"

「すみません。関係のない人に話さないほうが良いことなので

場所を変わってもよいでしょうか?」

 

"それなら私の部屋に行こうか"

「部屋で二人きり♡どうなってしまうのでしょうか♡」

「エ、エッチなのはダメ!」

 

「い、一応私がついていきますね!」

事情を聞きたがっているヒフミもついて来ようとしているようだ。

私も先生もうなずくと、よかったぁと顔に書いてあるような表情をしている。

 

「…あ、すみません。そろそろ戻らなければ」

そういうとマリーは立ち上がり出ようとする。

 

「しかし…アズサさんは暴力を信奉する氷の魔女

……なんて噂もありましたが所詮は噂でしたね」

初めて聞いたというような表情に変わったアズサを見ながらマリーは続ける。

 

「ふふっ。それはそうですが、ほかの人からすると……」

え?みたいな表情のままのアズサの頭をなでながらハナコは続ける。

「氷の魔女、らしく表情が見えにくいところがありますよ」

 

うざったそうにハナコの手を払いのけるとアズサは少し距離をとる。

「ハナコさんも……」

 

マリーがハナコに話しかけるとハナコが少し焦ったように玄関へと案内する。

「あ、すみません。急にお邪魔して。失礼しました」

とマリーが言って一緒に出て行ってしまった。

 

"……じゃあグリムの話を聞こうか。二人とも、少し休んでおいていいからね"

「すみません…私も席を外します……」

そういって先生の泊まっている部屋に入る。

 

"座って。……といっても椅子とかはないからベッドに腰掛けてくれる?"

私が適当なベッドに座ると、向かい合うように先生が座り、近くにヒフミも座る。

 

「なんでグリムさんがトリニティに…?もしかしてトリニティ生でしたか……?」

「えっと……」

…そういえばマリーに疑われないように先生に用事があると言って来たが

先生に特別用事があるわけでもない。しかしどうしようか……

 

『何も考えずに来たんですか…?』

ケイのあきれた声が聞こえる。本当にその通りだから反論のしようがない。

 

一応、伝えておきたいことはあるからその話をしようか。

「先生、試験の範囲は知ってる?」

"うん、ちゃんと把握してるよ"

 

第一回はすでに終わっている。そして問題の第二回は……

「次の試験は範囲が3倍になるし、合格ラインが90点になる」

「え!?」

 

私の発言を聞いたヒフミと先生は驚いているようで固まってしまった。

「詳しい事情は言えない。そして、このことを補習授業部以外の人に言わないでほしい」

"…疑う訳じゃないけど、信じがたいかな"

 

うんうんと頷くヒフミ。

外部の人間が突然言うと驚く内容であるのは当然だ。

「もちろん、嘘になるかもしれない。ただ、そうなる可能性もあるって話」

 

嘘になるかもしれない。と聞き冷静さを取り戻したようだ。

「ど、どういう……?」

あまり長居をしていると見破られてしまうかもしれない。。

 

「ごめん。今日は時間みたい。帰らせてもらうね」

"う、うんありがとうね"

他にも聞きたいことがありそうな表情をしているところ申し訳ないが

これ以上は演技ができそうにないのだ。

 

「玄関まで見送りますね!」

そういうとヒフミは立ち上がり、ドアの前まで行く。

それについていくように私と先生も立ち上がる。

 

玄関まで歩くと言葉通り見送ってくれる。

「今日は来てくれてありがとうございました」

"……ありがとうね、グリム"

 

「こちらこそありがとうございました」

そう告げて、建物から帰る。

そもそも当初の目的だった先生たちの様子の観察自体は

一応できているから良かったと思うことにする。

 

合宿は順調だ。おそらく補習は大丈夫だろう。

次に来るのはミカがアリウスを連れてくるときになるはずだ。

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