少女は記憶を胸に   作:クロケル

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第二次学力試験

先生とヒフミたちに会ってから数日。準備を整えて出発する。

第二次学力試験はゲヘナで行われるため、その援護だ。

 

恐らく美食研究会のみんなとフウカが助けてくれると思うが、

そうではなかった時にまずい。

それに温泉開発部が関与できないようにしている以上、

ナギサは何かしら手を打っているはずだ。

それを何とかできるように物資の準備をする。

 

『今度はどこに向かうつもりなんですか?』 

「ゲヘナに向かう予定だよ」

『どうしてゲヘナへ?何か調達しに行くのですか?』

 

「いや、直接的な理由で先生の依頼に関係してる」

ケイからしたら意味がわからないだろう。

先生はトリニティにいるのに、わざわざゲヘナへ行こうとしているのだから。

 

『は?確かトリニティとゲヘナはだいぶ仲が悪かったと記憶していますが』

「だからこそ、何だよね」

少し考えているのか無言になったケイをよそにドアを開ける。

 

『わざとトリニティの生徒をゲヘナに連れて行くことで

試験を受けさせないことが目的ですか』

「そういうことだね」

ナギサは、補習授業部に合格してほしくない。

 

つまりそもそも試験を受けさせなければ合格しない。

そういうわけでゲヘナに試験場所を変えた上に範囲を広げる。

 

『しかしこの前補習授業部に訪れた際に見ましたが

そこら辺のスケバンに負けそうには見えませんでしたよ』

「そうだね、そこら辺のスケバンだったら負けないと思う」

 

しかし相手はあのナギサだ。しっかりと把握しているわけではないが、

ティーパーティーのホストをできるほどの実力はある。

温泉開発部が襲ってこないように情報を送っているとはいえ他の手がない訳がない。

 

「そこら辺の相手じゃないやつが来るかもしれないからね」

『心配症では?……といっても意味はないのでしょうね』

「そうだね」

 

私と全く同じ情報をケイが持っていると随分と変わるのかもしれないが、

ケイにすべてを明かすわけにはいかない。

 

ケイと話しながら階段を降り終えゆっくりと空を見る。

落ちて行く夕日を見ると早足でゲヘナの方向へ向かう。

 

 

 

既に夕日も落ち月も出ようとしている頃。

私はゲヘナとトリニティの境界線の入り口へと着いていた。

 

『ここに本当に彼女達が来るんですか?』

「多分。ナギサが私の思うように動いたらだけど」

もし何かしらの影響でナギサの行動が変わってしまっていたらなすすべもない。

 

ケイと隠れながら小声で話しているとトリニティの方から走ってくる音が聞こえる。

先程よりも更に身を潜め、ケイのカメラから情報を聞く。

 

『本当に来ましたね……少し足早で来ています』

私が教えなかったらテストが始まる少し前に初めて知ることになるのだ。

 

一応教えたが、ナギサが対応を変えたり先生達が私を信用しなかった可能性もある。

とはいえ合宿が始まってからナギサが学習状況を知る方法はほとんどないはずだ。

 

未来でナギサから聞いたときは確か

第二次試験を前に先生がナギサに報告をしたときに

先生から聞いた学習状況が想定よりも進んでいて焦って変えたと言っていた。

 

試験の難易度上昇を補習授業部以外に

言わないようにも言ってあるし大きな変化はないはずだ。

『会話を聞く限りはあなたの言う通り試験の難易度が上昇しているようです』

「了解」

 

『しかし……まあ、いいでしょう』

何か聞こうとしたケイに何を言おうとしたのか

聞こうと思ったが、先生たちの足音が通り過ぎていく。

 

「後で教えてね」

そう言って先生たちについていく。

先生たちがゲヘナに入ろうとするとスケバンたちが話しかけているそうだ。

 

少し離れたところから聞き耳を立てる。

「お、トリニティのお嬢ちゃんじゃねぇか」

「わざわざゲヘナまで来てくれてご苦労なことだな」

 

絡まれてしまって困っているようだが、その裏でアズサがリロードを完了して前に出る。

「行こう、強行突破だ」

 

そう言って話していたスケバンのうちの一人を撃つ。

撃たれたスケバンをかばうようにもう一人のスケバンが前に出て、大声で叫ぶ。

「トリニティのお嬢様にこの一帯を牛耳ってるグルグルヘルメット団が負けるとでも?」

 

どこからともなく現れたスケバン達が先生たちに襲い掛かってくる。

アズサが前線に出ている間に、先生がシッテムの箱を起動し終え、

ヒフミとコハルも銃を構える。ハナコも支援の準備ができたようだ。

 

障害物にスケバンが隠れながらヒフミ達が攻撃されている。

ひとまずヒフミが大きめのペロロを取り出し、みんなが隠れる。

 

隠れながらもコハルは手榴弾を取り出し、障害物の後ろに投げる。

障害物に隠れていたスケバン達は手榴弾から

逃れようとしたがそれよりも早く爆発して倒れる。

 

アズサが他の障害物に隠れているスケバンを倒したようで、

付近の障害物のスケバンは撤退していった。

しかし奥からスケバンの追加が来る。

 

ただ今回は障害物がこちら側にある。

障害物を上手に使いながら戦闘をしているようでスケバン達は抵抗をしているが

ヒフミたちに翻弄されて撤退していった。

 

「よし、先を急ごう」

「はい、そうしましょう!」

アズサにこたえるようにヒフミが続けてみんなで走っていった。

 

『なるほど、これくらいなら問題ないでしょう』

「そうだね、スケバン程度なら問題ないはず」

ケイの言うようにこのくらいなら問題ない。

 

しかしゲヘナに本格的に入るとナギサが根回しした誰かが邪魔をして来るかもしれない。

最大限警戒しながら先生たちについていく。

 

歩き続けると、ゲヘナの外郭ではなく

中央のほうに入ろうとすると風紀委員に止められる。

どうやら口論をしているようで、戦闘になってしまうのも時間の問題だろう。

 

ナギサが風紀委員会にトリニティの子が襲ってくるかもしれないという

状況を告げて入りにくくすることは可能だし、やっているが……

ナギサがこの程度の手だけ打って終わるだろうか。そんな簡単なわけがない。

 

そうこう考えている間に風紀委員会の子が銃を構える。

ヒフミ達は敵対するつもりはないため、銃を構えるのをためらっているようだが……

 

私のすぐ近くで、ハルナ達が銃を撃ったようで、検問をしている子たちが倒れる。

何が起きているのか分からず、

困惑しているヒフミ達にフウカを誘拐している美食研究会が近づいていく。

 

少し話すと、どこからかバイクを取り出し、ヒフミとコハルが乗る。

先生とハナコとアズサは給食部の車に乗せてもらっているようだ。

 

ナギサの差し金がわからない今、見失うわけにはいかない。

折り畳み式の自転車を取り出し、急いで追いかける。

 

ナギサの妨害がわかりさえすればその対処をして試験を受けてもらえばよい。

いつ来るかわからない妨害のためについていっているが、

ナギサのことを高く見積もりすぎていたか?

 

いや、そんなわけないだろう。確実にナギサは何かしてきている。

試験会場に向かうまでに確実に何かはあるはずだ。

 

そんな思いとは裏腹に、特に何事もなく試験会場付近までたどり着いた。

『驚くほど何もないですね』

「……そうだね」

 

ナギサがこの程度の妨害で安心するわけがない。

それとも本当に何も手を打てなかった?それならいいのだが……

 

試験会場までたどり着き、ハルナ達にお礼を言って先生たちが降りていく。

一応、試験が終わるまでは見守るつもりではあるが、このまま何もないのだろうか?

まあわざわざこんなところにくる人などいないので

来たら襲撃に来ていることは明白だが。

しかしここらへんは廃墟街なため、襲撃しやすいはずなのだ。

 

『誰か来ていますね。五人ほど来ているようです』

ナギサの刺客か。それなりの実力者であるはずだ。

……しかしその人数で実力者でナギサが少し工作すれば呼べる人材って誰だ?

 

「どっちから来てる?」

『案内しましょう。まずは……』

ケイに案内されて、少し移動する。

 

少し開けた場所に出ると、前から人影が見えてくる。

『5人、それ以上はいそうにありません』

「了解」

 

ケイの報告を聞いて先制射撃を行う。

攻撃が当たった人はグリーンの戦隊服を身に纏っている。

 

カイテンジャー、治安局から何だかんだ逃げ切れているのだ。

色々なところで犯罪を犯しているのにも関わらず。

それはそれなりの実力の証左だろう。そしてそれなりに万全の状態で来ている。

対処はかなり骨が折れそうだ。

 

「引き返して」

銃を構えながら警告をするがおそらく彼女たちは止まらない。

 

「よくも私達のグリーンを!」

「いや、私まだ大丈夫なんだけど……だるいけどリーダーが乗り気だからやるかぁ」

レッドが怒りに燃えている横でグリーンが冷静に返している。

 

流石に少し距離がある状態の射撃で気絶するほどのダメージは入らなかったか……

とはいえナギサの送ってくる刺客はコイツらくらいが限度のはずだろう。

時間的にもそう多くは呼べないはずだ。

 

つまりこいつらの対処さえできたら試験の妨害はないことになる。

そうすればヒフミたちはきっと合格してくれるはずだ。

 

「そう」

『疲労状態を見る限りはあまり疲弊していませんが、

緑と黒を優先的に狙ってもよさそうですね』

ケイの報告を聞きながら、手榴弾を投擲する。

 

「危ない!」

そういってレッドが身を挺して手榴弾を防ぐ。

 

『訂正します。レッドを残していると攻撃を防がれてしまうでしょう。

一撃で倒すかレッドを倒すかですね』

「ふぅ……危ないところだったな!」

煙が晴れると同時に、近くに落ちていたドラム缶に身を隠し、攻撃をやり過ごす。

 

「大丈夫かリーダー!」

「大丈夫だ!リーダーの後ろに仲間がいる限り倒れるわけにはいかないからな!」

少しあきれている様子のグリーンを撃つ。

どこに隠れていたのか分かっていなかったのか、

警戒をあまりしていなかったグリーンは倒せた。

 

「卑怯な!行くぞ!カイテンポーズ!」

そういうとレッド、イエロー、ピンク、ブラックはポーズをとる。

その隙に急いでリロードを済ませる。

 

『素直にレッドを先に倒すと思っていましたが

……あなたの銃の威力を訂正しておきましょう』

「行くぞー!」

そう言ってピンクのグレネードランチャーによってドラム缶が壊される。

 

思っていたよりも耐久力がなかったようだ。

「チャンスだわ!」

ただでは転んでやらない。ピンクの発言を聞くと同時に、ピンクを攻撃する。

 

が、ピンクに命中すると同時にこちらに銃弾が飛んでくる。

『感知が遅くなりました。銃弾があと二秒後に飛んできます』

イエローのスナイパーライフル。

障害物を壊すと同時に撃つことでこちらの油断を狙ってきた。

 

当たり前のようだが、障害物に隠れている間は、隠れていない時よりも油断してしまう。

そこをちゃんと狙えるあたり、伊達に逃げ回っていないな、と思う。

 

しかし当たってやるかと言われたらそうではない。

少し体をそらしてよけ、反撃と言わんばかりに銃を撃ち込む。

やはりレッドに庇われてしまった。

ここから障害物なしでグリーンなしのカイテンジャー全員は大変だ。

 

しかし……

『風紀委員会が到着しましたね。

さすがに通報した私達より指名手配犯の確保が優先でしょう』

ケイが連絡をしてくれていると信じておいてよかった。

 

時間をかければ突破できただろうが、それでもかなり時間がかかってしまっただろう。

「ケイ、ありがとう」

『あなたに万が一があれば困るので』

 

素直に感謝を告げられたのが気恥ずかしいのか、話をそらされる。

「リーダー、逃げないと面倒な逃走が始まるぞ」

「仕方がない。カイテンジャー撤退!ほら、グリーンも行くぞ!」

 

レッドがグリーンを起こして、撤退していく。

しばらくしてやってきた風紀委員の子にカイテンジャーについて報告して、戻る。

 

その後試験が終わるまで見守っていたが被害が出ることはなかった。

これで学力が足りていればみんな合格できたはずだ。

そう思って、ゲヘナから戻るのだった。

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