少女は記憶を胸に   作:クロケル

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私の銃はミメシスの手元にある。そして廃墟のようになったビル。

護衛のために役立ちそうなものはない。

あまり得意ではないが拳で戦うしかないだろうか。

 

こちらへ近づいて来ているミメシスと戦う

準備をしようとしていると、既に私の目の前にいる。

まずい、と思って拳を構え───

 

「え?」

思わず驚いて声が出てしまった。だってそうだろう。

サオリ達の指示に従ってミメシスはアリウス生徒以外の全員を攻撃しているはず。

 

なのに目の前のミメシスはお辞儀をして銃を返してくれたからだ。

困惑していながらも、とりあえず銃を手に取る。

これでひとまず護身はできるようになった。

私が取ったのを見ると、目の前のミメシスは銃を取り出し歩き始める。

 

本当に意味が分からない。目の前にいるミメシスは、

どういうわけか、敵意はなさそうなのでついて行く。

ここはどこなのだろうか気になって周りを見渡すが心当たりがない。

廃墟のようになったビルを迷いなく進んでいく。

 

『……起きましたか』

入り口付近に辿り着くと、空中をふよふよ飛んでいたケイがこちらに話しかけてくる。

「ケイ、ここがどこか分かる?」

 

『……馬鹿なんですか?私が嘘をついて不利益を被るのはあなたですよ』

「うん、だから嘘をつかないで欲しいな」

私の答えを聞いて呆れたようにケイはため息をつく。

 

『あなたに対して、思うところがない。というわけではありません。

ですので、その、今回は折れてあげましょう』

「……ありがとう。ケイ」

 

ケイのナビゲートを受けながら、走り始める。

走りながら私とケイが話しているのを待ってくれたミメシスへ向き合う。

 

「少しだけ確認していいかな?」

『何を……そのミメシスについてですか」

ケイに返事をして、ミメシスの子に質問する。

 

「まずこっちの声は聞こえてる?」

ミメシスの子は頷く。

どうやらこちらの声は聞こえているようだ。

 

「こっちに話しかけて見てくれない?」

少し首をかしげたかと思うと立ち尽くしている。

……どうやら向こうから声を出すことはできないらしい。

 

少しの間走っていると私が倒れたところの近くにたどり着く。

「ごめん、また後で」

そう言って歩いていたミメシスを撃とうとすると、

私よりも早く横から銃弾が発射される。

 

その銃弾は私と一緒に来ていたミメシスが撃ったもののようで、

向こうから歩いて来たミメシスに的中する。次いで私の銃弾が命中する。

一時的に消えるかと思っていると、消えているようには見えない。

 

普通に倒せる威力だったはずだ、と思いながら次の銃弾を撃とうとしていると、

私と一緒にいたミメシスに止められる。

いったい何故だ、と思っていると倒したはずのミメシスが起き上がってくる。

 

早く倒さなければ。

そう思っていると、一緒にいたミメシスが、倒したはずのミメシスに向かって行く。

何かあるのだろうかと思いながら、すぐに撃つ準備を整えながら様子を見る。

 

話している……のだろうか。

そう考えていると、二人のミメシスはこちらにやってくる。

どうやら敵意がないようで、こちらに歩いてくると、私の後ろに移動する。

 

未来でもこんなことは起きていなかった。

私が撃ったことに意味がある?それとも私が最初に倒したミメシスに何かがある?

とはいえこちらに害はないようだし、手伝ってくれるようだ。

考えるのを後回しにして、古聖堂に向かう。

 

 

 

『着きましたが、ひどい惨状ですね』

「全員、生存者がいたら安全な場所に助け出してあげて。戦闘は適宜やっていいから」

最初に私が倒したミメシスの子を含めて、

道中倒したミメシスは全員ついてきてくれている。

 

そんなミメシス達に指示を出して、アリウスの生徒と、

アリウスの指揮下にいるミメシス達と戦闘をしながら、

巻き込まれてしまった生徒や市民を助けてもらう。

 

なぜミメシスが私の指示を聞いてくれるのかよくわからないが、

いくつか分かったことがある。

 

ミメシスがアリウスの指揮下から外れるのは

ミメシスか私が倒せばできるようだ。

 

遠目でトリニティ子たちが逃げるために戦っているのを見ても、

倒れてから起きてきてともに戦っている様子はなかった。

 

理由はよくわからないが、生かせるのならば生かせるに越したことはない。

一人でも多くの人手を得られるのなら、得ておいた方がいい。

 

『アリウスの生徒にミメシスが追従しています』

「了解」

私が少し後ろに隠れて、アリウスの生徒が通り過ぎるのを待つ。

 

「付近に敵はいたか?」

「い、いませんでした」

少し上機嫌な声に答えるようにおびえた声での返答が聞こえる。

 

『アリウスの生徒は合計で8名。ミメシスがいますが、こちら側と区別がつきません』

おそらくミメシスはもともと敵だった存在がこちらに友好的になったため、

敵だった存在と同一で見分けがつかないのだろう。

 

「聞いてみるか。おい、そこの」

私と協力しているミメシスにアリウスの隊長と思われる子が話しかける。

 

「付近に敵はいるか?」

少しは周囲を警戒しているようだが、

話しかけられているミメシスのことは疑っていそうにない。

私の意図を察してくれているのか、首を横に振る。

 

「本当のようだな。ご苦労。この調子でトリニティのカスどもを殲滅しよう」

そういって私がやってきた方向へとアリウスの生徒たちが通り過ぎた。

 

不用意な戦闘をしなくてよいと判断したのか、

ミメシス達はアリウスの子が通り過ぎるのを待つ。

『通り過ぎたようです。古聖堂へ向かいましょう』

隠れていたボロボロの建物から出て、ミメシスの子たちに声をかける。

 

「いい判断だったよ。君たちの操られてる仲間以外は倒さないようにね」

感謝を伝えながら、爆心地である古聖堂へとたどり着く。

ヒナが先生を救助して撤退しようとしているところのようだ。

 

そこに合流して先生を助けようとしていると、

こちらに気が付いて走ってきたヒナに発砲される。

……ミメシスを待機させるのを忘れていた。

早まるあまり、初歩的なことを忘れてしまっていた。

 

どうするべきかと考える間もなく、銃弾が襲ってくる。

ここから交渉をするのは厳しい。ただ、攻撃をしたいわけじゃない。

 

最悪私は攻撃されてもいいのだが、私と一緒にいるミメシスの子たちは、

どうなってしまうのだろうか。明らかにアリウスに従っていないのは異常なのだが、

それによって消滅してから再度復活することはできるのだろうか。

 

ヒナの銃撃から逃れることはできずに、すでに何度も被弾している。

こちらから反撃をせず、様子を伺う。

 

私の指揮下にいるミメシスを全員撤退させるのが最優先だ。

「救援班と、ここに近づけないように防衛する班に分けて行動して」

私の近くにいた子に小さ目の声で伝える。

 

伝えたことを聞いてくれた子は少し考えた様子を見せる。

無事に撤退をしてくれるように、少し手加減をしながら、ヒナと戦わなければ。

そう考えていると、後ろから足を引きずりながら先生がやってくる。

 

"……ヒナ、少し止まってくれる?"

「待って先生。あまり動くと傷口が開いてしまうわ……」

こちらに先生がやってくることは想定外だったのか、ヒナが少し慌てる。

 

「それに今は青色の生徒を引き連れた子と戦ってるの。離れて頂戴」

"そのことについて話があるんだ"

仮面をかぶっている私のことを先生は把握している。

 

よかった。これで戦闘は避けられそうだ。

ヒナの警戒は解けていないが、ひとまず戦闘を回避できそうではある。

"おそらく、彼女は敵対するつもりはないよ"

「……本当にそうなの?」

 

ヒナはそう聞き返すが、まとっているオーラは先程と違って

敵対の意志があまりないように見える。

"そうでしょ?グリム"

先生の質問に頷くと、一時的に納得してくれたのか、ヒナが銃を降ろす。

 

「早く撤退しないと行けないの、手伝って頂戴」

分かっている。先生の避難が最優先だ。軽くでもいいから治療しなければ。

 

そう言って先生がこちらに来て、一緒に歩き始める。

『後方から銃弾が飛んできています。ターゲットは先生だと推測されます』

「先生。ごめん」

先生がサオリに撃たれて怪我してしまった。

 

未来の記憶では事後報告として受け取ったため正確なタイミングを知らなかったが、

ケイのおかげで防ぐことができる。内心感謝を告げて、先生を押し倒す。

突然のことに困惑している先生を、

銃弾が通り過ぎたことをケイに確認してもらってから立ち上がる。

 

"どうしたのグリム?"

「急に押し倒したから驚いたわ」

私が先生を押し倒したことに気がついてこちらにヒナが駆け寄ってくる。

 

私が何か答える前に、崩壊した建物の影からサオリを含むアリウス生と、

ミメシス達がやって来てしまった。

「避けられたようだな。だが問題ない」

統率の取れた動きをして、戦闘体制を整えている。

 

「先生にゲヘナの風紀委員長、それにお前はここで始末させてもらう」

サオリの持つ武器はアサルトライフル。

ミカと同じ武器種だが、ミカより銃弾そのもののパワーは低い。

 

もちろん痛いことには変わりないが。

叩きつけによる短時間の気絶ほどではない。

 

「先生、ヒナ、早く撤退して」

「あなた一人で大丈夫なの?とてもじゃないけど、その銃で大人数と戦うのは……」

ヒナの心配はごもっともだ。私の持っているのはスナイパーライフル。

とてもじゃないが、対多数で優勢ではない。

 

「先生に被弾してしまうのが一番最悪」

「……そうね。早く先生を安全な場所に送り届けてくるわ」

私の言うことに納得してくれて、ヒナは先生と一緒に撤退して行く。

 

サオリが何かを連絡しようとしていたため、即座にトランシーバーを破壊する。

「先生とゲヘナの風紀委員長が逃走、至急追跡しろ」

トランシーバーの代わりと言わんばかりに大きな声で叫ぶ。

 

サオリと一緒にいた伝達係と思わしき子のトランシーバーを破壊する。

「数名、各班に伝達しに行け。こいつと、先生共の殺害を目標としろ」

蜘蛛の子を散らすように数名のアリウス生が散開する。

 

ここから撃てば一人や二人なら倒せるだろうが、

さすがに全員は倒せそうにない。

 

勝負だ───サオリ。

たとえ無謀だとしても、ここに引き留めておかなければならない。

時間稼ぎに乗ってもらうよ。

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