『付近に敵対反応はありません!先へ進みましょう先生!』
アロナの支援を受けつつ、アズサ以外の補習授業部と、セリナと協力をして、進む。
現在行方不明のアズサの捜索が主目的だ。
不思議と、道中怪我をしていたり、巻き込まれている生徒はいなかった。
いたらすぐ助けようと思ってはいたが、全員避難できていそうならよかった。
現在位置から考えると、あともう一度ほど戦闘が起こりそうな場所はあるが、
もうすぐ古聖堂へと着きそうだ。
そう考えていると、前の道に青白い生徒が見える。
どうやら戦闘をもう一度しなければならないらしい。
"みんな、銃を構えて!"
先生に言われるまでもなく、ヒフミとコハルは銃を構える。
"コハル、手榴弾を中央にいる青白い生徒に!ヒフミは隠れながら牽制射撃をお願い"
先生の声を聞くと同時に、コハルは手榴弾を取り出し、ヒフミは遮蔽物に隠れる。
コハルの手榴弾を使ったところにヒフミは弾丸を叩き込む。
が、青白い生徒は倒れることはなく、行く手を阻む。
「少し厄介みたいですね、先生」
"……そうみたいだね、セリナ"
先程まで戦っていた青白い生徒と違って、何らかの意識があるように見える。
その証拠と言わんばかりに、奥にいる巨大な青白い異形頭の生徒は、手を動かしてまるで指揮しているように見えた。
"……コハル、一番奥にいる一際大きな青白い生徒に向かって射撃してみて"
指揮官がいるのなら、早めに倒さなければならない。
確認のためにコハルが銃を撃つと、周囲にいた他の青白い生徒によって止められる。
"コハル、何回かやってみてくれる?"
私の意図を分かりかねているようだが、コハルは指示に従って何発か射撃する。
案の定攻撃は他の青白い生徒が代わりとなって受けた。
指揮官の特定ができた。ここからどうにかして最初に倒さなければ。
そう思って注視していると、突然姿が消える。
瞬時に消えたわけではない。すこしずつ体が薄れていって消えた。
ミメシスを倒した時のように、だ。
「ど、どうしたんでしょうか……?」
何故消えたのかさっぱり分からないが、消えてくれたのはラッキーだ。
古聖堂へと向かえる。そう思って移動を再開した。
残っていたわずかな距離を移動し終えると、爆発の中心地、古聖堂に着く。
あの時襲ってきたアリウスの子を保護して
アズサの居場所について聞こうと思ったのだがいなくなっていた。
ここから足取りを追おうとあたりを見回すと、ポツンと人影が見える。
探していたアリウスの子かもしれない。
保護して何か聞けないかと思って近づくと気が付く。アズサだ。
私が急いで駆け寄ると、ヒフミ達も気がついたのか私と一緒に走り寄る。
足音で気がついたのか、アズサはこちらへと視線を向ける。
「……先生。それにヒフミ達も」
少し驚いた様子を見せながらもアズサは聞いてくる。
「どうして、どこかに行ってしまったんですか?」
ヒフミはアズサに対して一歩詰め寄る。それに気圧されてか、アズサも一歩後退する。
「アズサちゃん。一緒にトリニティに戻りませんか?」
ハナコも落ち着いてアズサに近づく。
「……すまない。戻るわけにはいかない」
「それはどうしてですか?」
明らかに何かがあった様子のアズサにヒフミは聞く。
「私は、みんなとの、思い出の、ぬいぐるみを、殺人の、道具に、使おうとした」
泣くようにたどたどしくアズサはそう言う。
「だから、私は一緒にいる資格がない」
「それでも……」
ヒフミが何かを言う前にアズサは続ける。
「帰ってくれ、先生、ヒフミ、ハナコ、コハル、セリナ。ここは危険だ」
アズサがそう言う。反論するべく声を出そうとしたヒフミに、銃弾が飛んでいく。
「戦場で友情を大事にするなアズサ。そんなものは虚しいだけだ」
「サオリ……!」
古聖堂から撤退する時に襲って来ていたアリウスの子が、こちらへ話しかけてくる。
「お前と共に逃げたアイツの居場所を吐け。苦しませずに殺してやる」
「サオリ、こんなことはやめにしよう」
サオリの提案を間髪をいれずに拒否し、アズサは反論する。
「こんなことをしても、何の慰めにもならない」
「そうか、吐かない、と言うことか。いいだろう力づくで聞かせてもらう」
そう言うと青白い生徒達と、二人のアリウスの生徒が出てくる。
「目標は全員の殺害だ。行動開始」
「先生達は逃げてくれ、私が時間を稼ぐ」
アズサがそう言うとサオリ達へと突っ込んで行く。
「待ってくださいアズサちゃん!」
ヒフミが引き止めようとするが、その声を聞かず、アズサは向かって行ってしまった。
「先生」
"アズサを助けにいくよ"
アズサももちろん、サオリ達も止めなければならない。
ひとまず現在の状態を観察する。今こちらに攻撃して来ているのは
サオリと、一緒にいる二人、そして青白い生徒。
ここにくる前に戦いになりかけた指揮能力を持っていそうな存在はおらず、
青白い生徒の対処はそこまで苦戦しなさそうだ。
問題はアズサの仲間であろうサオリと二人だ。
アリウスの状況を考えるとかなりの実力者であるはず。
今現在アズサはサオリ達三人と戦っている。
"ヒフミ、囮を取り出してくれる?"
そう言って巨大なペロロを取り出す。
青白い生徒達が釘付けになっている間に、コハルに手榴弾を投げてもらい、倒す。
どうやら疲弊していたのか、倒れるのが早い。
お陰で、すぐに青白い生徒を倒して進むことができる。
すぐにサオリ達への道は開けた。
ただ一瞬の間とはいえ、三人から総攻撃をくらっていたため、アズサはボロボロだ。
ヒフミが急いで駆け寄る。
「どうして戻らなかった!」
ボロボロになりながらも、怒気をはらませた声でアズサは叫ぶ。
「ここは、ヒフミ達が居て良いような世界じゃない!」
「最後まで友情ごっことは、虚しいものによく執着するな」
ゆっくりとサオリはアズサに向かって歩こうとすると、
一緒にいた茶色っぽい黒髪の子が話し始める。
「リーダー。他の部隊はすべて襲撃を受けている。
早くトドメを刺して一度撤退した方がいい」
「……そうか。アズサ、残念だよ。
お前はもっと賢いと思っていたがそうではなかったらしい」
そう言ってもう一度サオリは歩みを進める。
サオリの前にヒフミが立ち塞がる。
「……どけ。早死にしたいのか?」
「どきません。アズサちゃんは殺させません」
「ここでお前が、どんなに足掻こうと何の意味もない、全ては無駄なのだ」
そう言ってサオリはヒフミに銃を撃とうとする。
「アズサちゃんが人殺しになるのも、アズサちゃんが殺されるのも!」
ヒフミの言葉に、サオリが怯む。
みんなは何も言わず、ただ見守っていた。
「そんな暗くて憂鬱で、陰鬱な物語なんて、私は嫌なんです!」
アズサはヒフミを見つめる。
「例えそれが世界の真実だとしても、私は好きじゃありません!」
サオリの仲間である二人も不思議な力に阻まれているように動くことができていない。
「私には、好きなものがあります!平凡で、大した個性もない私ですが……
自分が好きなものについては、絶対に譲れません!」
ボロボロとなった古聖堂の上で、ヒフミは叫ぶ。
「友情で苦難を乗り越えて、苦しいことがあっても、友達と助け合って……!」
祝福と言えるような暖かい風が吹く。
「辛いことがあっても……最後にはハッピーエンドで
終われるような物語が、私は好きです!」
駆け付けて来た正義実現委員会も、ゲヘナの風紀委員会も、
ホシノ達対策委員会も、みんなが見守っている。
「私たちの描く物語は、私たちで決めます!
終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!」
どこからか現れた青白い生徒達も、ヒフミを見つめる。
「私達の物語、青春の物語を!」
暗かった空から、光が差してくる。
奇跡。そうとしか形容できない場面だ。
私がやるべきことは一つ。
"ここに宣言する…… "
"新しいエデン条約機構を!"
青白い生徒、それは過去のユスティナ聖徒会である。とハナコは言っていた。
つまりサオリ達が用いているのは、死者の亡霊のようなもので、
わざわざエデン条約の時にしたのは、それを利用しなければならなかったんだろう。
エデン条約機構そのものが依り代になっているとするのならば話は簡単だ。
私達がもう一つエデン条約機構を作ればいい。
そうすれば彼女達は混乱するんじゃないだろうか。
もっとも、近くに青白い生徒がいなかったからわからないのだが。
当たりを見回すと、先程までいたはずのサオリ達はどこかへ消えていた。
撤退したのだろうか?アリウスについてもっと情報が欲しいのだ。
彼女達なら知っていそうだったのだが……
「……その、ヒフミ。ありがとう」
照れている様子のアズサは、ヒフミに感謝を伝える。
「良かったです!アズサちゃんが無事で!」
ヒフミがアズサの手を握る。
「これからも仲良くしてください!」
「あぁ、もちろんだ」
その答えに満足したのか、ヒフミは手を離したかと思うと、
アズサがこちらへと向き直る。
「先生、どうしてここにわたしがいるのか説明していなかったな」
そういえば、アズサはどうしてここにいたのだろうか。
それに、サオリがアズサに聞いていた、一緒に逃げた、という相手は誰なのだろうか。
その答えは、すぐにアズサの口から放たれた。
「グリムが地下へと行ったから、入り口を警戒していたんだ」
"グリムが?"