列車に揺られる。
私は今、どこにいるのだろうか。
前を向くと少女がこちらを見ながら話をしている。
「…私のミスでした」
だれかが泣きながら私の手を握っている。
だれかが銃口を私に向けている。
激しく光り、稼働しているタブレットが見える。
ボロボロになったタブレットが見える。
私のものではない、私の記憶。
ありえた私の記憶だろうか、それとも存在していた私の記憶なのだろうか。
「私の選択───それによって招かれた、このすべての状況」
きっと私に対して話をしているのだろう。
周りを見渡そうとしても見ることができない。
この電車はどこに向かっているのだろうか。
「結局、この結果にたどり着いて、
初めてあなたのほうが正しかったことを悟るなんて……」
「…今更、図々しいですが――お願いします。先生。」
目の前の彼女はどこか苦し気な表情をしながら
こちらに話をしている。そんな彼女に対して、先生である私が答えるべきことは決まっている。
"何を頼まれるかはわからないけど…"
"私に任せてほしいな"
私が返答したのが意外だったのか
一瞬驚き、話を止めてしまった。
「…いずれ、私の話したことは忘れてしまうでしょう」
「ですので、大事にしてほしいのは――経験ではなく、選択」
「あなたにしかできない、数々の選択です」
思えば、この話を聞いたのはこれが初めてだろうか?
列車の進む音と、彼女の声だけが車内に響く。
「ねじれ、歪んだ先の終着点ではなく、別の結末を」
「そこへつながるカギはきっとあなたたちが持っています」
「だから先生、そしてあなたも、どうか───」
他にも乗客の人がいたのだろうか。
夢なのかわからないが、体をうまく動かすことができない。
それでも誰かいるのであろう方向を向き……
深い青緑色の髪の少女が眠っているのを見て……。
「…先生、起きて下さい」
誰かが私に声をかけている。
寝てしまっていたのだろうか。
「先生!」
横から揺すられてながら声をかけられて目が覚める。
視界が開けて見えたのは窓越しに見える太陽にてらされる街並み。
「少々待っていて下さいとおっしゃったのですが…」
「お疲れだったみたいですね、中々起きない程に熟睡されるとは」
どうやら熟睡してしまっていたらしい。
「もう一度、改めて説明しましょう」
そういって起こしてくれた少女は話を進める。
「私は七神リン、学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会所属の幹部です」
リン、と名乗った少女は次の言葉に詰まっているのか言葉を止めてしまっていた。
"えっと…私が先生としてキヴォトスに来た…ってことでいいんだよね?"
「そうですね、私たちはあなたがどういった経緯でここに来たので知らなかったのですが……」
「その様子を見る限りはそこまで混乱していないようですね、私についてきてもらえますか?」
そういってリンはエレベーターに乗った。
私もついていきエレベーターに乗る。リンは私が乗ったことを確認するとエレベーターを動かした。
窓の外に見えるキヴォトスの景色は初めてのはずなのにどこか懐かしさを感じる。
景色を眺めているとリンが出てきて話を進める
「キヴォトスは無数の学園が集まってできている巨大な学園都市です。」
「そして、これから先生が働くところでもあります。」
「それから……」
リンの話を聞きながらキヴォトスを眺める。
どうしてなつかしさを感じるのだろうか、
そんなことを考えながらエレベーターが昇っていく。
目的の階層に着いたのだろうか。
リンが下りていく。私も眺めるのをやめて慌てて降りて行った。
「やっと見つけた!代行!連邦生徒会長を早く出して!」
目の前にいる深い青髪の少女がこちらをみて困惑をしている様子が見える。
「主席行政官。お待ちしておりました」
「連邦生徒会長に会いにきました。現状に対する納得のできる説明を要求します」
一人がこちらに話しかけに来たのをきっかけにエレベーターの出口に三人もやってきて
どういった状況なのかを知ろうとリンに詰め寄っている。
「…めんどうな人たちに捕まりましたね」
そういっているリンはストレスが溜まっているのか言葉遣いが少し荒くなっている。
「せっかく来ていただいたのに申し訳ありませんが……」
言うのを少しためらっていたようだが、ため息をつき話を続ける。
「簡潔にいいますと、連邦生徒会長は席に居ません。行方不明になった、といったほうがよいでしょうか」
連邦生徒会長が行方不明になった、というのは事態がよくわからない私にとっても重要なことがわかる。
先ほどまで詰め寄っていた彼女達は動揺しているようだ。
「私達連邦生徒会は現状「サンクトゥムタワー」の管理ができないため行政権がありません」
こちらに視線を向けてリンは話を戻す。
「…しかし、先生がフィクサーとなって解決してくれるはずです」
その話を聞き、動揺したまま、詰め寄っていた少女たちがこちらを見つめる。
"シッテムの箱があればできると思うよ"
半ば自然に口が開いていた。そんなものを私は知らないはずだ。
知らないはずなのに、私は知っている。
どこか違和感を感じながら話を進める。
「…知っていましたか。きっと連邦生徒会長が説明されてたのでしょう」
「シャーレの建物に保管されているのでそれを取りにいかなければなりません」
シャーレは、私が働く場所らしい。シッテムの箱は私の物で、大事なものだ。
「モモカ、シャーレに向かうヘリを用意してください」
そういうと、ホログラムで少女が現れる、この子がモモカだろうか。
「シャーレの部室は…外郭地区だったっけ?今そこ大騒ぎになってるよ」
「矯正局からでてきた生徒が大騒ぎしてる上、仮面をかぶった生徒が大騒ぎをおこしてる生徒たちと戦ってるよ」
その話を聞いたリンはどういった状況なのかつかみかねているのか困惑している。
「地域の不良を扇動して大暴れしている生徒を仮面の生徒が片っ端から殲滅してる」
「ただ、仮面の生徒が何を目的としてるかわからない以上、迂闊なことはできないかもね」
そう言い終えると伝えるべきことは伝えた、と言わんばかりにホログラムが消える。
その話を聞いたリンは怒りに震えている様子が目に見える。
"大丈夫?"
「…ええ、大丈夫です。問題は少しありますが、彼女たちがきっと助けてくれるはずです」
リンは先ほどまで詰め寄っていた彼女達を見る。
みられた彼女達はモモカとリンの話を聞いて困惑している上、リンに見られて混乱している。
「先生がシッテムの箱を取り終えるまで護衛をしてください。任せましたよ」
言い終えるとリンはエレベーターに私たちを乗せて一階まで移動させた。
エレベーターに乗りながらお互いの自己紹介をしてシャーレに向かい始める。
「思っていたより不良が少ないみたいね」
「えぇ、仮面の生徒と争っているそうなので少ないのでしょう」
モモカの言っていた通り、大騒ぎをしている、という話を聞く限りの印象だと
多くの不良生徒が争っていると思われていたけど、見える限りは
倒れている不良がほとんど、わずかに残っている生徒も簡単に数えられる程度だ。
…最も彼女たちは通すつもりはなさそうだが。
「さっさと鎮圧してしましょうか」
「ええ。ですが先生は銃弾一発で死んでしまいます。十分注意しましょう!」
"指揮は私に任せてくれないかな?"
指揮をする提案をすると一瞬躊躇った後、全員承諾してくれた。
"さあ!戦闘開始だ!"
そういって戦闘を始めたが、一方的な戦いだった。
仮面の生徒によって疲弊していたのだろう彼女たちは
ハスミや、ユウカ、スズミに撃ち負け、チナツの援護になすすべもなく、
容易に鎮圧されてしまっていた。
「疲弊していたとはいえ、戦いやすかったですね」
「やっぱりそうよね……」
「先生の指揮のおかげで戦いやすかったです」
"急いでシャーレに向かおうか"
そんなことを言いながら、戦闘を終え、シャーレへと向かう。
仮面の生徒に、脱走した生徒、両方とも同じ生徒なのだから、仲良くなりたい。
そんなことを、心の底に秘めながら、歩き始める。
少なくとも今は、シッテムの箱の入手が最優先だ。