Millennium Research Institute 作:信楽焼のたぬき
話をしよう。
燃え尽きかけていた俺の生存本能が再燃し、転生して早々”川越え”*1をすることにはならなかった。
一度は死すらも受け入れていた俺は、今や兵器開発に向けて俄然やる気が湧き出てきていた。
そういえば、あの時は興奮していて考えが回らなかったが、あのタイミングで俺の生存本能を再起動させる情報が流し入れられたのは、やはり確実に作為的なものであるだろう。
この世界に、神だとか上位者とやらがいるのなら、そいつらはどうも俺を手放したくなかったらしい。
なぜ俺なのかはこれっぽっちもわからんがな。
話を戻そう。開発の話だったな。
とはいっても、今の俺には研究所どころか安定した暮らしってやつがない。もしQoLが数値化できるなら、きっと過去最低値を叩き出していたことだろう。
やはり最初は衣食住の確保が先決。俺の判断は間違ってなかったということになる。
そして今から俺がやるべきことは、
「寝床の確保がプライマリミッションだな、できれば開発の設備が整った物件を探すか。」
そうして俺は技研都市を歩き始めた。
廃墟を彷徨うこと1時間弱。自分の新しい体のこともある程度わかってきた。
まず体躯。身長は推定170cm後半、標準体型よりやや痩せてるがは筋肉はそれなりにある。顔は...まぁ、イケメンと言っても差し支えないんじゃないか?
唯一、白髪に紅い眼というのが気になったがね。
次に身体能力。どういう原理かは知らんが、一般的な人間と比較するとやけに身体能力が高い。
特筆すべきは、ダッシュ力と跳躍力、そして持久力。全力疾走の8割くらいのスピードでかなり走ったが息切れ一つしなかったし、垂直にビルの5~6階程まで跳ぶことができた。
あぁ、あとは回復力だ。道中、ガラスの破片でうっかり手を切ったのだが、前世に比べて明らかに治りが早かった。これも俺を簡単に死なせないためだろうか。正直、この世界だから助かっている部分もあるのだが。
歩き始めてから約二時間後、俺は道中で興味深いモノを見つけた。
「これは、技研製MT...?」*2
まさかの技研の遺産である。
俺はパンジャンドラム擬きとかアイビスシリーズばかり警戒していたが、なるほど技研都市で野良のMTに遭遇することを考慮しないのは明らかに下策だった。
今の俺なら3秒程度でひき肉にできるだろうからな。スクラップと化していたのは僥倖だった。
ただ一つ気になったことは、
「なんで、人間と同じ大きさで作られている...?」
本来MTやACは、人間の7~8倍ほどの大きさのはずだ。それが、なぜ人間サイズで作られているのか。人間が乗り込んで操縦することが度外視された設計、ということは完全な自立兵器なのか、それともドローンよろしく遠隔操作タイプなのか...
様々な可能性が浮かんでは消えていく中で、俺の頭が出した答えは
「...随分と、都合のいいイレギュラーだな。」
“この世界では最初からこういうものだった”である。
思考放棄と言ってくれるな。一応考えあっての結論さ。
ここキヴォトスでは、インフラや交通、治安維持*3に至るまでがJK...生徒によって運営されている。
そして生徒が戦うのは基本的に生徒やオートマタなど、自分たちと大きさの変わらない相手である。稀に戦車なんかも出てくるらしいが、それは正史だとイレギュラーだ。
そんなところに、いきなり15m級の人型兵器が出てきたらどうなるか、という話さ。しかもMTは数の暴力で以て制圧力を高めるというのが基本の運用だ。元の大きさのMTが10体も20体も出てきたら...まぁまず戦いにすらならないだろう。
有り体に言ってしまえば、世界観の破綻が起こるというワケだ。
迂闊に世界を歪めることは、どんな兵器よりよっぽど危険だろうからな。
ただそうなると、あの情報の波に紛れ込んでいた「預言者」とかいう機械...機械?
あれはなぜこの世界に最初から存在するのだ?
さらに時間が経ち、その辺の廃墟のキッチンらしき場所から缶詰やレーション、水などを拝借*4して生き延びつつ、
「電源ヨシ、水道ヨシ、家屋として必要な条件は概ね満たしている。そして、使ってくれと言わんばかりの開発キットに、廃材の鉄の山...」
「パーフェクトだ。」
ドンピシャな物件に、ついに巡り合うことができた。
周辺の廃墟に保存食が残っているのも、電源や水道に特に損傷がなかったのも僥倖だった。すぐにここで暮らすことができる、こんなに嬉しいことはない。
よし。では...
ここをキャンプ地とする!
次回、開発開始
追記
技研製MTの型番を注釈にて追加しました
今後、技研製MTは原則コイツを指すものとします
AC6原作にてコイツが技研製ということは明言されていませんが(それどころか封鎖機構の型番)、ご都合主義ということで何卒
有識者の方いましたら教えてください