Millennium Research Institute   作:信楽焼のたぬき

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主人公、出番なし


Archive:#01

話をしましょう。

 

彼のスカウトには失敗しましたが、そのお詫びというべきでしょうか。

 

彼の持つ技術をいくらか分けていただきました。

 

この世界の武器類よりも高威力且つ高負荷、とても生身で扱える代物ではありませんが、使いこなせれば一騎当千、ともすればこのキヴォトス全域を制圧できるでしょう。

 

彼のあのパワードスーツ…曰くアセンブリ・スーツと呼ぶそうですが、あれの装着を前提にした性能をしている。あれも気になるところでしたが、本人にも『解らないものは教えられん』と断られてしまいました。

 

…もっとも、本当に恐ろしいのはあのスーツではありませんがね。

 

彼の肉体そのものが、まさにイレギュラーと言える。

 

いや、オーパーツとでも呼びましょうか。

 

あの地下に湧出していた未知の物質、曰くコーラルと呼ぶらしいそれは、実に魅力的なものです。

 

エネルギー源にもなり、上質な情報導体にもなり、あまつさえ人間の“強化”すらできる。

 

カイザーからすれば垂涎ものでしょう。

 

問題は適性です。

 

“資格”を持たない人間がそれに身を浸せば、コーラルが一人の人を廃人にするのは時間の問題でしょう。

 

だが彼は違う。

 

コーラルは彼の体に異常なほど馴染み、そして友好的に振る舞う。何らかの意思を持っていると言われる方がまだ理解できます。

 

面白い、実に興味深いですが…

 

迂闊に触れれば間違いなく破滅が訪れるでしょうね。

 

私だけ、あるいは私達(ゲマトリア)だけなら好奇心の赴くままにいろいろやってみようと思えましたが、その破滅はキヴォトスの全てを巻き込むでしょう。

 

それは私とて本意ではない。

 

コーラルを制御し、“破綻”の災禍をこの地下と直上の地表だけで収めた()()()黒羽ワタルは、非常に優秀であったと言わざるを得ません。

 

…そうです、今の話の流れで、一つ思い出したことがあります。

 

アリウスすら観測できる私達(ゲマトリア)が、なぜこの地下の遺跡を見つけられなかったのか。

 

簡単です。例の災害…“アイビスの火”で生じ、ミレニアムの廃墟を作り上げたコーラル爆発、その余波として廃墟周辺には残留コーラルが漂っています。

 

それが、廃墟全域を『観測不能領域』たらしめていたのです。

 

『シッテムの箱』をもってしても、廃墟の観測は困難でしょうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…さぁ、昔話は終わりです。

 

あなたは、近いうちに廃墟へ赴くつもりでしょう。

 

なぜ知っているのかって?

 

それは今は関係ありません。

 

先程も言ったように、廃墟には残留コーラルが漂っている。適性のない人間は、まず汚染される危険な領域です。

 

長居することは、避けるのが賢明でしょう。

 

これはあなたの身を案じての忠告ですよ。

 

 

 

シャーレの先生?

 


 

時間は遡り、ウォッチポイント突破から20秒後。

 

連邦生徒会、サンクトゥムタワー。その地下には、連邦生徒会長しか知らない極秘組織が存在する。

 

サンクトゥムタワー地下10階、グリッド086。

 

ミレニアムOB、元“RaD”頭目である『シンダー・カーラ』がリーダーを務める特別組織、“学園封鎖機構”である。

 

「…まさか、技研都市に生き残りがいたとはね…」

 

この場において人間はカーラのみ、周囲ではアンドロイドがせっせと特務機体の点検を行っている。

 

「観測画面を眺める、簡単な仕事だと思っていたんだが…。あの日、全部死んだと思っていたけど、どうやらそう簡単にはいかないらしい。」

 

カーラは浮かない顔で独り言ちる。

 

「動いた時点でとっちめるのが、一番手っ取り早いんだが…」

 

《ボス。執行AIと特務機体のメンテナンスが完了した。指示があればいつでも出撃できる。》

 

「まだだ、チャティ。上からの指令は、『地上に何らかの実害が発生した場合、一連の騒動を鎮圧するために出撃させることを許可する』だ。まったく、連邦生徒会長ってのは甘いねぇ。事が起きてから対処するなんてさ。」

 

極秘組織故に、すぐ行動に移せないことにカーラは歯噛みする。

 

「…まあ、しばらくはこのまま観察だ。チャティ、休んでていいぞ。」

 

《了解だ。》

 


 

秘匿対象:学園封鎖機構

連邦生徒会データベース最深部に保管されているもの。極めて高度な暗号化措置が施されている。

現在、連邦生徒会内部でも知っている者がいない秘匿組織。

 


 

“アイビスの火”並びにミレニアム調査技研滅亡に際し、連邦生徒会長によって作られた組織。

 

ウォッチポイント及び集積コーラルの監視が平時の主な業務であり、有事の際の業務は、何らかの問題が発生し、SRT特殊学園をもってして対応不可と判断された場合、あるいは対応に失敗した場合に、特務機体と呼ばれる高性能機で騒動を鎮圧し、問題解決まで当該学園の封鎖を執行することである。

 

“アイビスの火”は秘密裏に処理されたため、ミレニアムのセミナーと連邦生徒会以外では知るものは極めて少ないが、連邦生徒会長の肝を冷やすには十分だったらしく、以降同様の騒動が発生した場合に速やかに対処できるようにという理由で同組織が作られた。

 

その存在は連邦生徒会長以外に知るものはいないほど徹底して隠匿されており、他の連邦生徒会メンバーはサンクトゥムタワーに地下階層があることすら知らされていない。

 

シンダー・カーラは、“RaD”時代の発明や機械弄りの腕を評価されるとともに、技研の業や“アイビスの火”を知る数少ない人物であるとして卒業に際して連邦生徒会長にスカウトされた。

 

現在配備されている特務機体、『エクドロモイ』『バルテウス』『カタフラクト』と機体を駆る『執行AI』はカーラの発明である。

 

極めて大きな戦力を保有しているため先述のように秘匿組織であり、表向きにはカーラの進路はブラックマーケットでジャンク技師をしていることになっている。

 

なお、封鎖機構最奥部、地下11階『ロストフィールド』には前述の特務機体とは別の『強制執行機』並びに『強制執行AI』が配備されているが、機密保持のため記載を省略する。




まだ原作は始まっていない

そして封鎖機構、これが書きたかった
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