スターピースカンパニー市場開拓部第十三艦隊~地球を渇望する者達の狂騒譚~   作:らんかん

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⬛︎スターピースカンパニー
アルテナ・ジャズパライズ……市場開拓部第四艦隊司令官
マリーン・ジェーンビム……市場開拓部第四艦隊臨時参謀、ウォーロック駐留艦隊副司令官
テーバイ・ヒュリア……市場開拓部第四艦隊所属、分艦隊司令官
チェリン・ディ・ヴァーク……市場開拓部第七艦隊司令官

⬛︎オムニックルパート主義派
オイラー・ナズ……ルパート主義派第四艦隊司令官
ボルト・エン・アール……ルパート主義派第四艦隊副司令官
ファイ・コンパス……ルパート主義派第五艦隊司令官
ジス・アン……ルパート主義派第八艦隊司令官
◇墓誌
グリース・コール……市場開拓部第四艦隊、戦略投資部臨時特別艦隊に挟撃され戦死
カイコ・インクランド……同上


ティーベル星系の戦い・序

 スターピースカンパニーのルパート主義派艦隊、浮黎の目に入ったのはルパート主義派の第四艦隊の旗艦アングルヘッドである。

 

「ふん、この前の奴らはほぼ旧型の情けない戦艦しか貰えなかった背信者どもだったのだからな。今回は追って撃滅する、そのために卿らの力を借りているのだから」

 

 金色で、赤い顔をした総司令官であるオイラー・ナズは、隣に副官で銀色の顔をしたボルト・エン・アールを置き、戦艦のモニターにはこの艦隊の左右後方に付いている艦隊の提督で、片方は青色の顔をしたファイ・コンパス、もう片方は金色の顔を使用しているジス・アンが映っていた。

 

《しかし、厄介ですねえ。相手はかなりの手だれとみました。我々が追跡していることが分かってるやら、二つほど我々の前方左右に見えてるんですよ。どうですかな、オイラー提督。このまま追えば挟撃は間違い無いでしょう》

 

 ジス・アンの経済にのめり込んだ者らしい粘りつくような男の声で考えるふうの動きをするオイラー。表情などは一切変わらないオムニックながらも、その声が何よりも人間たらしめるような雰囲気を醸し出して考えている。

 

「この戦法はおそらく第四艦隊が増援に来て、艦隊を二分し挟撃作戦に出てると考えた方がいいかと思うぞ」

「カンパニーの第四艦隊……」

《おお!それでは敵はアルテナ・ジャズパライズではないか!》

 

 もう一人、モニターに映った男であるファイは、机を叩いて興奮。ルパート主義派の第二艦隊は寄せ集めの旧式だったとはいえ、オムニック一番の利点であった頭脳を使った誇り高い軍隊であったことには変わりない。その誇りを完膚なきまでに叩き壊したアルテナは、この機械達が珍しく怒り首を欲しがるほどのものだった。

 

《で、あるならば今すぐに戦わねばなるまい!先鋒を譲ってもらうぞ!》

「それは構わぬが……第二艦隊への先鋒はジス提督にもやって頂きたい」

《ほほぉう》

 

 名前を呼ばれた金色の顔は、その粘り気を隠さない陰湿さを含んだ声で返事。それを聞いてから、総司令官は作戦を説明する。概要だけの軽いものだが、情報は何しろ機械同士だ、徹頭徹尾言葉である必要もない。

 

「こちらの第四艦隊を二分し、お二人方の艦隊に加える。今我々の艦隊はそれぞれ過不足なく30000隻ずつ保有している。卿らを信頼し、二艦隊45000隻で一気に敵20000隻を壊滅させ、残るであろう60000隻ほどで恒星の後ろへと逃げたあの艦隊を挟撃しこれを撃破。いくらアルテナ・ジャズパライズでも数の不利は覆せないのだ。あれは神には認められてない男、使令どころか行人でもない。この宇宙では取るに足らない男だ。戦略投資部はともかく、ただ有機生命体が集まって機械を動かしているに過ぎんのだからな」

《おお、よくぞ言ったオイラー提督!卿の勇気ある発言と、有機生命体に臆することのない素晴らしい意志!我々がルパート主義というものを目指し、実現しようとする中で永遠に輝くその御顔を拝めることに感謝しますぞ!》

《なるほどぉ、よく考えてますねぇ。やはり機械とは一切の語弊なき結束こそが、何よりの証。弁えておられる提督の艦隊を、我々に貸していただけるとは。これはまた膨大な戦果と奴の死体で報いねばなりますまい》

 

 艦隊司令官三人は、しっかりと会話をした上で理解し、その上でオイラーの言っていたことに感銘して声を上げている。オムニックをただの文明や人種みたいに扱う最初の人間を、深く評価する必要が出てきた。

 

「今から第四艦隊を二手に分け、陣形を変更!密集体系で火力を集中させ分裂している敵艦隊を突破し、裏に隠れている奴らを撃破せよ!それが、今はもう宇宙の果てに旅立たれた歴代の皇帝陛下が見る、未来の恒星となるであろう!」

《第五艦隊!合流したオイラー艦隊と密集隊形を取り、敵が射程に入り次第砲撃せよ!これが、我々が皇帝陛下に手向けることのできる、唯一の花束になるであろう!》

《んん〜!第八艦隊、さっさと隊列を組んで密集隊形を作りなさいっ!オイラー提督と我らが皇帝陛下の名の下に、あの野蛮な資本主義以外のイズムを知らない奴らを破壊してしまうんですねえ!》

 

 オイラーの第四艦隊は、第五、第八艦隊に半分ずつ合流。合流することで45000隻の艦隊が二つになり、アルテナ率いる二分された第四艦隊へと狙いを定めた。全速力で迫れば、早くても30分後に会敵することになるだろう。

 

 二つの大艦隊による数的有利での高速突破を目指す、ルパート主義派の艦隊は恒星の輝きを受けながらその光の周りを飛ぶ熾天使のように、恐怖感と威圧感を出してカンパニーの怨敵に誇りを叩きつけに行くのだった。

 

 

 

 

 

「……って、考えてんだろうさ」

《えーっ!?じゃあ、あんたが分けた意味ないじゃん!もー!》

「逆を言えば、正面衝突を判断させないで済んだと言っていいだろう」

 

 こっちは、アルテナの市場開拓部第四艦隊。

 

 今の陣形は、恒星を囲い込むように市場開拓部の艦隊が展開しており、相手から見て恒星の反対側に、チェリン・ディ・ヴァーク率いる弓形陣を敷いている第七艦隊。その陣の両端に、単横陣を置いている第四艦隊がいる。

 

 どうやら今まで、アルテナの予想図を聞いているようだった。内容としては、オイラー達の動きを的確に当てる話のようで、受け方を考えているようだった。

 

「提督!今しがた発射したそうです」

「そうだな、いつになったら恒星に届く?」

「最長30分です、後方かつ恒星に近づく形での射出なためまず相手に察知されることもないでしょう。今は恒星の動きが活発なため、プラズマによる射撃時の歪みもあると思います」

「おお、ありがとう」

《え、あんた何したの》

 

 休暇中のリュエの代わりに、ムールのところからやって来たマリーン参謀の報告を聞きながらオッケーマークを出していると、画面の向こうにいるチェリンは何を考えているのか分かりかねる顔でアルテナを見た。

 

「今、水爆ミサイルをレールガンで射出してもらった。到着は最長で30分だそうだ、接敵する頃には爆破してフレアが発生するだろうな」

《えっ、あんたもしかして》

「そう、フレアによる電磁波妨害を実施する。量子通信でもあの勢いの熱とかで飛んでいくんだ、多分大して使い物にならないだろう」

《ばかなのっ!?》

 

 机を叩いて叫ぶチェリンは、その姿は非常に可愛らしい者であったのだが、彼女自体はそんなこと気にしている暇はない。何も言わずに味方にも影響する妨害を敢行したアルテナに、少し苛立っているようだ。説明があれば収めるつもりであり、それで収まるあたりがチェリンが司令官になれる素質だが。

 

「というわけで時間が無くなってしまった、まどっちにしろチェリンは合流する前に最適な陣形を立ててくれたからな。お願い以外にすることはないさ。それを活かすために、必要なことはこっちでやる。テーバイ!」

《あーいよっ!》

 

 モニターにもう一人、男の司令官が映る。アルテナより少し年上だが、やはり若い。チェリンと同じく二十代前半、と言った風貌の白と赤の髪をした可愛い顔の男。市場開拓部P42社員、テーバイ・ヒュリアである。声も両声類、と呼ばれるやつだ。

 

《どうしたんだ、言ってみろよ我が弟よ〜!》

「今俺らは普通にピンチだ、20000隻に分けての挟撃はバレてるみたいでな。両方に45000隻の艦隊が同時に押し寄せてくる」

《そりゃそーだよなあ。最初から別れて出てきてる、そもそも人数不利なのに固まらないって、そりゃそーなるって。お兄ちゃんでも戦力二倍さは無理だよぉ!》

「お前を兄にした覚えはないがまあともかくとして問題なのは確かだ、ということで」

 

 彼視点からしてふざけた奴から視線を外して、その先をチェリンにするアルテナ。

 

「チェリン、戦闘機を出してくれ」

《オールベットでいい?》

「ああ。全部出してくれ、奴らが機能不全してる間に全機で叩きのめす。あと強行偵察機も頼む、一斉に後ろについた後で他の待ち伏せがいないか確認したい」

《通信妨害中でしょ、艦に対する連絡は?》

「青いランプか赤いランプを出してブリッジを通り過ぎるように言ってくれ。その旨を指示で出す」

《はいはーい》

「そしてテーバイ!」

《なぁにぃ?》

「俺らはこの通信が終了後、直ちに射撃を開始する。戦闘機がこちらのラインに追いついたらミサイルを放った後にリロードを入れずそのまま交代して第七艦隊と合流しながら準備、相手よりも広く面をとって一斉砲撃をして壊滅を図る」

《へー……え?》

「邪魔になるからな。お前は左翼の上下にその分艦隊を分けて配置、俺は右を担当する。そうして艦列を組んでチェリンの艦隊と一緒に」

「敵が一斉に動き出しました!戦闘の艦隊は二手に分かれ、後ろの部隊と合流!おおよそ45000隻の艦隊が、第四艦隊の両方に接近してきます!」

 

 アラームと一緒に、索敵手の叫びが響く。相手の方を捉えた時には、アルテナが予測していた通りのことが起こっているようだ。倍の数の艦隊を用意して一挙に壊滅、後ろのやつを挟撃して破壊すると言った手段に出ているようだ。

 

「よし、じゃあ通信はここまでだ。テーバイ、第四艦隊の直接合流は無いからタイミングは自由で構わないがさっき言った通りの行動を起こすようそっちの分艦隊には強く言っておけ。死にたくなければな」

《あ、あぁ!まかせといて!》

「チェリンはこの通信後、即座に戦闘機を発艦。そのまま、陣形を取って待機。電磁波妨害中はそちらが艦隊の中心になる、曳光弾での指示を頼んだ」

《はーい!じゃあ、一回切るね》

《任せとけって!》

「ああ」

 

 そうして、三人の通信は終了した。同時に、レーダー担当の一人が、ブリッジの上の方にいるアルテナに向かって叫ぶ。

 

「敵艦隊急速接近!およそ15分後に射程距離内に入ります!」

「ありがとう急いで指示を出す!」

 

 アルテナは、自分の席にあるマイクを取り出して指示を出す。耳が破れるほどでは無いにしろ、非常に通りやすい声で、はっきり響かせた。

 

「全艦隊砲撃用意!後方から戦闘機が来たらミサイルを撃ったのちに一斉回頭して第七艦隊と合流する!これより数分後、恒星を刺激することによっての通信妨害を発生させる為、戦闘機のランプの色を確認し識別規定に従って各艦は行動せよ!」

 

 

「ふう、じゃあこっちもやらないとねえ。んん」

 

 今度は反対側の分艦隊で、少し声を作るテーバイ。上擦った、かわいい声でマイクを握りしめつつポーズをとって指示を出す。

 

「みーんなー!聞いての通り、今敵はオレ達に超夢中!だからサービスで今から砲撃開始!バックダンサーが前に出たら、ミサイルを撃ってから翻ってステージを挟むように展開して!ダンサーと一緒に前後ろから悲鳴を上げさせちゃおう!」

 

 

「あの男にはどうにも調子狂わされるよねえ」

「どうしますか、提督」

「作戦通りにしよう、私がしっかりしないままだとあの二人だって困惑するし」

 

 一度、自分の麗しくかわいい髪をかきあげて揺らすお姉様満載のチェリン。その美貌で艦橋のメンバーを釘付けにしてから、マイクを持った。

 

「第七艦隊、全戦闘機発進準備!強行偵察機も発進させ、敵艦後方宙域の敵性艦隊の有無を調査、第四艦隊に識別規定通りのサインで情報を通達しろ!いいか、ここから先は恒星による刺激を用いた通信妨害が発生する。絶対に迷わず、サインでの細かな交信を徹底させろ!レーダー手は優先カメラコントロールによる状況把握に移行!これは、我々のためにムール提督を信じて戦った98000のグレイブヤードへの弔歌である!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ティーベル星系における、恒星の周囲で起きた戦いは幕を開けた。

 

 氷に映るは多角的な景色。ある面ではアルテナを映し、ある面ではオイラーを映し、またある面では戦闘機のパイロットを映し_____記憶のガーデンでは、歴史、いや、宇宙という刻まれた熱の差が形作って綺麗で永遠の庭を作る。

 

 それを知ったのは、浮黎に一番近づいたオンパロスの十三番目の黄金裔と、直接対話したある天才によってだ。しかし、それをアルテナが常に覚えているわけでもない。実際に見たことのないものを、そもそも人は記憶しないだろう。

 

 だが、宇宙の果ての星神は、その全てを覚えている。なぜならば、其の玉体は宇宙の記録なのだから。体を見れば、自分の体で作った何かを覗けば、必ず分かること。

 

 其の視線は、今はまだハッキリと、アルテナという男に向けられはしない。視線の先にある光景、浮黎の御瞳では戦乱の火以外にはあまりに小さくて視認できずにいるからだ。

 

 燃え上がる炎の形の変遷が、この先のシーンを語るだろう。

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