諦念のストリーマー   作:楓林

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雑談ができないと・・・オバケになっちゃうヨ・・・

 当初はゴミ捨て場から、アルフィー家は近所なのかなと考えていた。

・・・しかしそれは大きな勘違いだった。どうもこの街のインフラを一手に担うというタクシー的な存在を使用して家に帰る見込みだったらしい。

理由不明なタクシー的存在の不在により、実は結構離れた距離にあるアルフィー家へは徒歩移動するしかないとのこと。

 

 わたしにとっても、目論みが外れたアルフィーににとっても予想外な距離を、車イスで押してもらう羽目になった。

 

 

「わたしが無理なく頑張って歩く方法として、こうバアちゃんの手押し車みたいな感じでヨタヨタ引き摺っていけば自走できる説ないかな?」

「痛い時に無理に歩くと、治りが悪くなるから、今は休養に努めたほうがいいよ」

 

「・・・うーん、だよね」

「・・・」

「・・・」

 

 しばらくは和やかに会話をして過ごしていたが、「初見さん用、会話カードデッキ」のネタがお互いに尽きるのは早かった。最初はアルフィーが、落ちてるもの、咲いてるもの、看板の内容など、どうにか話題を探して振ってはくれるのだが、それらはこれといって深ぼるようなものは全然ないのでスグに会話は終了する。わたしの方は社会そのものの知識が不足しているため、せっかく質問をしてくれても応じられる内容にバリエーションがなく、初対面顔合わせパッケージ自体に限界を感じていた。

 ようはコミュ障かもしれない。お互いに。

 

「あの、」

「なんだい」

 

「私のと、友達がこの近くに住んでいて・・・。忙しいコだから、今日休日かは分かんないけど、一応挨拶に行っても良いかな?」

「わたしは構わないよ。・・・が、一緒で良いのかい?ええと、ご遠慮しない?」

 

「・・・あっ」

 

人間の感覚だけど、例えばこれはきびしくないだろうか?

 

---

 

ピンポーン

⭕️「はーい」

⚪️「やっほ、近く通ったから来ちゃった♡」

 

⭕️「もう連絡くらいしてよね、いらっしゃ・・・そちらどなた?」

⚫️「やぁごきげんよう」

⚪️「河辺で拾ったホームレス」

 

---

 

 

 

「ど、・・・ダメな気がしてきた。やめとこうか」

 

 わたしの常識は、モンスターの非常識かもと思い、一応念の為提言したところ、幸いにも価値観ギャップは無いようで、すぐさまアルフィーは友人訪問の方を却下した。

 

「あなた自身が悪いわけじゃないよ!むしろ良いコだと思う!ただ、私の友達は、うーん・・・」

「ゴミ山に埋もれ、拾われた家なき生き物には慣れていないよね」

 

「そう、だね」

 

 相談のため止まっていた車輪が再度動いた。また無言の時間がアルフィーの家まで続くのだろう、と思ったらなにか目の前に布のようなものがひらひらしているのが見えた。

 アルフィーは特に気にならない様子で、止まらず徐々にその布の方へと近づいていく。

 

 ──どう見ても布だ。

 それは風もないのに空中で静止しており、下から潜り抜けることはできるだろうが、許可なく触れるのは憚られるような不思議な印象を覚えた。

 迷子の布だろうか。お母さん布は何処だろうか。

 

「この街は布も散歩するのか」

 

「しないよ」

 

「おおい、布さん。通り抜けて良いかい?」

 

「いいヨ・・・・・・」

 

 なんと驚き、布もしゃべるようだ。非常に興味深い光景だ。

 

「ありがとう。触っても痛くない?」

「だいじょうブ・・・・・・」

 

 さわ、と下を車イスごと通り抜けると、背筋がぞわぞわと逆立った。綺麗な布かと思ったけど、すり抜ける時に近くで見たら毛羽立ち、毛玉、そして犬の毛のようなものが張り付いていた。

 

「良かったら洗おうか?」

「お風呂はべつに好きじゃなイ」

「そうかい。次通りがかる時にそのままだったらまた聞くね」

「わかっタ・・・、せっかく声を掛けてくれたのに、ごめんネ・・・・・・」

 

 ううん、と首を振った。本人が気にならないならそのままで良いとも思ったが、カーテンや垂れ幕と勘違いしないように清潔にしたいというのも本心である。

 なお、この子が洗えるのかどうかは洗濯表示タグを見なければわからない。

 見たところ洗濯機及びタンブル乾燥は禁止、漂白剤の使用も難しいかもしれない。

 

「えっと、初対面同士、よね?・・・こちらユキノ、ゴミエリアで怪我をしていたから治療しに行くところ。ユキノ、このゴーストはナプスタブルークで・・・ここのエリアに住む一人だよ」

 

 アルフィーは顔見知りだったようだ。ご紹介をしてくれたので、わたしは3度頭の中で繰り返してナプスタブルークの名前を覚えた。

 

覚え終わったら頭を下げてご挨拶。上半身だけのボウアンドスクレープ。

 

「あっは、グリューセン。ナプスタブルーク!」

「おみあいみたいだネ・・・・・・こんにちハ・・・」

「早速ですが、ご趣味は何ですか?・・・わたしは、背中から押してもらえるイスに座ること」

 

「キミはわかりやすいネ。・・・えっト、「生きる」ことだヨ・・・・・・」

「あ、あの・・・差し出がましいかも知れないけど・・・二人とも、趣味について深く考えたことないようなら、少し再考したほうがいいと思うよ?良かったらだけど」

 

「ふむ?ありがとね、金言誠に感謝」

「むう、宿題が2つに増えタ・・・・・・」

 

 とはいえ自己開示すべき事項が無く、このわたしの人生は始まったばかりなので再考も何もという気はする。

 一方のアルフィーはたった数時間程度一緒に過ごしただけでも趣味が多そうに感じている。ハードもソフトも触れる人って貴重だよね。

 

「あっ、そうだ。丁度良かった!ナプスタブルーク、【アンダイン】は家に居るか知っている?」

「ごめん、わかんなイ・・・・・・でも今日は、仕事中におっきな声が聞こえて来ないから居ないんじゃないかナ」

 

「そ、そっか、教えてくれてありがとう。・・・んー、ならラボに直行で良いかな?」

「会いたかったのはそのアンダインさんだね」

「そうなの。でも、会う約束をすればいつでも会えるから、気にしないでね」

 

 

「なるほど・・・・・・じゃ、ナプスタブルーク。またご縁があれば」

「じゃあネ・・・ユキノ、たのしかっタ・・・」

 

 

それは良かった、と頷いて笑顔を返した。

 

 

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