Archive No.1! 〜透き通った青き世界で少女達は指輪を巡り争う〜   作:虎武士

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アビドス編の開幕&日常回です。

次回はバトル回、シロコちゃんの覚醒回でもあります。


アビドス廃校対策委員会編
活動記録3:砂上の中心で赤い(ウルフ)は吠える(前編)


《願いを言え……》

 

 その日の夜、奇妙な夢を見た。

 

 いつものように週末、アビドス工業地帯まで自転車で行ってきた事を学校で話したらセリカに驚かれた。

 

 セリカは()()()()()()()()()()(ついでにアヤネも)、ノノミはショッピングで爆買い、ホシノは自堕落な居眠り生活。

 

 彼女──砂狼(すなおおかみ)シロコを含めた()()()()()()()()()()()()()()()()は多額の借金を抱え、日々借金返済に奔走する。

 

 かつてのアビドスはミレニアムサイエンススクールやゲヘナ学校などと同様、長い歴史ある学園でキヴォトス一を誇る程であった。

 

 最大でも生徒会長が70人程在学していて、圧倒的な兵力と資金を誇っていた。他の自治区からは畏怖や羨望の眼差しを向けられていて、砂漠地帯に隣接しながらも大勢の人が訪れていた。

 

 だがそれも過去の話であり、現在では生徒五人だけの弱小校に成り下がっている。

 

 数十年前に発生した原因不明の砂嵐が全てを変えていったのだ。

 

 名物であったオアシスは枯れ果て、学区の環境は激しく激変。

 

 砂漠対策についてアビドスは多額の資金を投入したが事態は変わらず、投資された借金は膨らみ続け、学園の経営は悪化──事態の好転に見込み無しと絶望視し、当時の生徒の殆どは退学・転校を余儀なくされ、地区全体は衰退してしまった。

 

 故にアビドスそのものがゴーストタウンに変わりなく、詰み重なった9億をシロコ達──アビドス廃校対策委員会が利子でコツコツと返済するのが手一杯、完全に完済されるまで309年は掛かる模様。

 

 とても五人だけでは一気に支払える金額ではないし、全額返済する前に寿命で老衰してしまうだろう。

 

 前を向いても、後ろを向いても、右を見ても左を見ても、絶望と言う言葉がこのアビドスの状況を表している。

 

 そして今日も借金を少しずつ返済し、下校時間になれば五人共それぞれの家へと帰路につく。

 

「ん、……指輪?」

 

 自転車を漕いで帰路に向かう途中、シロコは道端に落ちている一個の指輪を見つける。

 

 誰かの落とし物かと思い、自転車を停めて拾い上げる。

 

 金の装飾を施した赤い仮面の戦士を模しており、それに何処か狼を彷彿とさせる様に思える。

 

 見た所汚れている様子もない上、もしも売ったら高額な金額が入るかも知れない。

 

 しかし所詮は落とし物、落とし物は警察に届けるのが一般的な常識。

 

 今日はもう遅い、さっさと帰宅してこれは明日、警察に届ける事にしよう。

 

 念の為に紛失しない様に指に嵌める。そして暫くしてから自転車に跨り、今度こそ帰宅するシロコだった。

 

 

 

 ※

 

 

 

《願いを言え……》

 

 そして現在、この妙な状況に至った。

 

 帰宅して夜食を食べて、シャワーを浴びて髪を乾かし、そしてベッドに入って寝静まった。

 

 だと言うのに次に目が覚めると前後左右暗闇の中にいて、目の前には金色の巨神が佇んでいた。

 

《我が名はテガソード、砂狼シロコ……お前のいる世界とは別の世界で神と呼ばれる者だ》

 

「神様……?」

 

《お前の拾った指輪はスーパー戦隊の力が宿る物とは異なる物、ゴジュウジャーと呼ばれる戦士の指輪だ》

 

「指輪……って、これが……じゃあ貴方に返せばいいの?」

 

《否……お前自身の叶えたい願いがある筈だ、故に指輪と契約してお前自身の願いの為に戦うといい》

 

 願いを叶える為の戦い──所謂指輪争奪戦の事を指しているが、シロコは知らずにいる。

 

 シロコ自身少し戸惑っているものの、願いを叶えると言う仕組み(システム)は願ったり叶ったりで都合がいいとも言える。

 

 アビドスが抱える多額の借金、無法地帯とも呼べるこの地を取り巻く現状、辛くはあるが同級生や後輩、先輩達と過ごす楽しい学校生活。

 

 こんな楽しい日々を邪魔されたくない、それを実現する為には──

 

「──契約する」

 

《……》

 

「アビドスには色んな場所からお金を借りて、私達だけだと到底返せない借金がある。それを全て返済する為に、指輪を集める」

 

 何より……今の現状を改善する為に、少しでも希望を持ちたいから。

 

《……いいだろう。その力、自分の意思で使え──己の信ずる道の為に──》

 

 

 

 ※

 

 

 

「ん……」

 

 カーテンの隙間から日差しが射し込み、太陽光を浴びて瞼を開ける。

 

「今のは……夢、じゃないみたいだね」

 

 右手の指には眠る前に嵌めている指輪があり、左手には眠る前にはなかった──青い刀身のある金色に輝くガントレットが嵌められていた。

 

 これが指輪争奪戦に必要な代物(アイテム)だと察し、シロコは不思議と言葉に形容しがたい高揚感を孕んだ。

 

 そして今日も変わらない一日であるように、無意識にそう念じて顔を洗いに洗面所へ移動するのだった。

 


 

 S.C.H.A.L.E(シャーレ)の奪還にサンクトゥムタワーの回復、シッテムの箱の管理者アロナ、そして別世界の巨神テガソードとの出会い。

 

 更にキヴォトス中にあると言う指輪の存在など……濃密な出来事から数日間が経過し、先生は部室で雑務を行っている。

 

 幸いにも滞りなく進んでいて、特に疲労は溜まっていない。

 

 先日の一件はキヴォトスの凡ゆる学園にも知れ渡っていて、中でもミレニアムやトリニティ、ゲヘナと言った所から助力を求める声が後を絶たない。

 

 アロナは良い兆候だと楽観的に語る中、不穏な手紙が来ている事を伝える。

 

 これもキヴォトスでの問題の一つだと思い、その手紙を読み上げる先生。

 

 

 

 連邦捜査部の先生へ。

 

 こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空(おくそら)アヤネと申します。

 

 今回…どうしても先生にお願いしたい事がありまして、こうしてお手紙を書きました。

 

 単刀直入に言いますと、今、私達の学校は追い詰められています。

 

 それも、地域の暴力組織によってです。

 

 こうなってしまった事情は、かなり複雑ですが……。

 

 どうやら、私達の学校の校舎が狙われているようです。

 

 今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底を突いてしまいます。

 

 このままでは、暴力組織に学校を占拠されてしまいそうな状況です…。

 

 それで今回、先生にお願い出来ればと思いました。

 

 先生、私達の力になってくれませんか?

 

 

 

 まだ顔も知らない生徒の健気な手紙に涙腺が崩れそうになるも、今は感情移入している場合じゃないと切り替えて読み終え、アロナに問い掛ける。

 

「アロナ……このアビドス高等学校って言うのは…?」

 

《うーん……アビドス高等学校ですか……昔はとても大きい自治区でしたけど、気候の変化で厳しい状況にあると聞きました。 ──どれ程大きいのかと言うと、街のど真ん中で道に迷って遭難する人がいるぐらいだそうです!!》

 

 自身満々に目を輝かせ、先生に力説してくるアロナ。流石に誇張だろうと彼女は片付けるが、この手紙の文面を見ればどれだけ大変なのか察する事が出来る。

 

「この助けを請う手紙を無視出来ないからね……アビドスに出張するとしよう」

 

《本当ですか!? 流石、大人の行動力! 畏まりました! 直ぐに出発しましょう!》

 

「そうだね、後でリンにも話すとしよう」

 

 和気藹々と盛り上がるアロナと先生、その横でテガソードが《……杞憂であればいいのだがな》と小さく呟くも二人には聞こえてない。

 

 テガソードも指輪の戦士の様子を確かめたい所だったので、都合が良かった……勿論、役割も忘れておらず同行する。

 

 

 

 ※

 

 

 

「あ゛〜〜……あ゛、あ゛づい゛……」

 

 楽観視していた先生は砂地に塗れた道の上で倒れ伏し、その身体は太陽の光に照らされる。

 

 最早温かいと言うより、完全に灼熱の世界である。

 

 正直言って、キヴォトスの──と言うかアビドス周辺の気候を侮っていた。

 

 S.C.H.A.L.E(シャーレ)から電車で数時間かけてこの地で待っていたのは途轍もない猛暑、外に出ると30℃〜40℃はあるだろう灼熱の世界。

 

 持参していたペットボトルの水も全て飲み干し、底をついて絶対絶命。

 

 日射病或いは餓死し、挙げ句の果てには干涸びていくのかと絶望感を味わっていく。

 

 鞄の中のテガソードは《人間とは不憫だな……》と呟き、倒れ伏す先生を見ている事しか出来ない。

 

「……ん?」

 

 一台の自転車がその近くを通り、停車する。

 

 乗り手の少女は自転車から降りて彼に近付き、その身体を揺さぶる。

 

 梅き声か「ゔぅ゛……」と声を濁し、少女──基、砂狼シロコは彼の生存を確認。

 

 大丈夫かと彼女に問われると、先生は弱々しく頷く。

 

 一先ずシロコはエナジードリンクを彼に手渡し、受け取った先生は躊躇いなく飲み干していく。

 

 よっぽど喉が渇いていたんだな、と呑気にその飲みっぷりに感心するシロコだった。

 


 

 ある程度水分を蓄えた先生を伴い、シロコはアビドスへと向かった。

 

「シロコちゃん! 此方の方、拉致して来ちゃったんですか!?」

 

「まさかシロコ先輩、遂に犯罪に手を……!!」

 

「皆、落ち着いて! 問題が発覚する前に、揉み消すわよ!!」

 

 その一室で狼狽と憔悴、驚きの声が飛び交った。

 

 シロコと同じ二年生で学生とは思えない豊満なスタイルを持つ美少女、十六夜(いざよい)ノノミ。

 

 例の手紙の送り主で、黒髪のショートボブの一年生・奥空アヤネ。

 

 ツンデレ気質な猫耳を思わせる黒髪のツインテールの一年生・黒見(くろみ)セリカ。

 

 シロコが連れてきた先生に対してぞんざいな言動が目立つが、それは至極当然で正体不明の不審人物を警戒するのは全く正しい。

 

 そんな彼を連れてきた彼女は「違う……この人、うちに用があるんだって」と騒ぎ立てる三人を悟す。

 

 三人は揃って目を丸くし、その視線を先生に向ける。

 

「私は連邦捜査部S.C.H.A.L.E(シャーレ)の先生だよ、よろしくね」

 

 和やかに自己紹介すると三人は互いに顔を見合わせて驚き、直後に向こうが支援要請を受理してくれたと理解し笑顔となる。

 

「良かったですね、アヤネちゃん!」

 

「はい、これで……弾薬や補給品の援助を受けられます。あ、早くホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ?ホシノ先輩は?」

 

「多分、先輩ならいつもの場所で寝てると思う。私、起こしてくるね!」

 

 嬉々とした様子で部屋を出ていくセリカ、その間に先生に自己紹介していくシロコ達。幾度も手紙を送り続けていたアヤネを最初に、ノノミ、シロコと紹介し、さりげなくセリカの事も話す。

 

 そしてそのセリカはピンク色のロングヘアーの少女を連れてきて、少女は何やら気怠けな言動と共に先生に挨拶する。

 

 小鳥遊(たかなし)ホシノ……アビドス高等学校の三年生で、廃校対策委員会の委員長。

 

 だがシロコ達と違って何やら気怠けで親父臭い雰囲気をしており、独特な娘だなと先生は心の中で苦笑いする。

 

《先生……あの砂狼シロコと言う少女だが……》

 

(ん…?)

 

《彼女は指輪の戦士だ》

 

(え…!?)

 

 テガソードの助言に先生はシロコを見る。彼女の左手には金色の装飾を施した指輪を指に通し、その指輪は狼を思わせる赤い戦士の顔を持っていた。

 

「…!? スンスン……」

 

「シロコ先輩…?」

 

「どしたのシロコちゃ〜ん?」

 

「皆、気を付けて……火薬の匂いがする」

 

 鼻を鳴らすシロコの言葉に全員が首を傾げる。

 

 ダダダダダダダダダダダダッ!!

 

『!!?』

 

 直後、銃声が校舎の外から鳴り響く。何事かと思い、全員は窓からその方向を覗き込む。

 

「ひゃーはははは!」

 

「アビドス高校の諸君! 今日こそお前らの校舎、頂くぜぇ!!」

 

 頭部にヘルメットを被った少女達が武装し、銃を乱射しながら校門前にて堂々と宣言する。中でもリーダー格と思われる赤いヘルメットを被った少女がいて、下衆な声を高らかに上げる。

 

「武装集団が学校に接近しています! カタカタヘルメット団の様です!」

 

「凄いね〜シロコちゃん、あんな遠くから何で分かったの?」

 

「ん……よく分からないけど、何故か嗅覚で匂いを嗅いだ」

 

「は? 匂いを嗅ぐって、犬じゃないんだから──」

 

《それは指輪の能力により、お前の嗅覚が優れた物へと昇華したからだ》

 

 先生の鞄からテガソードが飛び出し、机の上に着地した。

 

「ええええっ!?」

 

「せ、先生、そのお人形さんは何ですか〜っ!?」

 

「し、しかも喋った上に自分で動いているんだけど!?」

 

「うへ〜。凄いね〜」

 

 これにはホシノ達四人は驚き、シロコは目を見開く。

 

「その声……ひょっとしてテガソード?」

 

「うん、驚いたかもしれないけど……」

 

「シ、シロコ先輩、この人形なんなんですか!?」

 

《説明している暇はない。砂狼シロコ、既にお前には武装集団に抗う力がある》

 

 アヤネの言葉を無視し、テガソードはシロコに問い掛ける。

 

《お前の願いの為、指輪の戦士としての一歩を踏み出すのだ》

 

「……ん、直ぐに出るよ。先生のお陰で弾薬と補給品は十分」

 

「はーい! 皆で出撃です⭐︎」

 

 シロコを筆頭にノノミ、セリカ、ホシノが教室を飛び出していく。

 

 アヤネはオペレーターとして教室に残り、先生はサポーターとして生徒達に指示を送る事となった。

 

 先生のアビドスの最初の一日が今、幕を開けようとしていた。

 

 

 続く

 

 

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