Archive No.1! 〜透き通った青き世界で少女達は指輪を巡り争う〜 作:虎武士
砂上の上でダダダダダッ!!と言う銃撃音が鳴り響く。
カタカタヘルメット団はシロコ達五人を煽る様に銃を天に向けて乱射、早く来いとばかりに挑発している。
校舎からシロコ・ホシノ・ノノミ・セリカが飛び出し、校舎の窓から先生とアヤネがひょこっと顔を見せる。
ヘルメット団のリーダーの少女は獲物が来たと笑みを深くし、部下達に「お前ら、アビドスの連中に目に物を見せてやれ!」と指示を飛ばす。
部下達はその指示通りに銃を乱射、シロコ達はバリケードを盾に弾を防いでいる。
バリケード越しにシロコ達は応戦する。しかし数では敵が有利、統制が取れていて銃弾の嵐が飛び交って迂闊に近付く事すらままならない状況。
しかも向こうは何故か此方の弾倉や備蓄が尽き掛けている事を把握しており、このまま防戦を繰り返せば何れ防衛線を突破されるだろう。
そうなれば絶望一色であっただろう────
「ノノミ、弾幕を張ってくれ」
「はい! 任せてくださ〜い⭐︎」
此方には今、先生と言う頼もしい助っ人がおり、今まで内心にあった不安が払拭される。
ノノミの持つガトリング砲が発射され、弾が砂地に着弾すると砂煙が上がる。
「ホシノは前衛に立ち、相手を無力化。ホシノとセリカは援護を」
「うへぇ、りょうか〜い」
「ん、分かった」
「ああもうっ、やってやるわよ!」
砂煙に紛れてホシノはヘルメット団員達を無力化していく、無気力な軽口を叩きつつもその腕前は見事だと言っていい。
撃ち漏らした敵はホシノとセリカが迎撃し、次々に無力化していった。
優勢に持ち込むアビドス側にヘルメット団は驚き、困惑と憔悴が表面化していく。
「狼狽えんな!数じゃ
リーダーが団員達を鼓舞する様に怒鳴り、ヘルメット団は銃を乱射し続けていく。
先生の指示があるとはいえ、数は一向に減る事なく現状維持が続いている。
何か決め手がないのか先生は勿論、ホシノ達は応戦しながらも憔悴し続ける。
「……これ、使ってみよ」
──唯一人、シロコを除いては。
「いくよ──エンゲージ」
いつの間にか顕現している金色のガントレットに指輪を装填。
《クラップ・ユア・ハンズ!》
ガントレットから聞こえる音声、同時に流れるBGMに合わせてテンポよくダンスと手拍子を取る。
先生だけでなくアヤネ達、そしてヘルメット団もリズムを取るシロコに食い入る様に見つめる。
するとシロコの頬に爪の様な字が浮かび上がり、その身体は金色の装飾と赤いスーツを纏う戦士へと変わる。
《ゴジュウウルフ!》
金色のガントレットを片手に持ち、赤い狼の戦士──ゴジュウウルフが砂漠の地に爆誕した瞬間だった。
「えええええええっ!?」
「シ、シロコ先輩!?」
「シロコちゃんが、変身しちゃいました〜〜!!?」
「うへ〜、かっちょいいね〜」
他の四人はその異常な光景に驚き、声を上げるしかなかった。
先生は先日のユウカ達が変身した姿を見て耐性が身に着いたのか、四人より驚きが少ない……シッテムの箱の画面越しで見ているアロナは凄く驚いているが。
「は……はああああああっ!?」
「なっ、何なんだよあれ!?」
「どっかの変身ヒーローみたいになったぞ!?」
それはカタカタヘルメット団も同様であり、目を剥く程に驚き狼狽する始末である。
一方、ゴジュウウルフ(シロコ)の方はと言うと…。
「ん……なんだか変な感じがするけど……悪くないかも」
自身の身に起きた変化を受け入れており、手足を軽く動かしたり足踏みして準備運動がてら動作を確認する。
そして──
「アオオオオオオォォォォォォンッ!!!!」
「ひゃっ!?」
「きゃっ」
「うへ〜」
「シ、シロコ先輩…!?」
「…!?」
ゴジュウウルフ(シロコ)から凄まじい雄叫びが上がり、その遠吠えに先生は勿論、彼女の事をよく知るアビドスの面々は困惑と驚きの表情を見せる。
「制圧させてもらうよ」
クラウチングスタートの構えを取って前のめりとなり、足に重心を掛けるゴジュウウルフ(シロコ)。そして次の瞬間、砂煙を上げて走り出した。
「え……は、速……うあっ!?」
「隙だらけ」
ゴジュウウルフ(シロコ)の目に止まらないスピードに驚くのも束の間、あっという間に制圧されてガントレットの刀身を食らってヘルメット団員は倒れ伏す。
「ぎゃっ!?」
「あっ!?」
「ぐえっ!?」
他の団員達もゴジュウウルフ(シロコ)によって次々に無力化されていく。まだ無力化されていない団員達はホシノ達によって無力化され、カタカタヘルメット団は劣勢に追い込まれる。
「う、うわああああああ!!?く、来るな、来るなあああああ!!」
リーダーは得体の知れない存在に変身したシロコを恐れ、彼女を近付けさせまいと銃を乱射。
しかしその行為は無意味に等しい。ガントレットの刀身でHP弾を弾き、リーダーとの距離を縮めていくゴジュウウルフ(シロコ)。
ヘルメット越しにリーダーの表情は青褪め、ヘルメットで他人には分かりにくいが、必死になっているのが伺い知れる。
「これで終わり」
ガントレットを振り下ろすと得物の銃を叩き落とされ、ヘルメットのバイザーに小さな亀裂が入る。
「ひっ……」
「………」
「……お、覚えてろよ〜〜〜!!」
『うわああああああ!!』
弱小校に見事に無力化され、プライドを無残に砕かれたカタカタヘルメット団は小悪党ばりの捨て台詞を発して走り去った。
変身を解いてシロコ、背後のホシノ達、校舎から先生とアヤネが泣きながら去っていく彼女達の後ろ姿を見つめるのだった。
「いや〜〜まさか勝っちゃうなんてねぇ。おじさん、ビックリしちゃったよ」
対策委員会の部室でホシノがマイペースに語る。カタカタヘルメット団は学校から撤退していき、暫しの平穏を昼寝で享受する彼女らしい言葉だ。
「勝っちゃう、じゃないですよホシノ先輩……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……」
そんな先輩の言葉にアヤネは冷汗を流し、有り得たかも知れない未来予想図を想像してしまう程である。
ホシノの軽口は受け流すとして、シロコは指輪の力があったとはいえ先生の指揮のお陰でいつもより戦い易かったと評価する。
そして先生は襲撃のお陰で聞けなかった事を問う。
「対策委員会とは一体何だい?」
ふとした疑問に彼女達は答えてくれた。
対策委員会……正確にはアビドス廃校対策委員会はこのアビドスを復興させる為に結成された委員会で、全校生徒で構成されている……と言っても全校生徒はこの場にいる彼女達五人だけなのだが。
アビドスの現状を知らされ、先生は何とも言えない罪悪感を覚える。
今回は先生が
「……それにしてもさっきの話はビックリだよね〜」
「はい……其方の人形──いえ、テガソードはキヴォトスとは別の世界の神様」
「シロコちゃんの持ってる指輪と同じ指輪を持ってる人同士の争奪戦が行われていて、中でもシロコちゃんの持ってる指輪を含めた五個の指輪はごじゅうじゃー?と呼ばれる人達の証なんですよね?」
「そして指輪を全部集めた人は願いを叶えてもらう権利がある……無茶苦茶じゃない!指輪に頼って願いを叶えるって、要は人任せみたいなものでしょ!?」
「シロコちゃんが何を願ったかは分からないけど、何となく想像出来ちゃうな〜」
指輪争奪戦の経緯を聞いてセリカは憤慨し、ホシノはシロコが望む願いをある程度察した様子。
ある意味においてそれは呪いに近しいが、そんな別の世界の神の言葉を信じて戦う連中の正気を疑う。
実際、先生もユウカ・チナツ・ハスミ・スズミの願いを聞き出そうとしたが、本人達から見事にはぐらかされた。
向こう側の事情を
経緯が経緯だけに気不味い空気が流れ、誰も言葉を紡ごうとしない──一人を除いては。
「まあまあ皆さん、全部が全部テガちゃんが悪いんじゃないですよ〜。決めつけでテガちゃんを悪者にしちゃダメですよ?」
《テ、テガちゃん…?》
ノノミは満面の笑みで先生を含めた五人を窘め、全員の目線が彼女の方へと向けられる。
「……皆、ノノミの言う通り、全てがテガソードが原因ってわけじゃない。先ずは気持ちを切り替えて、不良達をどうにかしないと」
触発されてシロコも賛同し、先生や他の三人も同意して学校を狙う連中の報復について考える。
幾らゴジュウウルフになったシロコが退けたとはいえ、あれで懲りたとは考えにくい。
また学校を襲撃して五人が追い払っても再び攻め入り……と言う無限ループが続き、こんな膠着状態がいつまで続くのか……アヤネは呟きながら不安な表情を浮かべている。
ヘルメット団以外の問題……借金返済の事も考える中、ホシノが「ちょっと計画を練ってみたんだー」と声を上げる。
セリカとアヤネは嘘だろ!?と懐疑的に驚くがそれはさておき、ヘルメット団は数日すればまた学校を襲撃してくる……弾薬を補給しているだろう今ならこのタイミングで奇襲を仕掛け、連中の前哨基地を襲撃すると言うのがホシノの計画。
仕掛けるならば今しか考えられない。前哨基地は此処から30km先、其処まで時間は掛からない距離だ。
ヘルメット団も此方が仕掛けてくるとは思っていないだろう、その案に先生も同意する様に首を縦に振る。
先生から許可を得て、カタカタヘルメット団の前哨基地襲撃が可決された。
カタカタヘルメット団の前哨基地ではリーダー含め団員一同が切羽詰まった状況にあった。
知らぬ間に大人がアビドスの教師として赴任し、見事な戦術指揮で此方を覆し、しかもアビドスの連中の一人が妙な指輪を使って赤いヒーローに変身して此方を呆気なく返り討ちにしていった。
あんな見事なまでに醜態を晒し、リーダーの頭の中は悔しさと怒りで一杯である。
補給を済み次第もう一度アビドスを攻め入る、そして今度こそあの校舎を自分達の新たな前哨基地へと築く為に。
「お困りのようですねえ」
『…!?』
ヘルメット団一同は不意に聞こえた声に驚き、それぞれ得物を構えて周囲を見渡す。
するとリーダーの影から何かが飛び出す。その何かは異形の存在であり、頭部が
「初めましてカタカタヘルメット団の皆さん」
「な、なんだお前…!?」
「私の名はゴートン。"虚飾"の名を持つ流浪の魔導師です、どうぞお見知りおきを」
深々とその異形──ゴートンは礼儀正しく頭を下げ、カタカタヘルメット団に挨拶をする。
だが彼女達は銃を構え、ゴートンに銃口を向ける。
「おや…」
「なんなんだお前、急に現れやがって!」
「
血気盛んに怒りを顔に滲ませ、銃口を向け続ける。
だがゴートンは銃口を向けられているにも関わらず、飄々とした様子で彼女達に告げる。
「私に構っている様子はありませんよ? もうすぐこの基地に、指輪の戦士を擁するアビドス高校の者達が攻め込んできますよ?」
「は…!?」
「な、なに!?」
異形から告げられた言葉にカタカタヘルメット団に驚愕が走り、各々の間に困惑と憔悴が飛び交う。
「狼狽えるな! わざわざ向こうから来るってんなら、
リーダーが団員達は鼓舞する様に叱責し、数では此方が有利である事に変わりないと豪語する。
「はあ……愚かな」
「何だと!?」
「数だけではどうにもなりません、結果的に貴女方は指輪の戦士一人に惨敗した。同じ事を繰り返すつもりですかな?」
軽蔑の眼差しでゴートンは指摘、カタカタヘルメット団は何も言えずに沈黙を貫く。
「
「我々…?」
「ええ……来なさい」
ゴートンは天に指を指す。すると天井に魔法陣が顕現し、魔法陣から数十人の異形がわらわらと姿を現す。
彼女達はその得体の知れない異形達に驚くが、ゴートンは"それら"に対して説明する。
「彼等はモリス……私が属する組織──クラディスの尖兵です」
不気味な笑みを浮かべてゴートンはモリス達を指差す。リーダーはモリス達を品定めする様に眺め、そして決断した。
「……分かった、此奴等を使わせてもらうよ」
「リーダー!?」
「正気ですか!?こんな得体の知れない奴の兵力を……」
「このままじゃ私達はアビドスの連中にやられる。こんな奴の手を借りるのは癪だけど、奴等に泡を吹かせる為には背に腹は変えられない…!」
形勢逆転を狙うにはこの手段しかなく、リーダーは苦渋の決断をした。
「良い選択です。――それでは私はこの辺りで――運が良ければまた」
そう告げた後、再びリーダーの影に潜って姿を消したゴートン。
「リーダー……どうするんですか?あんな奴の戦力を借りるなんて……なんだか後が怖くなってきたんですけど」
如何にも怪しげな正体不明の男、それも人外の存在に団員達の顔色は不安を隠し切れない。
しかし彼女達は決断したのだ。アビドスの連中に対抗する為、悪魔の誘いに乗った事を。
「……やるぞ、アビドスを迎え撃つ…!」
しかしリーダーの決断は固く、いざ行かんと出陣するのだった。
続く
次回はシロコちゃんが早くも2個目の指輪をGETします。ヒントは……電撃です。