Archive No.1! 〜透き通った青き世界で少女達は指輪を巡り争う〜   作:虎武士

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今回は便利屋86戦です。



活動記録7:陸八魔アルはアウトローに憧れる

 セリカの誘拐事件、及び指輪の戦士となった戦いから翌日。

 

「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」

 

 対策委員会の部室でアヤネが机に座る先生を含めた五人とテガソードに告げる、彼女の傍らにはホワイトボードが設置されている。

 

 先生も会議に参加しているが為、いつもよりは真面目な議論が出る事を彼女は期待を寄せる。

 

 我が強いホシノとシロコ、ノノミが返事し、セリカは納得いかない物言いに突っ込む。

 

 先生も倣って返事をし、アヤネは会議を進める。

 

 先ずは彼女達にとって重要な問題……()()()()()()()()()()()()か具体的な議論をして欲しいとの事。

 

 一番乗りにセリカが「はい!はーい!!」と勢いよく席から立ち上がって挙手、挙手した左手にはゲキレンジャーの指輪が嵌められている。

 

 そんな彼女の案は指名手配犯を捕縛したり、苦情を解決したり、ボランティアしたりとこれまで通りの方法では一向に進まない。

 

 其処ででっかく一発を狙うと言うセリカは一枚のチラシを机に置き、ホシノはそれに目を通す。

 

「"ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金"……ねえ」

 

 セリカ以外の面々がローテーションでチラシに目を通し、全員が彼女に哀れみの目線を向ける。

 

 街の中で声を掛けられ、その説明会に参加し、運気を上げられるゲルマニウムブレスレットを売っているらしい。

 

 身に着けるだけで運気が上がるそうだが、如何にも胡散臭い広告だった。

 

 明らかにこれは詐欺商売の広告、真実を告げると彼女は落胆、ノノミに慰められてその豊満な身体に顔を埋める。

 

 兎に角、セリカの案は却下。次に挙手したのはホシノ。

 

 ボランティア活動も大事だが、何より大事なのは生徒数……不憫にもこの学校の在学生は此処にいる五人だけだと言う死活問題。

 

 ホシノの案は生徒の増加──ミレニアムやゲヘナ、トリニティと言った有名校の様により複数の生徒数となれば毎月の借金返済もかなりの金額を返せる筈。

 

 もしもそれが可能となれば議員を輩出、願わくば連邦生徒会での発言権も得られる。

 

 本当に実現すればの話だが、その改善策をどうやって解決するのかとアヤネは問う。

 

「簡単だよー、他校のスクールバスを拉致ればオッケー!!」

 

「……え?」

 

「……はい!?」

 

 突拍子のない宣言に先生は硬直しアヤネは仰天、この委員長は突然何を言い出すのだろうか。

 

 詳しく聞くと詳細もとんでもない事で、登校中のスクールバスを襲撃してジャック、アビドスへの転入学書類に判子を押させ、バスを降りられなくさせる。

 

 ホシノは天真爛漫の笑顔でそれで万事解決と言うも、第三者からすればそれは立派な誘拐──ゲヘナなどの他校の委員会が知れば激怒する事間違いなし。

 

 これも当然却下。(バスジャックの案に興味を抱いていた)シロコも続けて案を出し、その案とは銀行襲撃。

 

 アヤネがまた驚く中、シロコは冷淡に説明。標的は市街地の第一中央銀行、事前に下調べをして把握しているとか。

 

 また法に触れるような策である……鞄を漁ってシロコは必要な小道具を用意した。

 

 その手に持つのは赤、青、黄、緑、桃の五色の覆面。シロコはそれを被り、決まったとばかりにドヤ顔を見せる(ノノミもノリノリで被って御満悦)。

 

 これにはセリカも黙っていられず強く批判、拒否されたシロコはムスッと頬を膨らますが、(可愛らしいが)結局容認を認められず却下。

 

 続けてノノミが挙手。前者三人の様な犯罪系やマルチ商法ではなく、彼女はアイドル活動を提案。

 

 本人曰く学校を復興する定番の方法としてアイドルが一番、アイドルとしてデビューすれば復興支援が期待出来る……と言うのが一番の解決方法。

 

 ちゃっかりユニット名を決めていたりとわいわいと騒ぐ中、アヤネは議論が進まずそろそろ結論を出す事を催促する。

 

 セリカのマルチ商法に、ホシノのスクールバスジャック、シロコの銀行強盗にノノミのアイドル活動。

 

 一部を除けば悪くない議論だが、その選択はホシノの提案によって先生に委ねられる。

 

「……アイドルでいいんじゃないかい? 君達五人は可愛いし、デビューをすれば人気を上がり、お金を稼ぐ事も出来る。芸能界やメディアから声が掛かり、借金を返せる筈さ」

 

「言ってくれるね……先生」

 

「うへ〜、実は朴念仁なのかな?」

 

「か……可愛いって、何言ってるんですか!?」

 

「先生は乙女心にハートを突き差すのが得意ですねえ」

 

 やれやれと言った様子で呆れるシロコとホシノ、それに対してセリカとノノミは頬を赤く染める始末だ。

 

《先生……君こそが鈍感ナンバーワンだな》

 

「テガソード……態と言っていないかい……?」

 

 皮肉な宣言をする神様に呆れる先生、シロコはアヤネに「計画は大胆程いい」と告げる。

 

 だがアヤネは無言を貫き、顔を下に俯かせて拳を震わせていた。

 

「………い………」

 

《……?》

 

いいわけないじゃないですかあああああああ!!!!

 

 凄まじい怒号がアビドス全体に木霊し、机を昭和時代に実在した雷親父のちゃぶ台返しよろしく床に倒した。

 

 自由過ぎる四人の提案はどれもこれも絵空事や独自の発想で、流石に普段は大人しいアヤネも怒りを覚えざるを得ない様子。

 

 現実を舐め切った言動を取り続ける彼女達をアヤネは捲し立てるように説教し、四人は揃って正座して怒声を耳を傾けていった。

 

 

 

 ※

 

 

 

「では私からも議題を提示して構わないかい、アヤネ」

 

「ええ……どうぞ先生」

 

 先生が一時間説教を続けたアヤネに挙手する、説教から解放されてシロコ達は倒れた机を直し、会議は続けられる。

 

「私からの議題はテガソードと契約した指輪の戦士についてだ」

 

 途端、シロコとセリカの嵌めている指輪に視線に移しつつ先生は語り出す。

 

「私も気になっていました。指輪の戦士──実はこのアビドス以外にも姿を見せているんです」

 

「ええ!? ……あ、本当だ、SNSにも上がっている!」

 

 タブレット端末を使用してSNS上の情報を見てセリカが驚愕、シロコ達も使用してそれに目を奪われる。

 

「キヴォトス各地に正体不明の化け物が出現……これってモリスの事だよね」

 

「そうだね〜……記事にはロボットや獣人とは全く異なる得体の知れない存在だって掲載されているし、学生達も気味悪がって応戦しているけど、あまり効果がないって報道されているね」

 

「はい……でも突如現れた赤いヒーローが悉く倒していて、色んな声が出ていますよ〜。風評被害だったり、高評価だったり……他にも奉仕活動にも姿を見せていますね」

 

 見れば動画も上がっており、それを視聴してみると様々な赤い戦士達がモリスと戦っている。

 

 ゲヘナ学園の方では海賊の意匠のある赤い戦士がカトラス状の剣を振るってモリスから人々を助けている。

 

 キヴォトスの警察組織であるヴァルキューレ警察学校では二丁拳銃を模した武器を有する刑事の様な赤い戦士がモリスを銃撃、これを撃退している。

 

 他にはミレニアムサイエンススクールでは科学的な印象の赤い戦士、トリニティ総合学園では大勢の観客の前で歌やダンスを披露するライオンを模した青い戦士に恐竜を模した黄色の戦士など……様々な動画に指輪で変身した戦士達の活躍する動画が上がったり、SNSの記事に掲載されている。

 

「嘘でしょ!? 私やシロコ先輩よりも上手く戦っている……」

 

「しかも戦い慣れてるね……まあ私達はど素人だし、向こうはベテランだから当然かも」

 

 ガクッと顔面を机に突っ伏すセリカ、動画に映る実戦経験豊富な赤い戦士達を評価する。

 

「この様に様々なユニバース戦士がクラディスを追い払っていて、現地の方々がこんな風に動画をアップロードしているんです」

 

「ユニバース……?」

 

「そう言えばテガちゃんが言ってましたねぇ。指輪を持っている人達は指輪の戦士と呼ばれていて、指輪の力の基になったスーパー戦隊さん達は世界の平和の為に悪い人達と戦ったって。後、私達が言うのもなんですけど、指輪の戦士の皆さんってそれぞれの願いの為に動いているんですよね?」

 

「よく考えてみると私が会った戦士達は正義云々ではなく、自分の欲望に従っていたね」

 

 治安維持の為とはいえユウカ達も願いの為に戦っていて、明らかに正義とは掛け離れていた。

 

 何にせよ正義は一つとは限らず、様々な正義がある。

 

 それから先日の様に強化型モリスは現れていないが、いずれ他の学園も遭遇する可能性があるだろう。

 

「さて……もう議題はないかい?」

 

「全然オッケー、じゃあ此処でお開きだね〜〜」

 

「はあ……」

 

 まだ発展途上な気がするのに纏まっていない、そう思いながらアヤネは息を吐いた。

 


 

 その後、シロコ達は奇妙な邂逅を果たした。

 

 放課後にセリカがバイトする毎度お馴染みラーメン屋柴関(しばせき)でアヤネの機嫌を直す為、一先ずラーメンを一杯食べる事に。

 

 セリカはまた来た事に呆れるが、ホシノは細かい事は気にしないと言いくるめる。

 

 一先ず気分転換とメニュー表を見ていた時、()()()は来店した。

 

 陸八魔(りくはちま)アルを始めとした、便利屋68である。

 

 真なる(アウトロー)をモットーに掲げる零細起業──しかしその実態はゲヘナ学園の生徒達で構成された小規模の違法部活動の一つである。

 

 おまけに金銭も少なくて収入も入らず、限りなく貧乏人とも言える四人組。

 

 手持ちの金も気軽にショッピングなどまともに出来ず、その金でラーメン一杯を四人で分かち合う程に貧困。

 

 シロコ達もアル達と和気藹々とガールズトークを行い、ラーメンの味を語っていた──というのが昨日の昼の出来事。

 

 その翌日、彼女達の話を聞いて先生は笑みを綻ばせる。

 

 彼女達に友達が出来るのではないかと思い、温かい眼差しで見守っている様な感覚だ。

 

 その時、アヤネが大規模な兵力が迫っている事を報告。

 

「まさかまたヘルメット団……ううん、この匂い……!」

 

「はい! ヘルメット団ではありません! 傭兵です、恐らく日雇いの傭兵です!」

 

 傭兵を雇うならばそれなりの高額の金が用意されている。アビドスを潰す為ならばヘルメット団では役不足、戦闘のプロである傭兵に依頼したのだろう。

 

 恐らく背後にいる黒幕が断定して差し向けたのだろうが、黙ってやられるわけにもいかない。

 

「全員、出撃だ!」

 

 シロコ・ホシノ・セリカ・ノノミはそれぞれの得物を手に校舎から飛び出し、傭兵部隊を待ち構える。

 

 アヤネからの通信で傭兵を率いる前方の戦力を確認すると、四人はそれを見て目を丸くした。

 

 何を隠そう、和気藹々と友交的になったアル達便利屋68の面々であった。

 

 傭兵を率いているアルが罪悪感を感じているが、セリカは恩知らずと彼女達を罵倒。

 

 便利屋の社員達は恩を感じているがその一方、公私は区別しており受けた仕事はきっちりこなすと豪語。

 

「成程……その仕事って言うのが便利屋だったんだ。それに貴女、指輪の戦士なんだね」

 

 昨日は気付かなかったが、アルの右手の指には自身と同じ指輪が嵌められている。

 

 ノノミは便利屋の面々を見て健全なアルバイトを進めるも、対してアルはビジネスだと反論、御丁寧にも肩書きと同時に社員を紹介する。

 

 室長にはアルと同年代の悪戯好きな浅黄(あさぎ)ムツキ。

 

 課長には一つ年上の常識的且つ苦労人の鬼方(おにかた)カヨコ。

 

 そして平社員には卑屈で常にネガティヴだが、過激な思考を持つ最年少の伊草(いぐさ)ハルカ。

 

 因みにアルはシロコ達がアビドスだと知ったのもラーメン屋を出てムツキとカヨコから教えられ、更にシロコも指輪の戦士だと知って仰天。

 

 "情け無用"と"お金さえもらえれば何でもやります"を信条にしているも、友好関係を築いた彼女の良心が痛むが此方は戦闘のプロ、こうなってもう背に腹は変えられない。

 

「──総員、攻撃!」

 

 アルの一声で傭兵達は突出し、シロコ達に向かって発砲。

 

 その銃弾の嵐をノノミがガトリング砲で防ぎ、距離を詰めてシロコ達も発砲音を鳴らし、少しずつ数を減らす。

 

 ガトリング砲の射程を考慮してシロコ&セリカは右、ホシノは左から攻めていく。

 

「社長はやらせないよ」

 

 ハンドガン──デモンズロアを手にカヨコが牽制、彼女の背後から飛んでくる爆弾がシロコ達に向かって降り注ぐ。MG5を彷彿とさせる固有武器──トリックオアトリックを所有するムツキがばら撒いた物だ。

 

「い、いひひひ…! アル様に近付く奴等は殲滅ぅ…!」

 

 物騒な言葉を呟きながらショットガン──ブローアウェイで銃撃するハルカ、銃弾の嵐に晒されながらも上手く避けていく一同。

 

 社員達が善戦する最中、自らのスナイパーライフル──ワインレッド・アドマイアーで後方から精密射撃を敢行するアル。

 

 避けつつその射撃を躱し、彼女の前に立つのはシロコ。

 

「頭を獲るのは戦闘の基本」

 

「へえ……分かっているじゃない子犬ちゃん」

 

 社員や傭兵達がホシノ達に手間取っている中、相対するシロコに対して笑みを浮かべるアル。

 

「此処までの距離なら制圧出来る」

 

「確かに此処まで近付かれたらお手上げ、私にとって不利ね」

 

 ワインレッド・アドマイアーを手離す様子に降参するのかとシロコは考えたが、それは直ぐに泡沫に変わる。

 

()()がなかったらね」

 

「指輪……しかもその色、私と同じ…!」

 

 金のテガソードと指輪を持つ彼女にシロコは警戒、その様子にムツキは「アルちゃん、マジモードだねぇ」と扇動する。

 

 本当ならば直ぐにでも降伏するべきだが、己の願いとプライドの為、そして社員達の為に泣き言は言っていられなかった。

 

「エンゲージ!」

 

 金のテガソードの中心に指輪を装填。

 

《クラップ・ユア・ハンズ!》

 

 音声と共に流れる独特のBGM、それに合わせて踊り出すアル。

 

 BGMに合わせてテンポよく手拍子(クラップ)、それを数回繰り返して踊り、先端に円を描くと同時に彼女の頬にシロコと同様に爪を模した字が浮かぶ。

 

《ゴジュウイーグル!》

 

 金の装飾が身体に纏い、その身体は装飾を纏う緑色のスーツの戦士へと転ずる。

 

 これこそはゴジュウイーグル、アルがテガソードと契約して変身する緑色の猛禽類の戦士だ。

 

「指輪の戦士!?しかもシロコ先輩と同じゴジュウジャー!?」

 

 金のテガソードを所有するのはゴジュウジャーである証、ゴジュウイーグル(アル)を見つめる中、シロコも変身する。

 

「エンゲージ!」

 

 ウルフリングを金のテガソードに嵌め込み、テンポよく手拍子(クラップ)と踊りを披露すると頬に字を浮かべて変身。

 

《ゴジュウウルフ!》

 

 ゴジュウウルフ(シロコ)はゴジュウイーグル(アル)を睨んで武器を構えるが、ゴジュウイーグル(アル)は軽く手招きする。

 

「ふふ……来なさい子犬ちゃん、相手して上げる」

 

 金のテガソードを持つ者同士がぶつかり合い、青い刀身が競り合う。

 

 競り合いながらゴジュウウルフ(シロコ)は攻め入るが、ゴジュウイーグル(アル)は受け流しつつ、背中の翼を広げて飛翔。

 

「食らいなさい、イーグルシューター!」

 

 鷲の形を模した弓矢──イーグルシューター50を構えて弓矢を放つ。

 

 雨の様に降り注ぐ弓矢をゴジュウウルフ(シロコ)は持ち前の身体能力で回避していき、遮蔽物に隠れて弓矢の雨から身を守る。

 

「エンゲージ!」

 

《センタイリング!チェンジマン!》

 

 身を隠す中でツメガバックルにチェンジマンの指輪を装填、遮蔽物から姿を見せて駆け出すと手拍子(クラップ)してチェンジドラゴンへと変化する。

 

「わざわざ姿を見せてくるだなんて、勝機を捨てて観念したようね!?」

 

 仮面の中でゴジュウイーグル(アル)は笑みを隠し切れず勝利を確信するが、実際は逆であった。

 

「ドラゴン……ボール!」

 

「へ……きゃっ!?」

 

 拾い上げた小石を手に、勢いよく振りかぶって投擲するチェンジドラゴン(シロコ)。

 

 ゴジュウイーグル(アル)に向かって投擲された小石は忽ち龍を模した豪速球となり、それはイーグルシューター50を手にする左手に命中。

 

「痛っ!きゃっ!?ぶふっ!?」

 

 次々に繰り出される豪速球にゴジュウイーグル(アル)は命中され、間髪入れる暇もなくやられるばかり。

 

 小石とは思えない威力な為、その様子にカヨコは呆れ、ムツキはゲラゲラと笑い、ハルカは悲痛な表情を見せる。

 

「ああもう!まさかそんな方法を取るとはね!」

 

 ゴジュウイーグル(アル)は翼を広げて小石を全て吹き飛ばし、砂地に再び降り立つ。

 

「貴女がそうするなら、此方も同じ土俵で挑むとしましょうか!」

 

 左手に金の装飾のある指輪を手に、ゴジュウイーグル(アル)は高らかに叫ぶ。

 

「エンゲージ!」

 

 ツメガバックルに嵌め込み、手拍子(クラップ)をして姿を変えていく。

 

《ブンブンジャー!バクアゲタイヤ!》

 

 滑走音と共にタイヤを思わせる螺旋を描き、爆上(ばくあげ)戦隊ブンブンジャーの赤い戦士──ブンレッドへと変化する。

 

「行くわよ!」

 

 固有武器──ブンブンハンドルを手にロッドモードへと変形させ、チェンジドラゴン(シロコ)に向かっていくブンレッド(アル)。

 

 対してチェンジドラゴン(シロコ)はチェンジソードで迎え撃ち、互いの得物でぶつかり合う。

 

「にひひひ♪ アルちゃん、ちゃんとカヨコちゃんの指輪、使ってくれてるね♪」

 

「……私にあの指輪は過ぎたもの、私より社長が使うのに相応しいと思っただけ」

 

 澄ました顔のカヨコは明後日の方向へ顔を向け、二人の赤い戦士は剣戟の音を響かせる。

 

 ブンブンハンドルをガンモードへ変形させ、銃撃を放つブンレッド(アル)。チェンジドラゴン(シロコ)はチェンジソードで弾いていき、距離を詰めていく。

 

「決めてもらうよ」

 

「それは此方の……台詞よ!」

 

 それぞれセンタイリングを外し、互いの必殺技をぶつけるべく攻撃に出る両者。

 

《フィニッシュフィンガー・ウルフ!》

 

《フィニッシュフィンガー・イーグル!》

 

 両者の連続ラッシュの嵐がぶつかり合い、最後の一撃が決まる同時に火花が散る。

 

「シロコ先輩!」

 

「アル様ァ!」

 

 衝撃波と共に爆炎が巻き起こり、両者のセンタイリングが空に舞う。

 

 爆炎から飛び出したゴジュウウルフ(シロコ)とゴジュウイーグル(アル)はリングを手にし、回転しながら着地。

 

「流石社長さん……気を抜いてたらやられていたかも」

 

「其方こそ……素人だと侮っていたわ。先程の無礼を謝罪しないといけないわね」

 

 傷だらけの両者は仮面越しで笑みを浮かべ、何故か分かり合っているかの様な雰囲気を放っている。

 

 仕切り直しだとセンタイリングを構えるが、お互いにリングの方へと顔を向ける。

 

「あ」

 

 ゴジュウウルフ(シロコ)の方にはブンブンジャーの指輪。

 

「ちょっ!?」

 

 ゴジュウイーグル(アル)の方にはチェンジマンの指輪。

 

 どうやら空に舞ったお陰ではっきりと確認せず、交換する形で手にしてしまったようだ。

 

 互いの陣営が呆れ返っていると校舎のチャイムが鳴り響く。

 

「あ……定時だ」

 

「今日の日当だとここまでね……後は自分達で何とかして。皆、帰るわよ」

 

「は…?はァ!?ちょ、ちょっと待ってよ!?」

 

 傭兵達はアビドスの校舎から離れていき、今後の事を雑談しながら去っていった。

 

 ゴジュウイーグル(アル)は彼女達を止めようとするも既に遅し、気が付けば最早言葉が届かなくなる程に遠ざかっていった。

 

 便利屋の面々もこんな筈じゃなかったと唖然としていて、あっさりと数が減って戸惑う。

 

 終始唖然としていたゴジュウイーグル(アル)は変身を解き、アビドスの面々に振り返る。

 

「こ……これで終わったと思わない事ね、アビドス! その指輪、絶対奪い返してやるわ!」

 

「あはははは! アルちゃん、完全に三流悪役台詞じゃんそれ」

 

「五月蝿い! 逃げ──じゃなくて退却するわよ!?」

 

 ヤケクソに叫びながらアル達は去っていき、シロコ達は微妙な表情を浮かべるのだった。

 

「……それにしても、まさかアビドス以外の生徒も指輪の戦士とは」

 

 校舎の窓から先生は頭を抱える。ユウカ達が使っていた時点で有り得なくはなかったが、まさかこうも早く二人目のゴジュウジャーが現れるとなると、予感していた学生同士の指輪争奪戦が勃発する事になる。

 

 先生は夕暮れに染まるキヴォトスの空を見つめ、深い息を吐くのだった。

 

 

 続く

 

 




前回の最後を見てお察しの通り、アルちゃんがゴジュウイーグルです。

指輪の変動もあり、互いの指輪が入れ替わりました。

次回はブラックマーケットの話、及びペロロ様大好きなあの娘が登場します。

 因みにブンブンジャーリングは元々カヨコが持っていましたけど、本人は争奪戦に乗り気でなかったのでアルちゃんに譲渡した……という裏ストーリーにしてみました。
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