野正レイと何となく仲良くなって初恋を自覚するミレモブの話

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今回のガチャでレイが出たので


野正レイに初恋ドロボウされるミレモブ概念

最近、運動不足だと感じて、ミレニアムサイエンススクールの一角にある屋内運動場に行ったときの話だ。

私はただ、ボーリングやら的当てやらルームランナーやらをして軽く運動不足を解消しようとしただけなんだ。

 

本当に野球なんて欠片も興味もなかったし、ルールも殆ど知らない。

ただ、彼女がすごく楽しそうにバッティングをしているのを見てしまっただけなんだ。

 

そういえば建物の横に併設されているバッティングセンターがあったな。と思い出して、野球も多分運動になるだろうと軽い気持ちでそっちに向かっただけなんだ。

 

欠片も当たらん。何せ説明を読むに、初心者からプロレベルの球をランダムに投げられる高性能品だそうだ。私は初心者用でも欠片も当たらなかったが。

 

いや、やり方は分かったのだ。何か知らん機械から無限に珠が吐き出されるから、それをこの木の棒で打つのを繰り返す。それだけなんだ。ただまぁ、いい運動になったと思う。全身運動になるだろうし。銃撃戦より余程疲れるし。私にはレベルが高過ぎただけなんだ。

 

3時間近く全力で闇雲にバット(名前覚えた)を振りストライクだかボークだかを量産した。うん。いい運動になった。割といい汗かいたのでもうあがろう。明日は絶対筋肉痛だ。

 

そう思って、バットを片付けようとした時にひどく澄んだ音が響いた。私が振っていたバットからは到底出ないような綺麗な音で、慌てて周囲を見渡せば、何かの帽子を被った少女がとんでもなく綺麗なフォームでバットを振ってヒットを出していた。

 

「…わーお。あんないい音するんだ」

 

またコタマ先輩が喜びそうな音だ。現実逃避にそんなことを考えていたら、こちらの視線に気付いたのか少女がこちらに振り向いた。先程までの真剣そうな顔から一転して、人懐っこい笑みを浮かべてこちらに近付いてくる。一目見た印象だけだが、随分と感じのよさそうな少女だ。なんという髪型か分からないが随分と綺麗なオレンジ色の髪にスミレ色の切れ長な瞳。ジャケットを羽織ってその下に白のパーカーを着ている。帽子は多分野球帽とかいうやつだろう。

…随分と可愛いらしい恰好をした子だ。

 

「もうあがりですか?」

「うん。運動不足解消のために来ただけだし」

 

そう答えると考えるように顎に手を当ててうんうんと唸りだす。何かを思いついたのか晴れやかな顔で彼女は口を開く。

 

「貴方も野球に興味あるんですか!」

 

 随分と綺麗な声で、訳の分からないことを聞かれた。

 

「いや、違うけど」

「…そうですか」

 

あからさまにがっかりしたように肩を落とし、泣きそうな顔をする彼女に何と声をかければいいか分からず無意味に腕を上下させる。

 

「あ、そういえば名前言ってませんでしたね。ミレニアムサイエンススクール1年の野正レイっていいます」

「あーよろしくお願いします。同じく1年の野分レンナです」

 

直ぐに立ち直り笑顔で自己紹介してくる彼女に答えると、手を差し出してきたので軽く握っておく。肌の質感も随分といい。私の手は薬品で大分焼けているので触り心地は悪いだろうに、そんなものは気にならないのか両手でしっかりと私の手を包み込み、上下に元気よく振るう。

 

「今は興味なくてもいいっす。また今度試合があるんで見に来てください!」

「それは別に構わないけど、何部なの君?」

「野球部です!」

 

初めて聞いた。ミレニアムて野球部あったのか。

ずっと握られていた手が解放される。何となく惜しいと思ってしまう自分の気持ちに疑問をもつが、そんなことよりニコニコとこちらの返事待ちをしているレイに返事を返す。

 

「いいよ。最近研究行き詰っってるし」

 

私の答えが余程嬉しかったのか、小さくガッツポーズをするレイを微笑ましく思いながら、随分と久しぶりな凪いだ気持ちを持て余す。最近、実験やら何やらで成果がなかったから自分でも知らず知らずのうちに焦っていたようだ。ウチの先輩方からも根を詰めすぎだと言われていたので、いい機会だろう。

 

 

 

一応試合に誘われたので、野球のルールを勉強する。思ったよりも複雑である。ショートの人は何でこんなところに居るのだろうか。後、ウチの野球部の評判を調べてみるとまあ酷いものだった。ランキング外の弱小チームだのエンジニア部のピッチングマシーンにも負けるだのというとんでもない評価で逆に試合が楽しみになってきた。

 

試合当日に球場に足を運べば、選手のはずのレイが入場口近くで挙動不審に何かを待っている。何か問題でもあったのかと思い彼女の方に向かい足を速める。

 

「何かあったのレイ?」

「あ、やっと来てくれた!待ってましたよ」

 

何か不思議なことを言われた。

そんなに遅かっただろうかと時計を見るが、試合開始まで未だ30分くらいある。はて、私に何か用でもあるのか。

 

「折角だからベンチに案内したいと思って」

「…野球のやの字も知らん人間にそんなとこ案内するんじゃないよ」

 

多分、ファンなら喜ぶかもしれんが、私がルール覚えたの3日前だぞ。カレンダー見て慌ててルール覚えたんだからな。

 

「…えーこういうのも醍醐味だと思うんだけど」

「そんなしょげないの。じゃあ勝ったら案内してよ」

 

軽い調子で慰めるために提案すると一転してやる気を漲らせるレイに口元が緩む。いい子だこの子。ホントに癒される。

 

「じゃあ頑張って勝ってきますね!」

 

気合が入ったらしく駆け足で球場に入っていくレイに手を振り見送り、後を追うようにレイが送ってくれたチケットを係員に見せて球場に入る。

適当に球場内に併設された店で軽食類を買い込み、多分一番よく見える席だろう場所に腰を下ろす。いやネット知識なんで何も分からんのだが。何か内野側がいいだの外野席でホームラン見るのがいいだの色々言われてて面倒になったのだ。だから私はレイが一番見えそうな位置を計算してそこに決めた。

しばらくしてレフェリーだろうロボがグラウンドの真ん中に立ち、両高の選手が整列する。いよいよ始まるのだろう。選手でもないのに緊張してきた。

無駄な緊張をしていると、レイがこちらを見つけて柔らかく微笑んでくれた。

 

「あかんて惚れてまうわ」

 

一瞬で顔が赤くなり、慌てて手で顔を仰ぐ。あの子絶対ファン多いじゃん。ちょっと仲良くなっただけであの感じはダメじゃん。絶対初恋ドロボウになるよ。来年とか後輩にめっちゃ慕われる未来が見えるよ。

 

 

「プレイボール!」

 

『『『よろしくお願いします!!』』』

 

顔の熱を逃がしていたら試合開始の時間になったらしく威勢のいい掛け声がグラウンドに響く。さて、どういう感じの試合内容になるのか。

 

結果からいうと負けた。それも結構あっさり。点数は4-0である。ホームランこそ出なかったが相手側の選手はミレニアムの野球部より優秀らしくヒットを定期的に出し、順当に点を重ねていった。ミレニアム側もこのままではまずいと思ったのか、今まで投げていた生徒と交代して機械が出てきた時には笑いそうになった。しかも機械が暴走して選手一同で制圧するなんて場面もあり。見世物としては最高の出来だったと思う。

肝心のレイの活躍はというと、外から見ているこちらからも緊張しているのが分かるくらいには全身に力が入っていた。

まぁ4番というのは一番打てる人が背負う番号らしいから緊張するなという方が無理なんだろう。にしても凡打一本というのはひどいのではなかろうか。練習の時はそこそこ打てていたように感じるが。

試合が終わり興奮も冷めやまずにぼうっと片付けが続くグラウンドを眺めていたら、レイがいつの間にか近くまで来ていたらしく隣に腰かけた。

 

「すいません。約束したのに負けました」

「まぁ勝負は時の運というし」

 

勢いよくに頭を下げるレイの背中を優しく撫でて慰める。ある程度撫でられて落ち着いたのかゆっくりと頭を上げてくるので手を放す。こちらを向いたレイの顔はひどく不安そうであった。

 

「…楽しかったですか?」

「うん。楽しかったよ」

 

まさかスポーツ観戦がこんなに楽しいとは思わなかった。今までスポーツなんて欠片も興味がなかったが今度からは少しは見てみようという気になった。誘ってくれたレイに感謝である。

私の答えに満足したのか一つ大きく頷き、笑顔を向けてくる。

 

「じゃあまた誘いますね」

「うん。お願い」

 

そのまま二人でしばらくお喋りを続けていると先輩だろう人がレイを呼ぶ声がして、名残惜しげにこちらに手を振り去っていく。その後ろ姿を何故かひどく名残惜しげに眺めながら帰路についた。

 

 

 

 

 

「最近楽しそうだね」

「…そうっすか?」

 

部活の先輩にそう言われ顔をペタペタと触る。そんなことで表情が分かるはずがないが、どこかおかしいところでもあっただろうか。

 

「うん。よく笑うようになった」

「そうなんですかね」

 

分からん。自分のことなのに全然分からん。

ただこの先輩がいうならそうなんだろう。

 

「それに前みたいに鬼気迫るものがなくなった」

「あーそれについてはすいません」

 

構わないさ、と軽く笑われてしまう。そんなにひどい顔をしていたのか私は。まぁレイに会う前はホントに行き詰っていたし先輩方に頼ろうて発想も消えてたしなぁ。そう考えると滅茶苦茶メンドイ後輩ではないだろうか私って。

驚愕の事実に愕然としている私を笑顔で眺めている先輩から逃げるように、作業中だった机に視線を向ける。といっても今は反応待ちなので結果が出るまでできることはない。だから先輩も声をかけてきたのだろうが。

 

「きっといい出会いがあったんだね」

「…心でも読めるんですか先輩」

 

たまにこの先輩はこういうことをいう。未来予知とかそういうオカルト方面ではないが心を読んでいるのではないかと思うようなことを口にすることがたまにある。

睨むように下から先輩の顔を見れば、肩をすくめて去っている先輩。何がしたかったんだあの人は。

 

 

 

 

「で、バッティングセンターで今日も練習と」

「はい。やっぱり打てないバッターて意味ないですから」

 

あの試合からそれなりに時がたち、レイから何度目かお誘いがあり、その度にバッティングセンターに向かってバットを振るう日々が続く。

そんな日常を繰り返しているうちに気付いたがどうやら私はレイのことを好きになったようで。

だって基本的に距離が近いのだ。バットの持ち方が違うといって直ぐ横まで来て優しく直してくれるのだ。めっちゃいい子。こんな子好きにならない方が変だと思う。

 

今も隣で真剣な顔でバットを振っているレイの顔を視界に4割程収めながらバットを振る。初心者用なのでタイミングさえ合えばある程度ヒットはするようになった。変化球はまだ難しいがストレートなら当たるときは当たる。

因みにホームランはまだない。レイはホームランを打つのが夢だと言っていたので頑張ってもらいたい。そして、それを特等席で見てみたい。

 

どうやら私は大分重症なようで。さて、この気持ちはどうすべきか。

 

夜も深くなり、バッティングセンターからレイと別れて帰る。もっと一緒にいたいがあまり引き留めても迷惑だろう。家にたどり着き適当に冷蔵庫の中身を出して調理していく。部活の関係からか自炊が何となくできるようになったので最近はもっぱら手作り+出来合いのお惣菜である。因みに今日は、野菜を消費するためにポトフと豚の生姜焼きにご飯。美味ければ何でもいいのだ。夕ご飯を食べ終わり、食器を食器洗い乾燥機に入れてスイッチを押す。起動音と共に水音が部屋に響く。その音を背後にソファーに向かい座り込んで自身の気持ちに向き合う。

 

「さて、いつから好きになったのだろう」

 

多分、一目惚れではないはずだけど。

やっぱり人柄に触れて、そこから段々好きになったのだろうか。でもあの子見た目もいいしなぁ。真剣な横顔とか滅茶苦茶恰好いいしなぁ。ちょいちょい見せるおっちょこちょいなとこも可愛いしなぁ。

やっぱあれだな。

 

「多分、私はレイの野球に対する情熱にやられたんだろうなぁ」

 

こうして私は恋を自覚した。

 

 




多分、告白してもいい友達でいましょうエンドなのでこれでおしまい

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