ゆるぼ:親友が魔法少女になったときの対処法   作:あまぐりムリーパー

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魔法少女要素は基本ありません


ゆるぼ:親友が魔法少女になった時に対処法について

「というわけで、魔法少女になったわ」

「というわけで、じゃないだろ」

 

 俺の目の前でカラフルな髪色の女がぴょこぴょこと跳ねている。なんか胸元にでかいリボン、ひらひらしたスカートにやけにフリフリな衣装してるし。

 

 この奇抜な格好の女はなんだと思ったが、聞くとどうやら俺の親友らしい。なんか俺のこと知ってるし話し方も似てる。

 

 いやいや待て。俺の親友と言えば、まあ確かにどちらかといえば女装させられそうなタイプだし、背も小さいがれっきとした男だったはずだ。

 

 それが魔法少女?

 男から女になってさらに魔法少女になったってことか?二段階進化?

 いや、進化なのか?

 

「……うん、寝るか」

「現実逃避するな!」

 

 ぺしっと頭をはたかれる。この痛みが夢では無いことを教えてくれる。最悪だよ。

 いやだってさ、どういう状況なんだよ。理解を拒むだろ。

 

「改めて、お前の親友の雨霰しずくだぞ」

「冷静に聞くとすごい名前だな」

 

 どことなく親友――雨霰しずくの面影を感じる。髪色は青から紫へのグラデーションがかかっていて背中まで伸びているし、肌色も白っぽくなっているのに。

 

「いやさ、俺寝てたんだけどそうしたら妖精っていうの?なんかもふもふしててふわふわしてるやつと寝言で会話して契約してたみたいでさ。起きたらなんかそういう説明されてたわ」

「寝言で会話できたお前がスゲーわ」

 

 説明を聞いてもこんなに意味わからんことあるか?

 

 一番すごいのはこんなわけわからん状況でけらけら笑ってる親友本人か。部活帰りに面白いことあった、みたいな温度感で話すことではないだろ。

 

「で、間違って契約したようなもんじゃん?」

「まあそうだな」

「だから、戻してくれるらしいけどさ」

「よかったじゃん」

「戻るのいったんやめてお前のところに来たってわけ」

「なんでだよ」

 

 要は魔法少女になったぞってことを見せびらかしに来たってことか。確かに他人に言いたくなる気持ちはわかるけどさ。

 

「んで、今戻らないなら三か月後になるらしくて。まあいいかなって」

「え、お前これ見せびらかすだけのために三か月後に伸ばしたの!?」

「どう?お前に見せるために延長したんだぞ?」

「お前がいつにもまして馬鹿なのはわかった」

 

 ちぇっ、と言ってしずくはそっぽ向いた。いや、普通に今驚かすだけのために三か月を犠牲にするのはあほ過ぎないか?バカがよ。

 

「つーかさあっ、親友が魔法少女になったんだから、もうちょっとあるだろ。反応がさあっ!」

 

 むすっとしてぐいぐいと、肘でつついてくる。うぜえ。

 

「はいはいかわいいかわいい」

「よくわかってんじゃん」

 

 満足そうに頷いた。それでいいのかよ。実際、かわいいっちゃかわいいんだけども。

 

「でさ、俺あと三か月これなんだけどどうしたらいいと思う?」

 

 やっぱこいつあほだわ。突然親友が魔法少女になった体験を持つ人に解決策を募集かけるしかないか。

 いないけど、そんなやつ。

 

「まずお前その変な格好なんとかならないの?」

「ん?変身のこと?解けるぞ、ほら」

 

 スッと光に包まれて、それが消えたと思えば背中まであった髪は肩程度まで縮んで、奇抜な衣装も消える。代わりに、黒のカーディガンに、淡い色のワンピースを着ていた。足元はローファーになっている。

 

 ……めっちゃ女物だな。

 

 というか変身解けるのかよ。通常形態もちゃんと女なんだな。

 

「うわ、なんだこの服!」

「お前が選んだんじゃねーのかよ」

「魔法少女化の副作用ってことか……」

「適当言いすぎだろ。服まで変わるもんなのか?」

「まあいいや、一旦遊びに行こうぜ透」

「切り替えが早すぎるだろ」

 

 こうして俺――豊月透は姿が変わってもけろっとしている親友に振り回されることになる。この日は適当にぶらっと回っていつも通りに過ごした。

 

◇◇◇

 

 雨霰しずくがどういうやつだったのかと言えば、一言で言えばバカなやつだった。先のことを考えないし、ろくに勉強もしないし、人をいらんことによく巻き込むし。ただ、愛嬌だけで全部乗り切っていて俺以外にも友達は多かった。

 そんなやつが俺とばかりつるんでいるといるってのも不思議な話だがそれでも悪い気はしなかった。

 

 その親友が昨日は魔法少女になったとかのたまっていた気がするが、あれは夢だったに違いない。

 

「よっす」

 

 そう思って家の扉を開けるとそこにいた。さらさらの青い髪を後ろに結んで、制服を着ている親友がそこにいた。下はひざ丈のスカートを履いている。

 

 ……昨日のは夢じゃなかったか。というか、変身はしてないんだな。当たり前か、あんな奇抜な格好で登校できないし。

 

「おーい、どした?魅入ったか、俺の美貌に」

 

 目を細めていたずらっぽく笑う。悔しいことに今のこいつは美少女で、その蠱惑的な笑みに思わず心が揺れた。

 

「バカ言ってないでいくぞ」

「あだっ……おい女になってからの朝の準備大変だったんだぞ!見た目ぐらい褒めろ!なんかスカートひらひらしてて落ち着かねーんだぞこっちは!」

 

 だから、それがつい癪で頭を小突いてやったらキャンキャンと吠えている。褒められたかったらしい。

 

「はいはいかわいいかわいい」

「お前さあっ、そんなんだからモテねえのわからねえ?」

「なんでお前は逆にノリノリで女やってるんだよ」

「おもろそうだろ、こういうの」

 

 ニッと笑う。こういう表情をするといつもと変わらないな。華奢な体、白くスラっと伸びた肢体。ついそれを見てしまうのが嫌で、目をそらす。

 

「お、おい。ちょっと待てよ」

 

 不意に手を握られた。こいつの手はこんな小さかったか。なんか柔らかい気もする。

 雑念を振り払って、振り返るとむすっとした表情のしずくに睨まれていた。

 

「どうした?」

「お前、歩くの早いんだよ」

「ん?……ああ、もしかして歩幅か」

「お前、気が利かなさすぎ」

 

 身長はそこまで変わってなかったように見えたから気にしていなかったけど、歩幅は変わっていたらしい。足が短くなったりしたのだろうか。そのせいで普通に歩いているつもりなのに、離してしまったらしい。

 

「そりゃすまんかった。で、手を離してもらっていいか?」

「やだね、なんか気に入らねえから。こうして握ってみるとあれだな、ごつごつしてる感じするわ」

 

 ……これさ、わざとか?やたらにぎにぎして感触確かめてくるし。そういえばいたずら好きだった気がするわ。

 

「ひょわぁっ、お前変なことすんなよ!」

 

 逆に握り返してみるとすごい素っ頓狂な声を出している。

 

「お前が離さないからだろ」

「だって離したら俺の歩くスピードわかんなくて置いていかれたらヤだろ」

「それはそうかもしれんけどさ」

「じゃ、いいってことで!」

 

 手を握ったまま、ぐいっと引っ張って走り始めた。

 

「急に引っ張るな!」

「うるせー!」

 

 ああ、これがいつもの光景だったな。登校の時からたまに無茶をやらかすから。

 

「今更なんだけどお前って、その格好で登校しても大丈夫なのか?」

「ああ、そこは大丈夫。魔法少女になった影響で認識阻害的なのが働いてるらしいから」

「便利だな魔法少女」

「それで、俺のことは昔から女だったって認識するらしいから女生活を満喫するってわけ」

 

 こういう能天気なところは今はすごいな。不安になったりしないんだろうか。

 

「でさ、いいこと考えたんだけどさ――」

 

 嫌な予感がする。いいことってなんだよ。例えば「馬鹿だからわかんねーけどよ」が真理に基づいたような発言をするみたいに、こういう時の「いいこと考えた」はだいたいろくでもない。

 

「女になったんだからお前のヒロインになってやろうと思って」

 

 ああ、当たってた。なんだよヒロインって。

 

「いらんいらん」

「は?なんでだよ。女っ気のないお前に、今だけは美少女の俺が理想のシチュエーションを満たしてやるって言ってんの」

「余計なお世話だ」

「へえ?お前がその気ならいいよ、勝手に仕掛けてやるからさ」

「……はあ」

 

 どうやらこいつのいたずらからは逃れられないらしい。

 

 校門につく前にはなんとか手を離してもらえた。手にあいつのぬくもりが残っている。あいつの言ってた変な発言のせいで意識しそうになる気持ちをどこかに捨てた。

 

 

 

 

 

 教室までいくと、当たり前のように女のしずくをみんな受け入れていた。認識阻害云々はうまく機能しているらしい。いいのやら悪いのやら。

 

 女子とハイタッチしてるしずくが見える。いつもは男とやってるが、さすがに性別が変わるとそういうところも変わるのか。

 

 ふと、目が合う。見すぎたか。そう思って視線を反らそうとしたときにパチンとあいつがウインクしてるのが見えた。イラッとして反らす。

 

「なあ、豊月。お前って雨霰さんとつきあってんの?」

 

 たまたまさっきの様子が見られていたみたいで、横の席にいたクラスメイトから尋ねられた。

 すごい定番みたいな質問だな。

 

「いんや、友達」

「はーっ、お前あんだけ仲良くてよくそれで済んでるな」

 

 あいつが勝手に女になってる状況だとじれったいカップルみたいに見えてるのかもな。

 

「仲いいというか、無理やり距離を詰められておもちゃにされてるだけだぞ」

「なんかそれもありだな」

 

 ダメだ、変態だったらしい。これが三か月続くのマジか。

 

「へーっ、透って私と仲良しにしてるの嫌々だったんだーっ」

「うわっ」

 

 いつの間にか目の前にきてるしずくが何か企んだみたいにいたずらっぽく笑ってる。そもそもなんで女っぽい口調にしてるんだ。お前、朝いつも通りだっただろ。

 

「うわって酷くない?ねえ?」

「そうだな、豊月。死んだ方がいい」

「なんだこいつら」

 

 さっきの男子も乗っかってくる。面食いめ。そいつの中身、意外とポンコツだぞ。

 鬱陶しげにしっしっと追い払うように手を振ると、いじけたように頬を膨らませて「口調変えたらギャップでころっといくかなと思ったのに」なんてのたまって席に戻っていく。

 

 逆にころっと行ったらどうつもりするんだよ。勘弁してくれ。

 

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