ゆるぼ:親友が魔法少女になったときの対処法   作:あまぐりムリーパー

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急募:好きの受け止め方

 ベッドの上にしずくが座っている。足をパタパタとさせてるせいで、スカートの中が見えそうになる。無防備すぎるだろ。

 

「なあ、おい透。パンツ見んなよ」

「じゃあその足パタパタやめろ」

 

 飛んできた枕をキャッチする。理不尽。

 

 俺はなぜかしずくの部屋に連れられていた。「いいから来いよ!」とすごい勢いで引っ張られて無理矢理。家にいた妹は邪魔だから追い出したらしい。今度謝っておこう。

 

 ……部屋全体からなんか知らない匂いがして落ち着かない。

 

 ふと、顔をあげるとしずくと目が合う。ずっと、じーっと見られている。

 

「人の顔を見て何なんだよ」

「何って、顔を見てるんだよ」

 

 どういう返し?

 

 俺もなんとなく、しずくの顔を眺めると自然とあいつの赤い唇を見てしまいそうになって少し目線を下げると、俺がプレゼントしたイルカのネックレスが視界に入る。

 

 あの、ネックレスを渡すときのしずくを思い浮かべると、そのまま頬にあの感触を思い出しそうになって、振り払った。

 

「そういやさ、魔法少女って正式に契約してもいいらしいってさ」

 

 唐突に言うもんだから、俺は何も言葉が出てこなくて固まった。あいつの顔を見ると、真剣な表情のまま俺をじっと見続けたままだ。

 

「俺は正直、夏祭りとか行こうかなと思ったんだけど、その前に約束の三か月が来るからさ。だから正式に契約してやろうかなって思ってな」

「お前……」

「ああ、それでよかったのかって?言ったじゃん、お前がなんともならなかったら戻るって」

「そ、れは……」

「いちいち、ほっぺ触りながら変な態度取りやがってさ。でかい犬とか言ってたのに」

 

 ぶっきらぼうに言う割りにその頬は緩んでいる。

 

 ……認めたくないけど、あのキス以降あいつのことを今まで以上に強く意識してる。親友同士だからっていう言い訳を、粉々に壊されそうになる。

 

「お前の家に連れてこられたのは、その報告をするためか?」

 

 誤魔化すように枕を投げ返すと、受け止めたしずくがそれをぎゅっと抱き締めた。なんか可愛いな。

 

「んー、それもあるというか。その先というかさ」

「その先?」

「俺さ、たぶんお前のこと好きなんだよな」

「…………ん?」

 

 ぴしり、と俺の体が固まる。

 

 あまりにもさらっと言われたせいで、心がついてこなかった。今、好きって言ったか?

 

 ……いや待て待て、あいつのことだからからかってるだけだろ。

 と思ってみたけど、別にただ事実を言っただけみたいに平常だ。真剣な顔つきでこっちを見ている。

 

「何固まってんの?」

「いやお前……」

「あ、一応ライクじゃなくてラブって意味だよ。わかるよな?」

 

 なんなんだ、こいつは本当に。

 

 これは、告白……になるんだろうか。なんかしれっと言われてるせいでどう返したらいいのかわからない。

 

 しずくのことが好きかどうかって言われたら……それはもうわかってる。期間限定の問題だから、その答えを押し込めてはいた。

 

 でも、こいつはまだ続けるつもりらしい。

 

 だから、俺も答えを出すことにした。

 

「俺は――」

「待て待て待て。そういうのじゃねーって!」

「ふぐっ」

 

 枕を顔に押し付けられた。……なんかこいつの匂いがする気がするな。

 

「別に答えを聞きたいわけじゃねーよ。発散しとかないと困るからさあっ」

「発散?」

「まず、正式に魔法少女になるじゃん?で、その後お前と夏祭り行くわけ」

「行くことは確定なのか……」

「んで、色々回って最後に二人で花火を見るわけ。そしたらちょっと告白したくなっちゃうからここで発散しとこうってこと」

「ごめん、意味がよくわからない」

 

 夏祭りに行く、まではまあいい。告白したくなってしまうから、今のうちに好きってことを打ち明けるってどういうことだよ。

 

「うるせーな、こっちの自己満足だからお前がわからなくてもいいの。俺の『好き』は独り言ってことだよ、わかったか?」

「めちゃくちゃだろ」

「好き」

「……っ」

「おもろ」

 

 にぃ、と赤らめた顔でしずくが笑う。

 

 真剣な瞳で、好きと言われるともうダメだ。生意気なやつだよ、本当に。

 

 しょうがない、少しだけ付き合ってやる。よくわからないし。

 

「……そもそも、夏祭りで告白したくないってのは何?」

「いやー、勢いでやるとそれ以上進みそうじゃん?」

「それ以上?」

 

 ふと、もしその状況になったことを思い浮かべようとする。と、あいつの指がしなやかに伸びて、俺の頬を優しくつついた。

 

「おいこら、考えようとするな。告白した後、感極まってなんかそのまま勢いでやらかしそうだろってことだよ」

「なんだよやらかすって」

「だぁー!めんどくせーな!だから、告白するじゃん?それでお前がOKを返事するわけ」

「俺がOKを出す前提か……」

「いや、お前はどう見ても俺のこと好きだし」

「……」

 

 まあ、好きだけど。

 

「そうなったら、なんかキスとかする流れになってもう後戻りできなくなってーみたいになるだろうがよ」

「なんでキレ気味なんだよ」

「うっさい」

 

 ふん、と鼻を鳴らした後、しずくがにじり寄ってきた。ゆっくりと手を伸ばして俺に抱きついた。胸元に顔を埋めてくる。

 

 ふわり、といい匂いがした。…このじゃないだろ。

 

「いや、何!?」

「別にいいだろっ」

「よくはないけど」

 

 主に俺の理性が。

 

 ってか、しずくが言うのが独り言なだけだからこっちから告白する分にはいいのか?

 

「ちなみに、お前の告白も受け付けてねーから」

 

 読まれてた。なんでわかるんだよ。

 

「ちなみになんで?」

「付き合いたくないからだろ。やっぱさ、恋愛ものってくっつくまでを楽しむところがあるだろ?」

 

 それは自覚してない気持ちとか含めてのことじゃないのか。

 

「あと、俺はこの微妙な関係のままの方がまだいいよ」

「それはまあ、わからなくもないけど」

「だろ?……好き」

「お前さあ」

「ははっ、すげえドキドキしてんじゃんっ」

 

 耳元を胸に当てられている。どくんどくん、と鳴る鼓動が聞かれてる。……この体勢それ聞きたかっただけだったりするか?

 

 なんかムカつくからやり返すか。

 

「俺も好きだけど」

「……~っ、いやだからそういうのは」

「なんだよ、独り言だぞ」

 

 不機嫌そうに、ただ顔を俺の胸に擦り付けてくるだけになってしまった。

 

 結局、目論見通りしずくが俺のヒロインになったし、俺の人生もめちゃくちゃにされてしまったってことだろうか。

 

 ……夏祭りなら、浴衣を着るのだろうか。それもちょっと見てみたいな。

 

 と、考えたときにふと思ったことを聞いてみた。

 

「そういや魔法少女って危険はないのか?」

「なんか俺が幸せならいいらしいよ」

「どういうこと?」

「幸せエネルギーみたいなのを溜めてるらしいから、お前といると幸せな俺はOKなんだってさ」

「お前、俺のこと好きすぎるだろ」

「うん、好きだよ」

 

 この場合、独り言は成り立たなくないか。




一旦これで終わりでよくないですか?
なので、一旦この状態で置いておくものとします。
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