こんにちは、ベルです。経験人数は、延べ0人です。
毎晩ひとり寂しく自分を慰める毎日を送っていましたが、つい最近、ベルの人生で最も嬉しい出来事が起きました。
魔防隊唯一の男性組員である和倉さんのおっぱいを触らせてもらえました。
おっぱいを。
触らせてもらえました。
最高でした。
人生で一番幸せな時間でした。
あれから毎日のように、和倉さんをオカズにしています。
ちょっと申し訳ない――という気持ちもありますが、それ以上に興奮します。彼にはとても言えないことですが、毎日のオナニーが捗っています。ありがたいです。
しかし、最近は七番組と訓練する機会がないため、和倉さんと会えていません。
オカズにしまくっているせいで感覚が狂っていますが、和倉さんと会って話したのは、訓練時の一回きりです。組長会議で同席しただけの日をカウントに含めても、まだ二回しか会っていないのです。
そろそろ、会いたいな。
えっちなこともしたいけど、普通に仲良くなりたいな。
なんて、求めすぎでしょうか。ワンチャンに期待しすぎでしょうか。
本当は分かってます。和倉さんと恋人になるなんて望みが、現実的じゃないことは。
男の子と手を繋いだこともない処女には、夢のまた夢です。普通の環境でも彼氏なんてできないベルが、これだけ競争率の高い魔都でたったひとりの男子から選ばれるなんて、ありえないです。天文学的確率です。
でも、それはそれとして――。
「はぁ……会いたいなあ……」
ため息が出ます。
前回会った時、連絡先交換しておけばよかったかなあ……。いや、流石に気持ち悪がられるかなあ……う~ん……。
そんなこんなで、悶々として悩んだりオナニーしたりする日々を送っていると、思わぬ報せが届きました。
「桃源郷での合同訓練、ですか?」
「ええ、対八雷神の連携のためにね。来週から行う予定だから、準備しておいてね」
と、恋ちゃんから指示されました。
桃源郷――魔防隊本部に設置された特殊空間。十番組組員の力によって生み出された場所であり、この空間内では外部よりも時間の流れが遅くなっています。
「合同訓練は、三番組、七番組、八番組の三組で行うわ」
「!」
七番組! 和倉さんのいる組! また和倉さんに会える!
しかも、また和倉さんと訓練できるかもしれない! そうすれば、またえっちなご奉仕をしてもらえる!
ぐへっ、ぐへへへっ……!
「恋ちゃん、ありがとうございます……!」
「いや、絶対に礼を言われることじゃないわよ。一応言っておくけど、これは訓練の命令なのよ? ベルの性欲を満たすご褒美タイムのおしらせじゃないのよ?」
「もちろん分かってますよ。訓練は真剣にやります。その上でしっかりと、和倉さんのご奉仕という福利厚生を受け取ります」
「男性組員に性的なご奉仕をさせることを福利厚生とかいうのやめなさいよ。魔防隊がヤバい組織だと思われるじゃない」
恋ちゃんは嘆息しながら、呆れた顔でベルを見ています。
「よほど嬉しかったのね、彼のご奉仕が」
「最高でした」
「そこまでいうなら、私も貸出を試してみようかしら」
「やめたほうがいいです。組織のトップが部下に性的な行為を要求するなんて、コンプライアンス的によくないですよ。恋ちゃんはもっと慎みを持つべきです」
「さっきまで福利厚生とか言ってたのにどの口が言ってるのよ!」
*
俺は和倉優希。七番組組員であり、奴隷だ。
俺には、気になっている女性がいる。三番組組長・月夜野ベルさんだ。
組長会議で初めて彼女の姿を見た時、俺は目を惹かれた。
夏の空のような、爽やかな水色の髪。オパールのような輝きを閉じ込めた琥珀色の瞳。
見ているだけで幸せな気持ちになった。
それから、一度だけ月夜野組長と会って話す機会があった。俺の貸出による訓練時だ。
俺は京香さんの力である『
しかし、その代償として、俺は主人に『ご奉仕』をしなければならない。そのほとんとが、性的な行為だ。ご奉仕は、主人が潜在的に望む内容が反映されるらしい。
月夜野組長の場合は、俺が服をたくしあげておっぱいを見せたり触らせたりすることだった。
恥ずかしかった。
でも、月夜野組長は嬉しそうだった。
俺も、彼女が俺の体に興奮してくれたことが嬉しかった。
その後は道中で楽しくお話しできたものの――ひとつ、重大なミスを犯した。
連絡先の交換を忘れた。
月夜野組長と話せるのが嬉しすぎて忘れていた。
後悔がすごい。あの時連絡先を交換しておけば、何気ないことを色々話せたのに。もっと早く、もっと簡単に仲良くなれたかもしれないのに。
俺はスマホを握り締め、固く誓う。
次に月夜野組長と会ったら、絶対連絡先交換しよう。
そして、ある日――。
「桃源郷と呼ばれる異空間で、三番組、七番組、八番組の三組による合同訓練を行う」
京香さんから、そう伝えられた。
「っ! 三番組!」
やった……! 月夜野組長と会える!
俺は内心でガッツポーズをした。一方、京香さんは微妙な顔をしている。
「まったく……そんなにベルと会えるのが嬉しいのか?」
「はい!」
「まあ、プライベートに口出しはしないが……訓練は真剣にやるんだぞ」
「もちろんです!」
**1
そして迎えた、合同訓練初日。
「あっ、月夜野組長!」
「和倉さん!」
桃源郷の門の前で、ベルは和倉さんと再会しました。
「お久しぶりです、月夜野組長」
「はいっ、お久しぶりですっ」
和倉さんは、太陽のような笑顔で挨拶してくれます。
うわ~かわいい~!
やっぱりかわいいな~!
久しぶりに和倉さんと会えて、テンションが上がります。実は昨夜も彼をオカズにしていたのでちょっとだけ罪悪感もあるのですが……それよりも、やっぱり会えて嬉しいです。
「あの、月夜野組長、ちょっとだけお時間いいですか?」
「はい、いいですよ」
「ちょっとこっちに来てください」
「あっ、はい」
和倉さんに呼ばれ、組員たちの集団を離れ、彼とベルのふたりで室内の端の方へ移動します。
……? なんだろう?
「月夜野組長、ライン交換してくれませんか?」
「!?!?!?」
ベルはびっくりして、一瞬固まりました。
その反応を見てどう思ったのか、和倉さんは不安そうな表情を浮かべました。
「ダメですか?」
「だ、ダメじゃないですっ。よろしくお願いしますっ」
や、やった~~~~~~!
やった~!!!!!!!!
嬉しい~~~~~~~~!
「よかった。前に連絡先交換し忘れたの、ちょっと後悔してたんですよ」
「そ、そうなんですね~」
なにそれなにそれ嬉しい!!!
嬉しいんですけど!!!!!!
ありがとう~~~~~~!!!
そして、ベルは和倉さんとラインを交換し――。
「桃源郷の中、電波が繋がってないらしいので。だから桃源郷へ入る前に交換できてよかったです」
「あっ、そういえばそうですね」
会話しながら、和倉さんからメッセージが送られてきました。
『よろしくお願いします、月夜野組長』
ベルが『こちらこそよろしくお願いします、和倉さん』と返すと、当然すぐ既読が付きました。
和倉さんは花の咲くような笑顔を浮かべます。
かわいい……。
可愛いなあ……。
そして、ベルと和倉さんは他の組員たちの下へと戻りました。
「では、行くぞ」
羽前組長が先頭で、門へと入ります。ベルたちもそれに続き――三番組、七番組、八番組の三組が桃源郷へ入りました。
まず目につくのは、広範囲に広がる花畑。澄んだ水を湛えた小さな池。そして、土地の中央には、多人数対応の巨大な寮が建っています。
和倉さんは、じっとベルのことを見ています。
……? なんだろう?
「どうかしました?」
「綺麗ですね」
「そうですね、穏やかで素敵なところです」
「……」
和倉さんは、一瞬なんともいえない微妙な顔をしました。
気のせいかな。
一方、後方から、うちの組員たちがヒソヒソ話をしているのが聞こえてきます。
「え、組長……普通に男子と喋ってる……」
「すご……」
「ていうかさっき連絡先も交換してなかった……? うちの組長、すごいやり手なのかな……?」
なんだか、意外な形でベルの評価が上がっているような……。
一方、ピリペンコ組長は無表情。羽前組長は、やや不機嫌そうに渋面を浮かべてベルたちを見ています。
うぅ……怖い……。和倉さんは羽前組長の奴隷なわけだし、彼が他の女と仲良くなるの、ぜったい嫌ですよね……。
「おほん! では、訓練を始めるぞ!」
そして、羽前組長に従い、ベルたちは連携の訓練を始めました。
**2
俺は十二人分の料理を作りながら、さっきのことを回想する。
門をくぐり、桃源郷に入った時――。
薄青色の花が一面に咲き誇る中、佇む月夜野組長の姿。
夏の空のような、爽やかな水色の髪。オパールのような輝きを閉じ込めた琥珀色の瞳。
だから、思わず口に出してしまった。
「綺麗ですね」
けど、それは彼女に正しい意味で伝わらず――。
「そうですね、穏やかで素敵なところです」
「……」
あの言葉は、月夜野組長に対して言ったものだった。
月夜野組長……本当に綺麗な人だなあ……。
**4
訓練を終えて、みんなで夕食を取ります。なんと、和倉さんの手作りです。
パン、ミートパイ、ミネストローネといった洋食と、ごはん、卵焼き、鳥の照り焼き、肉じゃがといった和食が並んでいます。組員それぞれの好みが反映された献立です。
「ん~! おいしいですっ!」
美味しいなあ……。和倉さん、料理も上手なんだ……。あぁ……結婚したい……。
到底叶わない和倉さんとの結婚生活を妄想しながら、ベルはミネストローネへ手を伸ばします。赤いスープはほんのり湯気が立つくらいに温かく、トマトの濃い味が舌を刺激します。美味しいです。
「喜んでもらえてよかったです!」
和倉さんは素敵な笑顔を浮かべます。
あぁ……かわいいなあ……好き……。
**5
組員たちがそれぞれ入浴しているのを確認してから、私は風呂場へと侵入し、身を潜めた。
ここは、男湯だ。故に、和倉優希を単独で仕留めるには都合がいい。
和倉優希が男湯へ入ってくる。私は物陰から出て、彼の背後を取った。
無防備な背中。白く、綺麗な肌。
安心しなさい、和倉優希。
あなたは殺さない。だって、紫黒姉のお気に入りだから。
彼の首へ手刀を見舞う。倒れる彼を抱き留め、カードの中へ収納する。このカードは、人、醜鬼、神を問わずに収納し、持ち運ぶことができる。いわば、万能ペットケースだ。
そして、私は和倉優希の姿へと
なかなかエロい体してるわね、コイツ……。紫黒姉が狙うのも分かる気がするわ。
「さて、と」
潜入と暗殺は、私の得意分野。
一人目のターゲットは、月夜野ベルにしよう。あいつチョロそうだし、色仕掛けすればコロっと引っ掛かるでしょ。
今日明日で組長三人は殺してみせる。八雷神が一柱である、この
**6
夜――廊下を歩いていると、和倉さんが向こうから歩いてきました。
「あっ、月夜野組長、実は相談があるんです」
と、呼び止められました。
相談……? 羽前組長じゃなくてベルに……?
「どんな内容ですか?」
すると、和倉さんは頬を赤らめ、伏し目がちに――。
「こ……ここだとあれなので、夜改めてお時間貰えますか?」
「えっ」
和倉さんがベルの耳元に顔を近づけます。そして、耳奥へと息を吹き込むように、唇を密着させ――。
「皆が寝てから、俺の部屋に来てください。皆には内緒で、ふたりきりで」
「――。……分かりました」
えっ、えっ、えっ。
マジ?
マジ?????????????
「それじゃ、よろしくお願いしますね」
そういって和倉さんは去っていった。
え、これマジ?
ベル、誘われてる? これ、そういうこと?
いや、流石に違うかな。普通に何か相談されるだけだよね。
分かってます。分かってるんですけど。夜に男の子と、ふたりきりって……。
それだけでも、もうドキドキするんですけど。
……ただの相談なのは分かってます。でも。
一応、念入りに歯を磨いてから行こう。
一応、財布に入れてるコンドームも持っていこう。
ああ……男の子と、夜遅くにふたりきり……。夢が膨らみます。期待で胸がいっぱいになります。
考えるだけなら自由なので、妄想を膨らませます。和倉さんが、ベルにしなだれかかってきて、そのままふたりで布団へ重なって――。
むひょ~!!!!!!!!!!!!