「月夜野組長、俺の裸、見たいですか?」
「えっ」
桃源郷の寮。銀色の月光が差し込む和室。敷布団が一枚敷かれただけの部屋で、和倉さんが服を脱ぎはじめます。
ベルはそれを、夢中になって見つめます。
黒く煽情的なネグリジェ。生地が薄く、肌色がいやらしく透けています。
エロっっっっっ!!!!!!
「月夜野組長、俺、貴女と繋がりたいです」
そして、彼は敷布団へ横になり、脚をM字に開脚させました。黒い下着に覆われた股間を、ベルは凝視してしまいます。
エっっっっっロ!!!!!!
「月夜野組長、貴女の性欲は俺が満たしてあげます」
「……いいんですか?」
「はい、どうぞ」
これ、そういうこと、ですよね。
ベルは欲望の赴くまま、和倉さんへと襲い掛かるようにダイブします。
そして――。
*
目が覚めると、見慣れた自室の天井でした。
夢か~~~~~~~~~~!!!
ここは三番組寮です。桃源郷の寮ではありません。もちろん和倉さんもいません。いるのはベルだけです。
まあ、そうですよね。
和倉さんがあんなこと言うはずありません。
でも、それはそうと。
すっっっごいエロい夢だった……。
多分、こんな夢を見たのは、あの出来事のせいです。
ベルは先日、桃源郷内で八雷神二体を撃破し、貸出の代償として『ご奉仕』を受けたのですが――その際、和倉さんの全裸を見てしまいました。
裸を見れちゃいました。
チ○ポを、見れちゃいました。
すごかったです。
エロかったです。
初めて見た男子のチ○ポは、しっかりとベルの網膜と脳裏に焼き付いています。
本当に一生もののオカズです。これからベルの人生において、何度お世話になるか、想像もつきません。
その時――ベルのスマホから通知音が鳴りました。確認してみると、恋ちゃんからのメッセージです。
『本日、緊急組長会議を行うわ。詳細は以下の文書を確認しておいて』
「……えっ、今日?」
**1
俺は和倉優希。七番組組員であり、奴隷だ。
俺は先日、月夜野組長にチ○ポを見られた。
人生で初めて女性に、チ○ポを見られてしまった。
今思い返してみても、恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。
月夜野組長、どう思ってるんだろうなあ……。次会う時恥ずかしいなあ……。
と考えながら、日課の訓練を始めようとすると――。
「優希、たった今緊急組長会議の開催が決定された。内容は桃源郷のセキュリティ強化と改修について。お前も同席するようにとの命令だ」
と、京香さんから告げられた。
「緊急組長会議、ですか?」
「ああ、今日の訓練は中止して、今から十番組本拠地へ向かうぞ」
「分かりました。準備します」
ずいぶん急だな……。緊急の組長会議なんて、俺が魔都に来てから初めてだ。
ん、組長会議……?
……。
ということは、月夜野組長と会うことになる。
瞬間、彼女にチ○ポを見られた時の光景が蘇る。ご奉仕の強制力に抗えず、自分でパンツをずり下げて見せつけた、あの瞬間を。
う、うわぁああああああああああああッ!
ど、どんな顔して会えばいいんだ!!!!!
**2
ベルは組長会議が行われる会議場へ向かっていると――。
「「あっ」」
廊下でバッタリと和倉さんに出くわしました。
「あ、月夜野組長、おはようございます……」
「お、おはようございます」
和倉さんの声はいつもより小さく、顔も薄っすらと紅潮しています。
「……き、緊急組長会議なんて珍しいですよね。俺が魔防隊に入ってからは初めてです」
「そ、そうですね。普段はあんまりないんですけどね」
つい、和倉さんの身体を見てしまいます。彼の服装は、普段の隊服です。
この服の下、全部見れたんですよね……。
和倉さんの、全裸を……。おっぱいも、チ○ポも……。
すると、彼は自分の身を抱きしめるように、バッと腕で身体を覆いました。
「月夜野組長、今俺の裸思い出してませんか?」
「……すみません」
「月夜野組長のえっち!」
「ごめんなさいっ! 本当にごめんなさいっ!」
ベルは頭を下げて平謝りします。
「ま、まあ不可抗力なのは分かってますよ。安心してください」
ベルは顔を上げます。和倉さんは顔を赤くしながらも、微笑んでくれました。
「ベルのこと、許してくれるんですか……?」
「もちろんですよ。ご奉仕は強制なので、仕方ないことです」
ベルはホッとします。
嫌われてなくてよかったあ……。
でも、すごいなあ。全裸を見られたのに、ここまで穏やかに対応してくれるなんて。
「でも、ご奉仕の内容があれだったってことは、月夜野組長が見たいって望んでたんですよね?」
「うっ……! すみません……」
和倉さんのジト目がベルに突き刺さります。
痛い所を突かれました。
その通りです。ご奉仕は主人の潜在的欲求が反映されるため、間違いなくベルの望んだ内容なのです。
「ど、どうでしたか?」
「えっ?」
「その、どうせ見られたのなら、喜んでもらえた方がまだ救われるんですが……」
「も、もちろん喜んでます! 最高でした!」
「な、ならよかったです……」
和倉さんは顔を赤くし、恥ずかしそうに俯いてしまいます。
ベル、だいぶヤバいこと言ってますよね。裸見れて嬉しかったって本人に伝えるのドセクハラですよね。ドドドドドセクハラですよね。そろそろ捕まる気がしてきました。
それはともかく、ベルたちは会議場へと入りました。
*
「――ということで、組長会議は終了するわ」
恋ちゃんがそう宣言し、組長会議が終わりました。
今回の会議で決まった内容は以下の通りです。
一つ目、能力者による桃源郷のセキュリティ強化。
二つ目、桃源郷入場時および退場時、ならびに使用時、
三つ目、桃源郷使用時は、瞬間移動能力を持つ出雲組長が定期的に桃源郷へ入り安全確認を実施。
四つ目、次期総組長選挙のため、桃源郷のキャパシティ拡充。
「防衛大臣たちには、この後私から報告しておくわ。じゃあ、解散」
恋ちゃんがそういうと、組長たちは会議場から退室していき、ベルと恋ちゃんだけが残りました。
「総組長選挙……他の組長たちも立候補してくるんでしょうか」
「少なくとも京香はしてくるでしょうね。もっとも、誰が相手でも私が勝つけれど」
「…………」
ベルと恋ちゃんも立ち上がり、会議場を出ます。廊下を歩いていると、談話室から声が聞こえてきました。夜雲さんと出雲組長の声です。
「ちょうどいいわ。選挙に向けて、組長たちと親睦を深めておくことにしましょう」
「この後防衛大臣の今坊さんたちと会議があるんじゃ……」
「会議までは少し時間があるから大丈夫よ」
恋ちゃんとベルは談話室へと入ります。夜雲さんと出雲組長はトランプで遊んでいました。たぶん、隣の遊戯室から持ってきた物だと思います。
「お、珍しいね。総組長とベルちゃんも来るなんて。遊んでく?」
「ええ、お邪魔するわ」
「じゃあ、ベルもご一緒させていただきます」
そして、四人で大富豪をして遊びました。ちなみに恋ちゃんの全勝でした。
そして、ちょうど区切りのいいところで、羽前組長と和倉さんも談話室へと入ってきました。
「珍しい組合せだな」
羽前組長がベルたちを見てそういいました。ベルもそう思います。
すると、夜雲さんが羽前組長たちを手招きしながら――。
「ね、今思いついたんだけどさ。王様ゲームやってみない?」
「王様ゲーム? 王様がなんでも命令できるという、あの余興か?」
「そうそう。トランプをくじ代わりにしてさ」
夜雲さんはトランプを六枚だけ手に取り、残りを箱にしまいます。
「Kが王様。残りは1から5。どう?」
夜雲さんがそう尋ねると、羽前組長は和倉さんの方を見ました。
「俺、やってみたいです」
「優希がそういうなら、私も参加しよう」
「よし決まり~! ほら、おいでおいで~!」
そして、ベル、恋ちゃん、夜雲さん、出雲組長、羽前組長、和倉さんの六人でテーブルを囲みます。
王様ゲーム……実は初めてやります。ちょっと楽しみです。
すると、恋ちゃんが――。
「一応言っておくけど、男性もいるのだから、度の過ぎた命令はダメよ」
「なんでベルの方を見ながら言うんですか!?」
和倉さんの前でそういうこと言うのやめてくださいよ! ベルが変態だと思われるじゃないですか!
「じゃあいくよ? はい、みんな好きなカード引いて~」
夜雲さんがシャッフルを行い、各々が好きなカードを引き、最後に残った一枚を夜雲さん自身が取りました。
「王様だ~れだ?」
「お、やった~! 夜雲さんだ~!」
一番不安な人に王様の権利が行ってしまいました。ちなみにベルの数字は3です。
「じゃあ3番の人は王様に膝枕して~」
「えっ、はい……」
ベルがしぶしぶ夜雲さんの隣に座ると、彼女はベルの太ももに頭を乗せてきました。
「やわらか~い!」
ベルの膝枕なんて嬉しいんでしょうか……。
すると、夜雲さんは恋ちゃんの方を見ながら――。
「ごめんね恋さん、ベルたん取っちゃって」
「別にいいけど……そう言われると取り返したくなるわね」
恋ちゃんは腕を組み、若干不機嫌そうにベルたちを見ています。な、なんで……。
ともかく、二回戦です。
「王様だ~れだ?」
「私ね」
今回の王様は恋ちゃんでした。ちなみにベルは5です。
「じゃあ5番は私にハグしなさい」
「え~~~~~~」
「なによベル、不満なの?」
「なんでベルばっかり当てられるんですかあ……」
ベルは不満の声を漏らしながら立ち上がり、恋ちゃんの隣へ移動します。
そして、恋ちゃんにハグをします。
う、うぅ……友達同士でハグするの、ちょっと恥ずかしいです……。
「あ~ん、ほんとにベルたん取られた~」
「ふふん」
「いいないいないいな~!」
なぜか恋ちゃんはドヤ顔でした。
続いて、三回戦目。
「王様だ~れだ?」
「私だね」
今回の王様は出雲組長です。彼女は和倉さんの方を見て、にっこりと微笑み――。
「じゃあ優希くん、私と恋人になってほしいな」
「!?!?!?!?!?」
え、え、え!?!?!?
そんなのアリなんですか!?!?!?
というか、出雲組長も、和倉さんのこと……!
一方、和倉さんは困ったように苦笑しています。すると、恋ちゃんは――。
「天花、内容の是非はともかく、名指しはルール違反よ。番号で指名しなさい」
「あ、そっか。じゃあ……1番の人、私と恋人になってほしいな。どうだい?」
ベルは2番です。
ベルは和倉さんを見ます。ベルにできるのは、彼が1番でないことを祈ることだけです。
すると――羽前組長が立ち上がり、出雲組長の肩に手を置きました。
「残念だったな、1番は私だ」
「別れよう、京ちん」
「一瞬でフラれたんだが!?!?!?!?」
「優希くんじゃないなら意味ないしね」
ドライすぎる出雲組長。一方、夜雲さんは――。
「え~天さんもったいな~い。夜雲さんだったら絶対別れないのに~」
ほんと凄いなこの人……。もう誰でもいけるんだ……。
というか、さらっとスルーされてたけど、そういう命令もいいんですか……?
そして、四回戦目。
「王様だ~れだ?」
「あ、ベルです!」
遂にベルにKが来ました。
みんなが、じっとベルの方を見て命令を待ちます。
20%の確率で、和倉さんに命令ができます。確率は低いけど、ソシャゲのガチャでSSRを当てる確率より20倍くらいは高いです。
せっかくだし、思い切ってやってみよう。
「3番の人は、王様にキスしてください」
おねがいおねがいおねがい!!!
和倉さんが3番であってください!!!
「3番は私ね」
しかし、そんなベルの願いも空しく、3番は恋ちゃんでした。
「…………」
「ガッカリするのやめなさいよ」
「……頬でいいですよ」
「言われなくてもそのつもりだけど」
恋ちゃんがベルに顔を近づけます。――頬に、柔らかな感触。
一瞬でしたが、恋ちゃんの唇の温かさを感じました。
すぐに離れた恋ちゃんの顔は、呆れと照れが混じっています。
「なんでこんな命令にしたのよ」
「すみません……」
欲が出ました……。やっぱり変な命令するんじゃなかったです……。
その後、恋ちゃんが会議で離席するまで数回王様ゲームは続いたのですが――ゲーム終盤で、ベルは悲しい事実に気付いてしまいました。
一瞬気のせいかと思ったのですが、ゲームを振り返ってみて、さらに合同訓練のことも思い返してみると、確実で覆しようのない
それは――。