魔都精兵の性奴隷【貞操観念逆転】   作:耳野笑

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第6話 ふたりきりの王様ゲーム

 王様ゲームが終わり、解散する流れになりました。

 

 ベルは談話室に隣接する遊戯室へ移動し、ひとりでぐったりとイスに腰掛けています。

 

 ビリヤード台。ダーツ。チェスボード。窓からは昼過ぎの穏やかな日差しが射し込み、木製の遊技台たちを優しく照らしています。

 

 ……。

 

 ……。

 

 ……。

 

 ベルは落ち込んでいます。暗澹とした気分で、悲しみに沈んでいます。

 

 王様ゲームの最中、ベルはあることに気付いてしまったのです。

 

 とても、とても、とても悲しい事実です。

 

 ――月夜野組長。

 

 ――京香さん。

 

 ――天花さん。

 

 ――夜雲さん。

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 ベルだけ、和倉さんから名字で呼ばれてる。

 

 脈ナシすぎる!!!!!

 

 思いっきり距離取られてる!!!

 

 うわぁああああああああああああああんっ!

 

 悲しいですぅううううううううううううっ!

 

 気付かなきゃよかった、こんな悲しい事実。

 

 あぁ。

 

 泣きそう。

 

 泣きそうです。

 

 まあ、ベル、暗いしキモいしコミュ障ですし、仕方ないですよね……。男の子から好かれるはずもないですよね……。然るべき評価ですよね……。

 

 でも、つらい。

 

 あぁ……。

 

 ベル……こんなに和倉さんのこと好きだったんだ……。

 

 夢のまた夢とか、天文学的確率とか、そんな風に思っていたとしても、やっぱり期待はしていました。

 

 だから、脈ナシだと分かってしまった今、とても悲しいです。

 

 つらい気持ちだけが、ベルの心を満たしています。

 

 あぁ。

 

 あぁ……。

 

 あぁあああ……。

 

 なんというか、世界とか滅ばないかな。

 

 はぁ……。

 

 **1

 

 俺は廊下を歩きながら、先ほどの王様ゲームのことを回想する。

 

 いいなぁあああああああああああっ!

 

 俺も月夜野組長に膝枕されたい!!!

 

 俺も月夜野組長にハグされたい!!!

 

 俺も月夜野組長にキスしたい!!!!!

 

 羨ましい。俺もしたい。俺もされたい。

 

 でも、残念ながら俺は一回も王様になれなかった。まあ、王様になれたとしても月夜野組長の番号を当てられるかどうかも運だけど。

 

 はぁ……。いいなぁ……。

 

 と思いながら、談話室へと戻ってきた。誰もいない。俺はなんとなく、隣の遊戯室へ入ってみると――。

 

「月夜野組長!?」

 

「あ、和倉さん」

 

 穏やかな日差しに照らされながら、イスに座って窓の外を見る月夜野組長の姿がありました。

 

 月夜野組長とふたりきり!!!!!

 

 これはチャンスだ!!!!!!!!

 

 **2

 

 急に和倉さんが入ってきてビックリしました。

 

「あの、月夜野組長」

 

 和倉さんは遊戯室の棚からトランプを取り出します。先ほどの王様ゲームで使っていたものです。

 

 すると、彼はKと1の二枚だけを取り出し――。

 

「俺、さっきのゲームで王様になれなかったので……ふたりでやりませんか?」

 

「えっ、はい」

 

 ……なんだろう、この展開。

 

 数十分前のベルなら大喜びしたでしょう。ワクワクドキドキウハウハの舞だったでしょう。

 

 しかし、脈ナシだと分かった今、ベルの心は冷めています。全然テンションは上がりません。

 

 ベルと和倉さんは、チェスボードを挟み、向かい合わせに座ります。彼が二枚だけのカードをシャッフルし、裏向きに伏せ、ベルが先に選ぶ形で取ります。

 

「王様だ~れだ?」

 

「だ、だ~れだ」

 

 ベルは1でした。したがって、当然和倉さんはKです。

 

「あ、やっと王様になれました」

 

 和倉さんは嬉しそうに微笑みます。

 

「じゃあ、1番の人に命令です」

 

「はい」

 

 あ。これ、指定する相手が確定なので、好きなこと命令できちゃいますね。和倉さんはどんな命令をするんでしょうか。

 

「俺のこと、優希って呼んでください」

 

「えっ」

 

「俺も月夜野組長のこと、ベルさんって呼びますから」

 

「えっ!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 ベルは驚愕し、フリーズします。

 

 ……。

 

 ……。

 

 思考が追い付きません。ダメです。ベルの頭は完全に停止しました。

 

 すると、和倉さんは少しだけ上目遣いになって――。

 

「だめですか?」

 

「だめじゃないです!!!!! それでお願いしますっ!」

 

 ベルは勢いよくテーブルに体を乗り出してお願いしました。

 

「やった、これからよろしくお願いしますね、ベルさん」

 

「~~~~~~~っ!!!!!」

 

 ベルさん。

 

 ベルさん。

 

 ベルさん。

 

 えへ、えへへ……。

 

 やったあっ……!!!!!

 

「ベルさんも、俺のこと呼んでください」

 

「あっ、はっ、はいっ。ゆ……優希さんっ」

 

「もう一回お願いします」

 

「ゆ、優希さん」

 

「もう一度」

 

「優希さんっ」

 

「もう一回だけ」

 

「何回言わせるんですかあ! 恥ずかしいじゃないですか!」

 

 彼の名前を呼んでいる内にだんだん恥ずかしさが増してきて、遂に限界を迎えました。

 

 今のベル、絶対顔が赤くなってます。

 

「ふふっ、ごめんなさい。ベルさんに名前で呼んでもらえるのが嬉しくて」

 

 優希さんはそういって笑いました。

 

 うわぁ……可愛い……ああ、やばい……好き……。

 

 優希さん、好き……。

 

「じゃあ、続きやりましょうか」

 

「えっ、あっはい」

 

 王様ゲーム、まだやるんだ!

 

 優希さんが二枚だけのカードをシャッフルして並べます。ベルが先に選ぶのですが――。

 

 あ、やばい、ちょっと手が震えてきた。

 

 嬉しいんですけど、脈ナシじゃないと思うと急に緊張してきました。

 

「王様だ~れだ?」

 

 またしてもベルは1でした。優希さんはKのカードを見せながら――。

 

「また俺が王様ですね。じゃあ、1番の人が王様にハグしてください」

 

「!?!?!?!?!?!?」

 

 え、え、ええっ!?!?!?!?!?

 

 ハグ!?!?!?!?!?

 

 え、ハグ!?!?!?!?!?!?!?

 

「い、いいんですか……?」

 

「はい、お願いします」

 

 優希さんは立ち上がり、両腕を広げてベルを待ちます。

 

 ベルも立ち上がり、彼の前に立つのですが――。

 

 え、ベルからハグするの?????

 

 め、めちゃくちゃ緊張しますぅ……!

 

 ――でも、覚悟を決めます。

 

「失礼しますっ」

 

 ベルは一歩前に踏み出し、優希さんの身体をぎゅっと抱きしめます。

 

 男性らしい硬さを帯びた骨格を感じます。温かくて、男の子のいい匂いがして、胸が高鳴ります。

 

 うわぁ……すごぉ……。

 

 ご奉仕じゃないのに優希さんとハグしてる……。こんなこと許されるんだ……。夢みたい……。

 

 すると――優希さんがハグをしたまま、ベルの耳元で話し始めます。

 

「実はさっき、総組長のことが羨ましかったんです」

 

「えっ……?」

 

「ベルさんにハグされるの、いいなあって……」

 

 え、なにそれ……!?!?!?

 

 なにそれなにそれなにそれ!?

 

 もしかして脈アリ!? 脈アリなんですか!? ベル、可能性感じていいんですか!?

 

「俺、ベルさんとハグできて嬉しいです」

 

「ベルもですっ! 優希さんとハグできて、ベルの方がずっとずっと嬉しいですっ!」

 

 優希さんが、より一層力を込めて抱きしめてくれます。ベルも、より強く彼を抱擁します。

 

 身体がくっついて、温かいです。

 

 うわあ……しあわせ……!

 

 えへへ……! 幸せですぅ……!

 

 すると――。

 

「ベルさん……」

 

 優希さんが一歩離れ、ベルの肩に手を置き、まっすぐ目を見つめてきます。

 

 窓から射し込む柔らかな陽光が、彼を照らします。

 

 ――光り輝く、綺麗な瞳。

 

 ふと、優希さんの唇を見てしまいます。発色が良く赤い唇に、視線が吸い寄せられます。

 

「優希さん……」

 

 引力に引かれるように、ベルは優希さんへ顔を近づけます。

 

 その瞬間、遊戯室のドアがバン!!!と開かれました。

 

「あ~~~~~~!!! 奴隷ちゃんとベルたんが逢い引きしてる~~~!」

 

 ベルと優希さんはびっくりしながら慌てて離れ、ドアの方を見ます。

 

 夜雲さんが、頬を膨らませて抗議の眼差しを向けてきています。

 その後ろには、微妙な表情の羽前組長。そして――鬼のような怒気を放つ出雲組長。

 

「優希くん??????」

 

「天花さん、こ、怖いですよ……」

 

「優希くん、普段は『月夜野組長』って呼んでるのに、二人きりの時は『ベルさん』って呼んでるんだね?」

 

「あっ、いえこれはっ――」

 

 さらに、出雲組長はベルの方を見ます。その眼差しは、絶対零度に凍て付いています。

 

「月夜野組長も、ふたりきりの時は『優希くん』って呼んでるんだね? ふたりは隠れて付き合ってるのかな?」

 

「ひっ、ひええええええええっ!」

*1
優希視点

*2
ベル視点

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