ぽんこつ美少女Vtuberと最強無職 ~元無敗王者を人気配信者が放っておいてくれない~ 作:世嗣
今までゆるっと流してたVSがどういうゲームなのかって話をする回です。
でもまあまあややこしいと思います。
そのうち戦闘シーンとかでもうちょいわかりやすく見えるようになると思うので、さらーっと流して読んでも良いかもしれません。
基本的にはVR空間でやる格ゲーみたいなもんみたいな理解をしていただければOKです。
だだっ広い草原で授業を始める。
先生は俺。生徒はなーちゃんの二人だけの青空教室。
「まあそういうわけで今日はヴァーチャル・スクエアの基礎的なことを教えていきたいと思います」
「お願いします先生~」
ヴァーチャル・スクエア。
5年前、ゲーム制作会社『LAIVES』から発売したゲームだ。通称はVS。
フルダイブVR技術の自体は2050年程度にはある程度確立され、2070年代には一般化しいくつかのゲームが発売した。
だがそのどれもヒットしたと言えるほどの売り上げはなく、なんだかんだ従来の据え置きゲームに勝つほどではなかった。
もちろんシナリオの良さで売れたRPG『アクナイト・エンパイア』や、大人気タイトル『ミスティックロア』のVRリメイク、まるでアニメのキャラのようにモンスターが飛び出すカードゲームが楽しめるいくつかの
あったのだが……『完全オリジナルのVRゲーム』として売れたゲームは中々生まれなかった。
だからそれ故に、VSが発売されたとき、多くのゲーマーは驚きの声を挙げたという。
「さて問題です。なんでVSは人気になったと思う?」
「はいはい!」
「はい、ではなーちゃん」
体操座りをしているなーちゃんが手を挙げたので、教師がそうするように彼女を指名した。
「自由度が高いからだよね。アバターを好きにいじれて、たくさんのスキルと必殺技が使える。それまでの格ゲーとかって基本的に運営が用意した性能のキャラを使うだけだったんだよね?」
「もちろんそれも理由の一つだ。でも、自由度の高さなんてアルマギアと提携してるゲームはどれでも似たり寄ったりだろ」
「確かに……」
例えば実際に自分が作ったロボを作りあげられる『断崖のゼスティリア』とかで設定できる武装の数はVSの4つをはるかに上回る。それどころかブースターの出力とか機体の重量まで細かく調整できる。
そうでなくてもシステムに『アルマギア』の補助を使うVRゲームはヴァーチャル・スクエアと同じくアバターを好きに設定できるものが基本だ。VSではできない性別変更や、手のひらサイズから10メートル級の巨人になるシステムを採用しているものまである。
だから、ヴァーチャル・スクエアが覇権を取ったのは『自由度』だけではない。
「と言われても、私あんまりVRゲームはしてきてないんだよねぇ」
「リスナーさんとかと遊ばなかったの?」
「私の配信ってどっちかっていうとレトロゲー寄りなんだよ。PS4とかswitchの名作とかを触れることが多くて……」
むむ、となーちゃんが腕を組む。
うーむ、軽くやってるならわかるかと思ったけど比較対象がそもそもないならわからないか。
俺は収納状態だった武器の棒を取り出すと、くるりと手の中で回す。
そしてそのまま不思議そうに俺の方を見ていたなーちゃんに向けて全力で振った。
「ちょ、ちょっとぉ!?」
なーちゃんは俺の仕草を見ると慌てて身をかがめて回避する。直前まで顔があったあたりを武器が通過していくと、そのままの勢いでなーちゃんが俺に突っかかってくる。
「急になにするの!? いま私が反射的に避けなかったら当たってたよね!?」
「それだよ」
「へ?」
「
それまでのVRゲームはどうしても「アバターを操作している」という感覚が抜けきれなかった。
わかりやすく例えるならばずっと着ぐるみを着て動いているような感覚だろうか。
本当はもっとやりたい動き、できる動きがあるはずなのにどうにも自分の身体だと思えず、動きが鈍くなる。長時間操作していると違和感がでてしまう。
だからこそ、RPGのような反射的な行動を求められないゲーム以外は人気にならなかったのだ。
しかし、VSは「アバター=自分の身体」というまで違和感を取り除いたのだ。
それがいかな技術によって行われているのか俺は詳しくは知らないが、当時としては革新的、いや
発売した直後はゲーマー以外にはそれが認知されていなかったが、年々の人気拡大とアップデートと共に一般層にも広がり、今の「小学生から大人まで一度は名前を聞いたことのあるゲーム」という立ち位置がある。
「しかも、すごいのはそこまで没入させてるのに『イメージした通りに身体が動かせる』というフルダイブVRの利点は失わせていないことだ」
「イメージ通りに、動かす?」
俺はシステムウインドウを開くと初期武器を使い慣れた棒から、片手銃に変更する。
すると先ほどまで手の中にあった棒が消えて、代わりに手の中にシンプルなハンドガンが出現する。
そして30メートルほど先の空中には丸い的が浮かび上がった。
「例えば、銃。なーちゃんは撃ったことあるか?」
「ないよ。あ、縁日の射的を撃ったと換算するならあるいは……?」
「なーちゃん全弾外して屋台のおっちゃんの額に命中させてたろ」
「な、なんでそんなことまだ覚えてるの……」
「そうそう忘れないって。ちなみに俺も現実で撃ったことはない。でも……」
俺は銃を片手で構えると、そのまま的に向かって引き金を引いた。
電脳の火薬が破裂する音と共に銃を撃った反動が手に伝わる。俺はその反動をうまく殺しつつ、続けて引き金を引いた。その回数は6回。
「ぜ、全弾ど真ん中だ……」
「そう、こんなふうにこの世界でなら
「なんかさらっとやってるけど銃って割と扱い難しいってスーちゃんが言ってた気がするんだけど……」
「癖があるだけだよ」
それに、流石にちょっと鈍ってるな。2発目がちょっとズレてしまった。昔だったら全弾全く同じ箇所に命中させられたんだがな。
俺は銃を消すと、なーちゃんに向き直る。
「この世界はVRゲームだ。電脳空間にある『意識の世界』。だからこそ、どうやって動かすかって意識しつつ動かすのは大事なんだ。なにせ、肉体っていう枷がほとんどないからね」
「はい先生! イメージが大事ってことは、現実で銃を撃ったことがある人は、未経験者に比べると強かったりするの?」
「いい質問だなぁ。結構そういうところはあるね。でも常にそうってわけじゃない」
確かに現実である程度運動神経がいい人は有利だ。自分の身体をどう動かすかという判断材料がある。
では、同じ武器を選択した人が戦った場合、経験者が常に勝つのか?
答えは、否。勝敗は本人の現実の実力では決まらない。
「なにせ、VSにはスキルがあるからね」
そして俺はまたウインドウを操作すると、いつものスキル構成からいくつかスキルを変更する。
そしてそのまま引き金を引いた。
先ほどと同じように30メートル先の的に飛んだ銃弾は的に命中した瞬間――――まるで爆弾のように大爆発を起こした。
「おお~爆発した〜」
「こんなふうに銃弾に属性を付与したり、そもそも銃の種類を変えてみたり、なんらかの移動スキルと組み合わせてみたり、純粋な『技術の比べ合い』以外の部分で戦うことができるんだよ」
俺はまたウインドウを操作すると、軽く虚空で手を振った。すると、俺の動作を読み込んで俺となーちゃんを取り囲むように、無数の文字があふれ出した。
全て、VSの中でプレイヤーがセットすることのできるスキルである。
「うわ、すごい数」
「さっき公式サイトを見て来たけど、スキルの数でも500個近いらしいね」
「どひゃ~目を回しそう~」
「その中から3つを選んで、その上で自分で考えられる必殺技まであるっていうんだから物凄い自由度だよなぁ」
VSでユーザーが設定できる項目は4つ。
まずアバター。
容姿はもちろん、ある程度は身長体重も自由にいじることができる。
だが、現実の自分からあまりに離れたアバターにすると操作しづらくなるため、あまり大きく変える人は多くない。
身長とかでリーチの差とかの有利不利は存在するが、小柄だったらその分敏捷性に補正がかかったりするので、割とうまくバランスが取れているのだ。
次に、『武器』。戦うときにどのような武器を持って行くかである。
武器の種類はざっくりいうと『物理』と『魔法』の二種類である。
物理系の場合は直接相手に命中させてダメージを与える『剣』や『銃』などが該当する。イメージしやすい分使う人も多い。
魔法系はシステムアシストを使ってまるで魔法使いのように戦うことができる。ただその分、魔法の使用には自分のHPを消費する必要があるため、やや脆くなるという弱点もある。
そして、先ほどなーちゃんに見せた『スキル』。
この前シアラさんと戦っていた時に俺が使った「瞬間移動」や、シアラさんの使った「回避補正」や「武器旋回」などがこれに当たる。
スキルは最大で3つ選ぶことができ、それぞれに『武器スキル』『パッシブスキル』『アクションスキル』の種類が割り振られている。
スキルごとに細かいルールがあるのだが、まあこれは基礎を教え終わった後に教えるでいいだろう。
最後に、VS最大の自由度を持ち、最大の売りと言ってもいい『必殺技』である。
これは既に内容を運営が決めたものを選ぶしかないスキルと違い、プレイヤーが
自分で考えて、というのは比喩や例えではなく本当に自由に考えて設定することができるのだ。
物語の剣豪のような目にも止まらぬ速さの抜刀斬撃、アニメの魔法少女のような一撃必殺の最強ビーム、毒使いが毒の効果を100倍にしてみたり、背中から翼が生えてきたり、相手の身体の中に銃弾を直接送り込んだり、とにかくシステムが許す限りは何でもありなのだ。
「たとえスキル構成が同じでも必殺技が違えば戦い方は変わる。特に必殺技はプレイヤーの想像力次第で、自由に設定ができるから、『必勝法』みたいなのを作るのは難しいんだ」
「なるほど……玉ねぎとお肉とじゃがいもを煮込んだものに醤油と砂糖を入れれば肉じゃがに、カレールーを入れればカレーになるみたいに、具材は同じでも最後の一手間で全く違う料理になるのと同じなわけだ」
「そうだね……そうかな? そうかも……」
なんかピンとこないけど多分そういうことなんだと思う。
「で、ここらへんでなーちゃんの動画を見て見よう」
「えっ?」
ぽちっと俺が待機させておいたなーちゃんの切り抜き動画を再生する。
するとこの前見た『ななーのネクサスデュエル雑魚ぽんシーン傑作選』が再生される。
『じゃあ今日はスーちゃんと一緒にVSをやって行きたいと思いまーす』
『やっほー! みんなよろしくねー! ボク、ばりばりがんばるよ~!』
『じゃあ私はまずはこの『魔法』を武器に使ってみるとします。ええと、確か操作はこんな感じで――――あっ』
『えっ!? ちょっと目を離したすきにななーのが光に包まれて吹き飛んでるー!?』
『よし、次は追尾弾を撃ってみるからね……ふふ、一度ターゲッティングしたら自動で敵に当たるんならミスりようがないのは明らか……せやっ!』
『にゅやーー!』
『あ』
『味方を撃つなんて、この、ななーのの裏切り者……』
『違う違う違う! スーちゃん違うのぉ!』
「うん、雑魚だね」
「んにゃあああああ!」
なーちゃんが奇声をあげつつ俺の肩をぽかぽかと殴ってくるのでそれをなだめる。
「ヒロくんは私をいじめて楽しい!?」
「いやこれ本当に教材として参考になるからちょうどいいんだよ」
「何? 私のような雑魚を見ることで『これより下手な人はいないからあとは上手くなるだけだね』って言いたいの?」
「卑屈~」
そんなに卑屈にならなくてもいいのに。誰でも始めたては下手なものだ。
「俺が話したいのは、なーちゃんが選んだ武器の話だよ」
「武器って、魔法?」
「そう。この動画ではなーちゃんは魔法をメイン武器にしたんだろ?」
「うん。だね。私、魔法巫女だしそれを使いたいなーって思って」
なるほど。確か『心重ななの』は魔法学校に転入した魔法巫女なんだっけか。だから武器も魔法を使うのが『設定』にあっているわけか。相変わらず真面目だな。
「でも、そんななーちゃんに残念なお知らせがあります」
「はい、なんでしょうか」
「『魔法』、初心者が扱うのってめっちゃ難しいから、なーちゃんは使わない方がいいかも……」
「ええ、なんでぇ!?」
「だって魔法使うイメージってしにくくない?」
「……確かに!」
そう、大抵の人間に『魔法』とかいう武器は扱いが難しすぎるのだ。
まず体力を消費するからリソース管理大変だし、使った後も自分から離れたところにある魔力の弾丸を意識して操ったり……とにかくめちゃくちゃ疲れる。
その分火力も能力応用の幅もあるから使いこなせればめちゃくちゃ強いんだが、どちらにしろ初心者がまず触るものではない、というのが俺の意見だ。
「くそう、リスナーのみんなめ……私が『魔法使っていいかな』っていう時になんかニマニマした感じの愉悦の空気が流れていたのはそれか……ゆるせない……」
「ははは、まあそのおかげで面白い配信になったんなら、本望なんじゃないの?」
「
「はは、あそこと比べられるとは災難だったなぁ。特に天才だもんな、彼女」
「そうそう! そうなんだよ~! 私は一生懸命やってるのにさ~」
口をとがらせるなーちゃんに俺は笑いつつ、話を続ける。
「まずは自分に向いている武器を見つけるところからだね。後任のコーチがどういう方針で教えるかはまだわからないけど、俺なら……」
そして俺がそろそろ本格的になーちゃんにVSのバトルのことを教えようと思った時、事は起こった。
「ん? 通知?」
「あれ、この部屋は私とヒロくんがあと2時間は使えるように予約しておいたはずだけど……」
俺となーちゃんのシステムウインドウに通知が来る。
何々、『ステラが入室します』……はい?
「ちょ、スーちゃんいまは――――」
「遅れてごめんななーのコラボ来たよ~! ボクはもう配信始めっちゃったから、挨拶は省略でだいじょぶ!」
俺となーちゃんしかいないはずのフィールドにもう一人の人物が入って来た。
俺はこの子を知っている。
『ステラ・マギティック』。なーちゃんの同期で、俺の記憶違いでなければなーちゃんが
……これ、まずいのでは?
『ヴァーチャル・スクエア』
三つのスキル、一つの一つの必殺技の4要素からなるためそう名付けられた。
『スキル』
運営が設定したいくつかの能力をセットして使うことができる。
・武器スロット
武器に何らかの属性を付与できる。
例:銃を複製する 剣に炎を纏わせる 弓が変形して剣になる
・パッシブスロット
常時発動型の効果を持つスロット。
直接的な攻撃力はなく、あくまでも戦いの補助になるスキルである。
例:レーダー 抜刀後一定時間攻撃力上昇 死角からの攻撃がわかる
・アクションスロット
システムアシストを使って何らかのアクションをできるスロット。
基本的にパッシブよりも使いやすいがその分リキャストタイムが存在する。
例:抜刀斬撃 飛行 瞬間移動 武器旋回
『必殺技』
ユーザーが自分で考えて設定できるオリジナルの切り札。
考えたものをシステムAIが査定し、効果時間やリキャストタイムなどを設定する。
スタート時には使えず、時間経過でわずかずつ溜まっていく。
相手にダメージを与える、回避するなどのアクション加点によってゲージはさらに上昇していく。
基本的にはこの四要素をどう使いこなすかで勝率が変わってくるみたいです。