ぽんこつ美少女Vtuberと最強無職 ~元無敗王者を人気配信者が放っておいてくれない~ 作:世嗣
VR空間、『心重ななの』や『ステラ・マギティック』などの『マギティック魔法学校』系ライバーたちが使うという教室を貸し与えられた俺は、緊張を抑えつけて声を出した。
「どうもみなさんこんにちは。音量いかがでしょうか」
――――――
〇待機
〇たーいき
〇あ、声入った
〇落ち着いた大人の声だ
〇先生っぽい
〇聞こえてるよー
〇いい感じと思われます
――――――
「大丈夫そうですね。では……」
――――――
〇丁寧だなぁ
〇少し緊張してそう
――――――
「今日からカレイドコアのバーチャルライバーになることになりました、マギティック魔法学校新任教師の『ヒロ・セブンス』です。よろしくお願いします」
――――――
〇丁寧だ
〇デビューおめでとうございます!
〇うおー待ってたぞ~
〇こういう丁寧な大人系のライバー久しぶりだ
〇アバターかっこいいですね
〇魔法組にも先生が来たかぁ
〇カレイドコアに待望の一般人が
――――――
「では私が誰ぞや、ということではありますが、こちらをご覧ください」
――――――
〇会社のプレゼン?
〇完全にサラリーマンの手つき
〇書いてあるのは公式プロフと、ファンネームとかだ
〇ファンネームは『セブンス受講生』ね。了解。
〇俺が、俺たちが、受講生だ!
〇先生というよりも会社員すぎる話し方
〇妙に手馴れててるのおもろいw
――――――
「妙に手馴れている……まあそうですね。前職ではこういうのやらされていたので……ちょっと固かったですかね……」
――――――
〇あっ(察し)
〇だいたい分かった
〇ということは先生が初めてのお仕事じゃないんだ
〇魔法世界にもサラリーマンがいるんやなぁ
〇ワイも魔法使いでサラリーマンや、仲間やな
〇先生の今までの話ききたい~
――――――
「私の話……そんな面白くないですよ? 学校を卒業してすぐ就職したらそこが昭和根性の残る物凄い企業で、上司に睨まれつつ色々営業とか内勤とかを一通りですね。そのあとクビを言い渡されて住所不定無職になっていたところを拾われて今に至る、という感じです」
――――――
〇濃い濃い濃い
〇昭和?今の時代に?
〇住所不定無職、普通に大ピンチでおもろい
〇常識人、やれるか?
●陽向ひなた 波乱万丈人生~
〇ひなた!?
〇ひなた先輩もようみとる
〇初配信にひむひなが!?
●陽向ひなた 今ななーのと初配信同時視聴してま~す
●心重ななの ます! みんなで応援しよう!
〇そういえばそうだっけ
〇カレイドコアの文化、初配信同時視聴
――――――
「あ、そうですね。今コメント欄にもいらっしゃいましたが、カレイドコアの先輩である陽向ひなた先輩と心重ななの先輩が私の配信の同時視聴をしてくださっているみたいです。みなさん、よろしければこのあとそちらも視聴して頂ければ、このあとの私の配信も見やすいかと思います」
――――――
〇このあと?
〇何かするの?
――――――
「はい。私がカレイドコアに拾って頂いたのはヴァーチャル・スクエアの腕を見込まれてなので、それをみなさんにお見せしようかと」
――――――
〇おお!
〇激アツだ!
〇祈月を倒したって言う初期アバターさんだもんな!
〇コーチをやるって言うからには上手いんだよな?
〇流石にミナトほどはねえべ?
〇どんなスキル構成なんだろ
〇ルールと相手は?バトロワとかだとおもろいな
〇チーム戦は相手がいねえか
――――――
「ええと、これからヴァーチャル・スクエアで視聴者参加型で『
――――――
〇はい?
〇なんて?
〇99連勝?
〇??????
〇5時間くらいかかりそう
〇冗談でしょ?
――――――
「いえいえ、本気ですよ。参加者はリスナーのみなさんから募ります。先着順になると思うので、もし腕に覚えのある方がいれば一緒に遊んでほしいです」
――――――
〇この人何言ってるの?
〇視聴者参加型!?
〇急いでVS起動してくる
〇俺の変態ビルドを見せつけてやるぜ!
〇もしかしてこれ初配信から超長時間やる?
〇初配信から耐久配信とはたまげたなぁ
――――――
「ああ、いえこの配信は一時間半の枠を頂いているので、その間に99連勝したいと思います。ええと、今10分くらい経ったんで、たぶん始める時は残りは75分ってところだと思います」
――――――
〇??????
〇何言ってるのパート2
〇この方は何を言ってらっしゃるの?
〇75分で99人って普通に計算しても一人あたり一分使えないんですが????
〇この人物凄いバカなのでは。もしくは物凄い自信家
〇流石に無理くね~?
――――――
「そうですね。一人当たり使える時間は45秒ってところですね。……あ、流石に通常ルールは無理なので、一撃結殺のモードを使わせていただこうかと。これなら私の腕次第で短く終わるので」
――――――
〇一撃結殺かぁ。それならまあ?
〇ソロランクマでやってるようなHP制じゃなくてアバターダメージが反映される奴だよな
〇あれむずいんだよな~。首とか心臓部分にクリティカル食らうと一発アウトだし
〇スマブラのダメージ100%バトルみたいなもんか
〇それなら使い慣れたスキルで初見殺ししまくればやれるか
〇それでも一人45秒は無理だと思うけど
〇短くても一戦2分くらいはかかるべ?
〇相性次第じゃ一瞬で終わるときもあるけど、ゆーてクリティカルじゃないならHPバーの3割分とか削らなきゃだからね
――――――
「あ、あと縛りも入れます。俺の武器とスキルは倒した方のものと一つずつランダムに入れ替わる予定です。戦えば戦うほど、私のビルドは原型がなくなっていくって形ですね。そういうルールを追加しておきました」
――――――
〇この方は何を言ってらっしゃるの?????
〇お前は何を言っているんだ(外国人コラ)
〇スキルが入れ替わるの!?
〇どうやって戦えばいいんだ……!(スキル自爆)
〇俺の愛用スキルゲロビ発射をVtuberに押し付けられるのか!
〇いやいやいや
〇未知のスキルを使って45秒は無理だろ!
〇これマジでやれるなら伝説になるけどな……
〇いや流石に……?
――――――
「まあ私も無茶だとは思いますが……このくらいできなきゃみなさん
――――――
〇面白いけど無茶なのよ
〇先生やるからにはこれくらいできなきゃダメなのかな?
〇そんなことできるならこんなところにいずにプロになるべき
〇でもできたら神
〇先生を信じてみたい気持ちもある
〇これ成功しても失敗しても切り抜き確定だな
〇ここから耐久になったらウケる
――――――
「俺の先輩が言われてました。『Vtuberは誰かを楽しませる職業』なのだと。なら、俺なりにそれを全力でやりたいんですよ」
――――――
〇ほ~いいこと言うな
〇ななーのっぽい
〇りおりーとかかも
〇グラン団長ではないな
――――――
「ということで、もう少ししたらコメント欄に俺との勝ち抜き戦のルームIDを貼るのでよければ挑戦よろしくお願いします。とにかく時間がないので挨拶とかはできませんが、全力でお相手するので」
――――――
〇うおおおお!
〇のりこめー!
〇先生らしくアドバイスとかくれんの?
〇ヒロ先生の腕を最初に確かめるのは俺だー!
〇俺マスターランクだけど入っても大丈夫そ?
――――――
「マスターランクの方でも大丈夫ですよ。特に制限は設けません。アドバイスは……まあ時間ないので短いものになるとは思いますが、気づいたことは言おうかな?」
――――――
〇へー制限なしなんだ
〇アドバイス、どの程度有用なのがもらえるのかは未知数だな
●カレイドコア公式 ヒロ・セブンス99人抜き会場IDは以下になります。……
〇きたー!
〇のりこめー!
〇戦うのはいいが……別に一人目でいきなり勝ってしまっても構わんのだろう?
〇手加減しないぜ!
――――――
「はい。皆さんと全力で戦います」
◆
配信を始めて14分。俺の初配信の残り時間が76分になったとき、俺はヴァーチャル・スクエアのステージの一つに転送された。
「市街地A。一番オーソドックスで戦いやすいステージだな」
ヴァーチャル・スクエアには市街地や近未来、砂漠、海中などの様々なステージがあるが、市街地Aは全ての基本となるステージだ。
立ち並ぶビル街。道路にはまばらに普通自動車やトラックなどが放置してある。コンビニには今日の朝仕入れたばかりのように商品が陳列されている。だが、人の気配はまるでない。
まる人が住んでいた痕跡はないのに、人間が作ったものは当たり前のように存在するという矛盾。
VR空間に作られた戦うための仮想現実。
「ふー」
まだ相手は転送されていない。視界の端に運営の山下さんから「少し回戦が混み合っている」との連絡が入っていたのが見えた。
予定よりは少し押すかもしれないな。
――――――
〇うげー入れなかった~
〇これもう99人締め切られたな~!
〇市街地Aか。ええマップや
〇飛行ガン有利やん
〇武器何?
――――――
視界の邪魔にならないところでコメントが流れていく。
戦うじゃまにはならないだろうからこのままでいいとは思うが、戦いながらコメント拾えるかなぁ。
「わ、ほんとにいた」
不意に俺の前に、一人のプレイヤーが転送されてきた。
片手剣と盾を持ったいかにもオーソドックスな剣士です、といった風体のプレイヤーだった。
「参加してくれてありがとうございます」
「わ、わわ、私は時間があるから来ただけというか……最初に戦えて光栄です!」
「私こそ、ありがとうございます」
――――――
〇女の子アバターだ
〇剣士タイプか
〇いいじゃん(いいじゃん)
〇名前が銀色だしシルバーランク、初心者卒業層ってところか
――――――
「これはこれから戦うプレイヤーの方たちへのお願いなのですが、これから99人相手にするので挨拶する余裕がありません。一人倒したら間を置かずにどんどん次のプレイヤーに入ってもらう予定なので、部屋に入ったらもういきなり攻撃してきていただいて大丈夫です。よろしくお願いします」
――――――
〇礼儀正しいなぁ
〇物腰が低すぎるからあんま強そうじゃないんだよなぁ
〇了解!
〇ガンガン行こうぜ
〇それで不意打ちで負けたら笑えない
――――――
「はは、じゃあ絶対勝たないといけないですね」
俺は待機状態にしていた棒を取り出すと、ちらっと時計を見る。配信が始まってもう15分が過ぎている。
少し話しすぎたな。
「では、そろそろやりましょうか。3カウントで大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です!」
俺が剣士の女の子に問いかけると、女の子は強く頷いた。
よし、では……ええと……。
「3カウントの操作って、どうやるんだったかな……」
――――――
〇ヒロ先生?
〇もた……もた……
〇おじいちゃんみたい
〇ヒロ、嘘だよな?
〇うーんだめそうじゃ
――――――
「あの、私がやりましょうか?」
「あ、いえ大丈夫です。すみません、なにぶん不慣れでして……」
「ぷっ、ふふ、そう、なんですね」
――――――
〇笑われちゃってる
〇そりゃあ笑うでしょ
〇これはちょっと実力もお察しなのでは?
〇カウント開始された
――――――
俺が悪戦苦闘しながら設定して始まったカウントが一秒ずつ進んでいく。
――――3。
今回俺が選んだ『一撃結殺』モードは、従来のHPを削り切ることでの勝利ではなく、「先にどちらがクリティカル攻撃を叩き込むか」で勝敗を争うモード。
剣道で言うと「一本」を取った方が勝ち、みたいなのがイメージに近いだろうか。
――――2。
故に通常よりは一試合は短く終わるが、それでも俺にとっては相当厳しい戦いになるだろう。
なにせ一試合に平均して45秒しか使えない。じっくりと見に回ってスキルを分析するなんて暇はない。平均台の上を全速力で走り抜けるような無理を通す必要がある。
――――1。
それは、すごく。
「……はは」
やりがいが、ある。
――――0。
「クレッセントカリ―――――え?」
「悪いね」
カウントが0になった瞬間、俺はアクションスキル『
マイクロセカンドの刹那俺のアバターがこの世界から消失し、現実ではありえない肉薄を可能とした。
「なんの!」
だが、少女もその程度は予想していたのか見事に反応してくる。左手に持った盾を振り回して俺が振り下ろそうとした棒を受け止めようとする。
―――いや、見事過ぎるな。
この歳の子が身に着けられる反応速度じゃない。ならこれは、スキルの作用だな。
盾が死角からの攻撃に自動反応したと見るのが妥当だろう。確か武器スキルに『自動防御』って名前のものがあった。きっとそれだ。
なら、こうするのがいいだろう。
「ほいっ」
「はえっ?」
俺は今まさに振り下ろそうとしていた棒を空中で手放した。おそらく盾が自動で防御しようとしていた攻撃がキャンセルされたため、少女に身体の主導権が戻る。だが、その素早い切り替えに明らかに少女は対応できていない。
流石に、その隙は見逃してやらない。俺は棒を振り下ろそうとしていた勢いをそのままに相手の盾をひっつかんでそこを起点にしてバク宙。
そしてふわりと浮かび上がった時に、ついでとばかりにもう片方の手で持っていた剣を蹴りつける。
きりり、と片手剣が宙に浮き――――狙い通りに、俺の手の中に落ちてくる。
「う、そ……そんなのありえ――――」
「昔、ちょっとねっ!」
そして、少女から奪い取った剣で一閃、少女のアバターを両断した。
きらきらと少女のアバターが砕けて消えて、再び俺はフィールドに一人になる。
――――――
〇……は?
〇え?何が起こった?
〇一瞬過ぎる
〇瞬間移動してから目で追えなかったんですけど
〇今の、時間15秒とかしか使ってなくない!?
〇まだあわあわあわあわ
〇てか瞬間移動とかまた使うのが難しいスキルを……
〇ヒロ先生鬼つええ!このまま逆らうリスナーぶっ倒していこうぜ!
――――――
「今の方はちょっと防御が盾頼み過ぎましたね。もしああしてスキルがスカされたとき対策できればもっとうまく戦えると思います。では、次!」
――――――
〇ちゃんとアドバイスしてる
〇真面目だ……
〇これがさっきカウント設定できなくてもたもたしてたおじいちゃん?
〇一般人かと思ったけど逸般人だこれ
〇ごめん、流石にメロです
――――――
俺の目の前に次のプレイヤーが転送されてくる。
それと同時に、俺の視界の端でスキル欄がくるくる回って、先ほどまで使っていたアクションスキルが入れ替わる。
「げっ、いきなり瞬間移動が使えなくなった」
――――――
〇マジでスキル代わってるー!
〇ほー俺らからはスキル確認できるんだ
〇こーれしばらくは瞬間移動で飯食うつもりでしたよ
〇神さま「初見殺しは没収よ~」
〇まあどうせしばらくはクールタイムで使えなかっただろうしな
――――――
敵の武器は弓だ。もう既にスキルは起動状態か? 必殺技のクールタイムはどれくらいだ? 入れ替わったスキルの名前はなんだ? どう使えば一番勝てそうだ?
頭の中で様々な思考が入り乱れて、まっすぐに俺を勝ちに導く。
忙しくて、慌ただしくて、それが、心地いい。
「――――はは」
今の俺は、どこまでやれるんだろうか。
戦績――――――1/99。
残り時間――――74分。