ぽんこつ美少女Vtuberと最強無職 ~元無敗王者を人気配信者が放っておいてくれない~ 作:世嗣
遅刻しました。すみません。
明日はたぶん昼更新です。
配信残り時間、59分、勝利数31。
現在の相手は、二丁拳銃を武器にするガンマンだ。
「――――っと」
「逃がさねえぜ!」
市街地Aの道路に転がっている車の影に飛び込むとそこに向かって間髪置かずに数多の銃弾が降り注いだ。その一つが車のエンジンタンクに命中すると、ガソリンが車から零れ落ちる。
「先生、出てこないなら車燃やしちまうぜ?」
それは、まずいな。
――――――
〇やばい爆発するぞ!
〇でも車の影からでたらハチの巣じゃね?
〇先生の次回作にご期待ください
〇先生がんばれ~!
――――――
それなら……こうするか。
「おっ、でてきた―――――って、何もってんだそれ!?」
「車のドアを盾にさせてもらった。二、三発なら受けてくれるだろうからね」
「おもしれことすんなあアンタ!」
俺は車のドア部分を切り取ると、それに半身を隠しながら車の陰から飛び出た。
相手の銃使いは俺が出てくるところを見逃さず狙い撃ったものの、俺の考え通り車のドアが盾の役割をこなして守ってくれた。
――――アクションスキル『
三戦前に戦った地形利用型の魔法使いが持っていたアクションスキル。通常武器では破壊のできないフィールドオブジェクトを破壊し、一時的に装備状態で『武器』にできるスキル。
フィールドオブジェクトには普通防御力なんて存在しないようなもので、銃を防ぐことなどできない。
だがこのスキルを使って『盾』という役割を与えると、一時的にではあるが防御力が上昇する。今回はそれでドア部分を再錬成して、攻撃を防いでもらったというわけだ。
「ほいよっ!」
「おっと、っぶねえ!」
俺はスキルの効果時間が切れそうな車のドアをぶん投げると銃使いは転がりながらそれをよけ、そのまま俺に銃を撃ってくるが、一度距離を取って銃の射程外へ。
「ハ! これもかわすかよ!」
銃使いは楽しそうに声を挙げると、手の中でくるくると二丁の銃を回した。
「ならこれはどうかな――――『
キィン、と高い音が鳴ると、二丁の銃が暗い青色を宿す。
引き金が引かれると、そのクラシカルな武骨なハンドガンからは想像できないよう眩しい閃光――――無数のレーザービームが放たれた。
――――――
〇必殺技切って来たぞ!
〇一撃結殺ルールは通常ルールよりも必殺技溜まりやすいからな~
〇ガンマンの誇りは!?
〇勝てばよかろうなのだぁ!
〇あ、先生の左足ふっとんだ
〇うーむ銃使い相手にこれは……
――――――
「これは、やられたな」
必殺技起動の証の光を見た瞬間反射的に横に跳んだが、必殺技が高速系だったからかわしきることができず左足にもろに食らってしまった。
ダメージ的にはギリギリ落ちないのはわかっていたが……左足が完全に動かない。これは何らかのスキルの作用か。
「パッシブスキル『部位破壊』。俺が一定以上ダメージを与えた部位は一時的に動かなくなる。トドメだ」
ガンマンが動けなくなった俺に銃を向けて、引き金に指をかけた。
なるほど。必殺技は俺を落とすのが目的ではなくて俺の機動力を落としてこのフィニッシュに繋げるつもりだったか。
かなり考え込まれてるな。流石だ。
「だけど、―――一手読み勝ちだ」
「は? ぐおっ」
俺が指を動かすと、完全な死角から現れた青色の『魔力弾』がガンマンの胸を撃ちぬいた。
完全なクリティカルダメージ。俺の勝ちだ。
――――――
〇うおおおお
〇車の陰に入った時に撃ってたやつだ!
〇タイミング完璧すぎぃ!
――――――
ガンマンは消えていく自分のアバターに触れつつ、俺の方を見た。
「そうか。あらかじめ追尾弾をビルの外周に沿わせて先行させたのか。車の陰からドアと一緒に出てきたのは陽動か?」
「左足は犠牲になったけどね」
「大したもんだぜ……」
――――――
〇おおマスターランクに勝ったぞ!
〇魔法も使えるのかよ……
〇マジで何でも器用に使うな
〇マスターランク相手だとやっぱ一分くらいかかるんだな~
〇待ってくださいマスターランク相手に一分はバケモンです
――――――
ガンマンが消えると同時に、俺の視界の端のスキルがくるくる回ってまた構成が変わる。
俺は新しく変わったスキルを確認すると、近くに転送されてきた新しいプレイヤーとの戦いを始める。
「ぐはー!」
「武器スキルが炎を出すのは面白い! でも自分の視界が狭まってるなら意味がないのでパッシブに視野系のスキルを入れてもいいかと思う。では次!」
アクションスキルが変わる。今度は『オートガード』。致命傷になりそうな攻撃を自動で受け止めるやつか。使いやすいな。
「ふっふっふ、俺のスキル構成は前期3位のkarzと同じ斬撃特化だぞー!」
「すまない今の俺は遠距離ビルドだ。遠距離からボコる」
「ぬわー!」
「斬撃特化はPSと結びついてるから強いスキルだ! かなり努力がいると思うから頑張れ! 次!」
――――――
〇マスター相手じゃないとマジで15~30秒くらいで狩られるな……
〇シルバーかゴールドくらいが多いね
〇まあVの配信に参加しようってくらい気合あるのはそれくらいが多いかもな
〇これ固定のスキルじゃなくて毎回ランダムなのがバケモン
〇マジですごいな~
――――――
「うおっ最悪だ! 武器が重量系なのにスキルが高速移動になってしまった!」
――――――
〇話し方ちょっと変わってるな
〇ごはんとごはんで被ってしまった
〇とか言いつつさらっと瞬殺するのでした
〇今のマジで変態すぎる
〇重量系の武器の一撃警戒させた瞬間相手の武器奪って倒すの、手癖が悪すぎる
――――――
俺の勝利数がそろそろ40を超したとき、俺の前にガンマンのプレイヤーが現れた。
「悪いが俺はちょっとこれまでの相手とは違うぜ?」
「マスターランクか」
「ああ。加えて俺は一期生グループ『風林火山・IN・Lie!』の『林丸りん』のファンであり、VSチーム『銃撃乱隊』所属のプレイヤーだっ! カレイドコア新人と遊ぶチャンスなんて逃さないでかっ!」
「先輩のファンか。なら失礼はできないな」
「一手ご教授願うぜ!」
俺が今の武器である双剣を構えると、間髪置かずに鋭い銃撃が飛んでくる。
それを車や住宅街を使って上手く射線を切りつつ、かわしていく。
なるほど。武器とアバターの装飾からそう予測してたが、30戦目あたりで戦ったガンマンと同じチームのプレイヤーなんだろうな。
あのプレイヤーにも名前の後に『銃撃乱隊』の文字があった。
「チームメイトで俺のところに遊びに来てくれたんですか?」
「おっ、気づいたか! あいつとはリア友なんだよ! それで一緒にここに来てみたってわけでな!」
「バトルスタイルも同じなんて仲良いんですね」
「ああ。俺たちは同じビルドを使うのがチーム方針でな」
じゃあ彼もメインは距離を取りつつ俺へのダメージを稼いで動きを止める戦術を取ると考えた方がいいか。
なら安易に懐に入らずに立ち回っていけば俺の有利に――――
「――――と、思うじゃん?」
俺の思考を読んでいたかのようにそう言った彼がにやりと笑った。
「必殺――――『
キィン、と彼の拳が淡い光に包まれる。彼はそのまま拳を地面に打ち付けると、瞬き一瞬の間で半径10メートルほどの空間が淡い桃色のバリアのように包まれた。
これは、フィールド操作系だな。
プレイヤーの中にはこうして自分の強化や一撃必殺の攻撃ではなくて、他者にデバフを与えるフィールドを必殺技に使うものもいる。
持続時間はAI判定次第のようだが、フィールド範囲内なら視界にこのフィールドにかけられてるデバフを見ることもできる。
視界の端にある表示を読めばどんなデバフはわかる。ええと、今回は……はあ!?
「アクションスキル無効!?」
「そのとーり! この空間ではアクションスキルを使うことができない! しかも武器は納刀状態で決闘空間に引きずり込む! さあ俺と実力勝負で遊ぼうぜぇ!」
「自信満々だな」
「俺の
――――――
〇銃撃乱隊の早撃ちマンか。アクションスキル並みに早撃ち上手いらしい
〇PSでそれってかなり練習してるな
〇銃と剣の戦いはちょっと不利だな~
〇アクションスキルなしだし、これはマジのPSの比べ合いだな
――――――
いい必殺技だ。
相手のアクションスキルを潰して、自分は一方的に遠距離から相手のことを削ることができる。PSと射程の比べ合いに勝てる自信があるなら、これは確殺ムーブだな。
けど、その比べ合いなら俺有利だな。
「くらえ俺の早撃ち、を――――あれ」
ホルスターから銃を抜こうとした瞬間、ガンマンの喉には俺の双剣が突き刺さっていた。
「はへぇ?」
「悪いな、今の俺のパッシブスキルが投擲補正だった」
――――パッシブスキル『投擲補正』。
手にした武器を投げた際にその速度とダメージを倍にすることのできるスキル。
今回はそれを使って武器の短剣を投げさせてもらった。
――――――
〇ああ、ちょっと前に当たったブーメラン使いが持ってたやつか
〇投擲補正強くね?
〇※攻撃力上がりすぎて双剣とか短剣とかの耐久が低い武器は壊れます
〇ブーメランとかの投げる専用じゃない武器で使うのはおすすめされない
〇武器代わるルールだから使い潰しやがった……
――――――
「元はチーム戦で一人が足止めしてる間に時間制限ギリギリに外部から仲間が一撃の必殺技、それこそさっきの仲間の彼が決めるための必殺技なんだろう。対人に持ってくるのはちょっと不向きだったな」
「タイマンでも、マスターの最上位以外には割とやれると思うんだがな」
「早撃ちだけなら目で見て弾ける剣士に当たった時に不利だよ。サブプランが何か欲しいね」
「弾くて、あんたもできるかい?」
「え? まあ、そのくらいは……?」
目線と銃口を見てたら狙いはわかるし、そんなに難しいことではないと思う。
昔俺が戦った相手はみんなそれくらいやってたし。
――――――
〇銃弾を剣で弾く、ゴールドランクワイ、困惑
〇ヒロまじでうまくてすごい
〇これからのVS系での先輩との絡みが楽しみ過ぎる
〇変態みたいなこと普通に言うな
――――――
「はは、そうかいそうかい」
「でも、君は強かった。流石マスターランクだ。一撃結殺でなければ勝負はわからなかったよ」
俺が分析と共に激励の言葉を投げかけると、アバターが消えつつあるガンマンの彼は驚いたように目を開いて、その後頭の後ろで手を組んでにかっと笑った。
「いやあ、つええなぁ先生。ファンになっちまいそうだぜ」
「それはありがとうございます」
相手のアバターが消えると同時に俺の手の中に古めかしい2丁拳銃が現れる。
俺はそれをさっきの彼のようにくるくると手の中で回すと、腰のホルスターにしまった。
「――――さて、次」
戦績――――――41/99。
残り時間――――50分。
◆
『【初配信同時視聴】ひなた先輩とヒロ・セブンス先生の初配信を見よう。いったいどんなライバーなのか!【カレイドコア/心重ななの/陽向ひなた】』
「うっひゃ~~、本当にずっと勝ってますよひなた先輩」
「そうだねえ」
――――――
〇これで40連勝なのか……
〇残り一人頭50秒くらい使えるじゃん
〇でもマスターランクがいっぱい来たらわからないかも
〇なななコラボ、なんらかのマイナスイオンがでてる
〇面白女とインターネット箱入り面白女
――――――
「それにしても、武器スキル、パッシブとアクション。3つがどんどん変わるのにこんな使いこなせるものなんですか?」
「いやあなかなか難しいと思うけど……」
――――――
〇無理無理
〇まあ時間貰えればあるいは……
〇昔似たようなことロウカクもしてたけどな
〇ミナトならワンチャン?
〇ななーのがやったら100時間あっても終わらなさそう
〇ざこだから……
――――――
「あ、いまコメント欄言ってはいけないこと言ったね? すじこ太陽、名前覚えたよ?」
「おいしそうな名前だね~」
――――――
〇あ
〇ご褒美やん
〇さよなら……
――――――
「まあでも、彼は貰ってすぐそれの使い方を考えてるわけじゃないと思うよ」
「でも、先生って一人当たり30秒くらい、早ければ15秒くらいで倒してますよね? あれってスキル貰った瞬間に使い方を決めてないと成り立たないような……」
「んっふっふ~、良い質問だねえ。ではくーいず。いつでしょ~?」
「え、眠れぬ夜とか……?」
「ここはボディビル会場ではないのですよ。大喜利に縛られた哀れな民よ……」
「ひなた先輩の前では面白い私でいなければという重みが……!」
――――――
〇陽向チルドレンであることの弊害
〇公式配信で常にオチに使われ続けてるから……
〇ななーの、哀れな子
〇やっぱ事前にスキル全てを把握してるのよ
〇500個以上あって組み合わせも無限に近いからなぁ
――――――
「答えはね、相手と戦っている時だよ~」
「戦ってる時……?」
――――――
〇戦っている時か~
〇ああ、相手がスキル使うお手本見せてくれるからって、そういうこと……?
〇コピー忍者じゃん
――――――
「彼はね、相手が戦っているときに使われたスキルを見て『俺はこう使えばいい』『俺ならもっとこう使う』って考えながら戦ってるんじゃないかな~」
「え、ええ……? そんなこと……」
「ありえない~? 現に彼、毎回毎回『もっとここをこうした方がいい』って言ってるよね~?」
「確かに……」
――――――
〇いやいや~
〇冗談はよし子さん
〇けどひなたが言うならマジでそうなのか?
〇どんだけ頭の回転が早かったらそんなことできるんだよ
――――――
「どれだけ早いんだろうね~? カバさんとどっちが早いかな~」
「あ、わかりますよ私。カバは時速40キロくらいで走るんですよ。超一流の短距離走者でも時速30キロくらいで走るのが平均的なんだから、カバをのろまだと思っている人は改めた方がいい……そういう話ですよねひなた先輩?」
「カバって言えばフォルゴレだよね~。ひなたもライオンよりはカバがいいな~」
「ひなた先輩?」
――――――
〇またひなた先輩の話題が地球の裏に……
〇わろてる
〇やっぱこれだね
〇金色のガッシュか。なっつ~
――――――
――――視聴者とななのと笑いながら、ひなたはじっとモニターを見ていた。
ひなたの見るモニターの中で、『ヒロ・セブンス』は戦っていた。
彼女のデザインしたアバターで、彼女が提案した企画で、彼女がずっと見たかったその戦いを、多くの視聴者の前で披露していた。
(また、見れたんだなぁ)
そうして、ひなたは思い返す。
今でも忘れたことはない、初めてヒロ―――成宮君尋と喋った日のことを。それからの輝いていた時間を。
あの、初めて自分に「全力で挑戦する楽しさ」を教えてくれた高校の3年間を。