ぽんこつ美少女Vtuberと最強無職 ~元無敗王者を人気配信者が放っておいてくれない~ 作:世嗣
『【ヴァーチャル・スクエア】ロウカクカップ本番。マギティック魔法学校出陣します【ヒロ・セブンス/心重ななの/ステラ・マギティック/カレイドコア】
「というわけで、今はフィールド内に転送して、この制限エリアから出られるのを待ってるって感じだね~」
「スキルも使えないので完全に今は待機時間ですね」
――――――
〇あと試合開始まで5分ってところか~
〇他のプレイヤーも今はいろいろ雑談してるみたいだね
〇8チーム+MCで25窓することですべてが網羅できる
〇人数が多い
〇さっきまで色々顔合わせしてたんだっけ
〇面白い人いた?
――――――
「あ、ロウカクさんとはあったよ! なんか思ったよりも気さくなおにーさんだったな~。ね、なのちゃん?」
「そうだね。たまに会う親戚のお兄さんみたいな雰囲気はあったかも。ヒロくんはちょっと驚いてたけど」
「まあ、流石にね」
「ってことは、昔はあんな感じじゃなかったの?」
「そうなんよ。昔はすごい荒っぽくて、俺でもちょっと怖かったかな」
「へえ~」
――――――
〇苦笑い先生助かる
〇えっちだ……
〇まだプロじゃない頃とかはロウカクかなり尖ってたしな
〇何度か炎上してるし
――――――
「というかヒロくんにも怖いものとかあったんだ。オバケにだって眉も動かさなそうなのに」
「いや普通に野良猿とか呼んでくる金髪碧眼の年上の男の人は怖いでしょ」
「確かに……」
「たしかに……」
「今は人柄もわかってるから、普通に友人だと思うけどね」
――――――
〇たしかに
〇それはそう
〇wwww
〇昔から野良猿って呼んでるのかよw
――――――
『では選手諸君! このアナウンスが聞こえているかな? 聞こえてる? オーケー、ではもう一度ルールの確認と行かせてもらうよ』
「あ、ルディさんだ」
コメント欄と話していると、フィールド全体で響き渡る音量で実況のルディさんの声が聞こえてきた。
『まず試合形式はHP全損敗北の通常形式で、制限時間は一時間。一定時間ごとにフィールドが狭まっていき、最後の10分ほどでは全員が10メートルの範囲で戦ってもらうことになるぞ!』
『スキル必殺技に制限はありませんが、コーチ枠の選手にはスキルを二つまでという制限を付けさせていただきます』
ルディさんに続く形でミヤコが視聴者向けの説明を付け足した。
俺たちプレイヤー側は当然この辺のルールは理解しているが、視聴者はこの辺のルールをもう一度確認してもらえるのはありがたいだろう。
『そして、今回のルールの特色! 今回はチームに一回だけ『プレイヤー蘇生権』を与えているぞ! チーム内でHPが全損してダウンしたプレイヤーがいても、15分のインターバルを置けば蘇生が可能だ!』
『蘇生のタイミングは15分以降であれば自由ですが、この15分間のインターバル後にチームメンバーが一人も残っていなければこの蘇生はできません』
『つまり、誰かを蘇生したいなら自分たちは頑張って生き残らないといけないし、逆に一人落とした後は手早く他のメンバーを片付けないと立て直される危険性も増える。ここはチームの方針が試されるね』
『ちなみに、ダウンプレイヤーはフィールドから一度転移していただき、蘇生までは待機ルームで仲間の配信を見ててもらうことになってます。上手く蘇生できるよう応援してくださいね』
――――――
〇蘇生権!
〇一時間もあるからそのくらいがちょうど良さそう
〇事故って全員死ぬの、つまんないからね
〇良いルール
――――――
「なるほど……一人でもチームメンバーが落ちたらそのチームは狙われそうだね」
「ほえ?」
ルディさんの説明を聞いてなーちゃんが小さく頷き、ステラが首を傾げた。
「だって、放っておいたら倒した人が蘇生しちゃうんでしょ? 自由度と総合力が問われるチーム戦においては、三人揃ってるのと揃ってないのでは脅威度が違うし、他のチームも全力で落とそうとする狙い目になる……よね?」
「……だそうですけど、お兄ちゃん答えはいかに?」
「うん。俺もそう思うよ。ななのさんに10点をあげましょう」
「やたっ」
――――――
〇ななーのが頭が回っている……妙だな?
〇ななーのは昔から頭は回る方だろ
〇さっすが~
〇にこにこななーの
〇ななーのがぽんこつじゃないなんて解釈違いです
――――――
『ルール説明はここまで! そして、これからついに試合開始のカウントダウンだ!』
「そろそろだね。俺たちも準備しようか」
「試合始まるとみんなのコメントは見れなくなっちゃうのはちょっと寂しいね」
「仕方ないよ~。ある程度はAIがモデレーターをやれるようになったとはいえ、ボクらはその意見に影響されちゃうかもだし」
「なら次会えるのは、私たちが優勝した時だね!」
「それか、俺たちの中の誰かが負けちゃった時かな。その時は配信を見つつ同時視聴みたいなことをしていいらしいよ、ななのさん」
「なんで私にピンポイントでそれを言うの? 落ちませんからね!?」
――――――
〇ほんとかなぁ
〇でも先生とスーちゃんが負けるとは思えないし
〇消去法でななーのが濃厚だしなぁ
――――――
「こ、この……! 私が一度も落ちずに優勝した時を覚えておいてよ……!」
「あはは! って、ことでボクら頑張るから応援してね!」
――――――
〇ななーの、ほどほどに期待してます
〇目指せ優勝!
〇スーちゃんの活躍楽しみやなぁ
〇おれらは見えなくなってもコメントし続けるぜ
〇ロウカク倒しちゃおう
――――――
ばーっとコメント欄が流れていく。俺はウインドウを操作してコメント欄を非表示にしようとして、俺に言及した一連のコメントが目に入った。
――――――
〇先生がんばって!
〇ヒロのかっこいいところ期待
〇今回も100人斬りしちゃおう
――――――
「―――はい、頑張ります。皆さんの期待にこたえられるように」
俺は、『ヒロ・セブンス』。
カレイドコア所属の『ヴァーチャル・スクエア』の元無敗王者。
心重ななのと、ステラ・マギティックの先生。
その役割を、全うする。
『3! 2! 1!』
ルディさんのカウントダウンが響き渡り、俺は手の中にいつもの武器の棒を出現させて軽く回した。
『0! ロウカクカップ、ゲームスタートだ!』
フィールドの中央の空中にでかでかと『GAME START!』と表示が出現し、それまで俺たちを閉じ込めていた半透明の壁が消え失せた。
まずは広がった視界から周囲の情報を得るためにステラがきょろきょろと見回した。
「おー、広いね~。今回のフィールドは市街地Bだ。ちょっと廃墟とか交じったビル街」
「何度か練習したところだね。ヒロくんまずはどうしようか?」
「俺がスキルを使って周囲をサーチしてみるよ。今日はそれ専用の構築にしてあるし」
そう言って俺は今日の大会、『司令塔』をやるために調整したスキルの一つを起動する。
「レーダー、アクティブ」
ぶぅんと音を立てて俺の手の中に半透明の三次元マップが生まれ、その中にぽつぽつとプレイヤーの位置が表示され始める。
「高速で動いてる人たちがいるな……これはロウカクさんかな。迷いない動きだ。あの人たちの中にも俺みたいな遠距離探知系がいるのかな」
「あの3人の中だとそれっぽいのはつららさんかな?」
「かもね。思い込みは危険だけど、適性ってのはあるしね」
「カンナちゃんもロウカクさんも、自分が戦うのが大好き!って雰囲気だったもんね」
俺のレーダーの情報を確認したなーちゃんが少し考え込み、ステラがうんうんと頷いた。
ちなみに、今日の俺のスキル構成はこれだ。
武器 『 棒 』
武器スキル 『 空きスロット 』
→コーチ枠のため設定なし。
パッシブスキル 『 レーダー 』
→周囲を探知するレーダーを使うことができる。長時間のサーチで性能が向上するが、至近の相手にはレーダー探知されたことが通知される。隠蔽系のスキルで探知妨害ができる。
アクションスキル 『
→視線の先数メートルに転移できる。転移の際には一瞬のラグがある。
いつぞやの100人斬りの時に比べたら少し攻撃面で心許ない構成になっている。
だが、司令塔を俺がこなす以上ある程度情報的有利は欲しい。俺はミヤコほど器用なわけではなく、ひなたほど才能にあふれているわけでもない。
俺の『頭の回転が速い』『自分の動きのイメージを作るのが得意』という長所を伸ばすには、こうしてレーダーを使った補助が必要だと考えた。
まあ、ロウカクさんとかと戦うときは『必殺技』を使って上手く立ち回れれば……という感じだな。
俺はレーダーに表示されたプレイヤーの位置を頭に叩き込み終えると、一度レーダーを消した。
「二人とも、少し移動しようか。ステラは武器をちゃんと構えておいて」
「りょーかい!」
「あとななのさん、移動しながらでいい。今のうちに魔法を展開できる?」
「おっけー」
俺が初期位置から走り出すと、それについてきつつなーちゃんがぐっと両の手に力を入れる。
すると手の先から桃色の光弾が2つ生み出された。それらはどこかに飛んでいってしまうことはなく、なーちゃんの周囲を衛星のように周回し始める。
「おお~、なのちゃん上手くなったもんだねえ」
「ふふ、この衛星は私の忠実な右腕と左腕……合わさって最強に見える。もうポンコツとは言わせないよ」
「うーん、今絶対コメント欄でぽんこつがどうとか言われてるんだろうな~」
ふふん、と胸を張るなーちゃんに、ちょっと呆れたようなステラ。
だが実際なーちゃんのこの技術は大したものだった。最初は2つを操作するのもひーひー言ってたのに、今ではこうして雑談しながら自分の周囲を旋回させているのだから。
「さて、ここらへんかな」
初期位置から少し移動して俺たちがやって来たのは、崩れかけた廃ビルが印象的なエリア。周囲には古ぼけた民家や、乗り捨てられた車がぽつぽつと存在し、少し離れた所にはさびれた公園が見えていた。
「うーん、市街地Bのこのへんってやっぱ建物ぼろっちいね。ほら、あの辺の道路の先とか今にも倒壊しそう」
「だね~。あれくらいなら私の魔法でも簡単にも……ヒロくん?」
「ななのさん、あの辺に撃てる?」
ステラと話しているなーちゃんの肩を軽く指で叩いて、目だけで方向を示す。
すると、なーちゃんは俺の意図を察したように目線は変えないまま言葉を返してきた。
「……そういうこと?」
「ん。そういうこと」
「じゃあ、ボクは出てきたところを狩ればいいの?」
「そういうことだ。やれるか?」
「ふふ、まっかせて」
なーちゃんが頷き、ステラが自信を感じさせるようににかっと笑った。
なーちゃんは魔法の発動媒体である杖を握り直すと、勢いよく振り返りつつ指揮者のように腕を振るった。
「それじゃあいくよ―――砲法『流れ星』!」
なーちゃんが技名を―――『魔法』使い達が魔法を発動しやすくするためにつけているそれを叫ぶ。すると、なーちゃんの周囲を旋回していたピンクの衛星の一つが震え、桃色の流星となって俺の示した民家の一つを襲った。
「う、嘘だろ!?」
「こんなの聞いてないって~~!」
なーちゃんの攻撃が民家の壁を砕いた瞬間、そこから転がるように3人のプレイヤーたちが飛び出してくる。
不意を突かれたためそこにフォーメーションはない。みんな慌ててなーちゃんの攻撃をかわしただけだ。
「―――もらった」
ぺろり、と舌を出してステラが駆けた。
ばちり、と刀に紫電を纏わせて地を駆けたステラはそのまま無防備だったプレイヤーの一人の首にダメージを入れた。
「わ、わわ、コーチ! 大きくHP減っちゃいましたあ!」
「あ、慌てるんでござらん! まだ初手の―――」
コーチらしき忍者アバターの人がまだ話していたが、それを遮るためにステラに続いて俺も棒を振るった。
忍者さんは不意を突かれたようだったが、素早く腰から抜き放った忍者刀で俺の攻撃を受け止める。
「忍者に不意打ちとは、此れ如何に!」
「できることは何でもやらないといけないので!」
俺はそのまま忍者さんを生徒たちから引きはがすために武器を振るい、そのまま押し込むように後ろの廃ビルまで戦場を移す。
「よくあっしらがここに隠れていると見破った! 隠蔽を使ってたのですがな!」
「途中でレーダー反応から消えたからね。俺たちを狙っているとはわかったよ」
「それで位置まで把握できましたか!」
「隠蔽を入れてるってことは、俺らみたいなレーダー頼りのチームを狩るのが目的だろうから、わざと潜伏しやすそうな場所を作るとそこを攻めてくると思った。そして、俺らの位置的にあの場所が一番隠れやすかった」
「くそう、全て手の内でゴザルか!」
ぎいん、と俺の攻撃を弾いた忍者さんが悔し気に、一度距離を取る。そしてそのまま、しゅばばっと何か印のようなものを組んだ。恐らく何かのスキルの起動のためのアクションだ。
「しかし舐めないでいただこう! あっしはこれでもプロの―――あら?」
「悪いが、その時間は与えない」
―――アクションスキル『
「このまま、終わらせる」
俺はそのまま棒を振るい忍者さんの頭を打つと、流れるように腕、足、膝を打って体勢を大きく崩した。
「一度ここは引くでゴザルよ! 次会うときはこちらが勝つでゴザル!」
だが、流石にHP全ては削り切れない。
忍者さんは手痛いダメージを受けつつも一度立て直そうと、俺と二人閉じ込められた廃ビルを抜け出した。
制限時間は一時間。なるほど確かに、一度逃げられれば、対策を立ててもう一度戦うチャンスはあるだろう。
「ここから逃げられれば、だけどな」
瞬間、ビルの外で桃色の光が走り、そのまま廃ビルの壁と窓ガラスを貫く―――逃げ出そうとした、忍者さんのアバターごと。
「砲法『流れ星』―――ヒロくんから逃げてここに来るって思ったよ」
「く、くそう……」
俺の連続攻撃と、なーちゃんの魔法の一撃でHPが全損した忍者さんのアバターが、ばりん、と砕けて消えていった。
「おにいちゃーん、こっちも倒したよー! 一人逃げられちゃったけど、もう一人は問題なーし!」
「お疲れさまー。その一人の追撃の前にレーダーで周囲を確認しようかー」
遠くからステラの声が聞こえる。俺はステラに答えつつ、くるりと手の中で棒を回した。
「さあ、1チーム追い詰めたぞ。どんどん行こうか」
目指すは優勝。それだけだ。
それが俺のお仕事ですからねー。