ぽんこつ美少女Vtuberと最強無職 ~元無敗王者を人気配信者が放っておいてくれない~ 作:世嗣
「なんと、電撃決着! コーチ枠の『シノビ・モノマル』くんがここであっさりとダウンしてしまったー!」
「完全に不意を突かれてましたね。ヒロのスキルである『レーダー』がかなり生きていたと思いますね」
――――――
〇モノマルー!
〇お前みたいな面白枠がこんな速攻でやられてしまうとは情けない!
〇レーダー持ちかぁ
〇ヒロ今回はかなりサポート寄りだな
〇割と消極的なスキル選びだな
――――――
「いやあ、隠蔽スキルを起動したら無効化できるとはいえ、レーダーはかなり便利なスキルですからね。プロでもチーム戦の場合は誰か一人には持たせるのがセオリーだ」
「特に今回のヒロは司令塔をやるつもりみたいですからね。戦況を俯瞰できるスキルが欲しかったんじゃないでしょうか?」
「なるほど。流石チームメイトだね、ヒロくんの理解はばっちりだ」
「勘違いしないでください。ただの腐れ縁です」
「おお、見事なツンデレセリフだ」
「ツンデレいうなし」
――――――
〇お手本みたいなツンデレ
〇ミヤコママ、隠せてませんよ
〇いつもの
――――――
「それにしてもレーダーで戦況俯瞰か……随分懐かしい戦法だね。俺たちも昔はずいぶん煮え湯を飲まされた」
「あら、そうだったんですか?」
「はは、よく言うよ。俺やロウカクを苦しめたのは他ならぬミヤコちゃんその人なのに」
――――――
〇アクシア時代の話か
〇ルディとロウカク元チームメイトだもんな
〇1回大会の決勝戦の話なのかな
〇ミヤコのIGLとしての腕は指折りだもんな~
〇ルディのちくちく言葉
――――――
「元チームメイトとしてはヒロくんが自分の真似で勝ってるのは嬉しいんじゃない? 元チームメイトの絆、みたいなものを感じて」
「どーでしょうね」
「じゃあ自分のスキルの使い方パクられて不快かい?」
「別にそうも言ってませんけどね」
「なんだよ。相変わらず素直じゃないなぁ」
「私はいつでも素直ですし、思ったことを言ってますよ」
――――――
〇確かにこれミヤコのスキルの使い方だな
〇ヒロ、戦うだけかと思ってたけど司令塔もできるんだな
〇器用なヒロ
〇お、ロウカクもやってんねえ
――――――
「それに、私の真似で勝てる程甘くもない相手でしょう」
じっとミヤコが見たモニターには、同じく開始数分で敵チームの一つを壊滅させたロウカクが映し出されていた。
◆
「これで、ボクの勝ちっ!」
「にゃっ! にょほほ……ごめんなさいモノマルせんせ~……」
初戦の忍者さんチームの逃げた最後のプレイヤーをステラが両断すると、猫耳のアバターの女の子が涙を流しつつ消えていった。
「よーし、やり~」
「ナイススーちゃん! おつかれさま~!」
「なのちゃんこそ援護ありがと~助かったよ!」
いえーいと二人がハイタッチすると、ぱちんと気持ちのいい音が鳴った。
「これで忍者さん……『シノビ・モノマル』さんのチームは脱落だ。今が開始10分だからもう少し今の子が粘っていたら、モノマルさんのチームの誰かは蘇生してきてたかもね」
「蘇生権使われる前にちゃんと倒せたのは良かったねぇ。ゲーム長引くと、必殺技とか使われちゃう危険性も出てくるしさ」
「必殺技、強いけどこういう速攻奇襲だと使う暇がないのも難しいところだね」
「そうだね。例えばステラの雷化の必殺技とかは強いけどそのぶん使用可能までのチャージ時間も長い。短くすると使いやすくなるけど決定力は落ちる……そこらへんはバランスだね」
必殺技のチャージタイムは設定の段階でAIが判断して設定する。
シンプルに攻撃力を増幅するようなものや、武器に何らかの属性を付与する程度なら比較的短いチャージタイムが与えられるようだが、ステラのようにアバターが変化するものなどは強い反面チャージタイムも長い。
あとは、100人斬りの時に戦ったガンマンのような相手に特定のデバフを付与するフィールド変化系なども、長いチャージタイムを与えられるようだ。
スキルのクールタイムと、必殺技のチャージタイム。その二つのバランスと、組み合わせは答えが中々でない奥深い要素なのだ。
「レーダー、アクティブ」
俺はパッシブスキルの『レーダー』を起動すると、三次元マップを呼び出して周囲の状況を確認した。
俺たちの位置を示す青いビーコンが表示された後、ぽつぽつと赤いビーコンが表示され始める。
「ふむ。どうやら、だいぶ各地でも戦闘が起きてるみたいだね」
「ほへ~、そういうのもわかるんだ」
「レーダーの反応である程度はね。例えばここ、4人固まってる反応と、少し離れたところに2人固まった反応もあるでしょ? ここを見たらある程度は、想像つかない?」
「……????」
「あはは、スーちゃんが本気でわからない顔してる」
レーダーを見つつ首を傾げるステラに、なーちゃんがあははと小さく笑った。
「じゃあななのさんはわかる? なんとなく感じたことでもいいけど」
「えーと、3人一チームだから、普通に考えて4人集まってる時にあまり動きがないって言うのはあり得ないよね?」
「確かに……」
「でも、ここの4人の反応はある程度の動きはあるけど、一定の位置から離れようとしない。これはつまり、2対2の状況で膠着状態になってるって考えるのが一番それっぽいかも。ここまで、どう?」
「うん。俺も同じ意見だよ、よく考えられてる。流石だ。続けて?」
「え、えへへ。えと、それでここの二人の反応ね。ここの二人は反対にすごく動いてるよね。しかも反応的には片方はこの2対2のエリアから離れようとしてて、もう一人はそこに戻ろうとしてる。これはつまり、片方はこの膠着状態を何とかするためにチームに戻ろうとしてて、片方はそれを防ごうとしてる……のかと思います!」
「うん。満点を上げます」
「おお~、やるねぇ、なのちゃん!」
「ふ、ふふん! 私、ヒロくんの生徒ですから!」
ドヤッと胸を張るなーちゃん。
やっぱこういうじっくり一つのことを考えることに関しては、なーちゃんはちゃんと頭が回るんだよな。
俺を同じ家に泊めるとか言い出したときも、あっという間に俺のことを丸め込んでしまったし。
ぽんこつぽんこつ言われていたのは、やっぱマルチタスクが苦手だからというのが大きそうだ。
「それでお兄ちゃん。これからはどうしよっか。ボクらは一つ敵チームを倒して、今がだいたい試合開始してから15分くらいなわけだけど」
「んー。まずは、ここのあたりの敵の漁夫の利を狙おうかと思う」
「ここの6人集まってるところだね」
「あ、これならボクにもわかるよ! 3人対3人でがしがしやり合ってるでしょこれ!」
俺が指を差したマップ部分では、赤いビーコンが6つ集まっていた。
試合開始直後確認した時にこのマップの近くに2チームがいたから、俺らが忍者さんチームと戦っている間に接敵して、今の状況になっているんだろう。
「俺のレーダーの性能じゃ、誰が誰かまで判別することはできないけど、決着がつくにしろ、仕切り直しがされるにしろ、ここは狙いどころだと思うよ」
「おっけー。ならそっちを狙おーよ」
「うん。私も大丈夫だよ~」
「よし、じゃあ作戦なんかは移動しつつ共有するよ」
俺は棒を軽く回して縮めると、腰のホルダーにしまってから走り出す。
そのままなーちゃんとステラを伴って周囲に警戒しつつしばらくフィールドを走ると、俺たちはショッピングモールのエリアにやって来た。
そのままなるべく物音を立てないようにショッピングモール内に入ると、慎重に周囲を伺った。
反応が正しいなら、このショッピングモールのどこかに2チームが戦っているはずだが……お、いたな。
「あれは……ゆずりさんたちか」
ショッピングモールの階段を上った三階部分から吹き抜けになっている階下を盗み見る。
そこには制服姿の黒髪の少女の姿と、それを取り巻くプレイヤーたちがいた。
「確かメロウティアラの……」
「
「相手の方は、個人勢の人たちかな。コーチさんの方は確かフラゲの所属の方だけど」
「なるほど」
ひょこっと俺に乗っかるように階下を覗き込むステラと、俺を隠れ蓑にするなーちゃん。
二人はスキルが激しく使われる戦場を見つつ、「ほへ~」みたいな声を出していた。
「これ、どっちが勝つかな。見た感じ、互角っぽいけど」
「いや、これはたぶんゆずりさんたちが勝つかな」
「ほう。その心は?」
「残念だけど、生徒の子たちの腕に差がある。個人勢の子たちも凄く上手いしがんばってるけど、ちょっと春夏秋冬さんとローレライさんは初心者離れしてるね」
旅人っぽい少女、春夏秋冬めぐるさんの武器は、見た限り『足甲』。
足につけた武器兼防具を使って蹴り技にブーストをかけつつ、その機動性を活かした戦い方をしている。おそらくアクションスキルの一つにはステラと同じ『
魔女っぽいシンセア・ローレライさんの武器は『召喚獣』のスライム。
彼女の意思である程度自由に動くスライムを時に腕のように、時には盾にして立ち回っている。
直接的攻撃力は低いだろうが、春夏秋冬さんやゆずりさんのカバーに大いに役立っている。
「それに何より、この狭いエリアはゆずりさんに有利すぎる」
―――瞬間、階下で刀が振るわれた。
ゆずりさんによって放たれた銀閃は相手のプレイヤーを切りつけ―――そのまま、しばらく空中に
「アクションスキル『
ゆずりさんの斬撃が空間に残るのは時間にすれば2~3秒ほど。しかし、その2~3秒の間は空間に斬撃のエフェクトが残り続けるため、大幅に動きがしにくくなる。
しかもそのタイミングを見計らって、ローレライさんがスライムで邪魔をしてくるものだから、相当やりにくいだろう。
これは、2、3分のうちに決着がつくかもな。
「大したもんだよ。めぐるさんもすごいけど、生徒二人の動きが完璧だ。特にスライムの操作なんて難しいはずなのに……」
「シンセアさんはあのスライムを自分の眷属にしてるっていう設定の魔女さんなんだよ~。あのスライムちゃんの公式グッズとかも売ってるしね」
「メロウはあんな感じでキャラ性にあったスキルを選ぶ人が多いかもね。リスナーさんにも覚えてもらいやすいし」
「なるほど。じゃああの
「めぐるちゃんは旅人って設定だから、軽く動き回れる靴っぽい武器にしてる……のかな?」
「なんか歯切れ悪いね」
「いやあ、ボクは直接会ったことないけど、なんか本人はかなり引きこもり寄りらしいんだよ」
「そうそう。なんか急に配信しない期間が2カ月とか続く時もあるから、その時はファンからは『山に籠った』とか言われてるみたい」
「旅人なのに……?」
山籠りなんだ。旅人なのに……。旅に出たとかじゃないんだ。
「あ、試合が決まったみたいだね」
俺たちが話していると、いつの間にか階下では決着がついていた。
最後のプレイヤーに春夏秋冬さんの蹴りが決まると、相手のアバターがぱりんと砕けて消えていった。
「……で、どうする? 予定通り奇襲する? 今なら、勝負終わったばっかりで油断してそうだけど」
なーちゃんが俺をひょっこりと覗き込みつつ問いかけてくる。
うーん。確かに油断はしているだろうが、ちょっとこの狭いエリアでゆずりさんとは戦いたくない。
斬撃図の対処法がないわけではないが、スライムと一緒に仕掛けて来られたらやりにくいことは確かだ。もし戦うにももっと視界が開けた場所で、俺の瞬間移動が使いやすいタイミングで戦いたい。
よし、決めた。
「一度逃げよう。ここでゆずりさんと戦っても、勝ち目は薄いと思う」
「りょーかいっ!」
「わかった! 来た道を戻る感じでだいじょうぶ?」
「うん。くれぐれも物音は立てない感じで行こう。さっきまではともかく、今は戦闘も終わって静かだからね」
よし、じゃあ帰ろうか。
このショッピングモールからでたらまたレーダーを使って周囲の敵の位置を確認して――――。
「あいてっ」
「わ、わわっ。なのちゃん大丈夫!?」
俺の考えごとに、なーちゃんの声が割り込んで来た。振り返って見ると、なーちゃんは足元に転がっていたものにつまずいて転んだらしかった。
尻もちをついたらしく、おしりを撫でつつなーちゃんが訝し気につまずいたものを持ち上げた。
「いてて……なにこれ、ボール?」
なーちゃんが青っぽい丸いものを持ち上げる。すると、それはいきなり手のひらの上でぶるぶると震えて、跳ねた。そして、いつの間にか生まれていたまんまるの黒い目をぱちぱちと瞬かせた。
「…………スライム?」
なーちゃんが首を傾げた瞬間、青いまん丸――――おそらくローレライさんの眷属であるスライムが大声を挙げた。
『ぴぎゃーーーー!』
うわ、これ第三者の介入を予想してあらかじめトラップをしかけておいたのか。
これは相手が一枚上手だったな。
響き渡る絶叫。当然の如くその声は階下のゆずりさんたちまで届き、あろうことかちょうどこちらを見上げた彼女たちと俺たちの目がばっちりとあってしまう。
「……」
「―――――」
生まれたのは、一瞬の無言の時間。
「シンセアちゃん、めぐるちゃん! ヒロ選手がいます! このまま戦いに行きますよ!」
「あー、仕方ない! ななのさん、ステラ! このまま戦うよ!」
「ひ~~ん、ごめんヒロくん~~!」
「反省は後!」