ぽんこつ美少女Vtuberと最強無職 ~元無敗王者を人気配信者が放っておいてくれない~   作:世嗣

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集団戦は混沌

 

 

 ヴァーチャル・スクエアには『召喚獣』という武器タイプが存在する。

 これはある程度AIが組み込まれたNPCを召喚獣に選択し、それに付随スキルを選ぶことができるという武器タイプである。

 分類としては以前俺が挙げた『遠距離攻撃型』が近いだろうか。

 

 召喚獣は独自のHPを持ち、スキルによる強化の恩恵も受けることができるという一見強すぎる存在だが、当然ながら弱点も存在する。

 それは、プレイヤー側が無防備になるという点である。

 

 普通のプレイヤーが自分が戦うために使う武器を召喚獣という外部に依存し、自分の身を守るスキルや必殺技を召喚獣のために使っているのだから、当然である。

 

 なので『召喚獣』という武器タイプはかなり玄人好みであり、選ぶ人は珍しい―――()()()

 

 そう、()()()

 俺のこの知識の全ては、環境調査の時に知ったものだ。

 なにせ、この『召喚獣』というシステムの実装は3年前。俺がゲームから離れていた時期のものである。

 だから、俺もローレライさんが使うスライムが『召喚獣』であるという視点がすっぽり抜け落ちていた。

 

 まさか、プレイヤーが操作しなくても、本体からいくらか分けて周囲に置いているだけで自動でアラート出せるレベルだとはな。

 

 そしてそうやって不意打ちを防がれたせいで――――こんなに、やりにくい状況に陥るとはな。

 

「――――『三界斬破』」

 

 視界で、銀閃が輝いた。

 光は四つ。俺は当然全てをかわしたが、その斬撃は俺に当てることではなく、空間に斬撃を()()()俺の動きを狭めるのが目的だ。

 

「本命は、次の突きだろうっ!」

「あら、バレてしまいましたか」

 

 空間に残った斬撃エフェクトの隙間を縫うように放たれた突きを棒で滑らせながらかわす。

NAME 『祝部ゆずり』

武器 『 刀 』

武器スキル 『 空きスロット 』

 →コーチ枠のため設定なし。(と思われる)

パッシブスキル 『 時間圧縮 』 

 →アクションスキルのクールタイムを短縮する。

アクションスキル 『 斬撃図(ブレードマップ) 』

 →一定時間斬撃の攻撃判定を空中に残せる。斬撃を残せる時間はスキル発動前の溜め時間に依存する。

必殺技 『 剣は我が手に(プレイバック) 』

 →一定時間内に放ったフィールド内の斬撃図の効果を復活させる。斬撃図は味方と自分には影響しない。だが相手の攻撃で壊れる。

 

 たぶん、ゆずりさんのアビリティ構成はこんなところだろう。

 

 強力なアクションスキルをパッシブの効果で連打し、自前の剣の腕を押し付けてくる。

 対戦相手を調査した時は、昔出会った頃と必殺技が違ったり、俺の知らない武器スキルを使っていたりしたが、基本スタイルは変わらない。

 

 まずは使いやすい範囲技を使って俺の動きを止めてこようとするはずだ。

 

「――――ふ」

 

 キィン、とゆずりさんが刀を納刀し、俺のことをスキルの射程範囲にとらえる。

 

 ほら来た!

 

「『三界斬破』!」

 

 技名と共にあらかじめ登録していた動きをシステム補正を使って呼び起こし、俺に向かって4連撃。先ほどと同じように斬撃で俺を取り囲む。

 

 だが、それはもう一度見ている。流石に同じ手にかかるほど俺も甘くは―――。

 

「いってラムちゃん!」

 

 俺が棒を手にバックステップをしようとしたところに、ローレライさんのスライムが飛んできた。

 あらかじめ示し合わせていたのか、タイミングはばっちり。俺の足を絡めとるような起動で飛んでくる。

 

「あぶないお兄ちゃん!」

 

 だがそれをステラがインターセプト。雷を纏った剣でスライムを払った。

 

「あは。もらっちゃうよ~!」

「それはダメ! 射法『蛍火』!」

 

 その瞬間を見逃さないのは直前までステラと戦っていた春夏秋冬(ひととせ)めぐるさん。『空中疾走(エアライナー)』のスキルを使い、ステラの頭上から踵落としを試みたものの、なーちゃんがステラのカバーに回ったおかげで、それは防がれてしまう。

 

「―――ふぅ」

「ふふ」

 

 一度距離を取り、お互いに向き合った。

 三人と三人。条件は五分。今ほどの立ち合いは、一応互角と言えた。

 

「ヒロ選手、相変わらずお上手ですね」

「ゆずりさんの方は上手くなりましたね。昔より剣の腕が上がっている気がしますね」

「あら、ヒロ選手に褒められてしまいましたね」

「あは。良かったじゃん、ゆずりちゃん。めぐるたちとのダンス練習の合間とかにコツコツ練習してたもんね~」

「ええ。常在戦場の心構え……いまヒロ選手に見せられたようですね」

「そんな現代の剣客みたいな生き方してるんだ、ゆずりさん……」

「まあ昔からこの人努力家だからね……」

 

 納刀し、凛とした姿で立つゆずりさんがくすくすと声を漏らした。

 

「それに、チームでの連携が流石です。隙が無い。特に、そのスライム、扱うのに慣れてますね。見事にうちのななのさんをひっかけてくれました」

 

 俺がゆずりさんから目を動かして、ローレライさんを見る。

 大きな魔女の帽子と、ゆったりとしたローブを纏うローレライさんの肩にはちょこんと水色のスライムが乗っている。

 

「あら~、ほめられちゃいました。どうも、こっちはスライムのラムちゃんです~」

「スライムに羊みたいな名前つけてる……」

「もしかしたらうる星やつらかもしれない。電撃は使わなさそうだけど」

「フツーにスライムから取ったんだと思うよ、なのちゃん、お兄ちゃん」

 

それもそうか。

 

『ななのさん、ステラ、作戦を伝えるよ』

 

 にらみ合いの中で、俺は手早く二人にチーム内通話で二人に話しかける。

 

『まずあのチームの中核はゆずりさんだ。彼女の斬撃図を中心に攻撃を組み立て、そこを埋めるようにローレライさんのスライムがカバーし、生まれた隙に春夏秋冬さんが切り込んでくる』

『かなり完成されたコンビネーションだね。どうするの?』

『ゆずりさんをななのさんに任せたい。その間に、俺とステラが他二人を受け持つ』

『……私に?』

『俺やステラみたいな近距離メインだとどうしても不利が付くんだ。でも、ななのさんの魔法なら距離を取りつつ立ち回れるから、ゆずりさんのペースを乱せる。ペースが崩れればいつもと違うことをしなきゃいけないから、そこで生まれた隙を俺かステラが叩く』

 

 ちらり、となーちゃんを見る。

 

『やれるか?』

『……ヒロくんは、私にそれができるって思ったんだよね?』

『ああ。ななのさんならできる』

『なら、頑張る』

 

 小さく、けれど確かになーちゃんが頷いた。

 なーちゃんの水晶みたいな目が強く輝くのを見て、なんとなく「任せても大丈夫だ」とそう思えた。

 

「よし、行くぞ!」

「おっけー!」

「りょーかいっ!」

 

 俺が合図をして三人同時に駆けだした。

ステラはめぐるさんに、なーちゃんはゆずりさんに、俺はローレライさんに―――()()()()なーちゃんに並んで、ゆずりさんに。

 

「あら、私に二人がかりですか? 穏やかじゃありませんね」

「ゆずりさんを高く評価してるんですよ」

「です、か。―――シンセアちゃん! めぐるちゃんをカバーして二人でステラさんを倒しちゃって!」

「らじゃ~です!」

 

 素早く飛んだ指示にローレライさんがめぐるさんの方に走りだした。

 

「かかったな―――瞬間移動」

「―――っ。シンセアちゃんやっぱ急いで防御して!」

「え、ひゃあっ」

 

 100万分の一秒(マイクロセカンド)のラグを伴って、俺が三次元平面上から消え失せてローレライさんの眼前に現れると、思いっきり棒を振り下ろした。

 が、ゆずりさんの指示が間に合ったらしく、直前でスライムが変形したぶよぶよとした盾に受け止められてしまう。

 

「一杯食わされちゃいましたね。……私とななのちゃんがやるんですか?」

「ここらで名誉挽回させてもらいます!」

 

 なーちゃんはそう言うと俺やステラよりだいぶ距離を取ると、周囲に旋回する二つの魔力弾を変形させながらゆずりさんを攻撃する。

 俺が指示した通り『斬撃図』の攻撃範囲外からの立ち回りを意識した攻撃に、けっこうゆずりさんはやりにくそうだ。

 もちろんゆずりさんは5年前からVSをしているプレイヤーだ。最高ランクのマスターにもなったことがある実力者だからなーちゃんの魔法にはすぐ対応してくるだろうが、その瞬間は多少無理な攻めをする必要がある。

 その瞬間を、春夏秋冬さんとローレライさんを倒すふりをしているステラか俺のどちらかが咎めて、このフォーメーションを崩す。これが俺の立てた作戦だ。

 

「え、わ、わわ」

 

 俺が手の中で棒を踊らせるように連撃を叩き込むと、半ば自動的にスライムが俺の攻撃を受け止める。

 しかし、もう既にそのスライムの自動防御の範囲は見極めている。俺はあえていくつかを防がせつつ、AIがついて来れないタイミングを見極めて、蹴りなどを織り交ぜていく。

 ダメージ自体は大きくないものの、じりじりとローレライさんのHPが減っていく。

 

「な、なんでAIの自動防御がきかないんですか~!?」

「AIの自動防御範囲を見極めて、一方の攻撃に使われたタイミングでもう一回攻撃してるだけだよ」

「そんな『毎日1ページずつ進めれば締め切り前に死ぬ気で描かなくても原稿ができます』みたいな理想論言われても困ります~!」

「どうでもいいけど、そういう例えで漫画使われるの初めてだな」

 

 普通水に足が沈む前に次の足を進めるとか、そういう感じの例えを使われることが多いのではないだろうか。

 

 なーちゃんは……まだ距離取ってゆずりさんと戦ってるか。流石にゆずりさんも慎重で、なーちゃんの懐にほいほいと入るようなことはしないか。

 あんまローレライさんを嬲るようになっても心苦しいし、ここらでちょっとゆずりさんの方を揺さぶってみるか。

 

「行ってラムちゃん! 『べとべとウェーブ』!」

「ほいっ」

「わ、わわわーっ」

 

 俺はローレライさんが薄く広げて波のように叩きつけてきたスライムを身を低くしてかわすと、そのまま地面スレスレに棒を振るってローレライさんの足首をひっかけて蹴りを入れてゆずりさんの方に転がした。

 ぐるんとローレライさんが空中で一回転しつつ、ローブをはためかせつつ尻もちをつく。

 

「さて、これで詰みです」

 

 俺が棒を回して、ローレライさんの方に走る。距離としては、ゆずりさんはなーちゃんとの戦いを切りあげれば彼女を助けに来れる絶妙な位置。助けに来るかは人によるだろうが……。

 

「シンセアちゃん!」

 

 ゆずりさんは助けに来る。わかるよ。俺だってそうする。

 

 だからこそ、ここが隙だ。

 

「―――射法『蛍火』!」

 

 なーちゃんが周囲に旋回する魔法弾の一つを三つに分割すると、そのまままっすぐに射出した。

 ローレライさんの方に走りだそうとしたゆずりさんの足がたたらを踏んで、明確な隙が生まれる。

 

「ここだ」

 

 ちらり、と視界の端を確認する。先ほどローレライさんを奇襲するために使ったアクションスキルのクールタイムがちょうど終わり、再使用可能を示す光を灯した。

 

「―――瞬間移動(ショートジャンプ)

 

 再び100万分の一秒(マイクロセカンド)の刹那、俺の身体が消失する。

 ゆずりさんの視界から俺の姿が消え――――俺の視線の先数メートル、彼女の背後に俺の身体が出現する。

 

「もら、ったっ!」

 

 俺が棒を振るう。それは、ゆずりさんの胴にクリーンヒットし、彼女の身体を吹き飛ばした。

 

「ななのさん、トドメ!」

「おっけー!」

「俺はローレライさんを落とすためにまた動く!」

 

 このまま俺が追撃することもできなくないが、今回は初心者大会だ。あとはなーちゃんに任せて、俺はこのまま戦況を維持できるように動こう。

 

「砲法『流れ星』――――」

 

 ぐわん、となーちゃんの周囲を旋回する二つの魔法弾が一つに混ざる。

 桃色の巨大な球体となった魔法弾は放たれるのは今か今かと言うかのように強く輝いた。

 

「面白そうな状況じゃねェか」

 

 ―――声が、聞こえた。

 

「まさか、嘘だろ!?」

 

 俺が反射的に頭上を見上げた瞬間―――ショッピングモールの屋根が爆発した。

 

「かっかっかっかっかっ! 野良猿ゥ! こォんなところにいやがったかァ!」

「も~~、ほんとロウカクって作戦立案がざつぅ~。いっつもつららがかわいそ~」

「そう思うんやったらカンナもうちの言うこと聞いてな。あんたらに振り回されて初心者なのに毎回司令塔の真似事してるうちを救って……」

 

 吹き飛んだ屋根の瓦礫と一緒にFLAG+の『問題児連合』―――『現役最強』ロウカクのチームが降ってくる。

 

 ロウカクさんは今まさに戦闘中だった俺たちの中心に降り立つと、古めかしい大口径のリボルバーを俺たちに向けて、ニィと獣のような表情を浮かべた。

 

「さあて、誰からやる? なんなら―――全員で、俺にかかってくるか?」

 

 

 

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