羂索の目論見を破綻させる、天元渾身の一手   作:金鳥

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 銀魂のアニメ見たり、呪術廻戦の二次創作読んでたらまたネタを思い付いたので書きました。

 後半、ちょっとあれなネタがあるので不快に感じる方はご遠慮下さい。
 キャラも大分改変してます。


 あと1話目、書いた自分が言うのもあれですけど予想よりも反応良くて正直びっくりしました。
 今回もお楽しみ頂けたら幸いです。


禪院家クライマックス

 

 渋谷事変後、禪院家にて。

 現当主、禪院直毘人が亡くなり読み上げられた遺言書。

 五条悟が封印された為、伏黒恵が次期当主として指名された。

 

 「は?」

 

 それを聞いた直哉はキレた。

 それはもうガチでキレた。

 

 禪院扇と禪院甚一も思うところはあった。

 だが性格がアレ過ぎる直哉がどれだけ当主にこだわっていたかを知っている2人。

 伏黒恵の方が禪院直哉よりマシであり何より散々暴言を吐かれてきたのでいい気味だとほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

 「(何考えとんねんパパ!?恵君に当主継がせるとか正気か!?)」

 

 

 

 

 ◆壊滅後の東京にて

 

「嘘やろ恵君まだ来てないんか?」

「え、誰?」

「何者だ」

 

 

 京都から全力で駆け付けた禪院直哉。

 彼の性格からして失踪した虎杖悠仁を連れ戻す為に動いている可能性が高く、高専に行くよりも早く接触出来ると踏んだ為に来たのだが、いくら自分が全速前進で駆け付けたとは言え距離的にもう合流してると考えていたのにまさかのフライングである。

 

「えっと、伏黒の知り合い?」

「あー、一応俺のオトンの兄貴の孫が恵君になる」

「???叔父?それとも祖父ってこと?」

「叔父はともかく祖父は無いやろ。まあややこしいし親戚のお兄さんって事で頼むわ」

「成る程お前も兄か」

「なんや自分」

「悠仁のお兄ちゃんだ」

「嘘やろ」

 

 え、虎杖悠仁って祖父亡くしてから天涯孤独やったよね?

 両面宿儺の器で死刑執行命令も出てるけどいつの間にお兄さん生えてきたん?

 

「マジで?」

「いや、これ脹相が勝手に言ってるだけだから」

「本人はこう言っとるけど?」

「悠仁は恥ずかしがり屋さんだからな」

「違ーよ」

「成る程、話が通じへんタイプか。ところで虎杖君、死刑判決出とるけどこんな所に居て大丈夫なん?」

「何だと!?」

「え、何それマジでというか反応早過ぎて怖えよ脹相」

 

 なんか虎杖君の兄を名乗る不審者がバチクソキレてるけどマジで誰?

 というか宿儺に乗っ取られていたとは言えあれだけの被害出したら普通に考えて死刑執行やろ。

 

「どいつだ」

「あん?」

「どいつが悠仁にそんな巫山戯た判決を下した?俺はどいつを殺せば良いか教えろ」

「今生き残っとる上層部全員やな」

「そうか、感謝する」

「いや待て落ち着け脹相!?直哉さんも何で教えたの!?」

「だって俺あいつら嫌いやし。Gの化身みたいな連中代わりに潰してくれるって言うんなら止める理由無いやろ」

「人の心とか無いんですか!?」

 

 なんかもう、ぐだぐだである。

 先程まで憂鬱気味だった虎杖悠仁は久し振りに感じる若者らしいノリのお陰でメンタルが多少回復した。

 それに気付いた脹相は天然の為理由は解らないが禪院直哉を交えて会話をすると虎杖悠仁が明るくなると更に続ける。

 禪院直哉も2人と戦うつもりは無いし恵君が来るまで暇やから休憩も兼ねて付き合うことにした。

 

 和気藹々とする3人。

 それを見つめる、1人の男。

 

「・・・え、どういう状況?」

 

 虎杖悠仁の死刑執行人(嘘)、乙骨憂太である。

 同級生の禪院真希から聞いていたドブカス野郎こと禪院直哉が京都からとんでもない速さで虎杖悠仁の元に向かっていると知って慌てて駆け付けてみたらまさかの光景を目撃し、呆けてしまった。

 

「ん?誰だあれは」

「あん?・・・あー、乙骨君やね特級の。多分虎杖君の死刑執行人で来たんとちゃう?」

「成る程殺す」

「だから待てって脹相!?」

「冗談や。悟君の教え子で術師にしては真面な性格しとるっちゅう噂やし多分虎杖君をこっそり匿おうと来たんとちゃう」

「なんだ味方か」

「心臓に悪い冗談は止めて下さいよ直哉さん!」

「術師なんちゅうブラック通り越してダークな業界にいるんならこの位ジョークとして捉えろや」

「無茶言わないで!?」

 

 なんかこう、空気が違う。

 死刑執行したという演技の為に同級生達にも協力して貰ってキリッとした表情を頑張って作って来たのにシリアスな話は勿論、戦闘する空気でも無い。

 けど色々と話さなければならないことがあるし縛りを誤魔化す為に1度虎杖君を殺さなければならない。

 悩んだ乙骨憂太。

 取り敢えず

 

「すいません話を聞いて下さいお願いします!!」

「え、なんで土下座?」

「しかも高所から落ちながらのジャンピング土下座もといダイビング土下座とかレベル高いな」

「なんだこいつ」

 

 誠意を込めて土下座した。

 そのお陰でなんとか話を聞いて貰えた乙骨憂太。

 虎杖悠仁の心臓を刺してから治すという計画に案の定脹相は激昂したが「話が進まんから一旦寝とけ」と直哉が意識を落としたのでその間に済ませた。

 

 

 ◆伏黒恵、合流。

 

「・・・成る程、取り敢えず経緯は分かった」

 

 痛む頭を押さえる伏黒恵。

 乙骨憂太が虎杖悠仁の死刑執行を偽装する計画は知っていたが、いざ合流してみれば目を覚まして暴れる脹相とそれを抑える虎杖悠仁に再度土下座する乙骨憂太というカオスな空間。

 加えて何故かいる禪院直哉、本当に訳が解らない。

 

 伏黒恵の合流で取り敢えず一旦落ち着いた面々は情報交換を兼ねて休憩することにした4人。

 そこで知らされるあれこれは伏黒恵に何とも言えない感情を抱かせた。

 

「・・・それはそれとして何で飯食うことになってんだよ」

「え、だって直哉さんが腹減ったって言うから」

「堪忍な恵君。朝京都を出てから何も食うてなかったんよ」

「悠仁も碌に休んでいなかったから丁度良かったからな」

「直哉さんはまあ仕方ないから大丈夫ですけど問題は虎杖、何で屋外クッキングしてるんだ?」

「前に五条先生が『憂太は寂しがり屋だから手料理作って一緒に食べると喜ぶと思うよ絶対!』って言ってたからだけど?」

「五条先生・・・っ!!」

「目をキラキラさせないで下さい乙骨先輩!そしてやっぱりあんたが原因か五条先生!?」

「いやー、近くのスーパーで冷凍肉とか手に入って良かったよ!」

「悠仁の手料理・・・っ!!」

 

 最早屋外キャンプもしくはパーティーである。

 こいつら、今がどういう状況か本当に解ってる!?

 なお、禪院直哉は虎杖悠仁特製肉団子が気に入ったらしくひたすら食べ続けていた。

 そんな禪院直哉を見てげんなりした伏黒恵だったが、ふと思い出した事があったので口を開いた。

 

「すみません直哉さん、実はお願いがあるんですけど」

「お願い?」

「はい、不躾で申し訳無いんですけど禪院家の忌庫にある呪具を使わせて頂きたいんです」

「・・・はい?」

 

 瞬間、空気が変わった。

 無理も無い、禪院家秘蔵の呪具を使わせろという無茶な願いなのだから激昂されて当然だ。

 だが何かおかしい。

 真顔だ。

 禪院直哉の顔には怒りが浮かんでおらずどちらかというと何を言っているのか解らないという表情である。

 

「・・・恵君、もしかして自分が禪院家次期当主に指名された事知らんの?」

「・・・は?」

 

 今度は伏黒恵の方が呆けた。

 え、何それ聞いてない。

 

「嘘やろオトン、恵君本人に何も知らせずアレを継がせるって人の心とか無いんか?」

 

 直哉は愕然とした。

 

 

 ◆切っ掛けは、天与の暴君。

 

 幼い頃、禪院直哉は天与の暴君に憧れた。

 禪院甚爾はそれ程までに強大な存在であり、まだ純粋であった直哉は普通の子供がアイドルやスポーツ選手に憧れるのと同じく彼に憧れたのは必然だったのだろう。

 

 禪院甚爾は最初、禪院直哉の事を鬱陶しく思っていた。

 自分とは違い術師の才能を持ち次期当主候補筆頭として幼いながらに扱われていたのだからまあ仕方ないだろう。

 それでも子供に八つ当たりする程人でなしではなく、そんなダサい事をして自分を迫害してきた禪院家の人間達のようになる気も無かった。

 何より初めて自分を慕ってくれる子供を無碍にする気にはなれなかったのである。

 

 とはいえ自分から積極的に関わるつもりは無かった。

 そもそも禪院甚爾はすでに家を出る計画を立てており、後は忌庫にある呪具を幾つか拝借してそのままトンズラするだけである。

 

 だから出奔した後機会があれば1度くらい気に掛けてやるかとそのぐらいのつもりだった。

 それが変わったのは忌庫に忍び込み呪具を物色していた時。

 その鋭い五感が忌庫の最奥にて厳重に隠されていたそれの存在を捉えたからである。 

 

 

「・・・嘘だろオイ」

 

 さぞや大事な呪具なのだろうと、腹いせも兼ねて掻っ払ってやろうとそれが封印された箱を開けて中身を見た禪院甚爾。

 瞬間、彼は硬直した。

 蓋を閉じて深呼吸。

 目を擦り、頬を引っ張ってこれが夢では無いことを確認。

 

 再度蓋を開けて───

 

「・・・ナニコレ」

 

 

 ◆実はこの世界では売られる予定の無かった伏黒恵。

 

 五条悟はクソガキである。

 ハイになっているとはいえ天上天下唯我独尊とか言っちゃう位にはアレな性格だ。

 禪院甚爾に致命傷を負わせ、遺言はあるかと聞けば「俺のガキ共は呪術界に関わらせるんじゃねぇぞ」とか返って来たので調べてみれば見つかる伏黒姉弟。

 六眼で見てみれば弟の方は十種の影法術という超大当たりの術式を持っていた。

 話を聞いてみれば両親はもう随分と長い間帰って来ていないがシッターが定期的に通っており、生活費も弁護士を通じて支払われており特に不自由はしていないとの事。

 

「術師殺しも自分の子供は可愛いってことか」

 

 天内理子達を殺しておきながら何様だと多少苛立ったが子供達に罪は無い。

 禪院甚爾の遺言通り腐った呪術界に関わらせる気は無く、1度顔を見せて父親の知り合いだと認識させ2人がある程度育ったら父親が死んだ事を伝えにもう一度だけ会うつもりだった。

 

 だが伏黒恵の術式が十種の影法術となるとそうはいかない。

 五条悟としても全力で隠蔽するつもりではあるがその存在を完璧に隠し通す事は難しい。

 それに術師は特に呪霊に襲われやすく、何かの拍子に術式を使ってしまえばほぼ確実にバレる。

 

 そうなったらもうお手上げだ。

 いくら五条悟の庇護下にいると主張してもあの術式至上主義の禪院家が伏黒恵をあの手この手で取り込もうとするのは目に見えている。

 伏黒恵が呪術師として強者であれば話は別だが、一般人として育ってしまったら確実に抵抗出来ない。

 

 故に五条悟は本人に意思確認をした上で彼を呪術師としてこの世界に引き込む事にした。

 禪院甚爾の遺言に背く事にはなるが、あんたの大切な子供達は守ってやると誓う。

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・まあそれはそれとして。

 禪院家が大嫌いで根はクソガキの五条悟なので、伏黒恵が特訓も兼ねて呪霊を何体か払った際にその術式が知れ渡り当然のように彼を寄越せと言ってきた禪院家に対してそれはもう全力で煽った。

 

「ざ~んねん!恵はずっと前から僕の庇護下にあるしそもそも術師登録した時上からも認められてもう数年だよ?今更そんなこと言っちゃって恥ずかしくないの?ぷぷぷっ、ダッセエ!ねぇ今どんな気持ちどんな気持ち?ずっと欲しかった相伝がよりによって五条の庇護下にあるって知ってどんな気持ち!?」

 

 

 

 ◆伏黒恵が五条悟の庇護に入ったのと同時刻、禪院家にて

 

 

 禪院、もとい伏黒甚爾の訃報を聞いた禪院直哉は愕然とした。

 自分の憧れが、挑むことはおろか2度と会うことすら叶わず死んだというのだから当然だ。

 彼の死を喜び嘲笑する一族の連中に殺意を抱きながらも今ここで奴等を叩きのめすよりその時間を鍛錬に充てた方がマシだと判断した禪院直哉。

 

 とはいえ今の馬鹿騒ぎしている禪院家では集中出来ない為、自身が所有するセーフティハウスで鍛錬する事を決めた。

 清掃業者は定期的に入れているがそれ以外は誰も知らない筈の場所。

 だがその玄関前に設置している郵便受けに入っている封筒を見て足が止まった。

 

 新聞、勧誘チラシの類は全て断っており届く筈の無い郵便物。

 何かの罠かと思いながら手に取って驚愕した。

 恐らく郵便業者を介さず本人が直接投函しただろう封筒。

 宛名は書いていなかったが差出人の欄にはなんと伏黒甚爾の名前が書かれていた。

 

「甚爾君が俺に手紙!?」

 

 驚愕と歓喜が共に沸き上がる。

 家の中に入る時間すら惜しく慌てながらも丁寧に封筒を開けて中の手紙を確認した。

 

 そこには伏黒甚爾らしくぶっきらぼうだがどこか気を遣っているような雰囲気の文章が書かれていた。

 当たり障りの無い挨拶の後、気をしっかり持て!だけど絶対最後まで読めよ!!と念押しされた一枚目。

 甚爾君がここまで念押しするってよっぽど重大なことなんかな?と首を傾げながら二枚目を手に取る禪院直哉。

 

「・・・え?」

 

 そして、ピシッと固まった。

 数年前の伏黒甚爾が忌庫でそうなったように今度は禪院直哉も固まった。

 視線だけは手紙を読み進め、震える手で三枚目、四枚目を手に取り最後に同封されていた写真も見終わる。

 

「・・・ウソヤロ、ナニコレ」

 

 

 その後、全力疾走で且つ誰にも見られないよう慎重に禪院家に帰った禪院直哉は忌庫に直行。

 そして伏黒甚爾がかつて発見してしまったそれを確認し、膝から崩れ落ちた。

 

 

 ◆そして、現在

 

 伏黒恵は混乱していた。

 禪院真希から聞いた禪院直哉という人間性はハッキリ言って酷い。

 なのに実際に会ってみればそんなことは無く、むしろこちらを物凄く気遣ってくれている。

 

 乙骨憂太も混乱している。

 同級生を虐待していた禪院直哉だが、話してみればむしろ善人寄りだ。

 だが油断は出来ないと警戒は怠らない。

 

 虎杖悠仁も混乱している。

 直哉さん気の良いお兄さんなのに何で2人とも警戒してるんだろう?

 あと何で直哉さん、伏黒の事を物凄く気不味そうに見てるんだろう。

 

 脹相は幸福の絶頂にいる。

 弟の手料理、最高に美味い!

 

 

「・・・その、出来れば虎杖君はちょっと席を外して欲しいんやけど駄目かな?」

「申し訳ないですけど、今の状況で僕が虎杖君から目を離す訳にはいきません。伏黒君も同じです。彼を貴方と二人きりにする訳にはいきません」

「まあせやろなぁ・・・真希ちゃんと友達ならそらそうなるわな」

 

 仕方ないと覚悟を決めた禪院直哉。

 まずは虎杖悠仁に声を掛ける。

 

「虎杖君、ごめんやけど今からする話終わるまで・・・いや出来たらその後も限界まで宿儺のこと抑え込んでおいてくれへん?」

「え、俺?良いけど何でッスか?」

「多分宿儺がマジギレして俺を含む禪院家・・・多分恵君も殺しに掛かると思うから」

「ハッ!面白いではないか」

 

 虎杖君の頬に浮かんだ口から宿儺の声が出る。

 

「俺が貴様等のような有象無象のやることにいちいち腹を立てると思うのか?ましてマジギレだと?弁えろよ羽虫」

「宿儺、お前!」

「黙ってろ小僧。良いだろう、直哉とやら。そこまで言うなら『俺を激昂させた場合、お前と伏黒恵には危害を加えない』と縛りを結んでやろう。当然、下らない内容だったら殺すがな」

「そんなこと許す訳「あ、マジで?縛ろ縛ろこれで俺と恵君の命保証されたわ」無いだろう・・・って、直哉さん!?」

 

 両面宿儺との縛り。それを嬉々として結んだ禪院直哉に乙骨憂太と伏黒恵は驚愕する。

 そもそも負の感情をトリガーにして呪力を扱う呪術師達にとって感情のコントロールは基礎技術。

 ましてそれが両面宿儺ともなればマジギレさせるというのがどれ程至難の業か解らない筈が無い。

 

 

「大丈夫や、まず間違いなく激昂するから」

「・・・あの、なんか滅茶苦茶怖くなって来たんですけど一体禪院家に何があるんですか?そして俺は何を継がされようとしてるんですか!?」

「なんか僕も怖くなってきたんだけど・・・」

 

 今更ながらに危機を察知した2人。

 なお虎杖悠仁は全く気が付いておらず、おかわりを求めた脹相の椀に新しい肉団子を盛っていた。

 

 

 ・・・そしてとうとう語られる、禪院家最大の闇。

 

 

 

 

「時間が無いから担当直入に言うけど・・・禪院家の忌庫にな、宿儺の○○○(ピー)が保管されてるねん」

 

 

「「「「「・・・・・・は/え???」」」」」

 

 

 

 

 ◆ここから先はアレな内容なので、不快に感じる方は閲覧注意です。

 

 時は千年前、両面宿儺が己の指を呪物化した後に遡る。

 平安最強にして最凶の術師が厳密には死んでいないが世を去った平安時代。

 しかし彼を退治する為に多くの犠牲者を出し、実力者の殆どが息絶えた今日本は依然として危機的な状況だった。

 

 宿儺がいなくとも呪術最盛期と謳われるこの時代、強い呪霊はまだまだ多数存在しておりそれを退治出来る術師がほぼいなくなったのだから当然だ。

 とはいえ術師とはそう簡単に育つ者では無い。

 故に、天元による浄界の生成が早急に求められた。

 

 天元としてもそれを拒む理由は無く、むしろ積極的に取り組んでいた。

 だがそれだけでは足りない。

 

 浄界で安全地帯を確保しても呪霊は依然として存在し続ける。

 それを退治する強い術師が、何より失ったマンパワーの確保も急務であった。

 朝廷も天元からの進言を重く受け止め動き出す。

 

 浄界に関しては天元にほぼ丸投げする代わりに術師の書くほどは朝廷が全面的に取り組む事になった。

 生き残った術師の保護と生活保証。

 現代で言う育児休暇や育児手当、婚活のサポートまで幅広く対応した。

 

 暫くして浄界を生成する目途が立ったある日。

 その要として目を付けたのが宿儺の亡骸だった。

 主の玉体がただ朽ちて蟲に喰われる事など認めなかった裏梅が自身の術式で凍結させ飛騨の山奥に隠したそれを天元は見つけ、即身仏へ変えて用いる事にしたのである。

 

 1度浄界を生成してしまえば随時手を加えて強化出来る為、いずれはこの即身仏無くとも浄界を運用出来る見込みもあった。

 そうすればいつか復活した両面宿儺に対抗する手段の1つとして活用出来るかもしれない。

 

 そしていざ宿儺の亡骸を即身仏へと加工しようとした所で、何故か朝廷から待ったが掛かった。

 

 

 

「それを捨ててしまうなんてとんでもない!!」

「・・・はい?」

 

 

 曰く、血統が良ければ強い術師が生まれるのであれば両面宿儺とは最高の血統では無いか?

 毒を持って毒を制するように両面宿儺の血筋で未来に復活する両面宿儺に対抗するべきである!

 

 ・・・マジでイカれている。

 だが当時の追い詰められていた人々、特に術師にとっては天恵だったらしい。

 なんなら最初は困惑していた天元も説明された結果、成る程と納得した。

 オイ待て誰か止めろ。

 

 こうして、解凍された宿儺の亡骸から○○○(ピー)が天元の結界術によって鮮度を保ったまま摘出された。

 だがここで問題が発生する。

 

「宿儺の△△△(ピー)が強すぎて受け入れられる者がいない・・・だと?」

 

 そもそもよく考えてみたら両面宿儺、美食美酒は勿論美女も飽きる程味わった癖に子供が出来たという噂は全く無い。なんだかんだで相手の女を殺すような事もしていなかった。

 まさか種無しかと思われたが調べてみればそんな事は無い。

 単純に生命として強すぎた両面宿儺の△△△(ピー)も人類が耐えられない程強かっただけである。

 

 これには頭を抱えた一同。

 偶々そういう相性を調べられる術式持ちがいたので調査してみれば唯一、後の禪院家に当たる女性が僅かながら耐性を有していると判明。

 彼女の子孫から両面宿儺の△△△(ピー)を耐えられる者が生まれる事を祈って、○○○(ピー)は彼女の一族に受け継がれることになった。

 なお、そのままではいくら天元の結界術でもその内腐敗することは確定だったので当然のように呪物化する事が決定。

 

 浴を行う為に蠱毒を行おうと生物の厳選に入った天元達。

 だが

 

 

 

「それならほれ、アレに放り込めば良いじゃろ」

 

 

 

 

 ・・・と、藤氏のとある人物。

 空を面で捉える術師の上司が指差したのは両面宿儺と術師達の戦場後。

 多数の術師達が死に絶えその血肉が彼等の死ぬ際に放った呪力と共に染み込み草の一本も生えない呪われた地となったその場所である。

 その悍ましさ故か蟲はおろか微生物すら近付かず、腐ることも朽ちることもなく残る肉と乾くことの無い血の池がそこにはあった。

 

 ここも早急になんとかしなければならない問題の1つであり、なら両面宿儺の○○○(ピー)にこの呪力全部吸わせれば一石二鳥の万事解決じゃね?ということらしい。

 

 おい待てマジで止めろ人の心とか無いのか!?

 ・・・そうツッコむ者は誰一人としていなかった。

 

 そして十月十日後、無事に?特級呪物は完成した。

 ついでに浄界も完成した。

 

 

 

 ◆当時を振り返る天元。

 

「言い訳をするつもりは無いが、あれは当時に出来る私達の精一杯だった」

 

 追い詰められた獣だったのだよ私達はと自虐する天元。

 

「だが想定外だったのは、当時の私達がそう願ったからなのか禪院家にも私と六眼のような因果が定められてしまったことだ」

 

 両面宿儺に対抗する為に両面宿儺の子供を作る。

 禪院家の女性の中でその可能性がある術師は本人の自覚無く、その因果に囚われている。

 これまで何人もその可能性を秘めた者達が生まれたが両面宿儺の子供は依然として誕生していない。

 これは偏に禪院家の男達が頑張ったからである。

 

「当時はともかく、次に可能性がある子が生まれたのはそれから100年以上経ってからだった。その時にはもう呪術界は大分復興していて当時を知る人間は私以外にいなかったし常識というか倫理観も真面に戻っていた」

 

 だから禪院家の男達は頑張った。

 自分達が代々受け継いできた秘宝にそんなものがあることを知って絶望しながらも、それを使おうとする因果に囚われた身内を決死の覚悟で止め続ける日々。

 外部には絶対に漏らせない身内の争いを数百年も続ければ禪院家の中で女性への扱いが段々アレになるのは自然の流れだった。

 相伝術式への執着もこうして育まれていく。

 毒を持って毒を制する?否!禪院家が誇る術式で両面宿儺を討伐してみせる!!

 という意識からである。

 

 まあ最も長い年月を経て思想はすっかり廃れ、今では立派なドブカス一族になってしまったのであるが。

 

 

「ちなみに因果に囚われているのは投射呪法もだよ。最速且つ相手をフリーズさせる事が出来る術式は暴走する身内を止めるのに最適だからね」

 

 

 さて、と天元は続けた。

 チャートが崩れたと言っておきながらやはり諦めておらず死滅回遊を実行した羂索。

 やはり諦めていなかったかと悟った天元はこんなこともあろうかと用意していたもう一つの切り札を使うことを決意した。

 

「そして今、とある禪院家の娘が忌庫に保管している呪具を取りに向かっている。さて君はどうするかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆そして始まる、禪院家クライマックス

 

「・・・これが昔甚爾君が俺に教えてくれた禪院家の闇や」

「「「「・・・・・・」」」」

 

 空気が、凍っていた。

 虎杖悠仁も伏黒恵も乙骨憂太も、両面宿儺ですら固まっていた。

 

「俺も昔の記録とか片っ端から調べたんやけどな?この因果に囚われたうちの女の子って上昇志向、特に当主になろうとする意思がある子が多いらしいんよ」

「「・・・・・・」」

「でな?この子等、人格真面やったから始めの頃に対処してたうちの男達も何かの呪いだと思って解呪して正気に戻そうとしたりそもそも忌庫に近付けないようにしてたらしいんやけど、因果が強すぎるせいかどれだけ対策しても必ず忌庫に入ってそれを目にするらしくてな?その瞬間、人格狂って宿儺の○○○(ピー)を死ぬ物狂いで使おうとするらしいんよ」

「「・・・・・・」」

「ちなみにこれ、本来なら当主候補しか知らない秘密な?つまり歴代当主は先代からこれを押し付けられ続けてたんやけど、ちゃんと事前に説明された上で皆当主を継いどる」

「「・・・・・・」」

「だから俺驚いたんよ、恵君この事知らん筈なのに当主に指名されてて。それで恵君が当主になるって宣言する前に慌てて説明しに来たらそもそも次期当主に指名されてた事すら知らされてへんって、本当にオトンは何を考えとるんやっ・・・」

 

 頭を抱える禪院直哉。

 だがそれは伏黒恵も同じだ。

 戦力増強の為に禪院家の呪具さ喉から手が出る程欲しい。

 これがもしも禪院直哉から説明される前に当主に指名された事を知っていたら迷わず受け継ぐと宣言していた。

 だがそれはつまりとんでもない特級呪物の管理を引き受けるという事でもあり、後でその事を知ったら発狂していた自信しか無い。

 全力で駆け付けてくれた禪院直哉には感謝しかない。

 

 

 

「・・・ありがとうございます直哉さん。ところで、もしかしてなんですけど直哉さんも当主なる気無かったりするんですか?」

「当然やろ?誰があんな特級呪物大事に保管してるヤバい家を受け継ぐか」

「ですよね。・・・あの、もしかして真希さんへの対応って」

「正直もの凄くやりたく無かったけど、間違いなく今の時代におけるあれな因果に囚われた子やからな。流石に殺すつもりは無かったんやけど最低でも心を折って禪院家から放逐すればワンちゃんいけるかな?とは思っとった」

「あー・・・」

「別に言い訳するつもりは無いし許せとも言わんよ?真希ちゃんは君らにとって友達で先輩なんやから俺のことはあの子を虐めたいけ好かない奴と思って恨んでくれてもええ。むしろそれが普通の反応や」

 

 そう言って禪院直哉は乙骨憂太へ視線を向けた。

 彼は特に真希ちゃんと仲が良いと聞いていたので死なない程度の1発ぐらいは甘んじて受けるつもりである。

 

 だがおかしい。

 乙骨憂太は何故か蒼ざめた顔で大量の冷や汗を流していた。

 ・・・嫌な予感がする。

 

「・・・な、直哉さん」

「どしたん、乙骨君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「実はここに着く直前に、『フルダテから伏黒を次期当主にするって連絡があったから呪具取ってくる』って連絡が真希さんからあって───」

「・・・嘘やろオイ」

「ま、真希さん?」

 

 とんでもないフライングが発生した。

 そして更に事態は加速する。

 

 

「あれ、パンダ君から電話?もしもし───「憂太!そこに伏黒はいるか!?いないよな?いないって事で話すぞ!!」ちょっ、待って」

 

 焦りまくるパンダからの連絡。

 伏黒はとても嫌な予感がした。

 

 乙骨憂太が制止する間もなく、パンダは喋る。

 

 

 

「伏黒の姉ちゃんが呪肉体で、中身が宿儺にヤバいガチ恋してる術師みたいなんだけど『宿儺の子を産むのは私よ!!』とか訳の解らない事を行ってどっかに行った!!よく解らんけど多分これ知ったら伏黒の奴発狂するだろうからあいつに知られる前に急いで確保するぞ!!」

「・・・ウソダロ」

 

 伏黒恵は白目を剥いて気絶した。

 慌てて駆け寄る虎杖悠仁。ついでに脹相。

 禪院直哉は天を仰いだ。

 

「・・・つまりあれか?今禪院家には因果のせいで宿儺の子を産もうと暴走する可能性の高い真希ちゃんと宿儺にガチ恋してて全力で宿儺の子を産もうとするヤバい平安呪術師が向かってて禪院家で鉢合わせするかもしれんと?・・・いや、真希ちゃんの因果を考えたらこれ間違いなく忌庫で激闘間違い無しやな。せめて恵君に話してから動けや真希ちゃん」

 

 多分速度的に俺じゃ無いと間に合わんですやんと重い腰を上げる禪院直哉。

 

 

 なお、自分の知らない内に自分の○○○(ピー)を亡骸から取られ呪物に加工された挙げ句訳の解らない因果に囚われ続けていたと知った両面宿儺は未だに意識が現実に戻って来ていなかった。

 

 

 

 

 ◆天元の弁明

 

「今まで暗躍し続けてきた上にこれだけ壮大な計画を立てていた羂索の事だ、両面宿儺とお互いがお互いを助けるような縛りを結んでいることは想像出来た」

 

 一仕事終えたと茶を啜る天元。

 

「ならば両面宿儺をピンチに陥れれば従者の裏梅は勿論、羂索もそれを助ける為に動かざるを得なくなることは自明の理。これで次の手を打つ時間的余裕が出来た」

 

 湯呑みを置いた天元。

 

「・・・さて、次はどうするか。羂索達に追撃するのも良いが死滅回遊のプレイヤー達への策を実行するのも良いかもな」

 

 羂索は天元の事を1000年間、ただ今を維持し続けるだけで成長しない老害と評した。

 だが本当にそうだろうか?

 羂索が1000年の時で数々の経験を積んだように、天元もまた1000年間で様々な経験を積んできた。

 その結果天元は誰よりもイカれ、誰よりも呪術師として完成したと言ってもいい。

 

 

 

 

「・・・それはそれとして伏黒姉弟にどう詫びたら良いか考えるのを手伝ってくれ」

「謝る位ならそもそもやるな!!」

 

 対面に座る九十九由基は当然ツッコんだ。

 呪術界の要で無ければ術式使用の拳を叩き込んでいるところである。

 

 

 

 

 

 ◆その頃の羂索

 

「天元ーーーっ!!!おま、お前エエッ!!!それは、いやそれも!絶対にやっちゃいけない手段だろうが!!人の心とか無いのか!?というかこの1000年間で何があればこんな対応思い付くようになる!!??そもそも、何がどうして宿儺のアレを呪物に加工した!?!?!?」

「あの痴れ者がああああああああああーーーっ!!!!」

 

 ガチギレしながら全力で禪院家へ向かう羂索と裏梅。

 

 

 ◆最後に、今回最大の被害を被った最凶の呪術師。

 

「・・・・・・コロス」

 

 はい、見事にガチギレしたので禪院直哉と伏黒恵の命は保証されました。

 

 

「小僧ぉおおおおおおおーーー!!!代われ!今すぐ代われ!!痴れ者共を鏖殺するまで肉体を貸せェエエエエーーーッ!!!!!!」

「え、普通に嫌だ。渋谷であれだけ殺したお前に貸す訳無いだろ」

「おのれェエエエエーーーっ!!!」

 

 

 両面宿儺は人生最大の後悔をしていた。

 なんだかんだで甘い小僧である。

 渋谷で無駄に鏖殺さえしなければ事が事なので身体を貸してくれていたかもしれないが、今の虎杖悠仁に両面宿儺への憐憫や同情は無い。

 残念ながら当然である。

 

 

 

 

 

 






 読了ありがとうございます。
 二次創作での禪院家のあれこれ読んでたら思い付きました。
 
 ・・・ダンまちの方もだけどキャラ改変やり過ぎた感が強い。
 原作ファンの方々、申し訳ございません。
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