ここまで来たら思い付いたネタを一気に書ききろうと思いました。
という訳で、次話投稿です。
「・・・天元、お前やっぱり人の心とか無いだろ」
「・・・済まない、つい反射的に返答してしまったんだ」
最早怒りを通り越し、呆れた目で天元を睨む九十九由基。
睨まれた天元はかなり申し訳ない気持ちで一杯だった。
何故なら
「───落ち着いて真依ちゃん!他に絶対方法がある筈だからそれ置いて!?」
「そんな理由で人生終わらせて良いのあんた!?」
・・・今にも愛銃で自殺しそうな禪院真依がいるからである。
西宮桃と庵歌姫が必死で止めているので今はなんとかなっているが、そう出なければ間違いなく既にあの世へ旅立っていること間違い無し。
必死に自殺しようとしている。
なんでこうなったかというと、お察しの通り天元がやらかしたからである。
禪院真希が禪院家本家へ向かったと聞いた天元は彼女に絡みつく因果の事を妹である禪院真依に伝えたのだ。
天元としては当時の自分達が原因で生じた因果の為、せめて身内に事情を伝え謝罪する事が誠意だと考えたからである。
つまり、
「ごめん、君のお姉さん私達が原因で宿儺の○○○(ピー)を求めて狂いそう」
「・・・ウソデショ?」
である。
実際はここまで軽い口調では無かったが、内容は端的に言うとこれだ。
聞かされた禪院真依は当然膝から崩れ落ちた。
複雑な感情はあるものの、大切な姉であることに変わりは無い。
何か、何か防ぐ方法は無いのかと尋ねた禪院真依。
「かなり強固な因果だから難しいな。私達の因果にしても六眼はその時の所有者が殺されたところで別の人間に発現して必ず私と星漿体の同化に立ち会った」
だが、と天元は続ける。
「思い付く手段は2つある。1つは宿儺の○○○(ピー)を破壊することだがこれは現実的ではない。何せ元々規格外だった代物を呪術最盛期に活躍した上澄み呪術師達の呪力で浴を行って仕上げた呪物だからね」
そして
「2つ目は、天与呪縛の完成だ。私達の因果を破った伏黒甚爾。彼はあらゆる因果から解放された存在だった。だからもし禪院真希の天与呪縛が彼と同じレベルになれば恐らくその因果から解放されるだろう」
「・・・天元?1つ目はともかく2つ目はこの娘に言ったら駄目なやつじゃないか?」
「え?・・・あっ」
とまあそんな流れで現在、禪院真依は全力で自殺しようとしている訳である。
姉は知らないが、自分達のどちらかが死ねばどちらかが完成するということを妹の方は察していた。
姉を色々な意味で助ける為に自分の命を惜しまない程度には姉が大好きな禪院真依である。
「離して、離してよ!!このままだと真希がっ、お姉ちゃんが!!!」
「今直哉さんが向かってるから落ち着いて!!」
「あのドブカスが何とかしてくれる訳ないでしょ!?むしろ嬉々として煽ってくるわよ!!」
「あ゙あ゙あ゙あ゙っ!事情は解ったけどもう少しやり方があったでしょ禪院直哉!?」
「信頼が底辺下回ってる!!」
現在京都へ向けて全力疾走中の禪院直哉はくしゃみをした。
風邪引いたかな?と本人は噂されている等と思っていない模様である。
「あー、もう!!この際五条でも良いから何とかしなさいよ!?封印されてるって言っても五条ならなんとか出来るでしょ!?無理なら誰か何とかして!!!」
「無茶言わないでよ歌姫先生!?」
支離滅裂な事を叫ぶ庵歌姫。
思わずツッコむ西宮桃。
必死に自分を犠牲にしようとする禪院真依。
どうしようこれ・・・と天を仰ぐ天元と九十九由基。
・・・そんな彼等を見ていた一人の男がいた。
◆既に開幕していた禪院家クライマックス
「どけ三下共!宿儺様の○○○(ピー)は誰にも渡さん!!」
「引っ込むのはあんたよ裏梅。そもそもあんたは男でしょうが!宿儺の子を産むのは私よ!!」
「ほざけ変態!!」
「変態はあんたの方でしょうが!!」
「うぉおおおおお!?」
「ぬああああああ!?」
羂索の呪霊で跳んできた裏梅。
蟲の羽を造って同じく飛んできた万。
彼女?等は同じタイミングで禪院家に到着した。
空から現れた彼女達を見て敵襲か!?と警告していた禪院家御一行だが
「「宿儺/様の○○○(ピー)を寄越せ/寄越しなさい!!!」」
と叫ばれて大困惑。
え、宿儺?宿儺ってあの宿儺だよな?
最凶最悪の呪術師、呪いの王の○○○(ピー)がなんで出て来るの?
あるのか!?禪院家に!?宿儺の○○○(ピー)が!?
嘘だろオイと顔を引き攣らせる禪院家御一行。
「痴れ者共が!ここをどこだと思っている!!由緒正しき禪院家だぞ!?禪院家に宿儺の○○○(ピー)がある訳無いだろうが!!侮辱するのもいい加減にしろ!!!」
・・・訂正。
禪院扇だけはキレた。
他の面々は自分の家がヤバいという自覚はあるのでもしかして!?と思っていたがこの男は良くも悪くも禪院家の一員としてのプライドが高いので全力で否定した。
今ばかりは輝いている禪院扇である。
「痴れ者は貴様だ阿呆!私が主の、宿儺様の気配を間違えるものか!!」
「私が愛する殿方の、宿儺の○○○(ピー)の気配を感じ取れない訳無いでしょうが!!」
「何を訳の解らない事を言っている痴れ者共が!!」
何故か会話を成立させている3人。
微妙に噛み合っていないのだが、当人達は必死なので誰もツッコめない。
というか、ツッコみたくなかった。
「もう良いわ!殺してでも奪い取る!!」
「させるかたわけ!!」
「手を貸せ甚壱!痴れ者共を仕留めるぞ!!」
「(お前等この空気で戦えるのかよすごいなオイ!?)お、おう・・・取り敢えずお前等は下がってろ。黒髪の方は分からんが白髪の方は渋谷での報告にあった氷を使う術師だろう。下手したら一網打尽にされるから高専への連絡と忌庫の警護を頼む」
「「「「「は、はい!(やっぱり当主にはこの人がなって欲しいなぁ)」」」」」
まあ当然、ヒステリックな女共が口論ばかりで手が出ないなんてことあり得ない訳で結局戦闘になるのであった。
なお混乱しながらも禪院甚壱は的確な指示を出しており、当主候補に相応しい貫禄を見せ付けている。
禪院扇?お察し下さい。
こうして、史上初。
宿儺の○○○(ピー)争奪戦が始まった。
とはいえ相手は呪術最盛期、平安時代を生きた上澄みの術師である。
いくら特別1級術師とはいえ相手が悪い。
イカれた女共どうしで殺し合いながら片手間に相手をしてくるからこそ何とか拮抗しているに過ぎない。
あと、禪院扇の術式が炎で裏梅の氷を溶かせる事も結構大きかった。
禪院扇、間違いなくこれまでの人生で1番輝いている。
◆一方その頃
「やっぱり駅弁よりもハンバーガーだよな。ジャンクフード最高」
禪院真希は京都に向かう新幹線の中でハンバーガーを食べていた。
駅ナカに入っている有名チェーン店でテイクアウトした物であり、ざっと3人前はあるがもう既に殆ど完食している。
はい、皆さんお察しの通り彼女はまだ禪院本家へ到着しておりません。
そもそも渋谷事変で東京が壊滅したので電車が動いている最寄りの駅へ高専から数時間は掛かるうえ、関東圏から地方へ逃げ出そうとする国民が多いので新幹線は連日ほぼ満席状態。
むしろ運良く京都行きのチケットを取れただけでも因果が頑張った事が伺える。
禪院真依達が禪院真希に電話を1本入れるだけでなんとかなる状況にも関わらずそれに誰も気が付いていないのも因果が頑張っているからだ。
これだけ因果が頑張っているのだが、禪院家クライマックスに彼女が間に合うのかどうかはまだ未定である。
◆再び、禪院本家。
「派手にやってるなぁ。しかしこの1000年でここまでくだらない理由で起きた戦いは無いからちょっと面白いね」
羂索は上空から禪院本家を見下ろしていた。
この状況は1000年間を生きた彼にしても初の光景らしい。
「私に今の今までその存在が知られなかったということは相当厳重な封印を呪物だけでなく忌庫自体に掛けているな」
眼下には、とある建物に集う禪院家の術師達。
本人達は忌庫を守る為に当然の事をしているつもりなのだろうが、それは逆に忌庫の場所を教える行為であった。
「仮にも宿儺の肉体が呪物化した物。ならばこの程度の攻撃で傷付くことはないだろう」
───極の番、うずまき!!
羂索の術が放たれ、忌庫が隠されている建物は吹き飛んだ。
警戒していた術師達もまさかの上空からの攻撃に対応する事が出来ず、吹き飛んでいく。
「さて、あとは宿儺の○○○(ピー)を回収すれば終わりか。・・・改めて口にしても酷いなオイ」
げんなりしながら、煙が収まっていくのを待つ。
建物を吹き飛ばしても呪力を感じ取れない事から、相当強力な封印がされていて探すのは手間だと顔を蹙める羂索。
やがて全ての煙が晴れ───それを見つけた。
「・・・」
それは、圧倒的な存在感を放っていた。
呪力を感じ取れずとも、存在感だけで瓦礫の山の中で随一の存在感を出している。
見つけた羂索は暫く呆けていたが、やがて一言だけ口にした。
「・・・いやだから人の心!!」
◆天元の気遣い
「万が一・・・いやほぼ確実にだが禪院真希が宿儺の○○○(ピー)に到達してもそれを目視しないようにモザイク処理を施した結界を遠隔で張った。強度もかなりの物だから安心して欲しい」
「宿儺の○○○(ピー)にモザイク処理をするって、お前宿儺に殺されるんじゃないか」
直接見るよりもヤバい状態になってるだろそれ。
いや、確かに直視しなければ大丈夫じゃね?とは思うけれども!?
何を良い仕事したみたいな雰囲気出してるんだよシバくぞ。
「どう考えても絵面がヤバ過ぎるだろ」
「禪院真希が狂うのに比べたらマシだろう?」
「いや、そうだけどな?」
なんかこう、世界観が変わったような感じがする。
具体的にはダークでファンタジーな世界から一気にコメディ100%になったようなこれじゃない感。
「それはもう良いとして、伏黒津美紀の方はどうするんだ?このままだと身体を乗っ取られたまま宿儺の○○○(ピー)でとんでもない事になるぞ」
「安心しろ、ちゃんと対策はしてある」
というか対策の1つ2つ用意してなければこんな手を打っていない。
そうでなければ本当に人の心が無いだろう。
なんてほざく天元に対していやお前に人の心は無いだろう今までのあれこれ考えてと返す九十九由基。
◆最終決戦
モザイク処理された宿儺の○○○(ピー)が露わになった瞬間動いたのは万。
「宿儺の○○○(ピー)!これで彼の子を産めば私が名実共に宿儺の妻になれる!!」
平安時代最狂と言っても過言ではない女に躊躇は無かった。
特級呪物を目にして固まった禪院扇と禪院甚壱を放置して真っ先に本命を取りに行く。
「させるか!!」
それを許さない裏梅。
宿儺の従者はスピードでは万に勝てないと判断し、己の術式を全力で使用。
狙いは万・・・ではない。
「ちょっと裏梅あんた何してくれんのよ!?」
凍ったのは特級呪物───宿儺の○○○(ピー)である。
それを見ていた羂索は唖然。
嘘だろ主の○○○(ピー)を結界諸共とはいえ凍らせるってマジ?
だが裏梅はそもそも1000年前に朽ちさせないよう宿儺の○○○(ピー)を冷凍しているので今更だ。
なお、従者が今やっている行いを何一つ知らない宿儺だが丁度同じタイミングで何やら寒気を感じていた。
宿儺の○○○(ピー)は氷の中でも依然として存在感を保っている。
「貴様のようなイカれた女に宿儺様は渡さん!!」
「いや、君もイカれまくってるからね?」
「おのれ裏梅!ならこうよ!!」
今度は万が術式を発動。
裏梅の氷をなんとかすべくある物体を構築する。
内心げんなりとしていた羂索だったが、万が構築した物を見て顔を引き攣らせた。
「大量のダイナマイト!これであんたの氷なんか木っ端微塵よ!!」
「ちょっと待とうかその量だと氷どころかこの辺一帯ごと宿儺の○○○(ピー)も木っ端微塵になるんじゃないかな!?」
世界的に有名な某平和賞の創設者もまさか自分が作った物がこんか使い方をされるとは思わなかっただろう。
ある意味、平和から最も遠い使用方法である。
「裏梅も正気に戻れ!宿儺が大事ならそんなことをするんじゃない!!」
「「何を言っている/のよ?宿儺/様の○○○(ピー)がこの程度で傷付く訳無いだろう/でしょうが!」」
「嘘だろ君達」
宿儺への忠誠と愛情が極まりすぎて宿儺の○○○(ピー)の耐久力を高く見積もりすぎじゃないか!?
え、大丈夫?宿儺と痛覚リンクしてないよね?
「ちゃんと加減してるわよ。オクタニトロキュバンとかいう爆薬じゃなくてダイナマイトなら控えめでしょ?」
「それ1番威力ヤバい火薬!そもそも選択肢に上げるなというかどこで知った!?」
「【最強の火薬】ってググったら出てきたわよ」
「おのれGoo○le!?」
構築術式と検索エンジンの組み合わせヤバくない?
平安一ヤバい女のヤバさが加速してるんだけど、宿儺大丈夫?
というか一刻も早くここを離れないとマズい!
「すまない宿儺!耐えてくれ!!」
1番スピードがある呪霊に飛び乗りその場を離れる。
幸い、裏梅の術式で辺りは凍っており起爆する為の多少強引に動いても火花が生じる心配は無い。
万が火を出す道具を作って着火するまでに脱出出来る。
「(なんか宿儺の怒鳴り声が聞こえた気がするけど気のせいだからOK!)」
なお、丁度この時宿儺が前触れなく「巫山戯るなよ貴様等ぁあああっ!!」と叫んで虎杖悠仁達が驚いていたのは余談である。
逃れられた事に安堵する羂索。
「いい加減にせんか貴様らぁああああああっ!!!」
・・・だがここで、空気を読めない男がやらかした。
先程羂索が放ったうずまきの余波で吹き飛ばされた禪院扇である。
同じく吹き飛ばされた禪院甚壱は宿儺の○○○(ピー)の奪い合いに巻き込まれる等御免被るし何ならそのまま持って行って欲しかったので隊員達の安否確認をしていた。
対して禪院扇はまあなんと空気を読めないというかこれだから禪院扇はと言いますか、当然の如くやらかしたのである。
何をやらかしたか?
ヒント、禪院扇の術式である。
キレた禪院扇は万が何を作ったかを碌に確認せず、怒りのまま刀に炎を纏わせて裏梅達に向けて投擲したのだった。
そうなると当然。
「ちょっ、おまっ!?」
「っ、霜凪!!」
「鎧を構築っ───!」
響き渡る爆発音。
羂索が放ったうずまきよりも遥かに強大な轟音が響き、衝撃が辺りを襲った。
即ち、大爆発である。
その熱量は裏梅の氷を溶かし一気に気体へと変化させた。
つまり水蒸気爆発も連鎖的に発生し、禪院本家は文字通り木っ端微塵になったのである。
耐性を崩し地面に落ちた羂索。
上手く受け身を取れた為幸いにも軽傷で済んだ。
裏梅達はどうなったかと辺りを見渡す。
「・・・嘘だろ?」
そして、変わらず存在感を放つそれを見つけた。
即ち、宿儺の○○○(ピー)INモザイク結界である。
「・・・いや、なんであんなに巫山戯た見た目なのに耐久力高いんだよ!?天元、お前この1000年間で何を頑張ったんだ!?」
天元様が禪院真希の為に遠隔で張った結界、まさかの無事である。
遠隔で張ったというだけで相当な技術なのだがそれが強度も随一とか訳が分かりません。
閉じない領域を習得している羂索でも無理なある意味神業である。
◆結界が無事だった理由
「五条悟を主として主従関係を結ぶ代わりに結界術の精度と出力を上げるという縛りを結んだら訳が解らないレベルで強化されたんだがどう思う?」
「いや、五条君どれだけヤバい奴なの?どんだけデメリットって思われてんの」
なお、仮に同様の縛りを伊地知潔高が結ぶと1級呪霊を余裕で払える呪力出力等々のメリットを得られる程のデメリット認定されているらしい。
◆ある意味現代最強のお陰で助かった宿儺の○○○(ピー)
結界によって守られていたとはいえ、衝撃によって遠く遠くへ吹き飛ばされる宿儺の○○○(ピー)。
だが先程の爆発で死んではいないだろうがそれなりにダメージを受けたのか裏梅と万が反応する気配は無い。
禪院家の面々も、禪院甚壱が救護に走り家人も含めて全員を保護し離れていた為それに気が付いていない。
羂索しか気が付いていないのだが、確保したら裏梅と万に襲撃されるし確保しなかったら宿儺に鏖殺されるのでマジでどうしようと頭を抱えていた。
つまりこの場面で宿儺の○○○(ピー)を手にするのは、そう運命付けられている人間を置いて他にいない。
「・・・ん?なんだあれ?」
即ちそういう因果に絡まれている女、禪院真希である。
ようやっと京都に到着して実家へ向かっていたらそちらの方面で大爆発発生。
何事だと呆けていたら、空から降ってくる宿儺の○○○(ピー)に気が付いたのである。
天元のモザイク結界は健在だが流石に罅が入っており少しでも衝撃を与えると崩壊しそうな状態だ。
具体的には、地面に落とすのは勿論キャッチしただけで結界は壊れ宿儺の○○○(ピー)がコンニチハしてしまうだろう。
つまりそうなったら、禪院真希大ピンチである。
因果に狂わされてきた歴代禪院家の女性陣と同じく正気を失うだろう。
「───させるかあ!!!」
「・・・は?直哉?」
だがここで救世主登場である。
五条悟を除いて現代最速の呪術師、禪院直哉ここで登場。
実家が爆発したにも関わらず一切動じず(家が物理的に無くなったから当主云々無しで良し!とむしろ喜んでいた)走り続けた禪院直哉はモザイク結界に覆われた何かと禪院真希を確認し状況を把握。
術式全開、最大速力で突っ込み───。
「吹き飛べやっ!!」
モザイク結界に渾身の蹴りを叩き込んだ。
瞬間、それは途轍もない速度で地面と平行に吹き飛ぶ。
蹴りが直撃する瞬間にモザイク結界を呪力で補強した為、それはすぐに壊れる事は無く暫く形を保ったまま吹き飛び続け禪院真希の視力でも見えなくなってから崩壊した。
「セーフっ!!」
「いや、何がだよ!?」
禪院毛の中でも特に嫌っている男だが、目の前で行われた奇行に思わずツッコんだ禪院真希。
自分が救われた事を彼女が知るのはもう少し後である。
◆これで終わったと思ったら大間違いである
「おー、ナイスシュート」
一連の流れを見ていた羂索は思わず拍手をしていた。
禪院直哉が見せた超高速で突っ込み物体に接触した瞬間にその物体を呪力でコーティングするという呪力操作の速度と精度に感嘆したのである。
とはいえ今度は超スピードで禪院本家跡地に飛んでいく宿儺の○○○(ピー)をどうしようと悩んでもいた。
「まぁあの方向なら彼女達がいるし積極的に確保しに行かなくても大丈夫か」
最終的に裏梅が確保するのがやっぱりベストだろうからそうなるように立ち回るかと決めた羂索。
この時彼は油断していた。
自分が襲われる可能性を忘れて警戒を怠っていた訳では無い。
もっと根本的な事が頭から抜け落ちていた。
即ち、天元がまだやらかす可能性を忘れていたのである。
そのツケはすぐに払うこととなった。
「ん?」
突然、吹き飛んでいく宿儺の○○○(ピー)の造形が変わった。
いや、全くの別物になったのである。
変化したのではなく、まるで別の物体と入れ替わったかのように。
「あれは・・・あの男の術式か」
思い出すのは渋谷で虎杖悠仁と共に真人を追い詰めた東堂葵の術式。
一瞬だが彼と同じ呪力を感じた為、まず間違い無いだろうが不思議なことに術者の姿はどこにも見当たらない。
そもそも彼の術式は左手の喪失と共に失われている筈である。
「・・・まさか乙骨か?」
乙骨憂太が術式をコピーして使ったのかと思ったが、彼特有の強大な呪力は全く感じないしそれならそもそも東堂葵の呪力を感じ取れた事がおかしい。
思い返してみれば真人の手を使って術式を使ったところが1度あったので今回もそれと同じ方法を使ったのであろう。
何故東堂葵の姿が無いのかは解らないが、見つからないのであればまずは彼が宿儺の○○○(ピー)と入れ替えに何を送ってきたのかを知るべきだと判断。
そして、やけにメタリックな光沢のそれを見た。
「・・・オイマテヤメロバカ野郎フザケンナ」
羂索は宿儺の○○○(ピー)の存在を知った時よりも盛大に顔を引き攣らせた。
何故ならそれはある意味宿儺の○○○(ピー)よりも最悪最凶の代物だったからである。
◆やっぱり人の心が無い天元様
「高田ちゃんのイベントに半年参加しない、つまり個握も行かない状態で他の女の手と接触する。この縛りによって禪院本家とここ(東京高専)の間で呪物を1つ、1回だけ入れ替える」
「東堂?物凄く血涙出てるけど大丈夫?」
「気にするな・・・グボァっ」
絶対大丈夫じゃない。
禪院真依の様子を見、師匠である九十九由基から事情を聞いた東堂葵は迷わずこの縛りを結びこの入れ替えを成功させたのである。
なお到着した宿儺の○○○(ピー)は女性や子供がいる為、天元が即座に結界で再びモザイク処理を行った。
ちなみに拍手の相手は庵歌姫である。
生徒の為であり、頑張ったのも生徒なのでこの反応には怒るに怒れないがそれでもモヤッとしていた。
だがこれで禪院真希も禪院真依も救われたとホッとする。
「これが宿儺の○○○(ピー)・・・取り敢えず王水で溶かせば良いかしら」
「ちょっと待とうか」
訂正、自殺は止めたけどまだ正気じゃなかった。
据わった目で結界に覆われた宿儺の○○○(ピー)を睨むその目はまるでというか正しく汚物を見る目その物である。
宿儺の○○○(ピー)、依然として大ピンチ。
「もういっそ私が火山に持って行ってマグマに叩き込もうか?」
「火山が噴火しかねないから止めなさい」
西宮桃も正気じゃなかった。
形は変われども続く京都高専教師生徒達のやり取り。
それをぼんやりと眺めていた九十九由基はふと気になった。
「そういえばこっちから禪院家へ飛ばした呪物ってなんだったんだ?」
「ああ、あれか?別に大した物じゃないよちょっと処分に困っていたコレクションの一部だからね」
実は天元、長いこと引き篭もっていたので真新しい物や珍しい物には目がなく片っ端から集める趣味があった。
獄門疆「裏」もその過程で偶々見つけて入手したものだ。
「酒と同じで長く寝かせれば寝かせるほど美味くなると思って態々私の結界で更に密封していたんだがまさかこうなるとはね」
「密封?何をだ」
「ん?シュールストレミングだよ。200年前に珍しい缶詰があるって聞いて手に入れたんだが発酵が進むほど美味くなると聞いてね?当時の缶詰はまだ密封具合がいまいちだったから私の呪力と結界で補強していたんだがうっかり存在を忘れていて処分に困っていたんだよ」
「人の心無いのか?」
最臭兵器まさかの爆誕である。
◆最臭兵器
シュールストレミングとは、ニシンを塩漬けにし発酵させたものである。
缶詰に詰めた際、加熱殺菌を行わない為密封された後も発酵は続いていく。
その臭気は世界一、最も臭い食品である。
とある国ではうっかり存在を忘れて25年放置され爆発寸前になった物がある。
つまり長くても25年で缶詰の耐久力が限界を超える為それ以上発酵が進む事は本来ならば無い。
だがそこは最高の結界術師天元。
その卓越した技量により彼女が購入したシュールストレミングは本来の耐久期間に対して8倍もの年月に渡る発酵を実現させた。
ちなみに数百年単位で呪力に浸されたせいか軽く呪物化もしている。
つまりそれだけ臭気も増した逸品。
それが今、在庫処分に丁度良いからという理由でぶち込まれたのである。
「天元んんんん!!?おま、お前ぇえええっ、覚えてろよぉおおおおおおっ!!!!」
結界が解除されてボコボコと膨張を始めるそれを見て全てを察した羂索は恥も外聞も捨てて全力で逃走を開始した。
「ゲホッ、万貴様殺す気か!?」
「ゴホッ、何よ実際に爆破したのはあのオッサンでしょうが!」
丁度そのタイミングで瓦礫から這い出てきた2人。
偶々逃走ルートにいたので裏梅だけ回収して逃げる羂索。
「羂索貴様どういうつもりだ!?」
「もう宿儺の○○○(ピー)は無いから逃げるよ!!ついでに天元がやらかしやがった!!」
「天元が!?今度は何をやらかしたのだあいつは!?」
「説明はあと!ここにいたらマズい!!」
騒ぎながら逃げる2人を何事か解らず見つめる万。
「シュールストレミングだよ!何十年発酵させたのか解らないがとにかくヤバい状態の物を宿儺の○○○(ピー)と入れ替えで寄越しやがった!!」
「・・・は?」
だが羂索の叫びを聞いて正気に返った。
「ちょっ、巫山戯んじゃないわよ羂索!置いていくな!?」
「済まないが自力でなんとかしてくれ!!」
既に遠ざかった羂索と裏梅。
万も慌てて逃げようとしたが恐らく間に合わないし呪力が心許ない。
故に打てる手は1つだけだった。
「・・・あら、ここは何処かしら?」
即ち、宿主である伏黒津美紀との交代である。
深く沈めていた魂を表に送り出し、逆に自分の魂を奥深くに沈める事で臭いを遮断。
これにより伏黒津美紀が余程弱らなければ肉体の支配権を入れ替えられない状態になったがシュールストレミングの悪臭でほぼ間違いなく瀕死になるので後は天元達が伏黒津美紀を救助し除臭が完了してから表に出れば解決だ。
伏黒津美紀、大ピンチ。
◆呪術高専
だがそうは問屋が卸さない。
「パンダがいるってことは動物園かしら?」
「え、伏黒の姉ちゃん!何で!?」
「喋るパンダちゃん、賢いわね」
「リアクション薄すぎない!?」
人格の交代が完了した瞬間、伏黒津美紀は呪術高専にいた。
いきなり目の前に現れた津美紀に驚愕するパンダ。
「憂憂君に回収を頼んでいたが、まさか人格を交代するとは望外の幸運だったな」
「ちなみにいくら出したんだ」
「五億一括」
ちゃんと考えていた天元であった。
「ちなみにシュールストレミングを向こうに送ったのも理由がある。獄門疆は源信の成れの果てだから直撃させればあまりの臭さに中身を吐き出すのでは?と思ったからだ」
「・・・本当にそうなりそうだと納得出来るのがムカつく」
まあ十中八九炸裂前に逃げられるだろうけどやらないよりかはマシだろう。
あと五感が優れた禪院真希を気絶させるという理由もあった。
やっぱり人の心無いだろうとツッコむ九十九由基。
◆禪院家、壊滅
「ん、電話・・・真依から?」
珍しく掛かってきた妹からの電話に出る禪院真希。
聞こえてくるのは切羽詰まった妹の声。
「お姉ちゃん逃げて!天元様がそっちに200年物のビンテージシュールストレミング送った!!」
「・・・はい?」
「嘘やろオイ」
ビンテージシュールストレミングって何?
あと久しぶりにお姉ちゃんって呼ばれて嬉しい。
固まった禪院真希。
対して禪院真依の叫びを聞いた禪院直哉の反応は早かった。
即座に投射呪法を発動。
全部真希を抱えて最大速力でその場を離脱する。
一瞬にして消える禪院直哉と禪院真希。
そして
「は?なんだこれ・・・ぐぉっ!?」
丁度瓦礫から這い出てきた禪院扇に直撃するシュールストレミング。
衝撃で缶詰は破裂。
飛び散る中身。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああーーッ!!!???」
中身を浴び、絶望の叫びを浴びる禪院扇。
禪院甚壱の指示で距離を取っていた為直撃は避けられた物の容赦なく悪臭を浴びせられる禪院家一同。
阿鼻叫喚の地獄得ずガ誕生し、1人また1人と意識を失っていく。
やがてその場には瓦礫と意識を失った人間、そしてシュールストレミングだけが残されたのであった。
人里離れた場所にあったが故に彼等が救助されたのは数日後。
これが禪院家の末路である。
◆うっかり天元
「ところで忌庫の呪具は?」
「・・・あ!」
後に、囚われている呪詛師を恩赦を出す代わりに呪具の回収へ派遣するのであった。
最初は来栖華を禪院本家に派遣して宿儺の○○○(ピー)ごと万達を仕留められるネタを考えてました。
2人は絶対に宿儺の○○○(ピー)を守ろうと盾になると思ったので。
けどシュールストレミング爆弾を出したかったので変更しました。