キバナVSダンデ ―龍と空の王者―   作:スイカバー

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「ギルガルド、『シャドーボール』!」

「ネンドール、『れいとうビーム』!」

「チルタリス、『ムーンフォース』!」

「ファイヤー、『もえあがるいかり』!」

「ジュラルドン、『ラスターカノン』!」

 

 ダンデ、ダイゴ、ヒガナ、マリィ、キバナの五人はそれぞれポケモンに技を指示した。ポケモンたちはレックウザに向かって技を放つが、巨体のレックウザに命中はするものの、あまり効いていない様子だ。

 

「ダメージは入っちゃいるが……」キバナが言う。「体力が多すぎる。さすがは伝説ポケモンのダイマックスってか」

 

 上空のレックウザは、五人とそのポケモンたちの方向へ顔を向けた。攻撃の対象をこちらに定めたらしく、つんざくような叫び声を上げながら、周囲の空気を渦巻かせて、前方へと押し出した。ハリケーンを九十度押し倒して、それをそのまま突き出したような形だ。ポケモンたちがその風圧に巻き込まれる。

 

「『ダイジェット』か!」ダンデが叫んだ。「ギルガルド、『キングシールド』!」

 

 ギルガルドが盾で防御するが、それでも風の勢いは防ぎ切れていない。ダンデたちも、風でその身を飛ばされないよう、堪えるだけで精一杯だった。

 

「風には風で、ファイヤー、『ぼうふう』!」

 

 マリィが指示すると、ファイヤーも翼を羽ばたかせ、強風を起こした。風は少し和らいだが、相殺するには至らず、やはりダメージは受けてしまう。

 

「一発一発が重いな」ダンデが額の汗を拭った。

「まず攻撃力を削いでいかないと」ヒガナが一歩前へ出た。「チルタリス、『フェザーダンス』!」

 

 水色の鳥ポケモンのチルタリスは、自身の胴を覆う白い綿雲のような翼を使って踊り始めた。レックウザはチルタリスの踊りに気を取られ、攻撃の手を緩める。

 

「よし、隙ができたぜ。ジュラルドン、『かみなり』!」

「ファイヤー、『げんしのちから』!」

 

 「かみなり」がレックウザの頭上から、「げんしのちから」が地上から、ちょうど挟み撃ちにする形でレックウザに当たった。一瞬、レックウザの目が閉じて、動きが止まる。しかし、次の瞬間、大きく目を見開くと同時に、胸を突き出して空を仰ぎながら咆哮し、体中からエネルギーを放出した。

 

「今度は『ダイドラグーン』だ!」キバナが言う。

「チルタリス、『コットンガード』!」

 

 ヒガナが命じると、チルタリスの綿雲が大きく膨らみ、身体中を覆った。レックウザのエネルギーを一手に受け止めたが、それでも大きくダメージを喰らい、地上に墜落してしまった。

 

「チルタリス!」ヒガナはチルタリスの下へ駆け寄る。「『フェザーダンス』で攻撃力を下げて、こっちは防御を強化したのに。それでも受け切れないとはね……」

「だがその雄姿は無駄にはしない」今度はダンデが踏み出した。「ギルガルド、『かたきうち』!」

 

 ギルガルドはまっすぐレックウザのほうへ飛んでいき、腕を広げ、胴体である剣の部分でレックウザに斬りかかった。斬撃の音が地上にまで届くほどの威力だ。

 

「『かたきうち』、味方が倒されると威力が上がる技か!」ヒガナが言った。

「こいつはかなり行ったぞ!」キバナも興奮して叫んだ。

 

 しかしレックウザは口から水流を発射し、ギルガルドに命中させた。「ダイストリーム」だ。ギルガルドは胴体にまともに攻撃を受け、倒れてしまった。

 

「ネンドール、『サイコショック』!」

「ファイヤー、『もえあがるいかり』!」

 

 ダイゴとマリィが技を指示する。レックウザは先ほどと同様、空気の渦の攻撃、「ダイジェット」で迎撃してきた。「フェザーダンス」が効いているためか、少し威力は下がっているようだが、それでも二匹ぶんの技を押し返すほどの力は充分にあった。

 

「ジュラルドン、加勢しろ、『ラスターカノン』!」

 

 ジュラルドンが二匹の前に立ち、攻撃に加わるが、それでもギリギリ押し負けて、三匹とも跳ね飛ばされてしまった。

 

「改めてとんでもない強さだな……」ダイゴが唸った。

「そう長くはもたんやろうね」マリィもファイヤーのコンディションを見ながら言う。「このままじゃあたしらが先に全滅たい」

「ジュラルドン、まだやれるか?」キバナは後方へと飛んだジュラルドンに声を掛けた。

 

 ジュラルドンはその巨体を起こし、キバナに向かって腕を上げた。ジュラルドンは表情の読みにくいポケモンだが、キバナはその目の奥にジュラルドンの闘志を感じ取った。

 

「だよな」キバナもにやりと笑う。「……ん? 何だそりゃ?」

 

 キバナが目を凝らし、ジュラルドンの手元を見た。闇夜で見えにくいが、何か手に持っている。

 

「モンスターボールか?」

 

 ジュラルドンは手にボールを掲げながら、もう一方の手で地面を指さした。研究所の玄関横の壁の辺りだ。

 

「そこに落ちてたってことか?」キバナはジュラルドンの下へ近づき、ボールを取り上げて確かめた。「中にポケモンが入ってるみてーだな」

 

 その様子を見ていたダイゴが、駆け寄ってきた。

 

「まさかそのボール……」ダイゴはキバナからボールを受け取り、スイッチを押した。中からポケモンが出現する。

 

 ポリゴンだった。

 

ダイゴが先ほどネットワークをハッキングするために出そうとして、リゼルグの構成員に邪魔され、ボールを空へと飛ばされた。そのポリゴンのボールがここに落ちていたのだ。

 

「そうか、こんなところに飛ばされていたんだね。キバナ、ジュラルドン、ありがとう」

 

 ダイゴは一安心して、ポリゴンをボールに戻そうとした。しかしそれと同時に、上空でレックウザがまた雄叫びを上げた。「ダイドラグーン」を繰り出してくる。その攻撃はマリィのファイヤーが「ぼうふう」で何とか方向を逸らしたが、ポリゴンは攻撃の凄まじさに驚いて、怯えながら辺りをぐるぐる回り始めた。

 

「落ち着いて、ポリゴン、ボールに戻るんだ」ダイゴはポリゴンの下へ駆け寄り、ボールのスイッチを押そうとする。

 

 しかし錯乱したポリゴンは周りが見えていないようで、ぐるぐる回りながらジュラルドンの足元へと激突してしまった。ポリゴンは目を回しながら、その場に倒れ込んだ。

 

「仕方ねえ奴だな」キバナもぼやきながら、小走りにポリゴンへと近づいた。

 

 次の瞬間、ジュラルドンの姿が光に包まれた。身体の形が急激に変化していく。ダイマックスか、とキバナは一瞬思ったが、この白い光は明らかにダイマックスのものではない。

 

 そして、光が解かれると、ジュラルドンはダイマックスとも違う、まったく別の姿へと変貌していた。

 

「こ、これはまさか、進化か?」

 

キバナは驚愕した。ジュラルドンに進化の姿があるという話は聞いたことがあった。一部の地方でそういう例は目撃されているらしいが、その進化条件など詳しいことはまだわかっていない。だが、今目の前のジュラルドンは、まさに噂に聞いていたそのものの姿をしていた。

 

「名前は確か……、ブリジュラス」

 

 ブリジュラスは、ジュラルドンのときと同じく白銀の金属の身体をベースとしつつも、頭から尾にかけて紺色のレールのようなものが走っている。身長はキバナよりやや高い、二メートルくらいか。腕は橋脚のようであり、まるで跳ね橋に手足が付いて立ち上がったような様相を思わせる。

 

「そういえば」ダイゴが口を開いた。「ポリゴンが持っていた金属がなくなっている」

 

 ポリゴンは元々「アップグレード」という道具を持たせてポリゴン2に進化させるはずだったが、送り主が道具を間違えたせいで、進化できずにいた。そして、「アップグレード」の代わりに持たされた金属の塊を、ポリゴンは好んで遊んでいたが、その金属が今はどこにもない。

 

「まさかあれがジュラルドンの進化に関わっていたのか?」ダイゴは口元に手を押さえて考え出した。

 

 先ほどジュラルドンに激突して倒れ込んだポリゴンだが、目を覚ますと、ブリジュラスのほうへ飛び着いて、足元に擦り寄り始めた。どうやらブリジュラスのことが気に入ったらしい。

 

「あの金属がジュラルドンに吸収されたってことか?」キバナが眉をひそめた。

「だろうね。興味深い。特定の道具を持たせて通信交換することで進化するポケモンはいるが、交換を介さず、道具の力だけで進化できる例は、進化の石を除くと極少数だ。これはしっかり研究して方法を特定できれば、学会で大きな話題を呼ぶよ、きっと……」ダイゴは目を輝かせながらぶつぶつ言っている。

「いや、今はそんなこと言ってる場合じゃねえ」

 

キバナは嬉しそうに、ブリジュラスの橋のような腕を撫でた。そしてポリゴンに向かって言った。

 

「ポリゴンよお、悪かったな、お前の宝物を奪っちまって。また代わりのを用意してやっから、ちょっと我慢してくれ」

 

 ブリジュラスの足にくっつくポリゴンを、ダイゴは何とか引き剥がし、ボールに戻した。

 

「行くぜブリジュラス、進化したお前の力を見せてやろうぜ」

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