キバナVSダンデ ―龍と空の王者―   作:スイカバー

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 無数の観客の声援に包まれて、スタジアムのバトルフィールドに男と女が対峙している。

 

「カジリガメの『くらいつく』を受けて、ギルガルド、ダウーン! ルリナ選手、いよいよ一対一まで持ち込みました」

 

 実況の女性の声がスタジアム内に響き渡る。男は倒されたポケモンをボールに戻し、別のボールに手をかけた。そのボールを強く握り締め、男は空中へと高く放り投げた。ボールからポケモンが出現する。

 

「リザードン! 言わずと知れたダンデ選手の切り札、満を持しての登場です。お聞きください、この会場のダンデコール!」

 

 バトルフィールドの左右にそれぞれ、ルリナのカジリガメとダンデのリザードンが向かい合う。お互い残りポケモン一匹ずつのイーヴンだが、会場はダンデを呼ぶ声一色に包まれている。ルリナにとって完全にアウェイな光景だ。

 

「しかし、ほのお・ひこうタイプのリザードンに対し、みず・いわタイプのカジリガメは圧倒的有利! 体力もまだ充分残っています。ダンデ選手、暫定チャンピオンの座すらも明け渡すことになってしまうのか?」

 

 その実況の声が耳に入って、ダンデは思わず苦笑した。そうだ、もう自分はチャンピオンではない。でも、だからといって、いや、だからこそ、負けて良い理由にはならない。

 

「カジリガメ、『がんせきふうじ』!」

 

 まずルリナが先手を仕掛けた。四足歩行で頭に斧のような角、背中に大きな甲羅を持つカジリガメは、頭の角で地面を割り、そこから岩の塊を掘り出すと、尻尾を捻ってリザードンめがけて飛ばした。

 

「いわタイプの攻撃、リザードンには効果抜群ですが……?」

「リザードン、『エアスラッシュ』で跳ね返せ!」

 

 ダンデもリザードンに技を命じる。オレンジ色のドラゴンのような見た目のリザードンは、背中に生えた大きな翼を羽ばたかせ、風圧で岩石の軌道を曲げた。

 

「さらに『エアスラッシュ』!」

 

 リザードンの後方に岩石が落下するが、それでもリザードンは翼の動きを止めない。強風がカジリガメへと襲い掛かる。

 

「さあリザードン、カジリガメへと攻撃します。ただ、これは効果いまひとつか?」

 

 カジリガメに「エアスラッシュ」が当たるが、大したダメージを受けた様子はない。ルリナが次の指示を与えようとする。

 

「カジリガメ、『シェルブレード』!」

 

 しかしルリナは異変に気付いた。カジリガメが動こうとしない。否、動けないのだ。

 

「おーっと、カジリガメ、あまりの風圧に意識を飛ばされてしまったか? 怯んでいます!」

 

 すかさずダンデは命令する。

 

「これを狙っていたんだ。今だリザードン、『れんごく』!」

 

 リザードンはカジリガメに背を向け、自身の身体に力を込める。尻尾の先に灯った炎が一瞬にして大きく燃え盛り、巨大な火の玉になった。そしてその火の玉を尻尾から分離して前へと飛ばし、カジリガメに当てた。カジリガメの身体が炎に包まれる。

 

「カジリガメに『れんごく』が炸裂! 『れんごく』は予備動作が大きいため、なかなか当てにくい技ではありますが、怯んだ隙に悠々と繰り出し、命中! 効果はいまひとつ、しかしカジリガメ、やけど状態になってしまいました!」

 

「やけど状態では、攻撃するにも力が入らなくなるだろう?」ダンデがルリナに言った。

「やってくれるじゃない……、でも」ルリナは諦めていない。「カジリガメ、『ロックカット』!」

 

 カジリガメは身体を捻り、仰向けになって甲羅を地面に付ける。そのまま身体を独楽のように回転させると、摩擦で甲羅が削れていく。そして、回転の途中で片方の手足を地面に落とすことで、重心を傾けて元の姿勢に戻り、その勢いでリザードンへと突っ込んだ。

 

「カジリガメ、甲羅の表面を削ぎ落して体重を軽減、軽くなりました! さらに回転の勢いも加えてスピードアップ!」

「そのまま『シェルブレード』!」

 

 カジリガメの頭の角が青く光る。水のエネルギーが集中しているようだ。リザードンに向かって、ミサイルのように真っすぐ突き進む。

 

「リザードン、地面に向かって『エアスラッシュ』!」

 

ダンデがリザードンに命じると、リザードンは前傾姿勢で翼を仰ぎ、風圧の反動で空へと上昇した。間一髪で「シェルブレード」をかわす。

 

「だったらこっちも、カジリガメ、地面に『ハイドロポンプ』!」

 

 前方へと突進していたカジリガメが、口から真下に激しい水流を放つと、リザードンと同じようにその反動で空中へと飛び上がった。

 

「ルリナ選手、ダンデ選手の戦法を即座にコピー! カジリガメ、飛んだー! おまけに『ロックカット』の勢いもまだ残っているぞ、ブーメランのようにくるくる回転しながらリザードンに接近する!」

 

「シェルブレード」が今度こそリザードンの身体を捉えた。

 

「『かみなりパンチ』で迎え撃て!」

 

 リザードンは電気を纏った両手を前に突き出し、カジリガメの角を左右から受け止めた。空中で拳と角がぶつかり合い、電気と水のエネルギーが迸る。一瞬、甲高い音がしたかと思うと、互いに後方へと飛び去り、距離を開けて着地した。

 

「互角! お互いのパワーは互角のようです!」

 

 カジリガメもリザードンも息を切らしている。体力はどちらも残り少ないようだ。

 

「大丈夫、私たちはどんな逆境の波も乗りこなしてきた。ゴールまでもうひと泳ぎよ。カジリガメ、ダイマックス!」

 

 ルリナは腕に装着したダイマックスバンドに手をかざした。スタジアムから発生したエネルギーがカジリガメを包み込み、巨大化させる。四足歩行のカジリガメは起き上がり、二本の足で直立する。甲羅も頭部を覆うほど大きくなった。

 

「いいねえ、熱くなってきたぜ。もうチャンピオンタイムとはいかないが……、観客のみんなが応援してくれるこの今を、オレは最高の時間にしてみせる。リザードン、ダイマックス!」

 

 ダンデもダイマックスバンドに手をかざし、リザードンを巨大化させた。炎の勢いがさらに増し、翼や角、肩など体中が熱く燃え盛っている。

 

「両選手、ついにダイマックスを使用! バトルは最終局面を迎えました!」

「カジリガメ、『キョダイガンジン』!」

 

 ルリナが叫ぶと、カジリガメの体内から口の周りに水のエネルギーが集中した。

 

「リザードン、『ダイソウゲン』!」

 

 ダンデの指示に答え、リザードンの胸の辺りに緑色の丸いエネルギーが形成される。

 カジリガメが口からエネルギーの水流をリザードンに向かって放出。しかしリザードンが緑のエネルギーでその水流を受け止めると、緑のエネルギーは爆散し、無数のサッカーボール大の種子となってフィールドに飛び散る。次の瞬間、それらの種子はカジリガメの周りで次々とキノコのような形に大きく膨れ上がり、一斉に爆発した。カジリガメが元の大きさに戻っていく。

 

「カジリガメ、戦闘不能! ダンデ選手の勝利!」

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