キバナVSダンデ ―龍と空の王者―   作:スイカバー

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「久しぶりだね。遅くなってすまない」

「いや、いいんだ。そっちも忙しかったんだろう」

「まあね。仕方ない。いろいろあったからね」

 

 ダンデは久々にダイゴと通話をしていた。

 

「こっちもようやく取材が一通り終わって、落ち着いたところだ」

「負けても根掘り葉掘り訊かれるのか。大変そうだ」

「まあこっちはまだ手心を加えてもらえる。キバナのほうが忙しいだろうさ」

「もちろん試合は見させてもらったよ。いいバトルだった」

「余計な社交辞令は言わなくていいぞ」

「いや、そういうんじゃない。本当に凄い戦いだったと思う。僕が挑んでも勝てる見込みは薄いだろうね。ダンデにもキバナにも」

「本当にそうか?」

「中継を客観的に見てもそう思うんだ。もしあの場で選手として立っていたら、正しい戦術が取れるかはもっと怪しい」

「どうだろう。リアルでバトルを目の前にしているからこそ感じ取れる何かはあるし、それが試合に影響を与えることだってあり得るとオレは思うが」

「うーん、そうだな。確かにそれもありそうだ」

「それに、君の場合、それはあくまで初見の感想であって、二度目なら負けないって言うんだろ?」

「はは、そうだね。そのつもりだ」

「やはりな。それより試合内容について、君の目から見て何か気付いたことはないか? オレのほうでもキバナのほうでもいい。何かミスとか、改善点とか……」

「そういうのなら多少はあるよ。例えば最初のバリコオルの戦術だけど……」

 

 それから、二人はしばし試合の感想を語り合った。頂点に限りなく近いトレーナー同士だからこそ交わせる極めて高い次元の会話だった。

 

「なるほど、いやあ、参考になった。やはりダイゴ、君と話していると得るものが多い」

「そういえば、キバナとは何か話したのかい?」

「ああ、感想戦という形で二回、対談形式のインタヴューがセッティングされてな、いずれも短い時間だったが話すことはできた」

「そこでは何を?」

「一回目は試合直後でお互い頭が回ってなかったから、ろくなことは話せてないと思う。オレもほとんど記憶にない。試合の軽い振り返りと、あとはファンへのよくあるメッセージくらいで終わったはずだ」

「激しい戦いだったからね。それくらい消耗していてもおかしくない」

 

「で、二回目は割と最近だ。取材のほうも落ち着いてきて、オレもキバナも一段落ついたって頃に、パルデアのほうから依頼があってな。あっちで人気の動画投稿者がオレたちにインタヴューしたいって言うんで、オンラインで収録したんだよ」

「へえ。確かに、世界中で話題になっていたからね」

「キバナは同じジムリーダーでインフルエンサーだからって、あっちのほうに対抗心燃やしてたみたいだけどな。何にせよ、オレもその頃にはだいぶ考えがまとまってきて、言いたいことをすっきり話せた気がするよ」

「寡聞にしてその動画とやらは見ていないんだけど、君は何を話したんだい?」

「そうだな、簡単にまとめるなら……」

 

 そう言って、ダンデは少し考えた。

 

「やはりオレはチャンピオンでいたい。それがオレの偽らざる本心なんだとようやく気付いた」

「意外だな。君は名声に興味があるタイプじゃないと思ってたんだけど」

「そう、オレもそこに引っ掛かっていた。一度チャンピオンの座から離れたことで、別にそこに固執する必要なんかないんじゃないかと考えたこともあった。みんなに認められたいから戦うんじゃない。地位や名誉は関係なく、純粋にポケモンバトルを楽しむことが大事なんだと。それも確かにそうだ。そういう気持ちもオレの中には確実にある」

「でもそれだけじゃなかった」

「ああ、バトルを楽しみたい。でもそれ以上に、勝ちたい。楽しんだ上で、ちゃんと勝ちたい。それがオレの生き方なんだ」

「その気持ちは僕もよくわかるよ」

「そう考えると、チャンピオンっていうのがオレにとって何なのか、わかった気がした。オレは誰かのためにチャンピオンになりたいんじゃない。自分自身のためにチャンピオンになりたいんだ」

 

 ダンデの声に熱がこもっていく。

 

「もちろんファンがオレの試合を見て喜んでくれたら、それは嬉しい。だけど結局のところ、オレが戦うのは、オレ自身がポケモンと共に強くなって、どこまで勝てるのか、どこまで高みへ昇れるのか、確かめるためなんだ。そしてその終着点がたまたまチャンピオンという地位だっていう、それだけに過ぎない」

 

「なるほど。名声ではなく、自己実現のためのチャンピオンか」

「自分勝手だと思うか?」

「まさか。それくらいでちょうどいいよ。それに君の場合、その姿を見て自然とみんなが応援してくれるんだ。カリスマ性の自覚はあるだろう?」

「それに『はい』と答えるのは、さすがに気恥ずかしいな」

「冗談だよ。そうか……、いや、いいね。君らしい答えだと思う」

「ああ、これもキバナのおかげだ。あいつと戦ったからこそ、オレは答えを見つけることができた。オレは必ずチャンピオンの座に返り咲いてみせるよ」

 

「楽しみにしているよ。ところで、キバナは何か言っていたかい?」

「それだがな……」そう言って、ダンデは微笑んだ。「いやあ、笑ってしまったよ。実にあいつらしい言葉だった」

「へえ?」

「『これでまだ一勝十敗だ。あと十回戦って勝ち越すまでオレ様の挑戦は終わらねえ』ってな」

「ははは、確かに彼らしい」

「もちろんオレももう負けるつもりはない。君のアドヴァイスももらったことだし、次は絶対に負けない。楽しくなってきたぜ」

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