プロローグ:砂漠で目覚める袈裟の男
「な──」
目を覚ましたそこは、見渡す限りの砂漠だった。
砂と岩ばかりの土地で、服に着いた砂を落とす。
こんな土地は日本にはないし、殺風景でもない。というかそもそも地平線がほとんど無い。地平線はアメリカにでも引きこもっていてくれ。
「……状況を整理しようか。俺が最後に起きていた日は2024年12月24日。岩手へ帰省する途中に交通事故に巻き込まれ、恐らく死亡した」
家族に顔を出すついでに、行きつけだった店のじゃじゃ麺を食べに行くはずだったのだが……不運にも交通事故に巻き込まれてしまった。享年16歳である。
だが、此処に居る。
「ふむ……」
声も、身体も、目線も違う。それは恐らく、俺が俺ではない誰かになったから。いわゆる、憑依転生というやつだ。
「……この五条袈裟、夏油傑?」
呪術廻戦に出てくる、最強の片割れだった人物。ピタゴラスイッチのように闇落ちしていってしまった、哀れな逸般人だ。
と、思ったのだが。
それとなく額を触ると、糸のような──いや、糸がぐるりと縫われてあった。
羂索だ。今の夏油傑には
何故俺は羂索になっている?何故砂漠で目を覚ました?……というか、羂索と夏油の命日に合わせるなよ。
「
せっかくなので口調も寄せることにする。メロンパンに寄せるのは癪だが、解釈違いは譲れない。羂索の一人称は”私”一択だ。
「よし、移動するとしようか」
・・・・・
「呪力での強化はできる。だが……呪霊操術が使えない?」
途中で襲ってきたロボットを返り討ちにした結果、これを作った会社が「カイザーPMC」であることが発覚。芋づる式に、ここが「ブルーアーカイブ」というゲームの舞台である学園都市キヴォトス。その自治区の一角であるアビドス自治区だということがわかった。
「
俺の持っている知識は、細かいものは対策委員会2章まで。学校の名前はある程度覚えていて、神秘と……ああ、そうだ恐怖だ。テラーだっけ?があること。ゲマトリアなる組織がやばいものを倒そうとしていること。梔子ユメの死亡。エデン条約なる章で先生が撃たれること。
呪霊に関しては先生でもどうすることも出来ないだろうと踏んでいる。一般人には視えない、霊的現象の類。心霊写真すら尻尾を巻いて逃げるほど悍ましい悪意。
「……アビドス高等学校」
ブルーアーカイブのメインストーリー、その最初の舞台。原作時点で全校生徒が5人という少ない人数で、学校にかけられている借金の返済を頑張っている健気な子たちだ。
「行こうか。……怪しいことこの上ないけど」