「遅いですよ、夏油スグル」
「急に連絡してきた君が悪いだろ、ベアトリーチェ。道中ゲヘナに寄って呪霊を仕留めてきたんだから、感謝してほしいくらいだよ」
「……やはり貴方は気に入らない。唯一役に立つ点を挙げるなら、呪霊をこちらに卸してくれることくらい……」
ベアトリーチェのことは、個人的に気に入らない。崇高だの色彩だの、いちいち喧しいんだよね。かといって今はまだ反転術式が使えないし、無茶をするならばやはり……エデン条約の時だろうね。
「それで、アリウスは順調かい?ここに来る途中でサオリと会ったんだけど」
「ええ、勿論。秤アツコやアリウススクワッドの誘導もかなり進んでいます。私が崇高に至る日も近いでしょう」
「そうかい。……そうだ。今日は少し朗報があるんだ」
そう言って、呪霊を差し出す。
「これは……!!」
「私のいた領域の区分で言えば、一級呪霊だ。戦車でも心細いだろう強さ……そして、術式を持つ。支配には十分だろう」
それでも、なぜ俺がベアトリーチェに味方しているか。まあ内から潰す目的もあるが……アリウスの位置や戦力を知るためというのが大きい。カタコンベの周期は目まぐるしく変わるし、今は呪霊にルートと周期の記憶を任せているけど……それでも少し厳しいかな。如何せん生徒が強い。
風紀委員会や正義実現委員会は、あくまでも治安維持のための組織。他に業務もあるし、常に戦闘訓練に時間を取れるわけじゃない。
しかしアリウスは違う。ベアトリーチェの支配はほぼ完璧と言っていいだろう。呪霊によって、それもより盤石になっている。呪霊操術で既に調伏してあるから、消そうと思えばいつでも消せるけど。……まあ、それは今じゃない。
「有り難い。これでより、邪魔をされなくなる……!やはり私は他のゲマトリアとは違うのです!私こそ、唯一崇高に到る者……そうなれば、貴方も用済みです。夏油スグル」
「フフ、それは楽しみだ。……それじゃ、私はここらで失礼するよ。連邦生徒会の業務を残して来てしまったからね」
「そうですか……ふふ。それでは、また」
・・・・・
「おや、先生?……と、アビドスと……」
阿慈谷ヒフミ?彼女はトリニティだし、なんならここはブラックマーケットだ。私もよく呪霊を狩りに来ているので、ヒフミとはすれ違いざまに挨拶をする程度の仲だ。
「あ、夏油さん!」
「え、知り合いなの?」
「ここにはよく来るからね。……それで、あれは闇銀行だけど……なぜ盗み見ているんだい?」
「それが……」
どうやら、アビドスの皆が払っている利息分を、カイザーローンはこの闇銀行に横流ししているらしい。
そもそも、アビドスがカイザーローン……及びカイザーPMCに借金を背負っていることと、そこの理事が何かを企んでいることは伝えてある。ユメを助けたついでにね。
「ふむ、それでどうするんだい?まさかこのまま黙って見てるわけでもないだろう」
「はい。でもブラックマーケットの中でも最も強固なセキュリティを誇る銀行の中となると……。それにあれだけの数のマーケットガードが目を光らせてますし……。それ以外に輸送車の集金ルートを確認する方法……ええっと……うーん……」
「うん、他に方法はないよ」
「え?」
「ホシノ先輩、ここは例の方法しか」
「なるほど、あれかー。あれなのかあー」
……どうやらシロコたちは、方法を思いついてるようだ。
「…ええっ?」
「あ……!!そうですね!あの方法なら!」
「何?どういうこと?まさか私が思ってるあの方法じゃないよね?」
「……」
「う、嘘っ?!本気で!?」
「……あ、あのう。全然話が見えないんですけど……「あの方法」って何ですか?」
「……残された方法はたった1つ」
そう言って、シロコは覆面を被る。……え、覆面?
「銀行を襲う」