「──領域展開」
掌印は反叉合掌。
「
「!!」
”夏油さん!!”
この場面では領域の押し合いなど、意味を成さない。
瞬きをすれば、夏油の領域に様変わりしていた。
「領域展開とは、呪術の極致。内側からの力に強い結界を張り、自身の心の風景とも言える生得領域を具現化させ、そこに術式を付与するんだ。そうすれば、付与された術式は必中へと格上げされる」
そもそもこの呪霊は、領域を展開していない。あの呪霊が用いていたのは術式であり、マーキングの領域はどちらかというと簡易領域に近いだろう。だからあれだけ持ち堪えたのだ。
もしも呪霊が領域を展開していれば、ヒナは一瞬で体中に穴が空いていただろう。
「……対策委員会、風紀委員、便利屋68。どうか、この呪霊と呪術の存在は秘密にしてほしい」
「え!?」
「どういうことですか、夏油さん!」
「今呪霊と呪術の存在を知っているのは、先生と連邦生徒会と各学校の生徒会、そして自治区での最高戦力のみ。……呪霊は負の感情で生まれるからね。パニックに陥らせるわけにはいかないんだ。まあ、いざというときが来たら公表するさ」
「……はい、わかりました」
夏油は今、閉じた領域を展開している。それで十分だからだ。
「……今の手持ちじゃ、厳しいかな」
目を閉じる。
「──螺旋」
そう、呟く。
「曼荼羅」
今、夏油がやっているのは、呪詞の詠唱である。
「旋渦の空」
付与した術式は、呪霊操術。必中にしたとしても、手持ちの呪霊では仕留めきれないことを悟った夏油がした行動は──。
「呪霊操術、極ノ番──うずまき」
最大火力での、圧倒的な”暴力”である。
”……呪霊が”
「一瞬で……」
「フフ……うん、いいね……それじゃ、今のうちに調伏しようか」
どす黒い球状に呪霊を丸める。それが、調伏が殆どできているという証。
最後にそれを丸呑みすることで、完了する。
「ひっ!?」
「う、わ……アレ絶対美味しくないでしょ」
「そもそも大きすぎるって。喉大丈夫なの?」
「……夏油さん」
1人は悍ましいものを見る目で、恐怖から遠ざかる者。1人は味の観点から、明らかに嫌悪する者。1人は、純粋な心配を寄せる者。
「……っぷう。…やはり不味いね。何百と喰らい続けてきたけど、流石に慣れないな」
「あ、やっぱり不味いんだそれ」
「ああ。……っと、領域も解こうか」
バシュウ……と音を立てて崩れる領域。
術式の焼き切れはあるが、今は皆と帰った方がいい。
「いやあ、疲れたねー」
「もっと速く来てたら良かったんですけどね!!」
「すまない。ヒナが呪術を使ったら緊急事態として、こちらに連絡が行くようにしてたけど……それでも遅かったかい?」
「いや、そもそも夏油さんが来る前に仕留められたら最善だった。……でもアレ特級でしょ?」
「そうだね、特級だ。それも、領域がデフォルトで組み込まれた術式。ヒナが時間を稼いだのは良かっただろう。でも、本当に領域を展開していたらヒナは既に死んでいた」
「……っ」
「毒を治癒できるほど、私も実力がない。先生の車にヒナを乗せてもらって、救急医学部に診せてもらおう。その間、誰かヒナに処置を施せるかい?」
「はい、私やります!」
「私も!!」
”彼女たちは、責任を持って送り届けるよ”
「……くく、頼もしい限りだね。頼んだよ皆」
こうして、アビドス一大の危機は去ったのだ。
キヴォトス人は死に対する忌避感が強いので、「人を殺すこと、人が死ぬこと」の恐怖から生まれました。あとあの呪霊は領域展開できます。宿儺でいう「味見、といったところだな」だったので、呪霊が最初から本気出して領域使ってたら、あの場で戦闘していた人は全員死んでました。特級はそれほどの強さってことです。