キヴォトスメロンパンモドキ   作:ただねこ

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特殊霊的現象「呪霊」について(3)

「──領域展開」

 

 

掌印は反叉合掌。

 

 

胎蔵遍野(たいぞうへんや)

「!!」

 

”夏油さん!!”

 

この場面では領域の押し合いなど、意味を成さない。

瞬きをすれば、夏油の領域に様変わりしていた。

 

「領域展開とは、呪術の極致。内側からの力に強い結界を張り、自身の心の風景とも言える生得領域を具現化させ、そこに術式を付与するんだ。そうすれば、付与された術式は必中へと格上げされる」

 

そもそもこの呪霊は、領域を展開していない。あの呪霊が用いていたのは術式であり、マーキングの領域はどちらかというと簡易領域に近いだろう。だからあれだけ持ち堪えたのだ。

もしも呪霊が領域を展開していれば、ヒナは一瞬で体中に穴が空いていただろう。

 

「……対策委員会、風紀委員、便利屋68。どうか、この呪霊と呪術の存在は秘密にしてほしい」

「え!?」

「どういうことですか、夏油さん!」

「今呪霊と呪術の存在を知っているのは、先生と連邦生徒会と各学校の生徒会、そして自治区での最高戦力のみ。……呪霊は負の感情で生まれるからね。パニックに陥らせるわけにはいかないんだ。まあ、いざというときが来たら公表するさ」

「……はい、わかりました」

 

夏油は今、閉じた領域を展開している。それで十分だからだ。

 

「……今の手持ちじゃ、厳しいかな」

 

目を閉じる。

 

「──螺旋」

 

そう、呟く。

 

「曼荼羅」

 

今、夏油がやっているのは、呪詞の詠唱である。

 

「旋渦の空」

 

付与した術式は、呪霊操術。必中にしたとしても、手持ちの呪霊では仕留めきれないことを悟った夏油がした行動は──。

 

「呪霊操術、極ノ番──うずまき」

 

最大火力での、圧倒的な”暴力”である。

 

”……呪霊が”

 

「一瞬で……」

「フフ……うん、いいね……それじゃ、今のうちに調伏しようか」

 

どす黒い球状に呪霊を丸める。それが、調伏が殆どできているという証。

最後にそれを丸呑みすることで、完了する。

 

「ひっ!?」

「う、わ……アレ絶対美味しくないでしょ」

「そもそも大きすぎるって。喉大丈夫なの?」

「……夏油さん」

 

1人は悍ましいものを見る目で、恐怖から遠ざかる者。1人は味の観点から、明らかに嫌悪する者。1人は、純粋な心配を寄せる者。

 

「……っぷう。…やはり不味いね。何百と喰らい続けてきたけど、流石に慣れないな」

「あ、やっぱり不味いんだそれ」

「ああ。……っと、領域も解こうか」

 

バシュウ……と音を立てて崩れる領域。

術式の焼き切れはあるが、今は皆と帰った方がいい。

 

「いやあ、疲れたねー」

「もっと速く来てたら良かったんですけどね!!」

「すまない。ヒナが呪術を使ったら緊急事態として、こちらに連絡が行くようにしてたけど……それでも遅かったかい?」

「いや、そもそも夏油さんが来る前に仕留められたら最善だった。……でもアレ特級でしょ?」

「そうだね、特級だ。それも、領域がデフォルトで組み込まれた術式。ヒナが時間を稼いだのは良かっただろう。でも、本当に領域を展開していたらヒナは既に死んでいた」

「……っ」

「毒を治癒できるほど、私も実力がない。先生の車にヒナを乗せてもらって、救急医学部に診せてもらおう。その間、誰かヒナに処置を施せるかい?」

「はい、私やります!」

「私も!!」

 

”彼女たちは、責任を持って送り届けるよ”

 

「……くく、頼もしい限りだね。頼んだよ皆」

 

こうして、アビドス一大の危機は去ったのだ。




キヴォトス人は死に対する忌避感が強いので、「人を殺すこと、人が死ぬこと」の恐怖から生まれました。あとあの呪霊は領域展開できます。宿儺でいう「味見、といったところだな」だったので、呪霊が最初から本気出して領域使ってたら、あの場で戦闘していた人は全員死んでました。特級はそれほどの強さってことです。
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