キヴォトスメロンパンモドキ   作:ただねこ

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特殊霊的現象「呪霊」について(4)

「……風紀委員長の方、大丈夫でしょうか……」

「ヒナちゃんのことは、先生に任せよう。ゲヘナの救急医学部が治療をしてくれるって言ってたし」

「……夏油さん、救急医学部は、呪霊の存在を知ってるんですか?」

「知ってても不思議じゃないわよね。あんな悍ましいモノに接触した、だなんて……すぐにでも噂が立つわ」

 

実際、ゲヘナの救急医学部やトリニティの救護騎士団など、各自地区の医療機関は呪霊を知っている。ただ、呪霊が生徒や人間に毒であり、傷を負った場合に治療が必要、というくらいの情報だ。そして、夏油と連邦生徒会から内密にしてくれとも頼んでいる。漏れる心配はないだろう。

 

「知ってるよ。でも、極一部の情報のみを開示している。呪霊なんて、悍ましい死霊がキヴォトス中にいるなんて知れ渡ると面倒だし。……もし存在を公表することになれば、どうするか……」

「えーと、今回の呪霊は「人を殺すこと、人が死ぬこと」に対する恐怖で生まれたんだよね?」

「ああ。大地への恐怖が集まれば大地の呪いが、自然への恐怖が集まれば自然の呪霊が生まれる」

「……なら、キヴォトス中に恐怖が向かったら……」

「ああ……キヴォトス中に呪霊が溢れかえることになる。しかも、一般人は呪霊を認識できない。認識できるのは、君たち生徒や先生などの一部の人だけ。……怪死体がそこら中に出来上がる」

「ひっ…!?」

「それは……公表をしないに越したことはないですね」

 

だから、夏油たち呪術師がいる。

 

「……そう言えば、夏油さんや風紀委員長のアレって何?」

「空崎ヒナが扱っていたのは、簡易領域というやつさ。文字通り簡易的な領域。領域展開は発動すれば必中となるわけだけど、その必中効果を打ち消すことが出来る」

「は!?」

「対策あったんですね、あれ」

「まあ、領域を使える呪霊はそう生まれないだろうし、1つの手段として覚えてくれ」

「夏油さんが扱っていたあの……呪霊を食べてたのは?」

 

シロコからの質問に、夏油は狼狽する。シロコの表情が悲痛に染まっていたからだ。空崎ヒナが食らった銃弾は、呪霊の領域で必中になった、バフのかかった銃弾。毒の効果は一段と大きい。その呪霊を丸呑みしたのだから、とっくに死んでいるはずである。

 

「あれは私の術式…能力でね。名を呪霊操術と言うんだ。呪霊を操ることが出来る」

「……あの気持ち悪いのを?」

「そう」

「うっわ」

「ストレートだね、セリカ」

 

呪霊操術は、呪霊を球状の物体……夏油は「呪霊玉」と呼ぶものにして体内に取り込んだものを使役する式神術の一種。呪霊を弱らせ、戦闘不能にさせてから調伏をする。だが階級換算で2級以上の差が離れていれば、ほぼ無条件で調伏が可能。

 

「へえ〜。……あれどんな味ですか?」

「吐瀉物を処理した雑巾」

「うっ」

「アヤネ、ノノミをトイレに」

「は、はい!」

「……想像もしたくない」

「何百とそれを食べてきたんですか……?舌死んでません?それ」

「……問題ないよ。嫌いなものはないし。そもそも食べても味がしないからね」

「え」

 

夏油は黒服に頼んで、味覚を消去してもらっている。まあ、多少ながら残っているので、精々カビを食べるようなものだ。

 

「ちょ、今度病院行こう……?ね、夏油さん、病院行こ?ね?」

「大丈夫、私から頼んで味覚を消したんだ。少し残ってるし、問題ないよ」

「それでも心配なんだよ?」

 

酷く目が震えているホシノたちにたじろぎつつ、夏油はそれを流す。「心配は要らない」の一点張りで押し通した。

なお、このあとユメと先生、連邦生徒会にも詰め寄られることとなったが、流石に先生の圧に逃げ切れなかったらしい。

 

 

・・・・・

 

 

「久しいね、黒服」

「……羂索さんですか。先程カイザー理事が此処に来ていましたよ」

「え?ヤだよあんな奴。私は君と手を組むくらいの屑という認識はあるけど、あそこまで堕ちちゃいないからね」

「おやおや……随分と低く見積もっていますね?」

「そうだろう。身を粉にして働く少女のお金を犯罪組織に流すんだから」

 

夏油はブルーアーカイブのストーリーは、あまり知らない。細かくとも、対策委員会2章までだ。そしてそれでも、カイザーという大人がここまで屑の煮凝りのような性格だったということを知らなかった。

同族嫌悪に近い何かが、夏油の中で渦巻いていた。

 

「そうですか……私は、どうでしょうか」

「君は契約を重んじる。あのバカ(カイザー)のような無理強いをしないだけマシだろう。やろうとしてることは外道だけど」

「貴方は何方かと言えば、秩序ですからね……。いずれ私たちゲマトリアも、貴方の手によって処理されることでしょう」

「ははっ、少なくともベアトリーチェは確実に殺すさ。おっと、このことは忘れてくれたまえ。……彼女に知れたら、間違いなくアリウス生が殺しに来る。今の私にはちょっと荷が重いかな」

「そのような実力で、まだ足りないと?」

「色彩に対抗するには、せめて反転術式を会得しなければいけないからね」

 

夏油は、未だ黒閃を経験していない。

 

「まあ、その時が来れば勝手に処理しておくよ」

「そうですか。……では、また呪術を教えてくれませんか?」

「そうだね……今日は”領域”について教えようかな」

「お、ついに呪術の極致ですか」

「ああ。心して聞いてくれよ?」

「クックック……子供の心持ちで聞くことにしますよ」




夏油は反転術式、術式反転、閉じない領域、彌虚葛籠、領域展延を会得していません。つまりそれ以外は、呪霊を倒しながら、ヒナや各学園の生徒会、最強格などに呪術を教えながら、黒服との取引をしながら、連邦生徒会からの書類をこなしながら、原作知識アリとはいえ2年で習得してきたわけです。つまり乙骨です(?)
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