「うん、いい感じだ」
「……っ」
「ダメじゃないかツルギ……余所見はいけないよ?」
「がっ、は……くっ、ヒイイヤアアアアア!!」
他の者が連携の訓練で4対4のチーム戦をやっている最中、私はツルギと個人で戦闘を行っていた。
「ぐ、ううっ……」
「こっち」
「な!?」
「君のその再生能力が羨ましい限りだよ。私は持っていないから」
「うぐっ」
「君はまだまだ成長できる。でも足りない。あまりにも足りない」
「ごふっ」
「私と戦闘が成り立つ時点で、まず身体能力が足りない。君は私よりも若いんし再生もあるんだ、もっと無理が効くよ」
「はぁっ、はぁっ、ぐ……」
……このあたりでやめるか?
「ツルギ先輩が、あんな簡単に……」
「夏油さん……」
「……休憩するかい?」
「いや、やらせてください……まだ、貴方に一本も取れていない……!!」
夏油は、呪霊操術を使っていない。
その代わりに、汎用性の高い反重力機構を多用してツルギを翻弄している。
「ッ!またその移動……!」
「……そうだね。呪術について、少々課外授業と行こう。呪術には”縛り”と呼ばれるものがあるのは以前習ったね?」
「はい」
「そしてそれは、自分自身にも課すことが出来る。その応用が術式の開示というものだ」
「開示?」
「手の内を晒すという縛りで、術式の効果を底上げすることが出来る。……私が今使っている術式は、反重力機構というものでね。その名の通り、反重力を指向性を持たせて操ることが出来るんだ。さっきの移動はその応用だね」
「!!」
「こんな風に」
「ぁ……」
一瞬、ツルギの身体をふわりと浮かせて、重力で私の打撃に重みをもたせる。さながら五条悟の疑似”蒼パンチ”といったところか。
「……意識を失ったか。丁度いい頃合いだ……総員、戦闘中止!休憩に入る!」
「「「はい!!」」」
ツルギをハスミに任せ、少しシャーレから持ってきた書類の処理をしつつ、その後の訓練は相互理解のための対話で終了。初日から濃い日程が続くことになるが、耐えられないというわけでもない。
「夏油さん」
「ツルギ」
「今日は……その、訓練ありがとうございました」
「ありがとう。私もツルギと戦って、また1つ強くなれた気がするからね」
「……これ以上強くなったら、誰も手がつけられませんね」
「ははっ、君たちなら止めてくれるだろう?」
「……止めてみせます」
「楽しみにしてるよ」
正義実現委員会の宿舎を後にして、今回の業務で貸し出されている宿舎に行く途中、連絡が入った。
「……先生から?」
・・・・・
「で、どういうことだい?裏切り者って」
”ナギサから「エデン条約を妨害してくる裏切り者」を探してほしいって言われたんだ”
「……」
まああのトリニティとゲヘナの仲だし、トリニティのゲヘナに対する怒りを考えれば必然だろう。「野蛮な角つき共なんかと平和条約なんて結べるものか」と。
「私は……とある手紙を授かっている。君がキヴォトスに来る前に、ティーパーティーの百合園セイアに会ってね」
”!?”
「彼女は未来予知……正確には予知夢のようなのだが、それが可能でね。嫌な未来を視てしまったから、現状信頼できる私に手紙を託したんだ」
”……その人は……今は意識不明、なんだよね”
「ああ。意識不明の重体で、ヘイローが壊れたとの噂もある。……あまり期待はしないでくれ」
”うん。まずは裏切り者を探すのが先だ。……補習授業部のテストに関しては、ティーパーティーの掌の上って言ってた。注意しておく”
「了解。補習授業部には時折顔を出す。正義実現委員会の方でも探っておこう」
”助かるよ”
その日は、解散となった。